きいち
44 件の小説season2 ❻全てを手に入れるまで。 【千恵の場合】 完結
『オレ、帰るわイソコに』 東京行くパッキングしてる時 LINEが来た。 『執行猶予ついたんや。めっちゃ 怒られて10日間事情聴取されて。 もう刑務所行ってもええわー て思っとつた。 キツかった。 そしたら執行猶予って。 オカンとオトン来て、泣かれて 終わった…思うたわ でもばあちゃんが一回帰って来い、 言うてくれて。 今、髪、真っ黒や。』 そんな大事な事をLINEで… コイツは…… 数少ない服を畳みながら 携帯をじっと見る。 『もし千恵の声聞いたら、 オレ会いたくなってくる 今でも飛んで行きたいくらいや こんなんでも千恵が好きやった 始めて本音を話せる子が出来て オレみたいなのを、マジで 助けてくれて。いつの間にか 側におってくれて ホンマにありがとう千恵。 マーヤママに言われた。 千恵と一緒に和歌山帰ろ 言おうおもとる、言うたら 『千恵、東京行くらしいで、て アンタがあの子に何出来るんや? しょーもない事に巻き込んで 一人前になつてから言わんかい』 雑巾投げられた。 ほんまに、その通りや。 今のオレには何も出来ひんし、 千恵は手に仕事があるけー オレには何もない。 イソコに帰っても家の醤油屋 手伝うくらいや。 醤油屋ねん。4代目や。 兄貴がやっとる。 じいちゃんは地元では有名な 名士やって、議員もしつとた それやのにオンが前科持ち なってもーた。 イソコにはもう帰れんおもてた てもばあちゃんが、他のもん には絶対言うなこんことは。 オマンら自分の息子を殺す気か 親に言うてくれて、 一から出直せ。 お前は気か小さいから、ここで ようけ働いてやり直せつて 言うてくれて。 おれ、声出して泣いてしもた。 今週末に帰るんや。 千恵に一回だけでも会いたい。 東京行く前に。 嫌やったらええんや。 良かったら電話欲しい。』 コイツ…LINEで 電話くれやと。 ほんま甘えとるわ。 千恵は目から溢れたし涙を もう拭かなんとそのままに… 手に持ったTシャツが涙で 殆ど濡れてしまった。 来て行こう思うてた1番、 気に入ってる1枚が。 会うても一緒や。 何も変わらん。 私らは似た者同士や。 半人前で世間知らずで 哀しいかな、好き同士で でも今、一緒に和歌山 帰っても何の役にも立たん また人の世話になるだけや。 それでもなんとかやつて いけても。半人前が2人で 一人前で、やっとギリギリ 暮らせる程度。 洋介は立派な醤油屋が ある。 イソコでネイルなんて 儲けられへんし。 私に唯一できる爪の仕事 はできひん。 私にも期待して応援してくれる ばあちゃんがおる。 一緒や。洋介。 私ら期待に応えて一人前や 甘えて甘えて、 じゃあ、いつまで経っても 半人前や。 『良かった。刑務所入らんで ホンマに私とママのおかげやで ウチはもう東京行くんや。 スタバの友達と一緒に。 心配してくれて、仕事 紹介してくれた。 私は爪しかできひん。 専門学校のお金も ばあちゃんに返さなあかん。 洋介も、やろ。 ばあちゃんがアンタを大事に 思ってくれて、帰れるんや 私ら引きずったらあかんねん ええ出会いやなかった。 忘れなあかん、あんな事。 あん時はなんか力が沸いて 頑張ってもうたけど、 人から見たらあかん事や そんな事のために ばあちゃんは大金を出して くれたんやないや。 だから東京でもどこでも行って もっかい働いて、頑張って 一人前にならなあかん。 ありがとう、つて お金返しても、まだ残るくらい 貯めたいんや。 洋介のこと私も好きやった。 でも、今思うたら分からん あん時、何もなくぼーっと 毎日暮らしてて、その時 会った金髪に、私は多分 暇やったんや。 だから着いていってしもうた。 この時にあった金髪が愛おしい なっただけや。 魔法にかかった感じや。 お互い、人生やり直そう お互い毎日働いて、 頑張ろう。 それでもまだ 忘れんと 会いたなったら それはほんもんや。 その時、側におる人を 好きになるのもほんもんや 洋介、ウチはアホやから、 よう分からんけど 私らは手探りで大阪で、 暗闇の中たまたま手を繋いだ それだけや。 ホンマに。 頑張って醤油作れよ。 気か小さいねんから、 サーフィンなんかしたら 死ぬぞ。 きばりや。 じやーバイバイ。』 千恵は涙で携帯が濡れて、 必死に拭いた。 でもびしょびしょになって 拭いて…… 今会うたら、あかん 東京行かんれよーなるー。 あかん気張らな。 小さなトランクに、 ネイル用品ををタオルに包み 大切に割ないよーに2枚にして包んだ。 ばあちゃんありがとう。 もっかい頑張るで。 いっぱしになって、帰るで 私は強いんやから。 愛や恋は後回しや。 バイバイ大阪
Part season2 ❺全てを手に入れるまで。 【千恵の場合】
その日ママは普通のオッサン みたいにスーツを着て ボルサリーノの帽子を被ってる お洒落だ決まっとる。 『さあー行くで決戦や!』 警察署の隣筋で私らは手を握り合った。 『洋介たとえ1年2年でもしっかり 気張るんやで、ここが正念場やで』 『千恵ちゃん2年も…‥1年て言うたやん オレ、泣きそうなってきた』 『あんな洋介、ここで生まれ変わらん かったら一生後悔するんやで。 一生体が揺れててもええんか 大将みたいに。一生取り返しがつかん 後悔をする事になる。まだ生きたいやろ』 『おう。もちろんや飛行機も乗りたいし USJも行ってない。GTRものりたいんや』 彼の背中をドン!と思いっきりママが押した 『さっさと行き、死ねへんから! わたしは昼に行ったるから安心し』 『うん。ほな行くわありがとうママ千恵』 牛歩のように歩いていく。 『早よ入れーこのアホんだら』千恵は叫んだ。 思ったよりけつの穴から小さいのー 広げとったたら良かったわ ママが舌を出した👅笑ってる。 『アンタあんなんほんまに好きなんか?』 『ママも高そうなハツト被ってるやん』 『これは気合い入れる時の宝モンや。 1番好きやった彼にもらってん素敵やろ』 『うんなんかゴットファーザーみたいや よう似合ってる 洋介もママみたいな人と出会ってて 良かったな。せめてもの救いやわ』 『千恵もや。みんな田舎から出て来たら 躓く。ええ人と出会ったら ラッキーや。あんなくされと出会った 洋介は縁がないんじゃない。運が 悪かった。でも皆んなそーや、底を から這い上がってやっと水面にまで 来て息が吸えるんや。私もそやった』 『お巡りが偉いんやない、オカマが悪 んいんやない、心は一人一人の中に あるもんや。自分を大事にせなあかん』 『でも流されてしまうねん右も左も わからんかったら。私はだいぶ流された』 『それもええこっちや。人とぶつかって 勉強すんやで。川の石もそや。流されて 岩に当たって、当たって痛い思いしして 変な形でも角が丸くなっていく人も同じ さあ、行こか。今頃泣きべそかいとるやろ 助っ人参上や』 私たちは長く細い廊下の部屋に通され 別々に事情聴取を受けた。 『君は田辺か。今何してるんや、休業中ね あの男とどうやって知り合ったんや?』 ほんまの事を言うた。嘘をついたら ややこしくしなるし、真実を言わなあかん 気がした。 『そうか。それで何も買わんかったんやな。 何故ここに何も損はしてないんやろ』 『はい。でも私聞いてたんです。後ろの カーテンの後ろで蹴られてる音や、 怒鳴られてる声。それでも彼は 私をバス停まで送ってくれて。なんや 助けられた感じもしました。あの人に』 『それで専門学校の友達から聞いたんやな』 『はい。それは詐欺やて。』 『うちのおばあちゃんは悪い人に会うたら 直ぐ警察に行きや、言われてますから』 『それはええ事やな。ええばあちゃんや あんなアイツの社長とは、言わんかな 上司?蹴つてたやつな。実はもう 捕まっとるんや。詳しいは言えんけど 悪さばっかりしててな、この場合だけ やないんや。結婚詐欺師やろ、博打詐欺 パスポート詐欺。細かい詐欺ばっかり しとる詐欺師やな。もう18年前から ここの常連さんや。君がもうちょっと お金持ちやったら結婚詐欺師を選んどる 人見て金取るカメレオン詐欺師や。 あの金髪のやつも騙されたんやな』 『じゃあ!き金髪はどーなるんです』 『そやな、それは今からミーティング やな。他の女の子何人か来とる、 根っからの詐欺師ではないまだひよこ🐥 やな』 南署を出たらもう夕方やった。 なんかめっちゃ疲れてアパートに帰った。 そのまま寝てしもうた。 ずーっと携帯がなってたよーだ。 知らない番号から着信が11件。 爆睡してたようだ。 また鳴った。 『もしもし、何してるん?捕まったか 思うたわ。うちやスタバのアカリや 『あーー灯ちゃん。ごめん爆睡してた。 なんかあった?あーあの時はありがと』 『捕まったって金髪。さっきお巡りが 来てご協力有難う御座いますって。 アンタは大丈夫か』 『うん私も警察で色々聞かれたんや 正直に話した。昨日。』 『そーか災難やったなーでも 捕まって良かったな。アンタが この間金髪ときた時、もしかして 付き合う取るんかーて思ったわ まさかあんな金髪好きなんか』 『ううん、私金髪に助けられたんや 何も買わんと逃してくれたん』 『へーええとこあるんやな詐欺師も ちゃうねんそんな事よりな電話 したんは…』 まさか私らがちょっとだけいい感じ やったこと言うだらドヤされそうな 感じやつた…好きになってしもうた なんて言うたら…。 灯ちゃんは仕事を紹介してくれた。 『今ニートやろ?うちもスタバは合間や 千恵あんたネイリストやろ?うちは メイクで使ってくれるって誘われてん 東京やねんけど30店舗ほど展開してる 大型店や。ネイリストも探してる言う てるし、一緒に行かへん?寮もあるで。 給料はオーナーとの話しで面談や。 どう?一緒に行こうや』 ありがとうちょっと考える、と 返事した。 その夜ママの店に顔出した。 『いらっしゃーい❤︎ なんや千恵かいな。お巡り 直ぐ帰してくれたやろ ウチは知り合いに当たって、昨日 店来てくれたわ.ほんま はすかしーーええ男やから 嬉しかったけど❤︎もういらん話 はえーで』 『ちやう。ママ御礼言おうと思って 私、仕事決まって東京行くねん。 ネイリストで。』 『えーアンタまだ上目指しすんか大阪 でもアップアップ息してんのにー ちゃんとした話やろな。水商売とか 無理やでアンタには!』 『まさかや!無理に決まっとるわ ネイリストや。ちゃんとした会社や 昨日、大阪支店で面接やってん 梅田で』 『あらっまあここで腐るんよりええかもな ええ事なかったやろ大阪は。 あの洋介、執行猶予ついたわ』 『ほんま良かったー。』 『あんな雑魚入れてもしゃーないしな アンタは惚れとったけど、どうなるかな 正念入れても大物にはならんけどな』 『ちゃうよ惚れてないよー、でも 良かったママのおかげやありがと』 『アンタに礼言われてもな。 ええ男紹介してほしいわ、東京行ったら 真っ先にこれ配って、ほれ』 名刺の箱事渡される。 【ミツバチ🐝マーヤ】 『マーヤ言うんや?まま』 『アホかボケナス。昌也や 蜂蜜のように甘い店、 言う事や』 『ママ、あのハツトの方が素敵やけど ごめん』 『アレはアレや。変身願望は誰でも あるんやオカマやとかやなくな 皆んな何かに変身したいやろ? アンタもちゃんと変身シーや。 アンタには目標がない!それが 干されてる手拭いみたいに フラー〜フラーーとしとるねん ちゃんとしっかり、目標決めて あーなりたい!と決めて行くんや 東京行っても手拭いしとったら また向こうでも金髪にやられんぞ』 『やられてないわー』 『ホレ洋介もアンタも根性なしや やっとけ!無駄な時間ばっかり 使いよって肝心な事をしてない アホちゃうか』 タバコをふかした。🚬
Part season2 ❹全てを手に入れるまで。 【絹子の場合】 完結
『いやだ、どーしちゃったの 絹ちゃん!真っ黒にじゃない やだああの真っ白な肌が、なんで……』 『ママ、私生まれ変わった気がする。 やっと殻を割ったひよこね🐣 今凄く充実してるわ毎日が キラキラしてる。誘ってくれてありがと』 ママが大切に大切に育てた真っ白の少女が 妬けた肌でタンクトップにジーンズにビーサン を履いてる。バレリーナにもCAにも見えない 絹ちゃん、1週間で何が貴方を変えたの… 全くの別人だ。 目眩がした。メニエールかしら? ハワイの西陽がキツイのか…… 『行ってきまーす』 『ちょっとママを置いて、ディナーは?絹ちゃん』 『今、抜群のswellがもうすぐ到着するの』 このままの格好で車のキーを持って走って行った。 swell、スエール鯨でも見に行くのかしら? 海に近寄りもしなかったあの子が。 でも弾けそうな笑顔は親ながら嬉しい 何十年ぶりだろう、あの笑顔。 エアラインに受かった時もあれほどでは 高校生の時の短距離で一位になった時だ。 やったーやったーと家で猫を抱きしめ 踊っていた。 あの子は本当は活発で負けづ嫌いで 素晴らしい足を持っている。 バレエも泣く泣くやめたが、直ぐ立ち直った。 あんな笑顔を見れるなんて誘って良かった。 キヌコは夕日がが眩しい、 仕事帰りの、沢山の地元のサーファー の中に混じり、ボードの上で座って波待ちを していた。もう波待ちも完璧だ。 もうソフトじゃなくハードのミッドレングスだ 自分で買ったサーフボード。 アラモアナショップから サーフショップに入り浸ってる。 ジルサンダーのサンダルがサーフボードに アルメリツクサンダーボルト、 乗りやすいサンダーボルトは怪我は少ない アンドレアは朝イチで入って帰ったらしい、 明日シチリアに帰る。 短く熱いバカンスだった。 今夜アランチーノでで待ち合わせをしている。 この波を楽しんだら、直ぐ帰ってシャワー を浴び、リップだけ引いて会いに行こう。 会いたい。どんな姿でもはやく。 サンセットの波は、夕日が水面を薄紫に変え 波はロングに持ってこいのメロー 沖で乗れれば永遠にスローでロングライド できる素晴らしい波がくる。欲張らず よく見分けて、バトルを2回して立った! 私ノ背中をオレンジの夕陽が照らす。 どこまでも乗せてくれるスエール。 この感覚がもうやめられない。海が私を 受け入れてくれいる感じがする。大自然が。 神さま、あなたに感謝をと空を見上げる。 シャワーを借り直ぐ着替える。 『ありがとー!ネクストトゥモロー』 急いでエンジンをかけた。もうこのまま行こう。 デニムとタンクトップで。 化粧水だけ叩き、リップも引き忘れた モアナまで十分。間に合う。 最後に行きたいと言ったアランチーノ。 ワイキキにもある2号店席に もう座っと言ってた。 車をパーキン入れ走って。 2号ではアウトのテーブル 『キヌコ!』 『ごめんねとてもいい波がきていつ一本だけ』 『すっかりサーフガールだね、似合っているよ小麦色 とても健康的だ』 『貴方のせいですからね。白い肌が チャームポイントたったのよ』 『始めて見たの時とても可憐て美しいと こんなに美しい日本人は始めてだった でも少し健康的ではなかったかな 細過ぎて白くて綺麗なアスパラガスだ』 ロブスターのクリームスープが来た。 ここで必ず注文する一品。本当に絶品。 『ここのマルゲリータはどう?貴方には』 『あー、とても美味しいよ。僕ところには 敵わないけどね。パスタをチーズで絡める パフォーマンスは粋だね』 『でしょう。より美味しうに見えちやうでしよ アンドレアありがとう、貴方に出会ってわたし 本当に変わったのよ』 『キヌコは白くても灼けてでも美人だよ。 一緒にいるとみんな振り返る。 もう少し一緒にいたい。でもホリデー 決まっているチケットも。 君との時間はハワイより素敵だった 『サーフよりも』 『それは!意地悪だなあ、サーフよりもだ』 『パレルモに帰って、サーフィンをした! 素晴らしいかったゾ言うでしょう。 でも、きっと私と出会った事は 言わないのよね』 『キヌコ……僕は…』 『貴方の様なナイスガイに彼女がいない わけないわ。どこの国にもいい男がフリー なんてことありえないなコレ世界共通ね』 フォークを置いた。 『いいの。私もハワイには何かを変えたくて 期待以上のものが手に入ったわ、 貴方とサーフ。欲張らないわ。 『キヌコ、僕は本当に君に恋をしてしまった。 彼女には悪いけど、心は正直なんだ 社交辞令なんかじゃない本気だ でも、彼女とは来月結婚するんだ。 まさかこんな出会いがあるなんて!』 『お互いさまね、私にも婚約者はいるわ』 『本当!!』 『あら女だって世界共通よ。いい女でしよ』 『あーーあのそうだったね君がフリーな訳 ないよね。』 『アンドレア私たちはガジュマルが 2人にくれたプレゼントよ。時間。 素敵な時間をハワイで過ごして、と くれた時間。オプションのサーフィン付き 素晴らしいバカンスを過ごしたわ。 まるでこれまでの私はここに捨てていくわ アンドレア貴方のおかげよ、ありがとう』 お互いキャッシュで払い、ここで終わりにしよう と私は言った。これ以上はダメよ。と。 離れ方そうに手を握ったけど、そつと離した 私たちはよく言うバカンスだけの恋人たち 一緒にいても辛いだけ。 彼は何も引いてない唇にとても力強いキスをした ヒューーと周りから茶化されても、長い長いキスを 振り返りモアナへと歩いて行った。 私は、喉の奥がキツくしまってもう少しで 涙が出そうなのを、ぐっと噛み締めた。 海を見た。明日の風は強そうだ。 朝イチには乗れるだろうか、 早く寝なくては。車のキーを出した。 帰ったらママが白いドロパックをしてる 『絹ちゃん、ちょっとテイツシとって』 まるでロボットみたいな動き…に 笑ってしまった。 ママ、瞼までしたらダメよ! 目に入っちゃうでしよう。 大笑いしてしまった。 エビアンを持ってラナイに出たら 満点の星空。 いつからこんなに笑えて、泣いて、 私はいつから感情を表に出すよーに なったのだろう。 アンドレアのひとときの恋。よくある パターン。でもこれまでと違い 動物的に彼を求めた。あの夜。 私はこれまで人形のようだった。 自分を人形のように心をオフにして オンにしてくれたのは彼と サーフィンだ。 全てのハワイの神に祈ろう。 ガジュマルの木にも ありがとう私に素晴らしい わたしをくださって。 ありがとう。 飛行機が上昇してを飛んでいる アンドレアありがとう 飛行機に向かって投げKISSをした❤︎ アンドレア貴方は幸せなウエディングを。 わたしはフリーコレから幸せを見つけるわ。
Part season2 ❸全てを手に入れるまで。 【絹子の場合】
ガーデンモーニングをひとり 食べている時、 アンドレアが大きく手を振っている 本当に‼️ 無理、妬けてしまう。 『グッドモーニング、キヌコ 素晴らしい太陽、シチリアは 雨多いです。ここはずっーと 晴れてるね👍 友達のショップに電話入れてます。 用意してレッツゴーです。 早く、早く待ってますから』 どうしよう。とりあえず水着だけ着て 帽子……サングラス、アネッサ。 Macのピンクを軽く引き、 大きめのサングラスをかけて 髪を下ろして首が灼けない様に。 その上からスカーフで巻いた。 アンドレアは車に腕を出して 嬉しいそうに歌を唄ってる。 リズムをとりながら 『キヌコ早く、いい波が来てる ホラあそこの山の下の方、 ダイヤモンドヘッドの下ね』 口笛を吹きながら、全開にした 窓を閉めたい。 クーラーの意味がないじゃない。 動物園の手前で車を止め、 手を繋いで来た。 キヌコ歩くの遅いね、笑いながら 『hey、グッドスネールね! うーんサイズはSかな はじめまして僕はケイです日系です 日本語喋れます。大丈夫。 今日はビギナーには最高の波です』 『いえ、私着いてきただけなんです 彼が勘違いして……』 アンドレアは板にワックスを塗っている そしてもうシャツを脱いで。 筋肉質な背中を見つめてしまう。 ケイがアンドレアに何か呟いてる。 アンドレアは振り返り 『いけないキヌコ。社交辞令はノー❌ 嫌いだと言いました。キヌコもしないと。 僕たちは昨日あの木の前で約束したよ。 ダメです。健康だと言いました』 『違うわアンドレア、海が嫌いと 言ったの』 みんなスタッフも、ケイもアンドレアも 大笑いしている。 『海が嫌いな人ハワイに来ないね』 さあ、と、ボートの前に行き、 『このサイズで、ビギナーはコレね ソフトボートね安全です。 軽いね、乗りやすい👌』 ちょっと待ってよー これじゃー私が嘘つき女みたい この肌を見てわからないの みんながみんな海好きじゃ ないわよ‼️ モルディブとここは全然違うの 爪を噛んだ。 ヤダ、もー。 アンドレアに嘘つき女扱いされたくない 社交辞令でもない。 私はガジュマルにそんな お願いしてない。 ただ、固定概念を変えて下さいと、 そうお願い……を。 もしかしてーコレー! 早くキヌコ行きますー! もうビーチに走り出したアンドレア 『大丈夫キヌコ、私がサポートします。 必ず乗れます、波に 大丈夫怖がらないで』 『怖くありません。ラッシュ貸して下さい 貴方がきているそれ、貸して下さい』 キヌコはナメられるのも 根性がないと言われるのも腹が立った 幼少期から続けているバレエ🩰 足腰には自信がある誰よりも。 その辺のチャモロ人より。 鍛えるから仕事も出来ている。 高校では陸上選手でもあった。 ナメないでよね。怖い? 馬鹿にしないでよね! アネッサを塗ろうとすると ダメです.、日焼け止め ハワイは禁止されてます。 海に有害なのてす。 そして滑ります危ない。 カーーっとなったけど もうどうにてもなれ! ラッシュを来て日に当たりながら 歩き出した。キツイ紫外線! 後ろからボートをふたつ持つケイ 太陽サンサンの下で、 ボートで練習させられた。 ここでこうです、そう、 上手ねキヌコグッドです👍 もう半分ヤケクソになった。 行きますねー ケイが板に乗りスイート沖に向かった。 キヌコは軽い方のボードに乗り、 とりあえず腕を回した。 ケイがしている様に、 進まない、全然 ケイは振り返り苦戦してキヌコに自分が 足に巻いてるブルーのゴムを手に握らせた すると、一気に沖の方まで出てきた。 次々くる波はそれほど高さはなく、次の波も 見える。 ステキだー。キラキラ水面がしている 私は上手く浮いている。ボートに乗って。 ダイヤモンドヘッドが直ぐそこにある キヌコーコレグッドワン、ダウンして パドルして、思いっきり、 立って!! ガムシャラにバトルをした ボートの後ろが浮き上がった瞬間、 立った。 立った。ボードに立っている。 ライディングしている今……風を切って、 次々くる波が軽い彼女を押している。 バレエでついてるバランス感覚と 身体の軸がボードと一緒に波の上を 滑っている。 なんと言う開放感。まるで空を飛んでる様だ。 頭が真っ白になった。 アドレナリンが出ているのが自分でも わかる。ステキーー。 キヌコ、アンドレアよりセンスあります。 何かきたえてますか? 女の人、初めてで1本目では立てません 凄いですキヌコ。みんなに拍手された。 アンドレアは喜んでビーチでキヌコを 抱きしめた、凄い奇跡だー ガジュマルの神よありがとうーと。 空を仰いだ。 私は始めてのサーフィンに興奮し過ぎて、 何本もトライしたが、少し上がってきた 波のサイズには勝てなかった。 それでも最高の気分だった。 明日もしたい!そうケイに言った。 『海嫌いじゃないなかったですか』 笑われた。 『サーフィンはまあまあね』ウインクした。 くたくたになりマンションに戻った。 ママからメッセージがあった 『絹にやんここは美しいけど何も無いわ 明後日には帰るわね。』 シャワーを浴びているアンドレア。 アンドレアを好きになっている自分がいる。 おまけにサーフィンも。 彼に社交辞令はいらない 正直な自分を見せたい。 メイクもしない私を。 その夜ベランダでフランスパンを齧り ワインを片手に、熱いキスをした。 身体も妬けて火照ってる。 彼にクリームをたっぷり塗ってもらつた。 身体の隅々まで。 私たちは愛しあった。 長い長い夜をゆっくりと時間をかけて 楽しんだ。 知らないうちに眠ってしまった。 体力を使ったのか 久しぶりに熟睡をした。ぐっすりと。 昼頃まで. テーブルのナプキンに Ti vogghiu beni. Kinuko💋 愛しているキヌコ。 又、あの波に乗りましょう 待っている。 私はコーヒーを飲み、少し妬けてる 腕を見た。 ベランダで海を見ながら呟いた 今日の波はどーかしら。 彼を愛してしまった。 別れるのはこわい。 もうすぐシチリアに帰るだろう。 もしかしたら涼平よーに 婚約者がいてもおかしく無い. 彼女がいないことの方がおかしいのだ。 たとえ、ハワイだけの彼女でもいい。 今か全てだから。 今が幸せなら満喫しよう。 キヌコは水着に着替えて、サングラス をかけ、短パンを履いた。 車をダイヤモンドヘッドの下まで 走らせた。 今日は乗れるだろうか。 絶対、乗ってやる最高の1本。 こんなに満ち足りた気分に なるなんて。 モアナのガジュマル願いを 叶えてくれてありがとう❤︎
Part season2 ❷全てを手に入れるまで。 【千恵の場合】
『何、サクって……』 帰り道、千日前を歩いてる 洋介が呟いた。 『オマエに迷惑はかけん 自業自得や陶酔なんかやない 騙した女にも悪い思うとる あの子らええ子らやったのに』 『その子ら、連絡つかんの』 『うん、もう電話も出来ひんわ うちは取り立てやが別におって、 アイツのダチやけどややこしい奴 や、そいつが追い込んでる。 可哀想な事した。』 『オレもな、あいつと一緒の 店おつてん。ホストな。 そこで知り合うたんや。 最初から好きやなかった。 店でも年だけいって偉そーに オーナーと昔からの知り合い らしいで、自分がオーナーや とか嘘言うたり若いのボコボコに したり、嫌われてたわ。 売上も大した事ないから首になって そん時オレに新しい事業始めるから 一緒にやろうつて。もう1人付いてくる ホスト向いてなかったし真っ当な 仕事したかったし、仲ええ奴も… 一緒や、セブ島行ってしもうたけど… 涼もするんやったらって俺もて オレのせいや皆んな。』 『今からスタバ行かへん?』 『えっなんで、もう金ないわ 最後の一枚やったし』 『うちが持ってる。 それに行きたいとこもあるし 付き合うてや、最後やろ』 『うん……ええけど』 スタバに行ったら、彼女は いつもの様にカップに注いでる 私はラテとキャラメルマキアート 頼みテーブルに座った。 下を向いてマキアートを飲んでる 『あんな洋介あの子おるやろ、 あの頭が緑の子。あの子ウチと 専門学校一緒やってん。ウチも 知らんかってんけど、ここ来た日 私を見て首を、こう振ったんや フルフルって。 それで思い出したんや、一緒の クラスや、って。 首振ったん気になったしええ子やったし もっかい来たんやココに。 そしたら、あの子…… あの男はやめ時。なんか買うてないか! って。あんたのやり口をここで チェックしてたらしい。 知らん顔してたけど、私を連れて来た時 どうしよーか思って凝視してたんや って。ええ子やろ。へへっ。 それで目があった瞬間フルフルって』 『俺はここでも厄介もんかいな』 『もーな、警察に目をつけられてた って』 『俺が?…』 『うん、何人か警察に行ったらしい クリーニングオフも出来ひんし 怖い人につけられてるって』 『あそこバレてんか?』 『そーや。この店に来たら 電話くれるよー警察も来てる アンタは指名手配や。』 『マジかー。最悪や 前科つくやんけ』 『アホか!前科より マグロがええんか! アンタのした事はマグロ 乗っても水には流されへん マグロ降りて前科setと 前科だけ単品やったら 単品やろ』 『マクドみたいにゆーなよ』 『可愛く言うてるんや。 アンタは灯台下暗しや、 ホンマにアホや』 『わかってるわ 何べんも言うなや』 ガックリ俯いてる。 顔を上げられへんわな。 『行くで、』 『何処?えー警察もぉ いきなりですか』 『そや一緒に行ったる。 私が承認や。 アンタとは赤の他人や 私が承認したる。 あの男にどつかれてた ケツパンされてたって 脅されてたんや、 セブ島行った子も アンタが承認や。 証拠はある 刑は軽いはずや。 1年くらいやけど 調べたら…それでも マグロよりマシやろ』 『オマエ調べてくれてたんか なんてや騙そうとしてたのに』 『しゃーないやろ 和歌山や。私も洋介の訛りくらい わかるわ!カッコつけてカス』 『千恵ちゃん…… ありがとう。俺生まれ変わりたい もう死のー思うてた。 マグロなんか無理や俺気い小さいねん ホンマにイソコで溺れて……』 『もう1人会うんやこれから ついてきて』 『えつ、うん。どこでも着いてく』 千日前を通り過ぎて、ラブホ。 通り過ぎて、家具通りまで歩く 30分ほど歩き白いマンションの前に 1015室。 オートロックもなく、そのまま ピロローーと玄関の音が鳴る。 かわいい呼び出し音。 はあーーいい、と顔出したのは サイのおねーさん。 腕に👠のタトゥー。 『いらっしゃいどーぞ』 『なんでママ……』 キラキラした金色の糸のカーテンが 素敵。大きいヒールのオブジェ👠。 『どうしよーて、彼女が店に。 こないだな。泣きそうな顔して…… 前科つくて泣いて…酒飲んで へべれけなってここへ連れて帰って 次の日吐きたおしてめっちゃ迷惑』 まだゲロ臭ーベランダのドアを 開けた。タバコを吸って、吐いて 『洋介が何してるか知っとった。契約取れば 檸檬歌ってな。キツイんやろうって。 アイツの噂は直ぐ耳に入るし歌舞伎町 小さな村や。ホンマもんもよーけおるから 飛び火は困る言うて警察に通報したんも あの人らや。まだマシや 素人がしょーもない詐欺して、車ごと 海に沈まんと。 ケチ草い連中がオレオレ詐欺に手を貸せ て、アイツを脅してセブ島ゃ もう手配が入ってるから直ぐ捕まるわ。 アンタもな。 洋介を見た。 『まあ1年てとこやろ 期間も短いし脅されてたんはホンマやし 私も証言したる。 店に怒鳴り混んで来たこと。 やり直せるアンタはまだひよこや🐥』 『灯台下暗しつて、ママことか…』 『ママはな、昔、お巡りさんや』 『えっ、えーーつ。』 『言うたら証言せえへんで 今更こんな格好で古巣に 行きたないわ。 でもアンタは正念まで腐ってない よーけ見てきたカスばっかり。 世の中弱いもんが食われるよう なってる。弱肉社会や。 けどアホやけどええ奴や洋介。 じいちゃん死んで大阪出てきて アホして。 もっかいやり直し』 タバコをビール瓶に落とした。 セブ島捕まる前に自首しなくては 先に自首するのが1番の得策や。 洋介、今やで根性いるんわ。 大丈夫や。 わたしがおるけ。 一緒におるけ。 良ければずーっと一緒におるけ。 −
Part season2 ❶全てを手に入れるまで。 【千恵の場合】
洋介と出会って 千恵は変わった。 あの夜、ヘベレケに酔ってしまった彼を 引きずるようにアパートに入れた。 殆ど寝ていた洋介は、布団を被せたら そのまま死んだように寝た。 大家さんは早い時間からボランティアに行く。 なので日中は大丈夫だ。夕方に帰ってくる から、それまでに帰ってもらおう。 朝起きた洋介は、ただ吐いた。 水を渡し、戻し、飲み、戻して 2時間くらい経ったころ、 『すまん、ありがとうな よう覚えてないねん。 なん変な事してないよな』 『大丈夫や、気分どないや 全部吐いたらマシになるで』 『おう、ありがとう。 じゃーけど狭いなあ ウソごめん。』 『ええ人やねん大家さん。 隣やから帰って来はる前に 帰って欲しい』 『うん、直ぐ出て行く 世話なった。ありがとう』 洋介は出て行った。 そして、1週間後、LINEで、 お礼させて。ミナミのココに来て。 5時頃。 何処やろ、坂町? 5時前に着いた。 待ち合わせの時間には いつも早く行ってしまう。 時間を守らんやつは 金にも大雑把や、言われてる。 ばあちゃんの言う事はいつも正しい 暖簾をかけたとき、洋介が来た 『おう早かったな。 時間キッチリそうやもんな 千恵ちゃんは。 ここ、俺の連れがバイトしてんねん 安いけどまあまあ旨いねん。』 『いらっしゃいー、アレ なんや女連れて、珍しー』 『女ってちゃうねん、 お世話になつたから ここで旨いもん食わしたかってん』 『この子千恵ちゃん、田辺出身の ネイリストさんや。 今日のオススメ持って来てーや』 『オマエ偉そーに金あるんやろな』 『あるわ!ホレ』 1万円を渡した。 『めっちゃ旨いもんくれや』 『お任せ下さい、ちょっと待つとれ』 『洋介、和歌山なん』 『あーまあいいずらかってん イソコや。あの波乗り多いイソコ。 ヤンキーかサーファーしかおらんぞ』 歯を見せて笑った やっと笑った。 良かった…・ 『色々大阪来てからあったんや 辛い方が多いけど、えーかっこして出て来たから 帰れんしな。』 『歌手なろうとしたんやろ』 『そんな事まで言うた、最悪や』 苦笑いして生ビールで乾杯した。 嫌な 思い出しかないわ、大阪。 『あの高島屋で声かけたんわ、そんな釣ろう思うてたん ちゃうねん。なんかキョロキョロしてたやろ。 声かけた時、直ぐわかってん一緒や イントネーションでわかるやん。 ええカッコし過ぎたわ。オレ』 『あのチーフの人から辞めれたん』 『まあ売上も出来んかったし、事実上は解雇や。自主的な けど何人か払わんと逃げた子らおるから払わんといかん。 契約にも拇印押しとるし そんな暗い話はええねん! ここの鯛めしめっちゃ旨いでレバー焼きも ようけ食べてや』 『大丈夫なんお金?』 『まあ最後の晩餐や。 居酒屋やけど。ごめんな』 『はいー!レバーもやし、すまんのう。こんな汚い 居酒屋で、コレは奢りのマグロや!冷凍ちゃうで オマエイけてるんか?ええ噂聞かんど』 『まあなちょっとツマ付いただけや ちょっとミナミ離れるけどな』 『どっか行くんか? ハワイか沖縄か』 『アホぬかせ。漁船や。 毎日新鮮なマグロ食えるチューねん』 奥のカウンターから濁声が叫んだ 『やめとけ!あんなん乗るもんちゃうぞ 逃げろ、ウソ言わん死ぬど』 『おっちゃん、乗ったことあるんか』 『おーー昔々や大昔な、ここへ出てきて オマエと一緒や、偉い目に会うたわ あんなん地獄よりエグいぞ 毎日寝れんぞ。食べられへんしな まあ半分くらい死んだわ。 そのままサメの餌や。簡単や 海に落とすだけやさかいな』 『凄いやんけオヤジ知らんかった そんな武勇伝。やるなー』 『アホか一生の恥じゃ。 忘れとうても今でも魘されるわ ねーちやん止めたり彼氏死ねで』 『なんで、そんなん乗らなアカンの あの人に言わられたん?』 『まあ金ないし、クジ引いたら マグロや。後は肝臓腎臓set 後セブ島や』 セブ島……フィリピンの 『一瞬ええかな思うやろ、 最悪らしい、この間遅れて来たツレ なセブ島引きよって、喜んで行った わ片道チケットで。海なんか見た事 ないて、雑居ビルに朝から晩まで 電話しまくっとるんや。 怖い人に囲まれて、帰ってくる時 は手鎖かけられて。それでも 帰りたい言うてるわ。日本の 刑務所に帰りたい言うてるわ 2回入っとるからマジやろな』 『でもマグロ漁船てどのくらい 乗るん?』 『1年や…直ぐや1年てたぶん』 『あかんど、死ぬど 3ヶ月で3割半年で半分や』 濁声が魚捌きながら言うてる 『なんで死ぬんです?飯つき でベッドもあるし色んな国に 行けるらしい』 濁声は手を止め腰を伸ばした。 こっちに歩いてきた時 足が片足ないのに気づいた 『コレな、船の網に引っかかってな 引き上げる時巻き上げるんや 台風来てたから無茶苦茶や とりあえずしがみついたら 網やって、足をバッサーや。 もう少しで海から捨てられる とこやった。船の上では俺らは 人やないんや、ただの奴隷や オマエこの年でもまだ地面が 揺れてるんやぞ あの揺れが船の揺れが 身体に染み付いてるんや 生きてても地獄や』 シーンとなった。 『やめ時!アカン絶対! そんなんマグロアカン』 私は涙が止まらんかった。 多分その時はもう好き やった。 そんな始めて好きになったのに それやのに1年も 死ぬかもしれん、て あんまりや。 あんまりやそんな事。 『幾らあんの借金?』 『ええねんそんなん。ここで 旨いもん食べて、オレのせいや 誰にも迷惑かけんと死んでも しゃーない。ばあちゃんがよう 言うとった。人様だけには 迷惑かけるなつて。 でもあんな奴の口に乗ってしもた アホやからや、頭あったら 真面目に働いてるはずや どーせいつかはマグロや。 これからもアホやねんから』 泣いてる…… バツコーン!! 横にあった大きなへちまの置き物で 思いっきり頭をど突いた。 『痛つーたいやんけ!』 『アホに何言うてもあかんけどな 自分でをアホ言う奴がアホじゃ オマエはサメの餌でもええんけ 一回下手打ったからって 情けなーそれは自己陶酔や、 ばあちゃん泣きよるわ オマエがマグロで死んだら 死ぬんやったらイソコで 死なんかい!』 『よー言うたねーちやん その通りや。どーせ詐欺師や そいつをお巡りに売らんかえ』 おっさんは彼の肩を叩いてる 『私に任せて。作があるけ』 みんなぽかーんと口を開けてる。 任せて、私に。 私って強い。 こんな強かった… 作って、ないけど
PartⅫ 全てを手に入れるまで。 【絹子の場合】
白い麻のワンピースを着て、 コンバースを履く。 ボッテガのパキラートを斜め掛けに。ラフに。 ガジュマルの木の辺りを探した。 『HEY!こっちですー』 テラスバーではなく、テーブルに座っている。 『急にありがとう、嬉しいです』 『いいえ、私もなんの予定もなくて 母はハワイ島に行っちゃって。』 『ハワイ島綺麗ですね星。一度だけ行きました。 ヘリで噴火や、山の上まで星を見に素晴らしい』 『ええ星は素晴らしいですね。寒いですけど』 『キヌコは行かないのですか?ハワイ島』 『ええゆっくりしたいだけなんで、する事 ないですけど』 『今日、サーフィンをしました。 感動しました。 波が大きくて落ちそうに。でもグイグイ 泳いで、今だ!言われてボードに乗ったら シューーって乗れました。凄く凄く楽しかった 絹子もやりませんか一緒に?』 『とんでもない!私にサーフィンなんてとても』 『なぜですか?女性も乗ってました 絹子も乗れます!凄い感動します』 『肌、妬きたくないんです。 赤くなってしまうし紫外線怖いんです』 ハテナの言う顔をしてる。 首を横に曲げて、全然気づいてないよーだ 私の肌を無視した人は初めてだ 『キヌコ、身体弱いですか?』 『いえ、健康です。海は嫌いで……』 『海が嫌い?…そんな人始めて会いました』 この白い透き通った肌を保つのに、 どんな努力をしてるのか言ってやりたい 幾らかかるのかボディクリームに エステにフェイシャルは特に気を 使っている。信用している人にしか 触らせない。月に日本で使うエステ代を 聞いたら、この人もっとびっくりするだろう ゆっくりステーキを切って食べている。 食べ方は綺麗だ。 『あまり良くないビーフですね。 ロブスターも新鮮じゃないのにこの価格は 高すぎますね、ホテルだからね』 そう言いながらも、綺麗に平らげた。 嫌味もいやらしく感じない。 確かにここの値段は高い。 海風の香りの雰囲気代に、TAX、チップ 2人で5万はする。 アンドレアはかなりの家柄かもしれない。 ここで食べる人達は味よりモアナバルコニーに 価値がある。軽々しくこの席に座らない。 イタリア人は味にうるさいが、安くても美味しい ガーリックシュリンプを屋台で買って食べる。 一食5万は使わない、たとえデートでも。 限られた裕福層しか。 シチリアで裕福層と言えば、よく聞く ゴットファーザー。 シチリアにはマフィアが多い。まだ廃れてない。 マフィアの息子には見えない 人はわからないけど…… 『アンドレア、お仕事は鉄板を振ってるの』? 鉄板を振る真似をした。 『僕は店のマネージャー。店を見てます。 ゲストを席に案内したりします。 ここほど大きくないです半分くらい』 かなり大きい 『祖母の祖母の代はテーブルが3つでした。 どんどん大きくなりました。 父は別の仕事をしてます。 なので僕が継ぐ事になりました。好きなのです』 『行ってみたいわーパレルモ。 1度だけ行ったことがあります。 小さな闘技場を見たりアポロの神殿を。 でも街中がとても好きです。 皆んな昼からワインをずーっと』 『シエスタになると皆んな仕事やめます。 私だけね働いてるの。お陰で店は 嬉しい限りです』 『昨日、結婚した花嫁、昔の恋人でした。 来たくなかつだけど、みて欲しいと ドレス姿を、女性て分かりません でも絹子と出会えてとてもラッキーです』 『あらありがとう。私もです。』 『本当ーですか日本人社交辞令ばかりです 絹子も社交辞令得意ですか。シチリアに 社交辞令ありません。嘘は嫌いです』 『アンドレア席を下に移しません? あの子ガジュマルの木、願えを叶える とても有名な木です』 『おーあの木は空まで伸びそうですね。 大きくて驚きました。ここのシンボル』 『そうです。貴方の願いも叶えてもらったら いいです。』 私たちはバーに移動した。 今日はバンドがなくて良かった。 少し煩くて話が聞こえないのだ。 『僕は運命を信じています、 絹子は? 僕はきっと絹子のような流暢に英語を 話す人、外交官か通訳の人、CAさん。 当たってますか? 僕は日本のワビサビが好きで勉強しています。 日本に行ったのもワビサビを食べるためです。 シチリアにはない、生で魚を食べませんから でも生でも美味しいので焼いても美味しいはず』 『アンドレアはそれはワサビです。緑色のお寿司 に入ってる』 『そーです!ワサビ。とても辛いけど不思議な味 シチリアには唐辛子の辛さしかない。ワサビを 使ったパスタやサラダを作りたいと思っています。 ワサビとチーズも合うと思うのです』 真剣に、訴えるように話す彼、涼平と違い 何か力強いパワーを感じる。 私に訴えたところでワサビは調達できないが 熱のこもった彼に大きく相槌を打っていた。 『そしてみんなの驚く顔が見たい。きつと 天才だーアンドレアというはずです』 瞬間、立ち上がった! 椅子が後ろに倒れた。 横のハネムーンカップルが引いている 『すみません、興奮してしまいました』 デートでこんな話をされたのは始めてだ。 仕事の話なんて誰もしない。 興味ない話をしなら失礼だと思ってる 勿論、退屈な話は嫌いだ。 でも目の前の彼は、とてもカワイイ 天然記念物のよーだ。 きっと感情で生きてるんだろう。 羨ましい。 国が違うと、全然違うんだなぁー性格て。 あんな風にコレが欲しい! と言ってみたい 私には足りない何か。 それは本能だ。 本能から燃え上がるような何かがない だから直ぐ別れたくなるし、 本気でもなくなりどーでも良くなる。 固定概念が強すぎて、頭がガチガチなのだ。 この頭を、凝り固まった頭を割りたい。 そしたら何か見えるかもしれない 『ハワイの味は好きではありません。 でもせっかくここにいるのだから 絹子楽しみましょう!絹子の 笑う顔が見たいです。 明日一緒にサーフィンをします。 決めました。します一緒に。 ガジュマルの木。明日絹子とサーフィン する事、よろしくお願いします。』 おじぎをしている木に向かって。 また笑われているが 『よしっ明日の為にも早起きです。 今夜はここまで、おやすみなさい絹子 必ず来て下さい待ってます』 グンナイっ又もや首にキスをした❤︎ ありえないサーフィンだけは。 “”
PartⅪ 全てを手に入れるまで。 【絹子の場合】
ママはワインを片手にもち じーっと見つめた。 『そーねー難しいかもよ、絹ちゃんは』 『なんで!どーしてよっ』噛みついた。 『うーーーん、ママが絹ちゃんのお年頃の時 もうパパ一筋だったわ。凄くお爺ちゃんに 反対されたけど、もう決めてたもの。 パパとしか結婚しないって。 他の男の人はみんなカボチャに見えたわ 絹ちゃんはカボチャもトマトもマルゲリータも まだまだ美味しいものが世界にあるって 思っている感じがするなぁ…』 『だってそうじゃない。あるわ。 世界中には五つ星が沢山あるんだもの』 『そう、それ。五つ星を狙って 世界を行き来している絹ちゃんには 結婚相手じゃなく美味しいものを 探してるじゃない』 『だから、外のエアラインに 乗ってるのよ』 『でも、もう4年も乗ってる…』 『出会いはない訳じゃない。 一途になれる人がいないの』 ワインを一気に飲んだ。 『あの涼平て人。 家に来たわ。もっと前から お父様が調べてたのも知っているわ うちも一応旧家ですもの、そんな大雑把な 調査されたら直ぐ耳に入るわ。 失礼だ、パパは怒っていたけど、 涼平て人と話したら、いい人じゃない。 シンガポールで事業なさって、 私たちとはスピード感が違う暮らしを されている。競争社会の中で これから彼が先頭に立ってまだまだコレからの 戦場がある。 けども一緒懸命守ります、頭を下げて。 今は、絹子さんに見向きもされてないんです あの香港での話を聞いた。 電話にも出てくれないけれど、 絶対絹子さんと結婚したい気持ちは変わりませんて』 『信じられない…家にまで。そんなところが嫌いなのよ』 『彼はいずれ決められた人と結婚するでしょうけど 絹ちゃんに彼の気持ちがわからないよーじや 結婚は難しいわね』 『嫌よーママまでそんなふうに言わないで』 『ゆっくり休みなさい。焦らなくても シングルも面白いわよー』 『ひどい。もっと励ましてくれるかと思った』 『まあハワイを楽しみましょう。娘のイライラには 付き合うつもりは無いから、好きなとこに行きなさい。 少しお休みしてもいいんじゃないお仕事。 好きなだけここにいてもいいわよ ママは明日からゴルフ、それからハワイ島に行くから』 『えーーいないの』 ーひどいー 頭を空っぽにして、少し休憩しなさい 壁にぶつかった時は 反対を向いて歩き始める。 壁に抜け穴なんて探さず コレも運だと諦めが肝心 そして仕事もいいけど、人をもてなすには 余裕が大切。それは今の貴方にはないわ。 休職して、頭を解放してあげなさい。 詰め込み過ぎてパンクしちゃうわ。 頭も、その身体も絹ちゃんのだけのモノに 見えるけど、違うのよ 絹子という身体に鞭を打ってる、絹ちゃんは。 優しくしてあげないと、心も錆びてしまうわ。 身体を労り、エステでもして、頭もスッキリして もう一度、味覚をもとに戻しなさい。 優しい味覚を、少しづつ。大切に味わうの。 焦らずに。ゆっくりとね。 気づいてないでしようけど 眉間の皺、クッキリ入ってるわよ ママは寝室に入っていつた。 以外と気づついた。 結婚は難しい。私には。 焦ってなんてない。 ママの結婚が早いだけだ。 言い訳を作りながらベッドの中で思い出す。 涼平…あれからお母様が来てから連絡はない。 私は捨てたつもりでも 捨てられたのかもしれない。 もうすぐ29。 何が欲しいかわからない 本当に好きな人もいない こんな孤独を味わった事もナイ。 ベッドがキングて広すぎるんじゃない。 サミシイ。 明日から何しよー やけたくないしプールも嫌い。 ゴルフはもっと嫌い。 PF80塗ってアラモアナを偵察しよーう。 新しいジルサンダーのサンダル欲しい。 DIORの香水、完売してたのも欲しい。 欲しいもの、食べないものは 沢山ある。 世界一のディナーも行ってみたい。 欲張りに育ったのは、私のせい!? 灼けないようにしないと。 何しにハワイに来たのだろう よく朝、パックをしながらラナイで ワッフルを食べてた。 携帯が震えた まさか涼平だったらどうしよう? 番号は知らない番号だった。 耳に当てると、陽気な音楽が聞こえてくる。 『キヌコさん、アンドレアですね、僕は 昨日、結婚式が終わって、ホテルにいます。 良かったらディナーでもいかがでしよう? ホテルの名前はモアナサーフライダー です。とても素敵なホテルですね』 メッセージに切り替えた。 急に話せる相手ではない。 感じが良かったアンドレア。 彼女とは来ていないのか。 どうせ今日からなんの予定もない。 食事、行こうかな。 ワイキキは煩いから嫌いだけど、 アンドレアとなら楽しいかも。 折り返しボタンを押した。 直ぐ、時間を提示された モアナサーフライダーに7時に。 大きな木の下で待ってます。 あの大きながジュマルの木。 モアナのトレードマークだ。 あの木の周りで音楽を聴いたり、 マティーニを飲んだりするのが ハワイの一つの観光スポットになっている。 きっと結婚式はモアナで。そのまま 宿泊してるのだろう。 白い貴婦人と呼ばれる最古のホテルだ。 ハレクラニよりも好きだ。 いいかもしれない、偶にはモアナサーフライダー。 ガジュマルの木には神や妖精がいると言う。 今の私を癒して欲しい。 ガジュマルに会いたい
Part➓ 全てを手に入れるまで。 【絹子の場合】
『なんだか。 ご機嫌が悪いのかしら絹ちゃん』 『ママ、どーしても聞きたい事があるの。』 私たちはパパの出張に合わせて、ホノルルで 待ち合わせをした。 ママはこちらのお友達に会う約束があったらしい。 私は……とうに限界の一線を超えた気持ちに もうママしかいないと思った。 このモヤモヤしたイライラした気分。 友達にも話たくない失態だ。 やけ酒もいけない。肌に悪い。 あの夜、温泉に入り、ママの声が聞きたくなった。 部屋に戻り番号を押すと、出ない……珍しい。 朝明ける頃に震えた携帯。 『ごめんね、今朝かしら? ホノルルにいるのよ。パパが忙しいから ひとりで来ちゃった。』 ふふっと笑ってる。 私は直ぐチケットを取り、その日に便に乗った。 こういう時は便利だ。何かと融通かきく。 久しぶりに日本のエアラインに乗る。 エコノミーでも充分綺麗だ。 海外ではあり得ない清潔さ。ツアー客が煩いが 『お客様、お静かに願えますか?』 と、丁寧過ぎる応対をしている。この国 の人達が、大人しくしている訳はないのに。 ウチのエアーではツアーはとらない。 特に安価なチケットのツアーは取らない。 まるで修学旅行だ。 何が食べないといけないかのように食べる 飲む。平気でカップヌードルを湯をくれと、 免税店で買ったボトルを開けてソーダをくれ と言っている。 礼節とか、遠慮という語源がないのか 全くもって煩い。今1番欲しいのは耳栓だ。 新作のジルサンダーのサンダルより 耳栓が欲しい。 取りに行こうと腰を上げると、 隣で眠っていた男が目を覚ました。 sorry。 米人ではない発音。 やめて腰を下ろした。みっともない。 あまり動くのはよそう。 『失礼ミス……』と指を露骨にみる、 『何か、Mr.?』私も見返した。彼は 凄い笑顔で話かけてきた 『エコノミーには似つかわしくない貴方は、 日本人ですか』 『ええ、そうです。貴方は、イタリアン?』 『おおー素晴らしい。シチリアです』 『ハワイへはお仕事ですか?失礼ですね 個人的な事を。僕は友人の結婚式に 呼ばれまして』 『私は母とバカンスです。母は一足先に』 『とても美しい英語です。大学生ですか?』 『いいえ、仕事を持ち4年目なのです。』 『ごめんなさい、凄く若く見えたもので。 日本の方はとても若く見えます。 静かでヤマトナデシコですね』 なんとキレイな目をしているんだろう。 私はエメラルドより栗色の瞳の色が好きだ。 『アンドレアと言います、よろしく』 『キヌコです。はじめまして』 私たちは深夜便の中、小声でお喋りを 続けた。 眠りたくても無理だと、お互い諦めたのだろう 宴会のような盛り上がりに、もう打つ手はない。 こんな時は自分で気持ちを切り替えないと 時間のロスだ。 付いてなかったと、割り切る方が早い。 毒ついても何もいい事はないのだ。 お互い付いてない者通し、楽しい時を。 なんでもない社交的な話を続け、 お互いにシングルだと。 家族思いだと、アンドレアは家業の イタリアンレストランで働いてると ウチのマルゲリータは世界一だと 名刺をくれた。 パレルモ。 素敵ない街だ。 オリーブ畑が広がり、海に囲まれた 魚介が美味しい。ワインを昼から飲む 人達。人生を愛とワインで楽しむ人達。 シンプルで子供のような男たち。 わかりやすく、女が好きな人達。 そして街から離れる事のない人生を 送る。 大家族でサッカーを見ながら。 私は好きな国のひとつシチリア。 きっとブランドなど気にせず、に 暮らせて、美味しいもので太るんだろう 毎日ばパスタでチーズとワインで。 それって幸せなことだろう。 シートベルトの灯りがつき、下降して行く 相変わらず暑そうだハワイ。 カハラば涼しいだろうけど、ワイキキは避けよう。 アンドレアはスーツケースも持たず、 そのまま又会いたいね、と首にキスをして 去って行った。早足で。 きっと彼女が待っているのかも。 後ろにいたツアーは私を通り越して走って行く。 いつも急いでる人たち。 ワイキキはだろうからもう会う事はないだろう。 ジケツトの中でこっそり中指を立てた。 ヤマトナデシコ、笑ちゃう。 みんな古い。古すきだわ。 ママが車で迎えにきてくれてた そのままワイキキを抜けてカハラまで。 シャワーを浴び、 一階のイタリアンで夕食を。 アランチーノ、そう言えばイタリアン 彼の造るマルゲリータはここより美味しいのか? ママは太っていくばかり、と言いながら もう1本赤を頼んでいる。 『ねえ、ママ聞きたいことがあるの 私ってお嫁にいけそう?』
Part❾ 全てを手に入れるまで。 【絹子の場合】
カツカツと制服で羽田のターミナルを 歩いている時、 すみません、あのう…… 母親ほどの年齢の方か、お辞儀をしている。 よく大きな羽田で迷うご婦人達、制服来てたら 場所が分からなくなって……迷子のご老人たち。 『はい、どちらまで行かれるのでしょうか?』 ニッコリ笑う。 会社の制服だ、失礼はできない。 『あのぅ絹子さんでしらっしゃいますか?』 『はっ?えーはいわたくしは絹子ですが……』 腰を45℃に折り、背筋を真っ直ぐ伸ばし 『ヤン涼介の母親でございます。 お忙しいところこんな所でお声を、失礼 を承知でお声をかけさせて頂きました。 すみません』 えつ。母親? 数秒時が止まった気がした。 『涼介さまのお母さまですか?驚きまして…… あの何か、わたくし失礼を……』 失礼千万。 色々しているが、母親が羽田に…… 『いえ、決して、こちらが失礼を。 恐れ入りますが少しお時間、頂きたくて』 なにかしら? 捨てたから慰謝料とか、あるのかしらあの国では? ちゃんとしないと、面倒は噂になりかねない。ここは ちゃんとお話しとかなくては。 羽田の中はまずい。制服が目立ち過ぎる。 せっかくホテルの温泉にゆっくり浸かろうと 冷たくなった足を伸ばそと……何かしらこのおばさん。 『ここではお話しも聞き取れないほどの雑音ですので、 良ければ直ぐ近くのホテルでいかがでしょう わたくしの宿泊先なのです。指定されておりまして』 場所は私が決めて然るべき。 『どちらでも結構です。ご一緒させていただけますか?』 制服ではあのホテルでも目立つ。 着替えないと。なんの予定も入れてはないけど 強引な人達。あの親子も。 部屋で着替え、さっとシャワーを浴び、 Macのマットなベージュを口に引き直す。 可憐さは薄れて、肌の色がとても綺麗に見える。 あの人、和服ではなかった。 シルバーのスーツに薄いパープルのスカーフ。 あの肩からの腕のライン、 DIOR。 私も狙ってたスーツ。限りなく白に近いがラメが シルバー。趣味がいい。 腹筋に力を入れてエレベーターに乗った。 『改めまして、わたくしヤン百合子と申します。 本当に急で申し訳ございませんです。』 『いえ、予定を入れてませんので 明日も仕事で戻りますので、お気になさらないで 下さいませ。…あのそれで…お話しとは』 『あっはい。先日はウチの主人が大変失礼な態度を。 本当に申し訳ございません。息子の事となると 人が代わりまして、涼介はアレから本当に……』 謝罪?? 『いえ、わたくしも初対面で、また何も知らなくて お父様とお会いするなんて聞いてなかったものですから』 『ええ、聞きました勝手に席を用意したのだと。あの子は 本当に世間知らずでございます。よく叱っておきました』 『あ、あのう涼介さんとは本当に最近のお付き合いで 何か勘違いをされてましたら、困るのですが……』 『いえ充分に心得ております。息子の事はよく知っている つもりです。絹子さんとのお付き合いを、それは もう態度でわかります。わかりやすい子ですので。 甘やかしすぎた事もありますが真っ直ぐな所が あり過ぎまして 嫌なお気持ちにさせてしまいました。』 『いえ、もう済んだ事ですお母さま、わたくし正直 申しましても? 結婚まで考えてないのです。決していい加減な 気持ちではないのですが、そこまでの話は全く涼介さんとも。 ですから驚きました。』 『そうだと思います。あの子は先走る所があるので。 仕事では必要な事でしょうが、そのように主人が 教えておりました。ただ、女性とのお付き合いは まだまだ未熟です。自分だけが浮かれて先走った、 そんな感じでしょうか』 『いえ、失礼なのですが、お母さまはがわたくしにどのよう なお話があるのか気になります。 東京にたまたま来られたとは思えなくて』 『勿論です。情け無いですが息子の事になると じっとしていられなくて、バッグ一つで羽田まで。 笑われるでしょうが親バカですね。 涼介はアレからと言うもの仕事さえしてますが も抜けの殻というとか、沈んだ魚のようです。 モルジブでしたか?あの島から灼けて戻って来た 時とは別人に。もちろん絹子さんのせいでは ございません。ですが絹子さんのせいなのです。 主人は仕事に修証が出るなら、追い出せ!と。 女ごときでウオサオする奴なんかに任せられん! と。』 『その通りだと思います。お父様の仰る通りです 涼平さんとの事は私の中では……もう。 自分の意思はちゃんと持っております』 『それは、勿論です。貴方のような美しい、しっかりと したお育ちで、仕事をお持ちで。 息子には高嶺の花です』 『お育ちとは、どう言う意味でしょうか?』 嫌な気分になつた。 何か、話が噛み合わないし。 『失礼を承知で申します。絹子さんの名前を食卓で 口にするようになり、 まだお付き合いもさせて頂いていない。 舞い上がってる息子を主人は片目で見てましたが 直ぐに調べさせたようです。 すみません、主人は決めてた娘さんがおりました。 息子の相手にと。 商売一筋の人です。息子の代で潰すわけには…… 知らぬ顔で実は、絹子さんの事を よく存じておりました。2度ほどドバイ便に。 仕事ではなく……』 それって、身の上調査を… 生い立ちまでを、パパやママや 祖母たちの生い立ちまで。 わざわざ空まで見に?? ざわざわした、一緒で鳥肌が立つ。 なんなのこの人達。 『失礼を承知で東京まで来ました。この事は主人も 存じております。 どうか息子の気持ちを収めて頂きたいと。 この通りでございます』 テーブルに着きそうに頭を下げる。 何かしら? 謝罪じゃなく、別れてくれ、と。 近寄るな、と。 いいに来たの東京まで。息子に内緒で。 フラリと前の景色が歪んだ。 封筒を置いている。頭の中が整理できず、 お金を受け取るとでも。 なんて厚顔無恥な人達、 馬鹿にし過ぎだ。 頭がクラクラする。 レジで領収書をもらっている。 私に会ったことを報告する為… 部屋に戻りベッドに 仰向けで倒れた。 さっぱりわからない。 私は家族にふさわしくないと、 息子の代で潰すような、て言ってた、 別れてと欲しいと。 恥ずかしい。 知った顔もいるこのホテルで。 フロントも見ていたのでは。 なんて恥ずかしめを。 気分が悪い。なんか吐きそうだ。 馬鹿にして!クッションを思いっきり投げた。 鏡に映る女は鬼のような目をしてる。 知らない間に奥歯を強く噛んで、頬が硬くなっている ダメ、ほうれい線が出来てしまう。硬くしたらダメ。 とりあえず温泉につかろう。 そうだ温泉に浸かる為に予約したのだ。 温泉に……入ろう。