花縁
11 件の小説私は二人の人形
※このお話は創作・フィクションです。 私の好きな人は、私の親友が好きで、 私の親友は、私の好きな人が好き。 好きな人とは幼馴染で昔から仲が良かった。 親友とも小学校高学年からずっと一緒にいる、大親友だった。 だから親友にも好きな人にもよく利用される。 「〇〇の好きなタイプってどんな人かな?」とか、 「これ渡したらどう思うかな?」とか、 私は二人にいいように使われるキューピッドだった。 自我を出さず、ただただ、 『聞くだけ』『話すだけ』 そんなくっだらない日々が続いた。 ある日、好きな人に手紙を渡された。 少し期待してしまった。 「これさ、〇〇に渡しといて欲しい。」 やっぱり親友だった。 「いい感じに仕込ませといてくれ。」 「分かった……」 「サンキューな。じゃあまたな。」 何も言えなかった。 親友も好きな人も帰った、放課後。 手紙を親友の机の中に入れ込んだ。 これでいいんだ。 きっとこれでいいんだ。 親友と好きな人がくっつく。 大切な人と大切な人が幸せになる。 もう伝達だってしなくていいし、 面倒ごとだって減る。 でも…… 本当にそれでいいのかな? 「わたし」はそれでいいのかな? 「わたし」はそれで幸せなのかな? いつの間にか、手紙は自分の手が握りしめていた。 少し、くしゃくしゃになった手紙を開いた。 私はその手紙の中身を読んでしまった。 思っていた通り、ラブレターだった。 運命が違えば、私が貰うはずだったのかな。 一通り、読み終わった後、 少し悩んだ。 戻そうか、このまま自分で持っとくか。 私は…… これで私たちの関係は終わっちゃうのかな……
守らなきゃいけない数字
※このお話は創作・フィクションです。 「どうすればいいの……」 親友に泣きついた。 親友は困惑しながらも少し笑っていた。 こんな親友の表情を見れるのは、 残り半年。 私はどうすればいいのだろうか。 親友の寿命が見えるようになったのは、丁度一年ほど前。 最初はこの数字が何を表しているのか。 分からなかった。 日に日に、減っていく数字。 これが寿命だと知ったのは、半年前。 親友と遊びに出かけた日。 信号を待っていた。 その時、親友の額に浮かぶ数字が 急に、十になり、一秒ずつ減っていった。 信号機が青になった。 行こうとする親友の手を私は掴んだ。 困惑する親友の背後を何かが猛スピードで通った。 言葉では言い表せない音が聞こえた。 私も親友もその光景に驚いた。 あまりの光景に声が出なかった。 車はボロボロ。怪我をしている人がいた。 もし、私が止めていなかったら、 親友はどうなっていたんだろう。 この数字はもしかして寿命なのではないだろうか。 私はとんでもない責務を負わされたことに気づいた。 そして、親友の額の数字は三六五と表されていた。 残り一年……次も私が止める。そう決意した。 残り半年の寿命は十日となった。 そして、十一日後には卒業式が行われる。 絶対に死なせてたまるか。 そこから毎日、朝、昼、夜。 登下校も休み時間も遊びに行くのも 全部、親友と一緒にいるようにした。 寿命は分かるが、死因は分からないから。 そして、一だった数字は残り四となった。 これは残り四時間ということだろうか。 学校が終わり、親友とプリクラを撮りに行くことにした。 怖い。どこから迫ってきているのか。 どこで起きるのか。 そんなことを気にしながら、街を歩いていた。 携帯が鳴る。 見てみると、ニュースだった。 通り魔が現れたというニュースだった。 しかも私たちが今いる街で。 そのニュースは親友にも来ていた。 「今日、やめる?」 「確かに、怖いもんね。」 そうしてやめようと思った瞬間。 親友に電話が来た。 母かららしい。 親友は無視した。 「出なくていいの?」 「うん、多分、電話するほどの内容の話じゃないと思うから。」 私にも電話が来た。 兄からだった。 兄からの電話が来ることはほとんどない。 緊急のことだろうか。 私は親友に言って、道の端で電話した。 電話をしながら、親友を見る。 一瞬、目があった気もしたが、 親友は参考書で目までを隠す。 そんな親友の額がいつの間にか、七十となっていた。 どういうこと…? 「おい、聞いてんのか。」 兄の言葉で電話をしていることを思い出した。 親友に背を向ける。 「ごめん、聞いてなかった。」 「しっかり聞けよ。」 その瞬間、誰かに押された。 振り返ると、親友が誰かに刺されていた。 私は、木にぶつかって倒れ込んだ。 親友の額の数字がない。 親友は倒れ込んだ。 全身黒の男はどこかに走っていった。 私はすぐに親友のそばに行った。 親友の制服が赤く染まっていく。 やがて、地面にも血が流れだす。 私は親友と手を握る。 「ごめん……ごめん……ごめん……」 私が守るって決めたのに…… 親友は最後の力を振り絞って、そっと私の手を握り返した。 「守れてよかった……」
ざまあみろ、親友へ
※このお話は創作・フィクションです。 ※題名をご覧の通り、少し感情的な表現をさせていただいております。 「ねぇ、小葉。私、彼氏できた!」 え、誰々? なんて聞かなくても分かる。 どうせ、私の好きな人なんでしょ? 「あの……本当に悪気はないんだけど…… 小葉が好きだった……湊人くんなの。」 悪気がない?そんなはずないでしょ。 これは……少し前、 私たちが中学二年生だった頃。 私には初めての彼氏ができた。 相手も私が初めての彼女らしく、 お互い理解し合いながら付き合っていた。 みんなからは理想のカップルだと言われた。 別れなんて無縁のものだと思っていた。 この関係がずっと続くと思っていた。 ところが、半年記念日の前日、彼から急に別れを切り出された。 「小葉、ごめん。俺、好きな人ができたんだ。別れよう。」 急すぎて、頭が真っ白になった。」 「待って、どういうこと……?好きな人って?」 「ごめん。」 そう言いながら、貴方は教室を出た。 失恋とは、こんなにも辛いものなんだ。 次の日、忘れ物をしたため、教室に戻った。 そこには、私の“元彼”と私の親友である、未来がいた。 入りづらくて、少し二人の会話を聞いてしまった。 「小葉とは別れてきた。だから俺と付き合ってくれる……?」 「えー、別れちゃったのか。」 「え?」 「あ、えーと、ごめんなさい。私、他に好きな人ができたの。 だから、あなたとは付き合えないんだ。ごめんね。」 「え、でも昨日までは俺のことが好きって。 小葉と別れたら俺と付き合ってくれるって。」 「昨日“まで”はね。」 「え、そんなの卑怯だよ。じゃあ俺はなんのために……」 「なんかごめんね。じゃあ、またね。」 そう言いながら、未来は教室を出ていった。 元彼はその場に倒れ込む。 用事を済ませたかったので、私は教室に入った。 私に気づいた元彼。 「小葉……」 彼の言葉に気づいてないフリをしながら、 自分の席へと向かう。 「あのさ、昨日のことなかったことにしてやってもいいぞ。」 「は?」 「だから俺たち、復縁してもいいよって。」 何その上から目線。腹立たしい。 「あんたとなんか復縁するわけないじゃん。 私と付き合っていながら、未来と浮気するなんてね。最低。」 そんな元彼を放って、用事を済ませ、教室を後にした。 こんな嫌な思い出、思い出したくもなかったな。 「ねぇ、怒ってる?」 まだ、“元親友”と話してる途中だった。 「いや、好きになったら仕方ないよ。」 これで、五回目か。 私の好きな人とか彼氏を奪った回数。 それから数ヶ月後、彼氏ができた。 「小葉と廉くん、おめでとう。二人ともめっちゃお似合い。」 「ありがとう。」 また奪うつもりなんでしょう? でも今度は奪うのが難しいよね。 だって、廉はあなたの元彼だもんね。 しかも、あなたのこと、大っ嫌いらしいし。 自分から別れを切り出した元彼に、どう復縁を持ちかけるの? 未来。いつもあなたが想像しているような、 “未来”が次も待ってるなんて思ってないよね? それから数日後、彼が未来とのメールのやり取りを見せてきた。 毎日、毎日。 一時間に一回ぐらいのペースでメールをしてくる未来。 明らかに狙っているんだなという文面。 素っ気ない彼の反応に気づかないのかしら? 「小葉、これどうすればいい?」 「未来のメールごと、削除しちゃえば?」 「そうするわ。」 今更、復縁できるわけないでしょ。 “ざまあみろ、親友”
偽りの完璧
※このお話は創作・フィクションです。 「雪ちゃんって本当、可愛いよね。」 「ありがとう。」 何が可愛いだ。思ってもないくせに。 私には生まれた時から人の心が読める能力があった。 人の頭上に靄ができ、そこに言葉が映し出される。 これがなぜだか、 人の心の中の声だと認識していた。 そしてもちろん、大人みたいに話すことはできなかったが、 この意味を理解することはできた。 ミルクをくれる母の頭上には、 「可愛い」や「生まれてくれてありがとう」 などの言葉があった。 ソファに座る父の頭上には、 「可愛い」と書いてあったが、 もう一つ、泣く私に向かって、 「うるさ」と言う言葉があった。 この瞬間、知らない方がいいこともあるということを知った。 母もクズな父を選んだものだ。 と、今の私ならそう思うだろう。 小学生になると、これを利用して、 “完璧な人間”を目指した。 相手の好みになれるように、 性格を変えた。顔を変えた。 そしたらみんなから愛された。 みんなの“人気者”になれた。 クラスメイトの心を読んで、 テストも宿題も全部、満点にした。 みんなから“優秀”だと言われた。 親から“偉い”と言われた。 みんなから“信頼”されるようになった。 “嬉しさ”も“悲しさ”も“怒り”も“驚き”も 全部作れるようになった。 私が望んでいた、“完璧な人間”になれた。 “完璧な人間”に…… でも、もし私みたいに人の心が見える人がいたら、 今の私をどう思うのだろうか。 “ずるい”とか“卑怯”とか思うのかな。 果たしてこれが本当に私の望んでいた、 “完璧”なのだろうか。
叶わない恋の片思い
※このお話は創作・フィクションです。 桜が満開に咲き乱れている頃。 私は中学生になった。 着慣れない制服に身を包み、 渡された、クラス表を握りしめながら、教室へ向かった。 そこには担任の先生らしき人がいた。 緊張で、顔が強張っていた。 それを見て、私も一気に緊張が走った。 そんな思い出も、もう一年前のこと。 みんなからの第一印象は最悪だった。 “怖そうな先生”“堅そうな先生” けれど、時間が経つにつれて分かってきた。 誰よりも生徒に寄り添い、 誰よりも生徒のことを大切にしている先生だということが。 私はそんな先生のことをいつの間にか、 目で追っていた。 この思いは、“先生”として好きだと、 今思えば、自分にそう言い聞かせているだけで、 本当は“異性”として好きになっていた。 自分でも好きになっちゃいけないことは分かってた。 だって“先生”と“生徒”の関係だから。 だからこそ、“先生”としての“好き”を貫いていたんだと思う。 けど、先生が他の女子生徒と話していると心の中で、 モヤモヤした気持ちが湧き上がってきた。 昼休み、私が一人で勉強をしていると、 「小テストの勉強か?」 先生が話しかけてきた。 「はい。この小テストは良い点数取らないとやばいので。」 「そんな期末テスト悪かったっけ?」 「結構…」 少し笑いながら、 「頑張れ。」 と言った。 さっきまでのモヤモヤした気持ちはまるで無かったかのように、 “好き”で満たされた。 そして私は、三年生となった。 この一年間は今までと違い、あっという間だった。 二大行事の運動会と合唱祭が終わり、 本格的な受験シーズンになった。 そこからは、先生とは進路のこと以外、 話すことはあまり無かった。 三月中旬、私は都立高校に合格した。 もちろん、一番最初に伝えたのは家族だが、 友達よりも先に先生に伝えた。 望んでいた通りの返答が返ってきた。 「おめでとう。」 私は少し微笑んだ。 「ありがとうございます」 そして、卒業式になった。 長くも短い中学校生活だった。 中学校生活と共に私の恋も終わっていく。 どちらにしても、涙が止まらなかった。 自由時間も終わり、帰り際、 まだ、涙が止まらない私の肩を誰かが叩いた。 振り返ると、そこには、先生がいた。 「卒業、おめでとう。」 「ありがとうございます…」 次に何を言えば良いのか、 言いたいことがありすぎて、戸惑った。 そんな私の表情を察したのか、先生が口を開いた。 「三年間、担任になれて良かったよ。」 少し驚いたが嬉しかった。 「私も先生が担任になってくれて良かったです。」 “先生のこと、大好きでした”
時間の終わり
※このお話は創作・フィクションです。 急に電話が来た。 知らない番号だった。 「もしもし…」 「もしもし、〇〇病院です。 〇〇〇〇さんのお電話で間違いないでしょうか?」 「はい、そうですけど…」 「〇〇さんが亡くなりました。」 聞き間違えかと思った。苗字が彼女と一緒だった。 「え、、〇〇〇〇ですか?」 「はい。」 言葉が出なかった。 俺はタクシーで彼女の病院まで向かった。 本当に彼女は亡くなっていた。 俺は泣き崩れた。 昨日まで普通にメールをし合っていたのに、 当たり前の生活というのはこんな一瞬で終わりを告げるのか。 その時、看護師さんから言われた。 「膵臓がんで余命半年でした。」 それを聞いた瞬間、俺はただただ、 「ごめん…」 としか言えなかった。 音楽と共にエンドロールが流れる。 声に出そうなくらい涙ぐんでいる貴方。 私がこの映画の彼女と同じように、 余命半年と宣告されていたら、 貴方は今のように泣いてくれるのかな。 それとも別れを切り出すのかな。 貴方がどんな反応をするのか気になったから、 今日は、この映画を見た。 帰り道、久々に海へ行った。 夕日が海に沈んでいく頃だった。 「今日の映画、面白かったな。」 「そ、そうだね。」 怖い。 「あ、あのさ。」 「どうしたの?」 「…今日の映画の俳優さん、めっちゃ演技上手かったよね。」 やっぱり怖い。 「確かに。めっちゃ上手かったな。」 この三年の関係がたったの一言で壊れるのが、 怖かった。 私は言えずに、余命半年だった寿命が 残り1ヶ月を過ぎていた。 以前よりも体重がかなり減った。 体中が痛くなった。 吐き気がするようになった。 でも何より辛かったのは、 貴方に会えないことだった。 貴方の笑顔が見たい。 貴方の声が聞きたい。 貴方と話したい。 貴方に会いたい。 今頃、貴方は何をしているのかな。 毎日、送ってくれる、何気ないメールが嬉しかった。 私、貴方のこと、結構好きだったんだな。 もっとこの時間が続けばいいのに、そう思った。 でも時間は止まってはくれない。 “ごめん” そして私は、二月七日午前九時に亡くなった。 ねぇねぇ、 貴方は今、どんな顔をしているの?
忘れてしまう記憶
※このお話は病をテーマにした創作・フィクションです。 私の母は、先月、若年性認知症と診断された。 うつむいて帰ってきた母の姿は、今も忘れられない。 診断結果を聞いた時、私は涙が止まらなかった。 辛いのは母のはずなのに。 母は小さな声で「ごめんね」と言った。 十六の私には、その現実を受け止めきれなかった。 でも、その一言に これまで母が一人で育ててくれた分、 今度は私が母を支えようと決心した。 母にこれまでと同じ量の負担をかけないように、 私もバイトを始めた。 体調を崩さないように、 心を壊さないように、 無理はせず、頑張った。 母は次第に日常生活に支障をきたすほど、 病気が進行してしまった。 料理が作れなくなったり、 仕事内容を忘れてしまったり。 今日、一ヶ月に一回の定期検診に行った。 私の母は、一般的な進行度よりもかなり早く、 これまでの負担が今に現れたらしい。 病が見つかるのが遅かったため、 薬の効果があまり見られなかった。 いつか何もかもを忘れてしまう日が来るのか… いつか私を忘れる日が来るのか… 今日も朝起きて、歯磨きをして、顔を洗う。 朝ごはんを作り、母を起こしに部屋へ向かう。 「おはよう。」 「お…はよ…う…」 ママ。
依存への油断
※このお話は前回の投稿の彼氏目線です。創作です。 俺の彼女は多分、俺のことが大好きだ。 どんなに浮気をしても、許してくれる。 女の子のツーショットをSNSに上げると、 嫉妬してきて、「別れないよね…?」って聞いてくる。 正直、可愛いとは思うけど、そろそろ飽きたな。 ある日、テレビを見ていると、 「ねぇ、私たち別れよう。」 聞き間違いかと思った。 まさか、あいつが別れを切り出すことなんて、 絶対にないと思っていたから。 「は?急に何言ってんだよ。」 今まで、別れたくないって言ってたくせに、 急になんだ? 嫉妬か?それとも冷め期で構ってほしいとか? 「今までずっと貴方に期待してた。 けど、それは無駄な期待だって、やっと気づいたの。 だから私たち、もう終わりにしよ。 じゃあね。」 初めて見た顔をしていた。 真剣な、何かを決心したような目だった。 ドアへ向かう背中が、やけに遠く感じた。 本当の話だったのか?俺が振られたのか? そんなはずない、構ってほしいだけだろ。 乗っかってやるか。 俺は、ソファから崩れ落ち、倒れ込んだ。 「待って。 全部、俺が悪かった。 もう浮気なんかしないから。 俺から離れないで…」 君は驚いた顔をし、 「嘘だよ、ごめん。離れるわけないじゃん。」 と言い、俺を抱きしめた。 その瞬間、心の中で小さく笑った。 ほんと、ちょろい。
執着への依存
※この話は恋愛依存や執着をテーマにした創作です。 私の彼氏は“クズ”だ。 浮気は5度も。 SNSには、女の子とのツーショットばっか。 いいね欄、フォロー欄は9割が女の子。 定期的に私の携帯は確認してくる。 なのに、絶対に自分の携帯は見せない貴方。 このことを親友に相談してみた。 「あんたさ、尽くしすぎだよ。 あんたにはもっといい人がいるよ。 さっさと別れなよ、そんなクズ。」 私も別れなきゃいけないことは分かってる。 「でもいつか戻ってきてくれるかもしれないから。」 貴方にずっと期待し続けてきた。 「あんたさ、そんな無駄な期待してる時間が勿体無いよ。 自分が変わるしかないんだよ。」 そう言われて、何かから解放された気がした。 やっと“別れよう”と決心した。 「ねぇ、私たち別れよう。」 「は?急に何言ってんだよ。」 「今までずっと貴方に期待してた。 けど、それは無駄な期待だって、やっと気づいたの。 だから私たち、もう終わりにしよ。 じゃあね。」 これで初めての恋が終わる。 どこか寂しいような、自由になれたような、 複雑な気持ち。 「待って。 全部、俺が悪かった。 もう浮気なんかしないから。 俺から離れないで…」 まさか、涙を流す程だとは思わなかった。 貴方にとって、私は捨て駒のような物だと思っていた。 あっさり、別れを認めると思ってた。 まさか、これも演技なのだろうか。 ただ、私にはそうは見えなかった。 私のために泣いている… 楽しかった思い出が次から次へと、思い出してしまう。 「…嘘だよ、ごめん。離れるわけないじゃん。」 少しだけ迷った。 でも、私は彼を抱きしめていた。 あぁ、やっぱり貴方とじゃなきゃ、私は生きていけない。
届きそうで届かない
※このお話は同性愛をテーマにした創作です。 好きな人がいる。 とても可愛くて、でもどこか儚げがあって、 成績優秀で、みんなに優しい。 顔も良くて、何事にも真面目で全力。 何の欠点もない、完璧な人。 そんな君のことを、いつの間にか好きになっていた。 放課後、委員会の仕事で廊下を歩いていた。 クラスの前を通りかかると、 君とクラスの男子が微妙な距離感で話をしていた。 何となく告白だってことは察せた。 足が止まった。自分でも分からなかった。 2人の会話が聞こえてきた。盗み聞きしてしまった。 「ごめん、私、好きな人がいるの。だから、 その気持ちに応えることはできません。」 と君は答えた。 なぜだろう。 自分に言われたように胸が痛くなった。 自分も失恋したような気持ちに襲われた。 一体、君の好きな人は誰なんだろう。 頭の中で疑問や憶測が飛び交う。 でも、 私じゃないってことは分かる。 いつも朝一番に、 「おはよう」 と声をかけてくれる君。 嬉しい。けど、これは “恋愛感情”じゃなくて、“君の温かさ”なんだよね。 …君に出会えてよかった。君に恋ができてよかった。 これからも私は君を想い続けるよ。 いつか、君に伝えられたらいいな。