Cheeery

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Cheeery

救いのないエンディングはお好きですか??

終焉

「もし……違う所で出逢ってたら」 俺の喉元に向けられた剣先がカタカタと揺れている。否、正確には剣を手にしてるこいつの手が震えている。 「私たち、友達になれたのかな」 何故だ?何故こんな顔をしている?? 怪訝そうに眉をひそめた俺を見て、こいつは困ったように笑う。頬から流れ落ちた雫の正体は涙なのか、はたまた止むことを知らない雨なのか。そんな事はわからない。 「それでも…私は……」 「おい」 「!」 「お前の勝ちだ。早く殺せ。」 激しい雨音の中、カチャリと金属の音が鳴る。 「きみと出逢ったあの日あの瞬間は私にとって、きっと一生忘れない宝物なんだ。」 ザーっと雨の音が広がる。 「だからこそ、私はっ……私が終わらせる!」 そう言い放つと、迷いを振り払ったかのように瞳の色が変わる。 あぁ、この目だ。吸い込まれてしまいそうなほど真っ直ぐで嘘の無い瞳。 酷く疎ましく感じるその反面、自分には手の届きようも無いほど眩しく、そして美しくもあった。 覚悟を決めたのだろう。 そいつは両手を引き、そして思い切り前に突き出した。 「……綺麗だ」 「っ!!」 無意識にもそう呟いた瞬間、胸元に鋭い痛みが走った。ドクドクと血が流れていくのを感じる。熱い。 だんだんと視界がぼやけてきた。ふと視界にそいつの顔が映り込んでくる。酷く歪んだ、哀しそうな。 何故そんな顔をしているのか。俺にはきっと理解出来ない。 ここで意識は途絶えた。 これは___俺があいつと出会い、そして殺されるまでの残酷な人生の物語。

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終焉

姫様と騎士

「ど…ど、うして……」 目の前の光景を見て、辛うじて絞り出したか細い声。その声は震えているように聞こえた。 無理もない。こんな場面を見てしまったのだ。いや…正確には私が彼女に見せてしまったのだ。 一番見せてはいけない人に。 一番こんな思いをさせてはいけない人に。 自分の護衛騎士が想い人を殺してるところを___ 「申し訳ございません」 左手に持った剣をそのモノから引き抜き、彼女の方を振り返る。 困惑。そして絶望。そう表現するのに相応しい表情を浮かべた彼女の顔を見た途端に、左手の力が抜けていった。 ガランっと金属音が部屋に響き渡る。 その瞬間に脳内に満面の笑みを浮かべた彼女の顔がフラッシュバックしてきた。 この人の笑顔を私が奪ってしまった。 「姫様……」 彼女の方へ1歩足を踏み出した。その瞬間彼女の体がビクリと揺れる。自分に向けられる恐怖の目。それは、彼女の本能が表す拒絶。 当然のことだ。 それだけの事をしてしまったのだから。 この方にこんな光景を見せてしまった。大切な人を目の前で殺してしまった。 例えこの男が敵国の間者だったとしても。 もう私は……彼女に仕えることは出来ない。 彼女に必要とされる資格はない。専属騎士失格だ。 彼女に必要とされないのなら。もう自分の存在価値など無い。 それならば。 騎士は床に落ちた剣を拾い、自分に向ける。 「姫様……私はずっと姫様のことを」 お慕いしておりました。 その言葉が発せられたかどうか、自分でもわからない。ただ、喉元に突き刺さった刃が私の意識を飛ばしていく。 霞む視界の中、酷く歪んだ彼女の顔が微かに写って消えた。

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姫様と騎士