鍵
私はいつも前に進むことができない。
小さな一歩が怖い。
あと一歩踏み出せば、教室の中に入れるのに。
あとちょっと勇気をだせたなら、
皆からのいじりが辛いと言えたのに。
あと一歩、あと一歩
私が
強ければ。
勇気を持っていれば。
こんな事にはならなかったのに。
ただのいじりで学校に行けなくなるなんて、
「みっともない」
私への陰口が耳にこだまする。
筆箱をごみ箱に捨てることはいじりなんですか。
頭を教科書で殴るのもいじりなんですか。
皆、クラスの全員が私をばかにして嘲笑うのも。
全部、
全部全部全部
「いじりなの、、?」
私はどこで間違えたんだろう。
いつ一歩後ろに下がり始めたのだろう。
一度踏み出せなくなると、そのままどんどん後ろへ後ろへと
これはいじりなのだと
これはいじめなんかじゃないのだと
自分に言い聞かせることしか出来なくなった。
…私は鍵を持っているのに。
鍵穴も目の前にあるのに。
あとは一歩前へ進んで、鍵を開けるだけなのに。
それが出来ない。
鍵なんて開けることが出来ないなら、持ってる意味は何も無い。
でも鍵は、私の中にある唯一の希望であり、
救いの光なんだ。
だから、いつか。
鍵を開ける、その日まで。
この鍵は大事に、大切に、
…とっておくんだ。
“鍵“