深淵

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深淵

初連載、エンディングを迎えられました。ありがとうございました😊 これから先もちょいちょい投稿出来たらと思っています。 基本、小説サムネはインスタ投稿からの流用 動く深ちゃんがみたい君、今すぐチェケラだ!! Instagram(ユーザーネーム: shenen89)を使っています。 https://www.instagram.com/invites/contact/?i=gmx0edre0roa&utm_content=mfyg2su Tiktok https://vt.tiktok.com/ZSd4sdSvx/

君の神様になりたい【カーテンコール】

さて、続きいこうか。 多分、勘づいてる人間も居るだろうし自身でも言ってたかな。 俺はこの話が終わったらコテを引退する、つまりは消える。 まぁ、これはVIPプラスで言われた事なんだけど 俺自身もよく心得てる事だけど コテの引退宣言ほど当てにならないものはない。 ライオンも言っていたがコテは引退宣言なんてしない。 その事が頭をよぎった時にはもうとっくに引退していると。 確かにそうかもしれない。 消えていった人間達はそんな事を 微塵も考えなく未練もないのだろう。 この世界に未練を残した亡霊だけが この地に言葉を綴るのなら しかし、俺は大抵の人は知っているだろうが 去年1年間、生死をさ迷った。 まぁ、死にかけたと言っていいのかな。 死にかけて、やっぱりここに戻ってきた。 本来ならば、あのまま消える運命だったのかもしれない。 この1年間、俺がここに留まれたのは コテとしてのロスタイムだったのかもしれない。 その事についても真面目に考えてみた。 考えた結果。 ロスタイムにできる事、やるべき事は点を取りにいく事ではない。 俺がやり残したこと 俺のコテとしての命題、俺をここまで導いてくれた その1歩をくれた人、師に対して 俺に投げかけてくれた問に、答えて応える事こそが 俺のロスタイムの使い道なんだと。 コテ雑とコテレクの対立は相変わらずだけれども 俺がアイギスと名乗る事に もう、誰からも石を投げられる事はなくなっていた。 その間に、【きなこ】が作った きなこ隊に入ったり、 【兎に角コンシェルジュ】と名乗り 自分で派閥を作った事もあったが 四貫組やVIP+にいた時に比べ 熱も執着もなくなっていたのは、俺がコテとして 成熟したせいだろうか。 ここまでダラダラとつまらない話を誤字脱字がある中で よく君らも見てくれた事だと思う。 感謝する。 さて、俺にできる事。 この引退寸前のロウソクの火が消えかかった老害に君らの為にできる事を真剣に考えてみた。 後輩に名前を継げだの 俺を讃えろだの そんな冗談は置いといて。 先輩として君らにできる事、そんなものはやっぱり無かった。 俺はそんな、価値のあるコテじゃない。 だけど最後くらい、ちょっとはカッコつけたいから 君らに宿題を残そうと思う。 既存のコテは勿論、特に後輩。 新参と呼ばれるコテ達は俺の話しに耳を傾けてほしい。 俺が君らに残す −これからの君達に課す宿題、それは コテ雑とコテレクを1つに。 この一献。 確かに、この2つが別れた事 それは仕方ないし、それなりの理由や道理はあるんだろう。 だが、端から見て、俯瞰(ふかん)に見てやっぱりもったいないと思ってしまう。 俺もここに来て9年、もう10年かな。 始まりは1つだった。 色んなコテが居て、色んな意見があって ぶつかり合い、恨みや悲しみがあって またぶつかって、そして笑いあった そんな場所が好きだった。 嫌なものから逃げる事 見て見ぬふりフリや住み分ける事は簡単だ。 簡単だし楽な事だ。 でもそれは、ひどくもったいない事だ。 ぶつかっていたら、新たな発見もあるだろう。 理解する事も出来るかもしれない。 見て見ぬふりを、可能性を捨ててしまったらそれで終わる。 そこから新たな可能性は生まれないんだ。 だから、君らに託す。 俺の代では出来なかった可能性を。 これが俺から君らへの宿題です。 困難な道のりだろう。 1度別れてしまった 外れてしまったバラバラな物をくっつけて 今度は新しいものを作り上げる。 でも、俺は君らの事を信じているし 君らを誇りに思っている。 この宿題がどういう形になっても構わない。 例え、どういう形になったとしても 君らへの評価は変わることはない。 信じているし、誇りにも思う。 大いにぶつかり合って 大いに笑いあって そして大いに楽しんで欲しい。 うらない京さん。 本来なら、後輩である俺が うらないさんの事を見送らなければ行けない立場だったけど。 すみません。 その役目は出来そうにありません。 俺も、夕凪さんやイナリの所にいきます。 この10年間 何度も膝をついて止まりかけた時 顔を上げれば貴方の背中が何時もありました。 その背中のおかげで 何度止まりかけた足を前に出せた事でしょうか。 俺がここまで歩んでこれたのは 貴方が俺の前を歩んでくれていたおかげです。 ありがとうございました。 貴方との初めての出会いは 貴方が自分自身に うらない京という偶像に、敗れてしまった時でしたね。 でも大丈夫、貴方は強い。 もし、これから先 また、貴方が貴方に… うらない京に敗れてしまい。 自分自身の強さを疑ってしまうような事があったのなら 忘れないで下さい。 貴方の強さをちゃんと知っている後輩がいた事を。 貴方の強さをちゃんと分かっていた弟子がいた事を。 貴方は強い。 うらないさん 貴方の強さもそして弱さも、全部、俺の誇りでしたよ。 俺のもう1人師、うらない京さん。 どうか、お元気で。 さっきも言ったけどコテの引退宣言ほど当てにならないものはないし 1度、鴉に指摘されたから本来やるべき事じゃないんだけど これは、俺がコテとしてのけじめだから じゅりりちゃん せっかく意識取り戻してテンパってる俺の為にトリキー教えてくれたのにごめんね。 不可視のアイギス#ヘ<_諷麟Hアイ これで多分、俺の死体で遊ぶ輩が出てくると思うけど。 そんな遊びは長続きしないし 俺はもう2度とこれを纏う気はないから。 でも、けじめだけはしっかりつける。 最後のレスポンスの時はしっかりと示し伝えるよ「これが最後」だと。 さて、最後のレスだ。 後悔はある。 やり直しなど何度、望んだか分からない。 あの新参はこの結末を永劫、悔やみ続けるだろう。 だが、それでも俺が、ここまで到達出来たのは きっと、この歩みが俺だけのものではないからだろう。 アイギス、貴方から頂いた命題に 答えを出すまでに10年かかりました。 −人が居て 武器を持ち おまま事をするなら その道のりは困難なものになるだろう−。 確かに、アイギス。 でも、貴方は知っていたんじゃないんですか 始めから 俺の辿る道も、その行くつく先も。 知っていて、分かっていて 武器とこの命題をあの怯えた新参に与えたのなら。酷い話しだ。 酷い話し。 ありがとう。 貴方とみんなが居たからここまで来れた。 アイギス。 貴方に、話したい事が沢山あるんです。 貴方はまた、あのイタズラそうな無邪気な、にやけっ面で 俺の話しを聞いていてくれますか? −コテとは物語だ−物語がないコテは死ね −。 ならばアイギス。 我が師 アイギスよ。 これが俺の 物語だ。 君の神様になりたい 作詞:カンザキイオリ 作曲:カンザキイオリ 編曲:カンザキイオリ 「僕の命の歌で君が命を大事にすればいいのに」 「僕の家族の歌で君が愛を大事にすればいいのに」 そんなことを言って本心は欲しかったのは共感だけ。 欲にまみれた常人のなりそこないが、僕だった。 苦しいから歌った。 悲しいから歌った。 生きたいから歌った。ただのエゴの塊だった。 こんな歌で誰かが、救えるはずないんだ。 だけど僕は、君の神様になりたかった。 こんな歌で君のジュグジュグ腐った傷跡が埋まるもんか。 君を抱きしめたって、叫んだってなにも現実なんて変わるもんか。 がむしゃらに叫んだ曲なんて、僕がスッキリするだけだ。 欲しかったのは共感だけ。でも君も救いたかった。 僕は無力だ。僕は無力だ。僕は無力だ。僕は無力だ。僕は無力だ。 ボロボロに落ちて落ちて落ちてかさぶたになった傷で 誰かと喋ってみたかったんだ、馬鹿みたいな話。 「あなたに救われました」と「生きたいと思いました」と ああそうかい、変わったのは自分のおかげだろ。よかったな。 子供の頃は自分も素敵な大人になると思っていた ていうか素敵な大人になって自分を救いたいっておもってた 時が経ち僕が成すのはボロボロの泥だらけの自分で 生きるのに精一杯。ゲロ吐くように歌う日々だ。 何度だって歌った。かさぶたが剥がれるほど歌った。 生身の僕で、君の神様になりたかった こんな歌で君のジュグジュグ募った痛みが癒せるもんか。 君を抱きしめたって、叫んだって君が苦しいことは変わらないや グラグラで叫んだ曲なんて、僕も実際好きじゃないや 欲しかったのは共感だけ。それじゃ誰も救えないや。 僕は無力だ。僕は無力だ。僕は無力だ。僕は無力だ。僕は無力だ。 生きた証が欲しいとか、誰かに称えて欲しいとか、 そんなのはさほど重要じゃない。どうせ落ちぶれた命だ。 誰かを救う歌を歌いたい。誰かを守る歌を歌いたい。 君を救う歌を歌いたい。 無理だ。 君は君が勝手に君のやりかたで幸せになれる。 こんな歌で君のジュグジュグ腐った傷穴が埋まるもんか。 君を抱きしめたい、叫んであげたい君の傷跡も痛みも全部。 でも所詮君は強い。君はきっと一人で前を向いていくんだ。 それならばいい。だけどもし涙がこぼれてしまう時は、 君の痛みを、君の辛さを、君の弱さを、君の心を、 僕の無力で、非力な歌で、汚れた歌で歌わしてくれよ。 僕は無力だ。僕は無力だ。僕は神様にはなれなかった。 僕は無力だ。僕は無力だ。無力な歌で 君を救いたいけど、 救いたいけど。

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君の神様になりたい【カーテンコール】

君の神様になりたい【第 15歩】

大規模規制があける。 そう聞いたのはそれから間もない時だった。 周りはその話題でもちきりだった。 VIP+にようやく戻れる。 ただ、俺はVIP+には戻る気は無かった。 今まで随分と色んな回り道をしたが 始まりはこのスレだった筈だ。 俺がコテハンとして産声を上げたスレ VIPのコテ雑が危機なら 規制があけて俺が先ず向かう先はそこだ。 シベリア板にもVIPのコテが何人もいる。 この規制があけてシベリアやクラウンから VIPのコテ雑に大半が戻って行くだろう。 まんちゃんも潰れかけたコテ雑の復興に力を貸してくれる と言ってくれた。 戻ってくるコテだけじゃない ここまで諦め無かった【エルティ】を含めた古参連中。 それでも人がまた集まると信じ続けた 【俺様】や【レバニラ】の新参連中。 VIPコテ雑に 再び火が灯った。 俺もこのタイミングで【不可視の血戒】の名前を捨て 【不可視のアイギス】を名乗りはじめた。 初代は随分前に完全に居なくなってしまったし 初代を知る人間も、もう数える程度にまでなっていた。 以前から【不可視のアイギス】の名前を継ぐと公言していた。 【アイギス】を殺さない為にも。 この世界から【アイギス】を消さない為に、例え出来の悪い贋作だろうと、この名前と呪いをこの世界に留めておく為の生け贄。 あの【アイギス】の言葉とその命題を背負いながら歩む装置。 この規制を乗り越えたタイミングで 俺は2代目不可視のアイギスになった。 以前より、野次の声が小さくなっていたのは意外だったけれど もう以前よりも迷いがなくなっていたのは 俺の中で1つの答えを見出したからなのだろう。 【不可視のアイギス】になりVIPのコテ雑に戻った。 昔からいる者、新たな者達によるコテ雑が始まった。 直ぐに問題は浮き彫りになった。 ここは個性を主張する人間達が織り成す楽園 ならばその問題は必然だった。 …昔から円滑にコテ雑が回るシステムを 好ましく思わない者が現れ始める。 前からこの場にいた者達は その個性達が皆、出来うるだけその個性を損なわれない程度で スレッドを円滑に回る様にと 思案に思案してきたルール これを重んじてきた。 新たに来た者、前からこのシステムに不満を抱いていた者達は ここぞと言うように不満を募らせていた。 コテ達の、生きる指針を示す為の必然。 それがコテ雑だ。 それが新たな人間達には理解出来なかった。 このシステムを良く思わない人間達の理屈も理解できる。 郷に入っては郷に従え、示す方も従う方もこれほど楽な事はない。 だが、これは郷と共に歩んだ者が 本当の意味で理解できる理屈なのだろう。 それを理解するには、新たなコテ達には時間が足りなさ過ぎた。 この反発は新たな因縁を生んだ。 既存のコテ、新たなコテ達、全てのコテ達の為のルールだったが 全てのコテ達が平等に束ねられた訳では無かった。 はじかれて潰されたコテ達の怨念を まんちゃんが背負ってくれた。 まんちゃん主体のコテと名無しのレクリエーション会場 通称コテレクは出来上がり 以前からコテ雑に相容れない者達と共に袂を分かった。 そして対立は表面化していく。 匿名掲示板ここで名前欄を埋めて生きていく意味。 個を主張して歩む事。 これは言うほど楽な事じゃない。 今でこそTwitterやそれに通づるツールが存在し 名前欄を埋める事は周知された事だろうが そういったモノがまだ珍しかった昔。 これまでずっと、名無しから匿名からコテが忌み嫌われていた 理由はその歪さにある。 いや、世界とその存在そのもに矛盾をはらんでいたからだろう。 だからコテ達は寄り添って生きなきゃ行けなかった。 コテの寄り添う場所で 新たなにコテ達の主張がわかれ そこでまた、新たなシステムが出来上がる。 そうして出来なかったのがコテレクなら。 出自の違うシステム同士が相容れる事は無かった。 どちらかが、どちらかを屈服させるだけだ。 コテ雑とコテレクの確執は今もまだ続いている。 なぜ、みんなの為を思い、出来あったはずのモノなのに なぜ、傷つけ合わなければ、いけないのか…。 なぜ、否定し合わなければ、いけないのか…。 答えのない空を仰ぐ。 アイギス、うらないさん。 あなた方が俺にしてくれた様に 俺は、コテ雑の為に あの子達の為に一体、何ができるのでしょうか。

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君の神様になりたい【第  15歩】

君の神様になりたい【第 14歩】

全ての者が平等に追いやられた。 コテも名無しもその口を塞がれ足を縛られた。 だが、例え口を塞がれようが足をへし折られようが 歩みを止める事はままならない。 何故なら、それが歩みをはじめた成り行きなら、その成り行きの果てにある結末を変える事などできはしない。 それで、歩みを止めてしまうのなら それがその者の結果でしかないのだろう。 結果がどうあれ 歩みはじめた事実をねじ曲げる事ができないように。 ただ、それを背負い歩むだけである。 ラウンジクラシック 通称クラウンに追いやられた主要コテハン達。 彼等が居なくなったVIPやVIP+のコテ雑は まるで火が消えた様に静まりかえっていた。 運が良くても3桁行くかどうか 通常で2桁、人が居ない時は2桁も行かずに 消え落ちてしまうコテ雑。 コテハン達の城、公園なと形容された以前の華々しい姿は もうどこにも無かった。 日に2,3人、数レスして落ちるコテ雑が続いた。 コテ達と同様、この由緒あるスレッドも 消えてしまうものばかりだと……。 あんなに人で賑わっていた場所も消えて無くなる時は呆気ない。 そんな事を思っていた。 コテ雑が消えてしまうか否か 危ぶまれた時、そのスレッドを回していた 主要コテ達はどうしていたか。 何も出来なかった。 俺や彼等もこの規制でこの板から動けずに 自分達が育ち学んできたスレッドの終わりをただ、ただ指を咥えて見ているしか無かった。 天災にも似た破滅。 多分、地震や火事で自分の家や慣れ親しんだ建物が倒壊する時はこんな気持ちなんだろう。 誰に怒りをぶつけるわけでもない、憎むわけでもない。 焼け落ちる場面を静観するしかない感覚。 みんな、この光景を見て何を思い感じていたのだろう。 俺自身、何も感じなかった。感傷すら。 多分、リアリティが無かったんだと思う。 コテ雑から人が消えて その存在すら消えかけている風前の灯のあのスレを。 …話しをスレッドから人に戻そう。 VIPのコテ雑が消えかけている時 クラウンのコテ雑では久しぶりに【うらないさん】と話していた。 話していたというより、何時もの説教かな。 【うらないさん】は俺が敬語を使う事が気に入らない様子だった。 特に【うらないさん】自身に向ける敬語 「何故、お前は俺に“さん”付けや敬語で話すのか 俺には理解できない。」 との事。 考えた事も無かった。 【うらないさん】自身、敬語を向けられる事に その当時慣れて無かったわけはないはずなんだけど。 それでも、俺との会話は居心地が悪かったのだろう…。 馴れ合いを嫌う気質か環境か この場所やコテとしての立場に 上下関係はないのは十分に理解できる。 憎まれ口を叩きあったり貶しあった仲だが、 それでも、俺にとっては 【うらないさん】は先輩であり、色んな事を教授してくれた 経緯を持っていたから、そういう敬意を本人に分かりやすい様にと 示す、所作としての行為だったんだけど 向けられる側は気に入らないらしい。 ………難しいな。 相手を思ってやっての事だけど どうやら、俺の気遣いは彼にとっては迷惑な事だったなら 直すか。 そもそも、これは俺が居心地がいいからというより 相手を思っての事だから向けられる相手が嫌なら改めるしかない。 俺は自分が使う 敬語やレスポンスについてちょっと真剣に考えてみた。 そしてこれ以降【うらないさん】の事は 【うらない君】と、他に敬語を使っていた 【夕凪さん】や【ゲソさん】の事も君付になって そして以降敬語を止めた。 ここに上下関係はない… ……のではなく必要ないんだ。 俺が敬語や丁寧語で人を煽る その時点で煽りや叩きとしては矛盾している。 相手と自分自身には対等な立ち位置ではなくなってしまうから。 今まで深く考えていなかったし 既に癖みたいになっているから直すのにちょっと苦労はした。 ……【うらないさん】もっと早い時期に言ってよ。 さて、クラウンでこんな平和な事をやってる中 VIPコテ雑は平和とは程遠い 存亡の危機にまでなっていた。 もう誰もが諦めた時 消えかけたコテ雑の為に立ち上がったコテ達がいる。 【俺様】というコテを筆頭に 【レバニラビリー】やその当時、新参のコテ達だった。 俺はこの事についてあまり知らない。 何故なら彼等が奮闘している時 クラウンのコテ雑から動けなかったから。 ただ、彼等が消えかけているコテ雑の為に 頑張っていたのは耳に入っていた。 いづれ、この規制があけると信じ 人を集め場を整えていた。 彼等の頑張りからは 遠い昔。 自分がこの世界に夢中だった あの輝かしい、新参時代が重なって何故か少し嬉しくなった。 今の俺は彼等を陰ながら支持する事しかできないけど この高揚感や意味のわからない使命感は多分 受け継がれていっているのだと。 また、意味のわからない達観した気持ちに彼等にエールを送った。 それと同時に、今までモノクロでボヤけていたコテ雑の危機が 色をついてハッキリとした輪郭で認識出来始めた。 俺もあの場所に戻らなければいけない。

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君の神様になりたい【第   14歩】

君の神様になりたい【第 13歩】

昔馴染みのコテに別れを告げたと思えば新たなコテと出会う。 【四貫谷】の一件があったすぐあとに 俺は2人のコテと出会った。 1人は、【まんちゃん】というコテ。 もう1人は【千尋】というコテだ。 【まんちゃん】とは、コテ雑に代わるコテハンのコミュニティ コテレク(コテと名無しのレクリエーション会場)を 規制で滅びかけたVIP板に作り、そこの顔役にまでなった人。 この時から【まんちゃん】は気さくで誰に対しても平等に接し リーダーシップもあり、皆から愛され コテ雑でいうと【エルティー】によく似ていた。 今にして思えば【まんちゃん】がコテレクという城を築き そこに人が集まるのは当然いえば当然だった。 【まんちゃん】は色んな場所を転々と渡り歩き ここに辿り着いたらしい。 ラウンジクラシックinコテ雑。 素養か素質か【うらないさん】やVIP+の面々とも 相性は良かったのだろう。 【まんちゃん】は直ぐにこの輪の中に違和感なく溶け込んだ。 【まんちゃん】も多分、このスレが居心地がよかったのだろう。 そのまま、このスレに居着いてくれた。 もう1人は【千尋】というコテと出会った。 出会ったというより【千尋さん】が俺の元に赴いたのかな? この【千尋さん】にはもう1つ顔がある。 種はだいぶ前に暴いた。 そう、この人こそ以前 【アイギス】に成りすましていた偽物だった。 俺と【千尋さん】の間に心配なって駆けつけてくれた 【塩なめくじ】というコテが立ち会い人になってくれた。 この【塩なめさん】は本物のアイギスを知っていて 以前から天国板とVIP+の板を行き来していた。 【アイギス】とも俺が出会う前から交流があり 【アイギス】の事を尊敬しているコテの1人だと言っていた。 俺が【不可視の血戒】を名乗った時も 【塩さん】は 「自分の師匠の死体から皮を剥ぎ取り、それを得意気に着飾り踊る お前はやっぱり無だね無」 と本気で嫌悪感と怒ってくれた。 偽物アイギス、【千尋さん】と偽物アイギスの俺が向かい合う。 【塩なめさん】は黙ってその様子を見ていてくれた。 【千尋さん】と少し話した。 【千尋さん】は最後には 「もう二度と【アイギス】はやらないよ」 と、俺に約束してくれその場から去った。 以後、【千尋さん】の姿を見る事は無かった。 「また、お前らがしょうもない喧嘩するかと思ったぁ。」 俺の隣で安堵のため息を【塩なめさん】が漏らした。 喧嘩……。いや、俺は怒ってはいない。 【千尋さん】も俺と同じなんだ。きっと。 【千尋さん】が何故【アイギス】に成りすましたか。 【アイギス】になろうとしたのか。 ……今なら少しわかる。 【千尋さん】も生前の【アイギス】と 刃を交えていたと【塩なめさん】からは聞いていた。 きっと【千尋さん】も【アイギス】に 憧れを抱いていた1人だろう。 コテの事を、エンターテイナーと形容する人はいるけど 俺は少し違う。 俺は、コテとはクリエイターなんだと思う。 だから、そのコテに魅せられたコテは その人を真似るしパクる。 煽りだろうと、議論だろうと 馴れ合いだろうと、ネタだろうと…。 その、コテが創り出す空間に魅せられ焦がれる。 そのコテになりたいと慟哭する……。 【アイギス】を知って【アイギス】を真似た俺に 本気の憤りを見せた【塩なめさん】 【アイギス】の強さを知って 【アイギス】になりたいと渇望した【千尋さん】 根底にあるのは、やっぱりどちらも 【アイギス】が好きだという一心だろう。 ……ならば、俺と同じだ。 怒る理由なんてない。 【千尋さん】が【アイギス】を真似 【アイギス】になり代わろうとした道理も…… ………わかる。 【塩なめくじさん】と【千尋さん】と別れ また時間が少し流れた。 VIPではコテが居なくなりコテ雑の存亡の危機が囁かれていた。 具体的には人が規制のせいで居なくなり コテ雑のスレッド自体が立たなくなった。 例えコテ雑のスレッドができたとしても 数レス、数分で消える。 過疎化が致命的なレベルまで進行してきた。 VIPからコテ雑が消える。 一大事だったが、この頃の俺達は此処から出れない。 どうする事もできないでいた。 VIP+の仲間に聞いてみた コテ雑がなくなったらどうするのかと。 あっけらかんと 「ここがコテ雑になるだけだろ」と答えが返ってきた。 確かに、ここはもうラウンジクラシックだが 「コテ雑」と銘打ったスレでいつもどうりの面子、コテ達がいる。 VIPからも数名、こちらに移住していた。 こちらが正規のコテ雑と言われても不思議じゃなかった。 その現状に俺達は甘えていた。 どうする事もできない じゃあ、なる様になるだけ……と。 そんなある日、体たらくな古参連中を後目に コテ雑の為に立ち上がったコテ達がいた。 【俺様】【レバニラビリー】を筆頭に 当時はまだ新参のコテ達だった。

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君の神様になりたい【第   13歩】

君の神様になりたい【第 12歩】

VIP+に戻りまた時が流れた。 彼はその間に自分で毎日スレを立て、+の名無しやコテと戦った。 後輩も沢山できた。 後輩達を見て、自分はもう新参ではないんだなと改めて感じた。 自分の新参時代と人も入れ替わり、新たな面々。 VIP+だけではなくVIPのコテ雑でもそうだった。 これをあと、何度繰り返すのだろうと 思う事が増えたが 新たな後輩達は自分の時代の同期とはやっぱり違い 別の楽しみが増えた。 ………が。 ここで、また大規模な規制がVIP+とVIPに押し寄せた。 ✱ 2ch(2ちゃんねる)」といえば、利用者の数が数百万人にも登ると言われている巨大掲示板サイトである しかし利用者が多い分、誹謗中傷や荒らし行為なども起こりやすく そこで2chでは、ユーザーの書き込みを規制するシステムを導入している。 2chを利用している人のなかには、突然書き込めなくなってしまう様な事がある 2ch全体において慢性的に有料プラン利用者以外は ほぼ書き込めない状態が続き 2ch全体の書き込み数が激減する状況が長引く結果となり 有料者が増加したことから運営も故意にこれらを放置 さらに規制を激化させ状況が長引くこととなった。 これが大規模規制である。 小規模な単発的規制はちょくちょくあってはいたが それとは比べものにならない大規模な規制だった。 VIPだけではなく+にまで書き込めない。 彼はシベリア板に避難した そこでは彼と同じ、避難してきた者で溢れかえった。 「コテ雑も過疎化が進んでいたし、このタイミングの大規模な規制で、ほんとに無くなるかもなコテ雑」 そんな声が聞こえてきたが 【み】というコテが逃れたコテ達の為に ラウジクラシック板に居場所を作ってくれた。 「この場所からコテ雑を再建したいんだ」 【み】の意欲に賛同するコテ達は多かった。 この規制には戸惑ったが 【うらないさん】もそこにいた。 彼は【うらないさん】の姿を見て少しほっとしていた。 特に、【うらない京】を筆頭にVIP+のコテ達はほとんど この、【み】の提案に移住を決意。ついて行った。 彼もその内の1人だが ラウンジクラシック、後にクラウンと呼ばれるこの板には こんな事でもない限り知る事は無かっただろう。 だが、どんな場所でもいい。 何故ならどんな場所であろうとも それを取り巻く人間達は変わりない。 変わりないなら、ここも変わる事はない。 VIP+のコテ雑、そのままだった。 クラウンのコテ雑が始まった。 ある時、1人のコテがこのコテ雑の為に クラウンまで足を運んでくれた。 四貫谷 【四貫谷】と他のコテは変わらず絡んでいた。 【四貫谷】も前から彼の存在には気付いて居ただろう。 変わらぬ【四貫谷】の姿と【四貫谷】を見る周り。 思い切って彼は【四貫谷】に尋ねてみた。 「これから先、もう四貫組みたいなものはしないのか?」 少しうつむきながら【四貫谷】は 「もう、しないよ。」 「俺のわがままで、色んな人を巻き込んでしまった 申し訳ないと思っている」 「色んな人を巻き込んで、色んな事で悩ませてしまった 俺のせいで」 「もう、こんな思いはしたくないんだ」 「ムアイクもごめんな、俺のせいで。」 【四貫谷】はバツが悪そうに答えたあと、彼に頭を下げた。 …………ふざけるなよ、ふざけるな。 −四貫谷。 君は何も無かった彼達の為に 古参達に追われる新参達の為に あれだけやってくれたじゃないか。 君が謝る必要も、負い目に感じる必要もない。 君を守ると言った、君の夢を共に守ると決めた。 君の仲間を………守ってみせると 誓ったはずなのに。 何も守れなかった。 無責任に約束をして レスポンスも届かない遠い未来から 「あの時は弱くて、ごめんなさい」 はないだろう。 責められるべきなのは 謝らなきゃいけないのは この、嘘つきだろうに、このホラ吹きだろうに。 ふざけるな。 【四貫谷】君は何も悪くない。 君が謝る必要はないんだよ 負い目に感じる必要も 悪いのは全部、俺だ。 ……ごめんなさい ……ごめんなさい。 「……そうか。」 その一言だけを告げ、謝る【四貫谷】の脇を通り過ぎた。 俺が早々に【四貫谷】の前から去ったのは 頭を下げる【四貫谷】の肩越しに映る あの輝かしい日々の片隅にいる あの頃の無力な自分自身をこれ以上 見るのが耐えられなかったからだ。 【四貫谷】と別れ俺は歩む。 身体は剣で出来ている 血潮は鉄で 心は硝子 幾度の戦場を越えて不敗 ただの一度も敗走もなく ただ一度の勝利もない 担い手はここに1人 剣の丘で鉄を打つ ならば、この生涯に意味はなく −この身体は− 自分の行く末はわかった。 ネバーランドを失った 無力なティンカー(鍛冶屋)は ピーターパンと別れ歩む。 始まりを踏み抜いたからには進み続けるのが道理。

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君の神様になりたい【第   12歩】

君の神様になりたい 【第 11歩】

生き物苦手板に着いた。 ここでも同じ。 ただ、ここでは煽りと一緒に 猫の虐待画像を投げつけられた。 このコテ雑で【クロネコ】というコテと仲良くなった。 彼はこれまでの事を【クロネコ】に話した。 【クロネコ】は言う 「本物と偽物ね。 ………お前面倒臭いな」 【レミオロメン】も同じ事を言っていた。 どうやら彼は他人から見たら 総じて面倒臭いらしい。 【クロネコ】はそれを聞いても 彼に対して態度を変える事は無かった。 「なぁ不可視、お前が本物に勝っているところはどこだ?」 本物に勝る? 考えた事もない。 本物と並べる事自体、烏滸がましいのに。 【クロネコ】は続ける。 「本物じゃ、味わえない感情。 それは偽物ゆえの劣等感や 本物へ近づきたいと言う意欲だろ? 勝ち負けは置いといて 本物には絶対に味わえないものだ 偽物じゃなくちゃな」 偽物でしか分からない事。 …… 彼が到達する場所、するべき所。 本物に憧れて 本物になりたいと願う感情 真似する事を恥じて 本物には決してなれないと思う感情。 受諾と拒絶の狭間に多分 彼のコテとして到達するべき答えがある様に感じる。 ……ならば…どこだ。 始まりはどこだったか……。 敵を求めた時か? … 違う。 【うらないさん】の姿勢を見た時か? … 違う。 降り掛かる火の粉に抗う為か? … 違う。 【アイギス】に武器をもらったからか? … 違う。 もっと、前。 彼が強くなりたいと 今の彼を形成したものはなんだ? 強くならなきゃいけなかったのはなんだ? 仲間が………友が………。 仲間を助けたかったからじゃなかったか? ……だから、強くなろうと決めた。 ならば始まりは、この現状を打破したいと、強くなろうと決めて。 強くなるために、歩みを進めた瞬間だろう。 強くなろうと足をあげて 大地を踏み抜いたその瞬間に 今の彼は始まった。 動機や理由付けなんて 幾らでもデコレーションできる。 だから、そこに真実があるかどうかなんて重要じゃない。 歩みを始めた瞬間こそに真実はある。 そこにしか真実はない。 ならば、彼の到達するべき場所はそこだ。 生き物苦手板で【クロネコ】というコテと出会い 自分自身を見据えた。 ここでも、長い時が流れ やるべき事はやった。 【クロネコ】にお礼を言って 「またね。」と告げた。 【クロネコ】はもう二度と来るなよ。と言い 虐待死の猫の画像を投げて見送ってくれた。 彼はVIP+に戻る。 【夕凪さん】が迎えてくれた。 「長旅お疲れさん。 で、どうだった?何か見つかったか?」 と 言い出しっぺがよく言う。 ただ、この遠征で色んなコテに出会え、色んな言葉、考え方に出会えた。 この、旅自体やってよかった。

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君の神様になりたい  【第  11歩】

君の神様になりたい 【第 10歩】

【わふーさん】と別れて天国を後にする。 彼はオカルト板にいた。 オカルト板のコテ雑。 昔、この板ではコテと名無しの間に何かあったのだろう。 そこらじゅうの雑談スレは 「コテ禁止、コテ禁止」と銘打っていた。 その中で見つけたコテ雑。 この板のコテ達もまた一筋縄ではいかないだろうか。 そんな事を思いながらも彼の頭の中ではあの【わふーさん】の言葉が何時までもこびりついていた。 「今の姿を鏡で見てみろよ」 「お前が言うな」 彼はまだ【不可視の血戒】の名前を捨てる事が出来なかった。 まるで、映画や紛争地域のニュースで流れている高架下に吊された首吊り死体の、のれん。 コテハン禁止の羅列はそういう風に見えた。 その、悪趣味なのれんを潜りオカルト板のコテ雑に入った。 ここでもやる事は同じだ。 ここに留まり、この板のコテ達と戦う。 煽りと一緒に心霊写真を投げつけられた時は お家柄だと思った。 時が流れる。 彼もこのコテ雑の一員となり、このスレのコテ達と多いに戦い、そして仲良くなった。 仲良くなった1人に【レミオロメン】というコテが居た。 【レミオロメン】は彼に問う。 「なあ、不可視。幽霊も死ぬと思うか?」 はぁ? 死んだから幽霊になったんじゃないの? 【レミオロメン】は得意げに応えた。 「と、思うだろ? そうじゃない、幽霊も死ぬんだよ。」 【レミオロメン】は続ける。 「こういう話しがあるんだよ。 ある、霊感がある男の話しなんだが この男は死んだ人間が見える 見えるしわかる。 この男が何気なく、公園の脇の道を歩いていたら その公園の一角に数十匹のハトが群がって 何かを啄(ついば)んでる所に遭遇した。 初め、虫とかゴミでも漁ってんのかな? と思った男は、そのハト達が群がる真ん中を見てギョッとした。 そこにあったのは、人の頭だったんだよ それも普通の人の頭部じゃない。 半透明で顔の半分くらいまでハトに食べらて虚空を見つめていた。 こちらに気付く素振りもない その姿から、男はその頭が この世のものじゃないと直ぐに理解したが その珍しい光景にちょっと見ていこうと足を止めて見ていた。 髪型や装飾品から落ち武者だろうか。 多分、ずっと昔に死んでしまった人間だろう。 この人の事を、知っている人間はいるのだろうか そもそも、この人は自分自身の事を覚えているのだろうか? 何故死んだのか、何に未練があったのだろうか。など そうこうしていたら、ハト達はとうとうその頭を綺麗さっぱり食べ尽くしてしまった。 後には何も残っていない 何故、ハト達がそれを食べていたのか分からない。 そこに初めから何もなかったように綺麗さっぱり 何もなくなっていた。 ハト達も食べて終わると何処かに飛んでいってしまったし、その頭も消えた。」 お前これどう思う?……と。 話を聞く前は、バカみたいな話しと思っていたが 【レミオロメン】は続ける。 「肉体が滅ぶのは本物の死なんかじゃない。 この人は肉体が滅び、誰からも覚えられてもいない。 本人ですら自分の死、自分が何者であったかすら覚えていない。 世界と自分からすらも 忘れられる事 それが本物の死だ。」 ……と。 彼はそれを聞き、ポツリと【レミオロメン】に呟いた。 「……コテの死とは いったいなんだろう?」 【レミオロメン】は彼の呟きを聞いて答える。 「この霊と同じだろ。 死ぬんだよ。 この世界からも、みんなからも忘れられ 時間と共にログ(過去の書き込み)も消える。 何れ、自分も忘れてしまう。 そのコテが存在していた記録が無くなり それと同時に記憶も薄れて行く。 何を語ったか、何を思ったか そんなものも全部ひっくるめて消える。 それが、死というものならな。」 ………と 死か………。 【アイギス】も【うらないさん】も何れ 死んでしまうのだろうか。 彼は【レミオロメン】に自分の事を話す。 自分は【不可視のアイギス】という先輩を真似ている事。 そのコテが自分の師である事。 今、自分がやっている事。 色んな人に出会った事。 色んな事があった事、この名前を捨てしまおうか悩んでいる事。 【レミオロメン】は黙って静かに全部聞いていてくれた。 コテの死が、この世界に忘れられてしまうなら。 【アイギス】の死はこの世界からも みんなからも忘れられてしまう事。 いいのかそれで? 【アイギス】は、忘れ去られて消えていいコテなのか? ………違うだろ。 この名前を捨ててしまおうと思っていた。 別に、この名前を捨ててしまった所で 【アイギス】から受けた恩を、忘れるわけはないけど。 彼はこの名前でいる事で【アイギス】に迷惑をかけるなら 捨ててしまおう……そう、思った。 だが、コテの死が 【アイギス】の死が、この世界に忘れられる事 みんなに忘れられてしまう事なら 彼が【不可視の血戒】【不可視のアイギス】を名乗る事にも意味がある事、なんじゃないのか? 彼はどう足掻いても 【アイギス】になれない 【アイギス】を超えるコテにはなれない。 粗悪な贋作、偽物。 この、偽物にも意味をもたせるなら 彼が本物と比較され 「本物と違う、本物の足もとにも及ばない」と 石を投げられる事で 本物が【アイギス】がみんなの記憶に残り 生き続けるなら…………。 それでいいんじゃないか。 【アイギス】から色んなものをもらった。 【アイギス】から大切な事を教えてもらった。 彼が【アイギス】の為にできる事 恩を返せる事があるとするなら 本物の威光を皆の記憶や心に留めておく事。 レプリカの意味なんてそれで十分だろう。 ならば、この名前をこの世界に語り続けよう。 命ある限り。 【レミオロメン】に自分の考えを伝え この、名前をやっぱり続けていく事を伝えると 【レミオロメン】は 「俺もコテ歴長くて、色んなコテを見て来たけど お前ほどめんどくさいコテは居なかったよ お前が自分の恩人を生かし続ける為にその名前で居続けるなら 元のお前は お前の前のコテは死んだのか?」 そう彼に聞いてきた。 どうだろう。 惜しまれる存在じゃなかった 誰かの役に立たつ様な、誰かを導いてあげれる様な……。 【アイギス】や【うらないさん】の様な 価値のあるコテじゃ無かった。 それを聞いた【レミオロメン】は 「なんか、悲しいなそれ」 一言、彼に呟きその場を後にした。 ……この名前を捨てる事をやめた。 【アイギス】をこの世界が忘れない為に この、世界の人間達が出来の悪い贋作と本物を比較する事で 【アイギス】を思い出し【アイギス】の記憶を この地に留めておく為に 彼はこの名前を纏った。 それは、冒涜に等しい行為かもしれない 他者から見れば 恩人の、自分の師の死体から皮を剥ぎ取り それを纏う行為。 アイギス自身を彼に問うた。 ……それに意味はあるのか?と 確かに、【アイギス】を纏う事で 自分が強くなったと錯覚して 良い気になった、時もあった。 愚かにも誇らしかった時も。 ただ、そんなファッション感覚 ハリボテの偽りの強さなんて 直ぐに恥へと変わった。 【アイギス】は新参時代の彼へ教えてくれた。 これは呪いなのだと。 …………… 人が居て、武器を持ち、おままごとをするなら その道は困難なものになるだろう ………………。 呪い ならば、彼はこの呪いに向き合うべきだろう。 見て見ぬをして 知らないと誤魔化して進むのは簡単だ。 強さに憧れた。 強い人と出会った。 強い人に憧れた。 強い人を真似て、自分も強さを手に入れたと、自分を誤魔化した。 違う。 そこに、強さなんてない。 彼が憧れた、強い人はこんな場所にはいない。 この名前を継ぐ事で【アイギス】をこの世界に留めておく事で…… ……彼がこの世界から、この世界の住人から石を投げられる事で。 これはこの名前 この、コテへ憧れを抱いた事への対価 罰ならば 甘んじて受けよう。 恥と共に絆を背負い歩む。 もうそれだけの命だ…。 オカルト板を後に生き物苦手板へ向かう。 【レミオロメン】には もう、めんどくさいから二度と来るなよ と言われたが 最後まで手を振り続けてくれた。

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君の神様になりたい  【第 10歩】

君の神様になりたい【第 9歩】

初心者質問板の煽りスレは十分に堪能できた。 次に向かうは天国板。 アイギスとの思い出の地。 始まりの地。 天国板に着いて彼は驚愕した。 そこには【アイギス】が居た。 【アイギス】がその板の名無しを好き放題殴り スレを蹂躙し、荒らしていた。 その姿を見る前から レスポンスを観察したら【アイギス】を知らない人間でも直ぐにわかる。 【アイギス】に成りすました偽物だった。 彼は堪らず前に出てその偽物を殴る。 偽物は彼の名前やレスポンス スタイルを見て一瞬怯むが なんだ、その名前はと偽物は彼を笑った。 その姿に何も感傷はない。 野次を飛ばす、その他大勢の有象無象と代わりない 彼は無言で近づき、偽物を殴り飛ばした。 偽物と彼の戦いが始まる。 終始、彼が押していたと思う。 冷静に見て、彼に技術で差を見せ付けられている偽物は、本物の【アイギス】の足元にすらも及ばない。 敵を好き放題に殴れる爽快感や愉悦よりも この時の彼は怒りのままに偽物を蹂躙していた。 そこには、マナーも相手に対する礼節もなく ただただ、怒りの赴くまま言葉の暴力で殴る。 本物の【アイギス】には遠く及ばない 【アイギス】と名前欄を埋めているだけの相手を見るのもこちらが恥ずかしくなるほどに 技術も言葉も偽物の悲鳴ですら彼の神経を逆撫でした。 ただただ、殴り続けた、怒りの感情以外、無感情で。 数時間、殴り続けて堪らず偽物は退散した。 周りを囲むオーディエンスは戸惑っていただろう。 相手を退けた満足感より この状況は何のかと……彼や【アイギス】が消えて数年経った。 当時からいる名無しはまだ居ただろう。 例え当時を知らない人間が居ても、この板を造ったひとりのコテ。 あれが偽物であるのは明白だっただろうに。 ぼう然とそんな事を考えていると 【わふー】という、この板のコテが声をかけて来てくれた。 【わふーさん】は新参の頃の彼が天国板に流れつく前 彼が【アイギス】の事を知るずっと前からこの板に居着き、ずっと天国のコテをやってきた1人だ。 何でも天国板創設の頃よりもここに居て、昔の【アイギス】と何度も戦ったらしい。 ここに着たばかりの新参の彼にも良くしてくれたし 当時から馴染みある先輩コテだった。 ゲームが好きで、マンガが好きで、スレのマスコットみたいで レスポンスから幼さを醸し出すが、その実、洞察力や比喩表現はずば抜けており レスポンスの幼さを持ってしても、その思考の成熟さは大人を感じさせた。 【わふーさん】は戦いが終わり、ぼう然と立ち尽くす彼に言う。 「久しぶりだな、どうしたの?」と ……どうしたのでは無い。 「何があったんですか? なんで【アイギス】の偽物が荒してるんですか!」 【わふーさん】はバツが悪そうに 「あー……」と応えるが、【わふーさん】が答える終わる、間もなく彼は が成り立てる。 「【わふーさん】はこの状況、静観してたんですか? いいのこれ?」 何を語ったか覚えてない、ないが。 偽物に、ぶつけた怒りでは治まらず 怒りの残り火を【わふーさん】にぶつけたのは覚えてる。 【わふー】さんは少し時間をおき ゆっくりと彼の怒りに返した。 宥める様に。 「なんで、お前憤ってんの?」 は? 「当たり前だろ!【アイギス】を真似されて【アイギス】には程遠いお粗末なレスポンス見せられて。 ここを荒してたんですよ! 【わふーさん】は腹が立たないの? というか、なんで何も言わないし、何もしないんだよ!」 【わふーさん】は彼のレスポンスを見て こう応えた。 「いや、お前が奴に怒ってる理由がわからん。 お前が、偽物が気に入らない理由と同じ様に、俺も今のお前事が気に入らないし理解できないから言わせてもらうけど。 お前が言うな。 お前が本物のアイギス アイツと何があったか知らないし、お前が本物のアイツをどう思っているか知ったこっちゃない。 だけどお前、自分の姿を鏡で見て見ろよ。 【不可視の血戒】だか、なんだか知らないが アイツの仮面をつけて、アイツのスタイルを真似て、アイツの武器を振り回す。 偽物君と何が違うの今のお前? それとも何か? 本物のアイギスがお前に頼んだのか? 『自分の偽物が現れたら俺の代わりに退治してくれ』って 違うだろ、少なくとも自分の真似して自分の偽物を倒してくれなんてそんなバカみたいな事、アイツはお前に頼んでないだろ。 今のお前に偽物を責める資格なんて無い。」 だから、お前が言うな。 …………と。 【わふーさん】は本物の【アイギス】を知っている。 彼が【アイギス】と出会う前から。 ………何も言い返せ無かった。 そう言うと【わふーさん】は いたずらそうに無邪気に笑った。 少し時間が流れた、彼はまだ天国に居た。 その間、【わふーさん】が言った事がずっと頭の片隅にこびり付き彼を攻めていた。 その間、も【わふーさん】は自分のスレに彼を招き入れ 行き場のない彼を置いてくれた。 色んな話しを聞いてくれた。 また偽物が現れた。 板のスレを荒し回る偽物。 【わふーさん】を見たら 偽物には目もくれず、やっぱり無邪気に笑っていた。 …………俺が行くしかないか。 彼は偽物の前にもう一度出た。 お前憐れだな お前が言うな 【わふーさん】の言葉が頭の中を巡る。 偽物が襲いかかってきた、防戦一方だったと思う。 偽物の攻撃を返しても【わふーさん】のあの言葉が彼に刺さる。 上手く戦えない。 嗚呼、ダメだ………。 負けを覚悟した時、この戦いに割って入ってきた者がいた。 【不可視のアイギス】 …………3人目の偽物か…。 割って入ってきた【アイギス】は彼に目もくれず 偽物に襲いかかった。 3人目か、いや。違う。 確認するまでもない このレスポンスはこの人は、本物だった。 紛れもない彼の知ってるあの【アイギス】だった。 彼に武器をくれた、彼に武器の使い方を教えてくれた。 彼の師……。 目指すべき高見、尊敬する先輩コテだ。 話したい事は沢山あった、なんで居なくなってしまったのか? 貴方と別れて色々あった、色んな人と出会った。 あれからの事……。 でもそれよりも、彼の口から出たのは 「本当に、すみません。」………だけ。 醜態を晒した。 あんなに、あんなに一生懸命頑張ったのに。 久しぶりに会えたのに。 彼がやった事、見せれた事は 【アイギス】のフリをして偽物を殴る事だけ。 恥ずかしさと申し訳なさで「ごめんなさい」これ以外、何も言えなかった。 【アイギス】はたった1度だけ、1レスだけ。 安価をこの情けない謝罪に指してこう応えた。 「自分の下着が自分の知らない間に オナニーの道具にされてたら興奮するよね?」 【アイギス】らしい返答だった。 【アイギス】と偽物は、そのあと少し話して 2人とも消えた。 【アイギス】と偽物がその後、現れる事は無かった。 去って行った2人をただ見送った。 彼1人、置いていかれた。 去って行った2人をただぼう然と1人で見送っている彼を見兼ねたのだろう。 【わふーさん】が声をかけて来てくれた。 「実は偽物はお前が帰ってくる半年前くらいから現れて天国を荒し回ってたんだよ その時ですら本物は出てこなかっんだけどな だから本物を見たのは俺も久方ぶりだよ」と そりゃそうだろう。 偽物同士が本物を差し置いて罵り合ってたら我慢できないでしょ。 【わふーさん】は続ける。 お前これからどうするの? 少し間をあけ彼は応えた。 「ここを去ります。 【わふーさん】には話したと思うけど 今、色んな場所を回ってる最中だし あの様子なら多分、【アイギス】はもう俺には構わないでしょ。 ここに居る意味も、もうありません。」 【わふーさん】は答える 「……ふーん。 まあ、お前がジタバタしてる姿を本物は見てる お前が足掻き続けていたら、何れ本物も相手してくれるだろ そん時は、あの偽物みたいにワンパンで仕留められないように せいぜい武者修行の旅がんばれよ!」と。 はいはい、では行きますね。 【わふーさん】もお元気で。 「おう!じゃな!」 アイギスはやっぱり イタズラそうに無邪気に笑った。

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君の神様になりたい【第  9歩】

君の神様になりたい【第 8歩】

宙に舞うコインを手の甲に落とす。 初心者質問板、煽りスレ。 この地に赴く 【アイギス】にもらったこの剣を手に、【うらない京】にもらったこの志しを胸に。 ならば、彼には恐怖はない。 必要なものは全て持っていた。 初心者質問板に着いて、このスレはすぐに見つかった。 「煽り」と検索をかけたら この、スレしか 引っかからなかったから。 1日、2日、中の様子を見てみる。 規模の小さなコテ雑といった所か。 5~6人のコテしかいない、小さなコミニティー。 煽りスレと看板を掲げてるだけあって中は殺伐していた。 ただ、パッと見た感じ、少ない人数でバカだのアホだの小学生並の事を毎日、同じ人間同士で行う 形だけの殺伐さ。 まぁ、外で見ているだけでは測れないだろう。 このスレの代表というコテに このスレに1度来てみてくれと言われた。 動機には十分。 彼はスレに飛び込む。 「こんにちは 黎明というコテに誘われて、貴方達を殴りに来ました。」 道場破りの自己紹介には十分だろう。 さて、誰がどのように最初に来るのか。 初めに、彼に応えたのは このスレで1番下っ端ぽいコテ、【ウーロン茶】というコテだった お、こんにちは~! いままで色んなコテがきたけど しんじられないほど皆やる気があって ねーみんな、また誰が来たよ? 貴方も煽りに興味が?いいですね。 様子だけじゃなく楽しんでいって下さいね。 こんな感じだったかな。 「おい、死ね貴様」か……。 なるほどね、これがこのスレのスタイルか。 VIPの様に手数で相手を抑え込む煽りじゃなく VIP+の様に1レスに時間をかけ長文で相手を理詰めにするタイプの煽りでもない。 煽り罵倒は幼稚だけど 面読みを秒で完成させる構成力と技術がある。 なるほど。 VIPやVIP+では使わない、経験のない煽り方だ。 相手の未知に近しい返しには戸惑ったが 逆を言えば相手もVIP+の煽り方には不慣れなはず。 これだから、遠征した甲斐が有る。 このコテスレの大まかなメンバーは 【黎明】を筆頭に 【青山】【金魚のフン】【ウーロン茶】【ゼルツ】 【黎明】は他の人が雑談をしている姿を後目に ずっと「俺様は凄い、俺様は凄い」と うわ言の様にレスしているだけだし。 【ゼルツ】は数える程度しか見ていない。 実質【青山】【金魚】【ウーロン】の3名とあとは【黎明】の 潜伏か誰かの潜伏 (*潜伏 名前を消し、名無しでレスポンスする事で オーディエンスに扮し自分を擁護したりする技術 だが、文章の癖等でだいたい誰か分かる ) くらいしかいない場所。 そこで、雑談混じりに面読み煽りを繰り返していた。 比喩するなら、不思議の国のアリスのお茶会。 この場所で彼は剣を抜いた。 例え誰であろうが、このスレがどういうスタイルだろうが 自分スタイルを変える必要はない。 イカれたスレのイカれたお茶会だろうが目に映るものを 総て切り刻むだけだ。 時が流れる。 この、イカれたお茶会スレにも半年は居ただろうか。 彼はこの、何でもない日バンザイのメンバー達にも大分打ち解けていた。 【黎明】は相も変わらずうわ言の様にレスしていたが。 【金魚】が教えてくれた。 彼が来る前に1度だけVIP+から色んな板のコテ達を引き連れて このスレに彼の様に喧嘩しに来たコテの事を。 【湘南爆笑族】 【湘南】とは新参時代、2、3度レスを交わした事があった。 2011年、彼がデビューした時代の筆頭コテに名前があがるコテだ。 【四貫谷】か【湘南】か。 【四貫谷】が新参達の為に立ち上がったコテなら 【湘南】は一時代が終わり 衰退するコテ界隈、全体の為に立ち上がったコテだろう。 当時、珍しく新参だった【湘南】が古参達も含め、煽り議論、それだけではなく優秀と認めたコテ達を束ね。 一大組織を築いていたのは コテ界隈にも疎かった新参の彼ですら知っていたし。 有名だった。 古参達は【湘南】に多大なる期待を寄せていたのも知っていた。 【湘南】が1度、色んな板のコテを引き連れここに来たのだと その時に聞いた。 【湘南】と自分を比較するわけではないが 【湘南】にどれくらい遅れて 自分はこの場所に立っているのだろうかと その時、彼は思った。 煽りあって精神を鍛えるスレ。 通称、不思議の国のアリスのお茶会スレ。 ここにも随分長居した。 このスレのwikiや、紹介しているページにすら彼の名前が載るくらい。 ここのスレの住人達の事も色々教えてもらった。 【金魚】は教師だとか、【黎明】は【湘南】から韓国人と思われていただとか。 「お前は気持ちだけはあるから」と 【金魚】に煽り方も教えてもらった。 【ウーロン】とも仲良くなった。 新たな地で技術も思い出も増えていった。 さて、そろそろ行こう。 この地を離れ新たな地へ。 VIPに居た時も四貫組に居た時も VIP+に居た時も アイギスとすごした日々も 寂しくないと言えば嘘になる。 ここにも、思い出も仲間とよんでも 何もおかしくはない人達がいた。 出来うるなら、ずっと彼等とわいわい過ごせたらと……。 ……しかし、彼は歩む。 あの日【アイギス】にもらった剣を手に あの日【うらない京】にもらった志しを胸に。 この身体は剣でできている、血潮は鉄で心は硝子なら 彼は歩む。

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君の神様になりたい【第 8歩】

君の神様になりたい【 第7歩】

戻った彼に【四貫谷】が話しがあると言った。 四貫組のスレで【四貫谷】の話しを聞いた。 【四貫谷】は、ばつが悪そうに 「四貫組を、俺たちの組織を解散しようと思う」 そう切り出した。 当然だと思った。 新参同士がお互いを助け合い自分達とその居場所を守る為の組織。 もう、メンバーは【綿貫谷】と【セブン】と彼だけだった。 メンバーはここ以外にそれぞれの居場所をみつけていたし、何より彼達はもう新参でもなかった。 この四貫組の存在理由は既にない。 夢を語るには成熟していた。 彼達のネバーランドと夢は脆くも崩れ去った。 何も出来ないまま。 彼達があの日、敵視していた中堅や古参コテと呼ばれる様に、彼達もまたなっていた。 ピーターパンと讃えられていたコテもネバーランドが煙草の煙の様に消えた直ぐ後に、居なくなってしまった。 夢の終わり。 夢を語り、未来を語り、理想を語り合った。みんなで……。 あの輝かしい日々とは対象的に呆気ない幕引き いや、幕切れかな。 彼等の夢は終わった。 それでも彼は歩む。 あの日もらった剣を手に、あの日に見た理想を胸に。 それでも彼は歩む。 彼は歩む。 この、出来事を機に彼は名前を変えた。 四貫組はもうない、守るべきコテも仲間達も もういない。 【ムアイク】は【ライオン】との戦いでトリップを失った。 ならば、この名前でいる理由もない。 この剣とあの理想だけが本物なら これさえあれば戦えるなら、この名前だけで十分だと。 【不可視のアイギス】の血の戒律を持つ者 誓いを持つ者、結界を司る者 【不可視の血戒】彼は名前を変えた。 この身体は剣で出来ている、血潮は鉄で心は硝子 変えた当時は色々な野次が飛んできた 「お前には向いてない」 「バカが賢いふりするな」 「アイギスが可哀想」 「調子にのるな」 「見た目だけ変わっても中味がお前じゃね」 色々な石を投げられた。 その中で、【夕凪スクリーモ】というコテがそっと彼に言った 「 お前、憐れだな。」 大昔、いや多分、何かの逸話だったと思う。 汚いロバを白馬と言い、風車小屋を怪物と言い 来る日も来る日も風車小屋相手に戦いを挑んだ騎士の話。 騎士はなぜ、戦う事をやめなかったのだろうか 騎士を思い、進言する人間はいただろう。 騎士が如何に滑稽な事をやっているのか 騎士に伝えた人はいただろう。 騎士は知っていたんじゃないだろうか 滑稽さも無意味さも 自分が何と戦い、何を得たのかも。 騎士は偽りの中の現実で偽りの白馬に乗り 偽りの敵に剣をむける。 そんな、偽りだらけの彼の中でも…きっと それでも本物はあった。 【夕凪スクリーモ】というコテはVIPでは【ダヴィワイズ】と名乗っていた。 彼と同じ年にデビューしたコテ。 だから、あの古参が新参を迫害していた日々も 四貫組の事も知っていた。 もしかしたら、彼が【アイギス】の所に行った事も【ライオン】との戦いの事も知っていたのかも知れない。 だから、彼に【夕凪さん】が言った事も、嘘偽りはなく、彼を思う【夕凪さん】の本音だったのだろう。 だけど彼は、その時の彼は愚かだったのだろう。 【夕凪さん】のそんな言葉も 他の野次に紛れ込ませ、消した。 名前を変え、居場所を変えた。 その頃には2011年デビューしたコテの中で議論、煽りコテと言えば その中で名前を挙げられるまでになっていた。 同期は半分以上いなくなっていたが、それでもそれは彼の誇りになっていた。 後輩コテもできた。 時が流れる。彼は歩む。 VIP+のコテになり、【飛べイナリズシ】【夕凪スクリーモ】と並び 【うらない京】の教え子、うらない京ファミリーなんて言われた事もある。 この、3名は【うらない京】に似て血の気が多いと。 【夕凪さん】は年齢も上だったから 彼達より落ち着いていたと思う。 でも【夕凪さん】もきっと、こちら側のコテだったに違いない。 だから当時、馴れ合い重視のVIPではなくVIP+の方に居着いていたのだろう。 【うらないさん】に色々な事を教わった。 VIP+の事 安価(アンカーの略、会話等に用いられる記号と番号を示し、そのレスポンスにアンサーする事、@〇〇の様なもの) の打ち方からコピペのやり方。 論理的思考、宇宙の事。 コテとしてのあり方からレスポンスの読まれ方。 彼に教えてもらった事で印象深くユニークだったのは 「レスポンスには魂を込めろ」というもの。 最近じゃ、めっきり言わなくなったが、これは共感できた。 駄文だろうと、感情にまかせたメチャクチャなものでも 思いを込めた一文には 読み手を惹きつける何かがあるのだと。 彼が【ライオン】に綴ってトリップキーまで晒した一文 記録されたのは笑い話にもなれない駄文の中でも、多分何かが、あったのだろう。 そんな日々の中である事を聞いた。 「コテはスレを立ててなんぼ」 何故かと、うらないさんに聞いてみた。 「自ら出向いて行って喧嘩を売って、なんてキョロ充は3流だろ?」 「自分のスレを持って名無し達に自分を固執させろよ」 「あと、色んな板に行って色んな奴を相手にするのもいいらしいぞ、色んな考えに触れられるから」 何故だか【夕凪さん】が答える。 そう言えば【うらないさん】も昔はニュース板に居たり 運営の板に居たのだと聞いた。 流れ流れてここに来た。 きっと【うらないさん】も強くなった物語があったのだろう。 なるほどね。 彼はVIPやVIP+以外の場所に行き そこにいるコテ達に片っ端から戦いを挑む事を決めた。 さて、どこに向かおうか。 候補は2つあった。 四貫組に居た時に 1度だけ四貫組のスレに迷い混んで来た【黎明】というコテ。 初心者質問板にある 「煽り合って精神を鍛えるスレ」 に1度遊びに来てみてくれと言われた。 もう一つは天国板、【アイギス】との思い出の地。 あれから、大分年月が経つ。 おそらくは2年くらいか。 そろそろ、初心の頃に見た風景を見返してもいい 【アイギス】が居るとは思わないけど あの場所は今の彼にはどう映るだろうか。 正直、どちらでもよかった。 今まで自分が触れた事のない環境と、触れた事のない人間達。 そこで、今の彼はどれだけ立ち回れるのか 強くなる為に必要なら、彼は歩む。 コイントスで決める。

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君の神様になりたい【 第7歩】