チド
206 件の小説刀
いつも通りに職場に着いた。 朝の機嫌は悪く無かった。 詩集を開いてペンでなぞる。 集中を高める儀式のような物。 続々出勤してくる同僚に『おっはー』『モーニン』『おっはー』『モーニン』連発する。 これをやるとテンションが張って興奮する。 歌いながらリズムを取るとタイムカードの存在を忘れる。 夢中になってしまうのです。 坂本龍一の『戦場のメリークリスマス』を歌おうとして、出だしのメロディを忘れた気持ち悪さに苦悶する。 やっとの事で脳の奥から引っ張り出せた快感といったらない。 隣の女の子に『ブラックサバス』流すと良くねむれるよ、などと自分の趣味を開示してしまう。 仕事中は、脳が暇するので、とりあえずアルファベットをクルクル回して遊ぶ。 あまり日本語が得意でないのです。 回しながら座禅など組むと仕事しながら涅槃の海へ浸れるようで愉快であるには違いないのです。 それにも飽きるとオリジナルの幻覚作成に脳を絞る。 今日したのは、刀を数十本クルクルさせて、机やら椅子やらラジオの音声やらスパスパスパスパ切ってしまう。 何本も同時に出現させるのが、楽しい。 一本だと寂しいもんね。 刃に光が反射してキラキラキラキラ綺麗なのです。 やっていて気づいたのですが、僕の脳は、横切り、つまり、『胴』が得意、切りまくって気持ちが良い。 『面』縦切りが不得意なのです。 不思議。 解って良かった。 対策が練れる。 斜めもあるよね。 上からか、下からか、どちらから切ろうか選択可能。 明日は、続きをしようか、別を捻るか。 ふふっ。 じゃ、また。 グッナイ。
意識
男は跳ねたリズムに眼を細める。 顎髭をなぜながらの思考には明確さは無く、眼に映る物は無感動に在るだけだった。 部屋に流れる音楽は変化し、ようやく男は僅かながらに心を浮かせた。 一人の酒には慣れていたが、たまには女を楽しみたいとも思っていた。 恋を知らなかった。 異性を見る眼は冷ややかで、線の丸みの滑らかさに不思議を観るだけだった。 その事を特に悲しく思った事は無く、むしろ硬質な楽しみに満足感さえ覚えていた。 壁には絵が掛けられていた。 下手ではないが、特に深い技巧があるとも思えなかった。 しかしながら、男の周囲にまとわりつく茫漠たる気には妙に似合いの絵に思われた。 口に含んだ酒は、溶けかかった記憶に混ざり込んで意識のレベルは、やんわりと落ちていく。 こんな夜を幾晩過ごした頃だろう。 つらつら思い返してみようとするが、記憶にもたいして興味も無かった。 こぼれるピアノは、脳に絡んで、世界だとか、愛だとか、女だとか、そういう物も根は同じだろうとテーブルの酒を見つめていた。
夜のステップ
タッタカタッタカ歩いていると 虫だの月だの落ちているので そいつを拾って悲しみながら やんやの喝采降ってくるまで ひそひそ夜を呼吸して 蝋燭の灯り冷めた声 あんまりなのよ、あの人ったら こっちの気持ちも知らないで 窓の向こうは知らんけど 幸せの向こうもありはせぬ みんな仲良くリズムで遊び 転げる子猿の仏様 くるくる祭りの後に憑かれて 妖しいステップ踏むの踏まぬの 視線はピリピリ腰に絡んで つむじは巻いて我をさらって 夜を盗むの死ぬほど好きなの それだけなのよどうにもならぬ 星撃ち落として天使と酔うわ
夜に唄う
途切れ途切れのハートビートは 吐いた息に映る揺らぎに 壊れた言語に砕けた鏡を 記憶に重ねて昏きに沈む 声の掠れは神経を伝い 秋空に浮く蜻蛉の神様 描くメロディ乗せて滑るの 薄い唇やけに欲しがる 風など吹くけど歩けど歩けど 線路沿いには霞んだ街さえ 夢の場所とは思えなかった 朝の煙は肺を濁して 冗談みたいな陽だけがあって 温もる後のセリフは流れ 冷たさだけは心にあった 結局愛など無かったけれど 空虚の中にも生活はあって ブルースの匂いのしみついた 部屋にはギターを抱えてる 奴がいまだに唄ってる
ブルーとレッド
心は、常々出来る限りコントロールしたいと思ってます。 コントロールする装置として、背骨に沿った軸を意識します。 青色で形成します。 出来るだけ長い方が気持ち良い。 軸を移動させながら歩きます。 ブラジルを超えて下天に抜けてほしい。 地球があって良かった。 無いと玉乗り出来ないものね。 目標があります。 宇宙を貫通してほしい。 この上なく清浄な気で満ちるはず。 赤もある。 胸にたまってる。 無い時もある。 燃える闘魂。 詩作してる時、スイッチが入る。 メラメラ燃えて溢れちゃう。 頭に上げちゃいけない。 上げれば判断が狂う。 抽象的な思考で、脳を冷やす。 具体的に考えると熱がこもる。 上へ上へ思考を広げる。 青が支配的なのです。 楽に眠りに入るコツな気もします。 理想としては、曲線で宇宙を包みたいのです。 今夜もありがとう。 グッナイ。
コード
ふと、思い付きました。 文を和音で表現したい。 ワタシは アナタが すき アナタは ワタシが むり どうでしょう。 脳内で同時に音声化してほしい。 好評なら作品に取り入れたいです。 音楽と文学の融合みたいな。 気持ち良くなる技になると良いなと思います。
夜に願う
揺れ続けてる 和音の波に くるまる吐息に 目を細めても 絡んだ恋には 届きもせずに 軽い夜空は うらめしく 指でまあるく ハート描いた 星は流れて カラダをめぐり 甘えた響きに ゆるませた頬 触れ合う四肢に かけた魔法は きっととけるの 透けてくものね 飽きはしないの 危険はあるから かけてく不安に ウットリしちゃう 林檎の毒に 痺れた脳は 食べた甘味に ひろがる曖昧 謎めく視線に 涅槃はおりて いたずら天使の 笛の鳴る森 首刈る騎士は 犠牲求めて 地を蹴る蹄は 髑髏を下げる 物語の中 少女の夢は 覚める事なく 螺旋を巻いて 夜明けの刻など 叶わぬように あとがき 二百作品目です。 山を登った感覚がします。 楽しさや苦しさがありました。 書く事が好きなのだなと確認してます。 書いてきて良かった。 感謝いたします。 では、また。 グッナイ。
夜に惑う
赤い言葉の羅列はきっと 肝に落ち着き静まりかえり 音符などより洋酒などより 射止めた愛を食べ始めるのね 暗い血液蒼く浮くほど 声の粘りは羽虫捕らえて 陽光眩く汗は冷たく 水面は重い風を運んだ 鉛の空に期待などせず 昔話のサウンドめぐりは 耳に馴染んで息づく獣の 寂しさに触れた深き淵 銀の女の待つ広場には 目的の無い鳥達は集い 骨格の太い老人は 確かな未来に諦めをみる 女の傘は情を知らない 割れた舌のトカゲより 淡い夢の色を帯び 夜雨の音に戸惑うのみ
夜に狂う
ぴあの転げる 指は酔うほど 朗読の音も 髑髏の息も 舟を沈める 天使の柄杓 踊るのクッタリ ゆったいくぁったい 触れたりミリタリ 騙しの手口は 恋に溺れた バラモンの娘 輪廻の中は 美味しいのかしら 賢しい輩に くれてはやらぬぞ 蜜の月には 秋の夜空が ぐるりと流れて 寝床にゴロリ ガツリ喰いいる 老女の鎌は 背骨の中を 行ったり来たり 戒律アイリス 愛ね暗いね 無頼に振る舞う 盗賊の笑み 陽の中女の 指はヒラヒラ 蝶々のようで 狂気の自由を 飛び立つ枝には 影は無かった
夜を探す
白黒つけた 雑多な悩みに 勝手に納得 するなんて事 空の頭じゃ 出来ぬ相談 漏電している 脳の回路は 愛の囁き だけを求める ガラスの目玉は 色の認識 形の判別 過去が無いのね 未来も無いの 見ないの今も スライドしてる 文字の宇宙は 恋に狂うの 鈴虫の唄 弱虫なんかじゃ 無いのよ瞳が 潤んで伝った 雫に映る 刻などおしまい 会えない思いは 身の軽さゆえ 哀しみの情 頭上を過ぎて はるばる越えて 終えた生など 知る事は無い 通り過ぎてく 眼の前の死を 秋空の絵に 込めた技術は 誰かを愛して 光を探して 刻の流れる 雪は降り積む