天草ところ
2 件の小説歪み
狂っていたのは、世の中ではなく 自分の頭の中だった。 「お金はあげる。その代わりに縁を切らせてもらう。」 恵美子は母親からそう告げられた。 言われても仕方のないことをしてきた恵美子だったが、 さすがに母のその一言には参ったらしい。 (もう死ぬしかないな。) そう思うが死ぬのは怖く、さみしく痛い。 同時に、自分は生きることしかできないことに気付いた。 しかし、一体どうやって生きればいいのか。 頭も悪く精神状態も不安定で、仕事を続けることができない。 生きるためにはお金がいる。 すでに家賃は3ヶ月も滞納しており、毎日のように保険会社から電話がかかってきていた。 焦った恵美子が考えついたのは、 “風俗”だった。 早速、お店探しをする。 覚悟を決めていても臆病で自信のなさから、都心部から離れた場所で求人を漁る。 思い立ったが吉日をモットーにする恵美子は、迷っている暇もなく応募した。 しかし、ここでもまた、自信のなさが出て格安店といわれるところだった。 待ち合わせは駅近くのコンビニ。 「恵美子さんですか?」 綺麗なスーツを着た優しそうな雰囲気の中年の男性が話しかける。 「はい」 「では、ご案内します。」 都心から離れた格安店だったが、何店舗も入っており綺麗なビルにオフィスを構えていた。 知らない世界に足を踏み入れる恐れよりも、久しぶりに面接というかしこまった場に緊張していた。 人を売り物にすることから、自分は売り物になるのかという不安もあった。 「この仕事は初めてですか?」 ふんわりとした、いやらしさの無い笑顔で話しかける。 「まずはこのチェックシートをできる範囲で構わないので記入してください。」 チェックシートはスリーサイズからはじまり、 SかMか、できる行為、など。 「もう、今日から働けるんですか?」 「急いで準備します!…格安店にご応募頂いていますが、こちらの店舗でご案内させていただいてもよろしいですか?」 少しランクを上に設定しているようで、恵美子は嬉しかった。 だか、私でいいのか…と恐れや不安も襲ってきた。 恵美子は記入し終わり、動画で講義を受ける。 イソジンで消毒すること、毎回歯を磨くこと、グリンスという薬用石鹸で洗うことなど。 流れや注意点を、淡々と死んだ目で見終わった。 恵美子の見た目は中の上といったところだろうか。 接客はもちろん大事だが、 全ての時間を、会話に重きを置いていない分、恵美子は楽だった。 やり方は他にもあったと思うが、 この日をキッカケに、自分の歪みに気付いていくことになる。
そういうところだ。
私は自分に自信がない。 それは充分わかっているつもりだ。 だからこそ、人の目が気になってしまう。 どう見られているのか。 それはそれは病的に気にしてしまい、髪を巻いただけで「似合ってない。」「調子に乗ってる。」なんて陰口を言われるんじゃないかと思うほど。 言われたことはないのにも関わらず。 そんな私だからこそ 人のことも気になる。 テレビに出ているご夫婦やその子供を見て「(悪意を込めたように)すっごい似てるね!」と言ったり 綺麗な人を見ると私もそう似せたいと整形をする金も勇気もないくせに 整形について調べたり…。 旦那に言われた。 「もっと他になおすとこあるんじゃない?」 ごもっともな意見にぐうの根も出ない。 おっしゃる通りです。