拝啓、クラスメイトだった貴方へ。
「私ね、死ぬときは好きな人の心臓を抱きしめて死ぬんだ〜」
彼女の口から発せられたその一言は猟奇的でありながらも、どこか共感してしまう。そんな一言だった。
高校時代クラスメイトだった彼女。
そんな彼女は数年前に自殺した。
どうやら一人暮らしをしていた自宅の風呂場で血まみれになって発見されたらしい。
隣人によって通報され、発見されたそうだ。
隣人曰く、帰ってきたらあまりの異臭に異変を感じ通報したとのこと。
結局彼女は自身の手首を刃物で切りつけて自殺したそうだ。
考えただけでグロテスク。
だが幸い彼女の死体はあまり時間が経っていなかったらしい。
けれど一つ気になることとしては彼女は何かを握りしめて死んでいたそうだ。
それはそれは固く握りしめて。
調べようとしても死後硬直しているため取り出すことは非常に困難で、どうせ大したことではないだろうとすぐに火葬された。
だが、問題が起きたのはこの後だった。
とあるマンションの一室でとあるひとりの男性が行方不明になったそうだ。
その男性はどうやら自殺した彼女と恋人関係にあり、彼が行方不明になる前に彼女と喧嘩をしていたらしい。
だが、彼女に事情聴取を行おうとするも当の本人ははもう死んでおり、話を聴くこともできない。
仕方なく彼の関係者に事情聴取をしたが詳しい情報は得られなかったそうだ。
なので彼はそのまま行方不明。
数年たった今でも行方不明だそうだ。
だが私はわかる。
多分もうきっと彼は死んでいる。
数年前に。
きっと誰かの手によって心臓を抜き取られた状態で。
きっとどこかで眠っている。
きっと彼女が彼を殺したのだろう。
だって彼女は言っていたから。
「私ね、死ぬときは好きな人の心臓を抱きしめながら死ぬんだ〜」
と。
彼女は幸せだったのだろうか。
もちろん彼女の願望は叶って好きな人の心臓を抱きしめながら死んだのだろう。
だけど、本当にそれで彼女は満足したのだろうか。
まぁ、他人の私が考えたってわからない。
だって私は“女子校生時代、彼女を密かに想っていたただのクラスメイト”でしかないのだから。
彼女の墓に花をたむけながらそっと呟いた。
「愛してたよ」