白露

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白露

詩を紡いだりする人です 誰かの胸に少しでも留めてもらえることが願いです

私の中の

頭を洗った 汚れが 流れて落ちた しかし 私の本当に落として欲しいものを シャンプーは落としてくれなかった それは頭の裏にあるのだ 体を洗った 汗と皮脂が 流れて落ちた しかし 私の体のなんともいえぬムカつきを うずめきを 石鹸は落としてくれなかった それは私の腕の中に 足の中に 胸の中にあるのだ 体をいくら洗って 新品の私みたいにしても 私の内側が洗浄される訳ではない 私の中は 時の流れによって ゆっくりと シャンプーが 石鹸が シャワーで流されるように ゆっくりと落ちていくのだ そういえば 君からはいつもシャンプーのいい匂いがするね

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私の中の

綺麗だと言った時

花を綺麗だと言った時 私は茎を見ていなかった 力ずよく地に伸びる たくましい根を見ていなかった 空を綺麗だと言った時 私は後ろに広がる空を見ていなかった 私は真上に広がる空を見ていなかった 君を綺麗だと言った時 私はあなたの顔を見ていなかった 私はあなたの手足も、胴も見ていなかった

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綺麗だと言った時

母の腕に抱かれた時 私は愛を知りました 友達と喧嘩した時 私は友情を知りました ニュースの事件報道で 私は悪を知りました あの子の笑顔を見た時 私は恋を知りました 努力が報われなかった時 私は左折を知りました 人は 過去や 未来や 人生を 時に道と比喩します けれど 私や あなたの人生は 道に収まるほど単純ではありません 自らを振り返った時 私の後ろにある 自分の経験を 感情を 過去を 記憶を ひとつ ひとつ線で繋いで それを道と呼んでみているだけなのです だから 未来に茨の道も 平坦な道も あるわけが無い 道は私の生きてきた人生を繋いだものなのだ と、私は思うのです

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道