kua

2 件の小説

kua

最高で最低

みんな遊びに行くと写真を撮りたがる。 簡単に写真が撮れる時代で、思い出が残り、更には現実より可愛く、自分の好みに撮れてしまうのだから、それもそうかと納得する。 そんな自分の裏には、写真が意識に出てくるくらい、遊びに行くことで承認欲求を満たす目的があるのではないかという思考もある。こんなことを考えて、写真を沢山撮る人たちをを少し下に見てしまう自分にまた嫌気がさす。 私はいつもそうだ。自分がやっていない、人がやっていることを見ると、自分もやりたいではなく、相手がやっている方がおかしいと思いたがる。そんな自分が嫌いで、好きで、嫌いだ。 人がやっていることの裏の思考や嗜好を考えて達観したつもりになる。 ああ、本当に最低だ。 今日も私は友達の声で笑顔を作る。 「ハイポーズ!」 「いい感じじゃん!SNSに写真上げるね!」 私の許可もなしに自分が盛れた写真をしっかり選び投稿する友人。 「あ、野村ちゃんからコメ来たよ!見て見て!」 満面の笑顔で嬉しそうにコメントに返信する姿に嫌気を感じながら、今日も私は友人が可愛いからだよー!と褒めた。 今日の私も最高で最低だ。

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特別な景色

「よっしゃ行くか」 「うん!」 行くのは彼のお家。 私たちは遠距離恋愛中。 車で片道6時間は流石に遠距離と言える距離感だろう。 私たちはドライブデートすることが多いから、6時間なんて余裕で楽しめる。 大学生は春休みだから、旅行に行く人も多い。 助手席でSNSを開くと、複数のアカウントでテーマパークへ行っている様子が挙げられている。 「見てよこれ。いいなあ、私達も行きたいね」 本心だけど、本心ではないこの言葉は、彼にはどう聞こえているのだろう。 もちろんお出かけして遊ぶのも楽しい。 テーマパークでのデートは私の夢でもある。 でも、たまにしか会えない状況にいるからか、私はこの狭い中古の軽自動車で、桜の時期まであと少しだったねとたわいもない話をして笑う時間が何よりも好きだ。 行きの出来事に思いを馳せる帰り際の高速バスの窓には満開の桜が流れていた。 あのドライブからはたった五日後。 惜しかったねと心の中で彼に語り掛けた。 彼と見る桜はきっともっと綺麗に感じただろうと思いながら6時間ドライブでかかっていた曲をかけ、心の中で口ずさむ。 次に彼と見る景色は太陽でキラキラ光る海だろうか、それとも夜空に登った花火だろうか。 どんな景色でも私にとっては特別で世界一綺麗な景色に違いない。

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特別な景色