遠い踏切
放課後の教室は、いつも少しだけ世界の終わりみたいだった。
西日でオレンジ色に染まった机の上に、君の消しゴムのかすが残っている。たったそれだけのことなのに、もう二度と戻れない気がして、胸の奥が静かに痛んだ。
君は転校することを、最後まで誰にも言わなかった。
「大げさになるの、苦手だから」
そう言って笑った横顔が、夕焼けよりもずっと綺麗で、ずっと遠かった。
帰り道、踏切の前で二人並んで立ちながら、私は何度も言えなかった言葉を飲み込んだ。好きだった、とか。行かないで、とか。そんなありふれた言葉で、この瞬間を汚したくなかった。
電車が通り過ぎたあと、君は小さく手を振って、
「また、夏の匂いがしたら思い出して」
と言った。
それから何年経っても、八月の夕方になると、あの日の風が胸の奥を通り抜ける。
君のいない世界にはもう慣れたはずなのに、夕焼けだけは、今でも少しだけ君に似ている。