和
5 件の小説第一章 その屍は
僕のアトリエの向かいに老博士とエルナと言う画家の娘が住んでいた。彼女は今から数年前、心臓発作で亡くなった。 新連載 空白の天使 和 第一章 その屍は 畑仕事をあらかた終わらせ普段着に着替える。 首にネクタイを結ぼうとした時、博士の声がした。 「おーいロスラ〜、久々に来たぞ〜!」 僕は無視してネクタイをキュッと結ぶ。そしてまだ描きかけのキャンバスを眺めた。 作品も全く仕上がってないし、客に会いたい気分ではない。博士には悪いが留守と言うことで…。 コンコン…………ゴン、ダンッダンッ!! 「ちょっと博士!壁に穴が空くから杖で叩くのやめてください!」 勢いよくドアを開けた。 目の前に意地悪そうに笑う博士が立っている。 「おっやはり居ったか!居留守使いおって…全く。……それにしても久しぶりだ、元気しておったか?ちゃんと食っとるか?スランプはどうだ?」 「えっと……」 「実は頼み事があってな……」 そう言うと、博士の後ろにピッタリくっ付いていた八、九歳程の幼女を前に出した。 幼女は、まるで絹の様な美しい銀髪を風になびかせ、トパーズの様な金色の大きな眼で僕を見つめる。 天使 瞬間、頭にこの単語が浮かんだ。全ての時がスローモーションになったのかと錯覚する程、僕は幼女に強く惹き付けられた。 もう色んな意味で輝いてる…。このジジイ(博士)ついに天使を開発したか…。 「美しいだろう?サリーと言うんだ。……ロスラよ、この子に絵を教えてやってはくれないだろうか」 博士はまるで我が子を見つめる様な眼差しで彼女の頭を撫でた。彼女は嬉しそうに足元を見つめた。 「……この子はエルナの生まれ変わりなんだ。……体は他人の死体だが」 「………は?」 何を言っているんだ、このジジイは。生まれ変わり?死体?あっ、そうかわかったぞ!九十の老いぼれだもんな?とうとうボケたか! 「しかしサリーはエルナだった頃の記憶は覚えていないらしい。でもきっと、この子も素敵な絵を描くと思うんだ」 混乱しつつ彼女を見つめる。彼女は不安そうな表情でいた。 「だからこの子に絵を教えてやって欲しいんだ。それに…ほら?君、ロリコンだし?嬉しいっしょ」 はぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 「だれがっ!いつロリコンっつったよ!?つーか人を変態みたいに言うんじゃねぇよクソジジイ!!」 ジジイはニヤリとほくそ笑む。 「むむっ!クソジジイ呼ばわりは聞き捨てならんなぁ?……今スランプなのだろう〜?新作ぜんぜん描けなくてパトロンに見放されそうなんだとな?」 「ぐぅ……」 言葉に詰まる。 博士とパトロンは仲が良いから…。って言うか、コイツ!脅し的やがった!!正真正銘のクソジジイじゃねーか! 「ちょうどいいじゃない〜御礼ははずむぞ?」 パトロンの事で脅されてはお手上げだ。 ……まぁ?天使(サリーちゃん)っていう目の保養がいるし?…クソジジイに屈するのは大いに癪だが。 頭を掻き、ため息をひとつ。 「……分かりましたよ」 博士は結構な高齢だからな?いつ死ぬかわからん爺さんの頼み事なんだ、まぁ聞いてやるか……。 するとずっと黙っていた天使がおどおどとしつつ口を開いた。 「…今日からよろしくお願いします。」 !? まるで天然水の様な透明な声に時が止まる。 い、今喋った……? 声可愛い過ぎん? おいおい待てよ……超天使なんだが…。 僕が天使を見てニヤニヤしていると博士は軽蔑の眼差しで僕を睨んだ。 「いくらこの子が可愛いからって手をだすなよ……?」 は?このクソジジイそんな事心配してんだ? 僕がいくらロリコンでも幼女に手を出すような下劣なマネはしねぇよ! 「心外ですよ全く」 軽く睨む。 博士は「冗談だよ、冗談(笑)」と言った。 いや違うだろ!その目はマジだろ!目だけ笑ってねぇぞ! 「ちょっと心配だがロスラ、この子を頼んだよ」 「あ…はい」 『ちょっと心配』にムッとしたが頼まれた以上、ちゃんと天使の面倒を見なくてはなうふふふふ♡ 「…サリーちゃん、コレからよろしくね」 天使に微笑みかける。彼女はペコりとお辞儀した。 「律儀だなぁ天使かよ」とほんわかした時、博士が「もう帰る」と言い出した。 「え、もう帰るんですか?」 「あぁ。今日中に済ませんとならない用事があるからな。それから今日わしの家に客人が泊まりに来るから、その間サリーを泊めておいてくれ」 「そうですか…分かりました。サリーちゃんのことは任せておいてください」 博士はニコッと微笑んだ。 クソジジイはよ帰れと思う反面、久々に来たんだからまだいて欲しい気持ちが片隅にあった。
秋風
古書屋にある この本は きっと誰かの人生に 鮮やかな物語を残し 僕の手に渡ってきたのだろう ふわりと髪をさらっていく この風は きっと同じように 君の頬を撫でて 僕の所にやってきたのだろう 君が口ずさむ この唄は きっとシャボン玉のように 宙を漂って 未来へ行ってしまうのだろう 巡り巡って君のもとへ 君のもとから僕のもとへ
ぼくの金魚
死なせてしまった 大事にすると約束して買ってもらった金魚 ぼくの金魚 はじめてエサをやった時 生きる意味が見つかったと嬉しくなった 初めはずっと眺めていたけど 少し経つと離れてしまった 転覆病なのも知っていても 少しの手当てで完治した気になっていた 「きっとすぐ治る。大丈夫」と言い聞かせて 深く調べなかった ボロボロになって 水中をぷかぷか漂っていた 沈む鱗は海賊の宝のように 舞う鱗は桜の花びらの様に きらきらと きらきらと 無知は罪 その通り ぼくが全部わるかった 死なせてしまったね ぼくが殺したんだ 可愛い可愛い、ぼくの金魚
幻影
四ヶ月ほど前に、私の弟は川で溺れて亡くなったのだが、ある日突然我が家にやってきた。 ピンポーーーン チャイムの音が静かな家に響く。時刻は十二時。いつも通り。 白いバスタオルと弟の着替えを持ち、急ぎ足で玄関の扉を開けた。 「ただいまー」 「おかえりー…って、またずぶ濡れになって〜…ほらこれで拭いて!着替えて!」 ぶっきらぼうにタオルと服を押し付ける。弟はニカッと悪戯に笑った。 「おねーちゃん、パパとママは?」 「今日は二人ともお仕事だよ」 「そっかぁ」 そのなんとも言えない顔はどこか不気味であった。 ──この弟はニセモノだ。 言わば化け物。死んだはずの弟の皮を被った恐ろしい化け物。 弟と同じ姿で、弟と同じ声で、弟と同じ仕草で、そしてどこか弟とは違うナニカをを身にまとって我が家に帰ってくる。 まぁ偽物でもなんでも今更どうでもいい。考えるだけ損だ。 そんな事を思っている内に着替えを済ませた弟が私の足元に抱きついて甘えてきた。 「おねーちゃんおねーちゃん、僕お腹すいちゃった。なんか食べたい!」 「うーん…何食べたい?」 「オムライス!」 「またオムライス?好きだねぇ…よし、おねーちゃん作ってきちゃうぞ!」 「やったぁ!!おねーちゃんありがとう!」 そう言って目を輝かせる弟はニセモノとは思えない程本物に似ている。オムライスは本物の弟の大好物であった。 私はキッチンに向かい、料理の準備を始めた。 「はい、出来たよー」 弟の目の前に出来たてのオムライスを置く。ユラユラ揺れる湯気は、香ばしいバターの匂いを帯びていて食欲を引き立たせた。 「わーい!いっただきまーす!」 律儀に手を合わせる弟に少し感心した。前まで手なんか合わせなかったのにな…。 バクバクとオムライスをほうばる弟は、まるで「自分は世界一の幸せ者だ」と言う程の万遍の笑みを浮かべていた。 あー…弟もこんな顔して食べてたなぁ。 「…美味しい?」 「うん!」 「良かった」 「おねーちゃんのオムライスは世界一だね!」 「うふふ、ありがとね」 その時ついに一筋の涙が頬を伝った。弟の前で泣くまいと拭うが涙は堰を切ってあふれてくる。 中身が違っても外見は弟であるこの化け物を今だけ愛しく思いたい気持ちと、弟の真似事をする化け物を恨めしく思う気持ちがぐちゃぐちゃに混ざっていく。 『私はずっと悪夢を見ているのだ』 カタンっとスプーンを置いた音がして我に返った。目の前では弟が口元に付いたケチャップをせっせと拭いている。 律儀に口を拭く姿も本物とそっくりだ…。 弟はおもむろに席を立つと元気よく玄関へ駆けて行った。 「…おねーちゃん、ごちそー様!僕また外に行ってくる!じゃあね!」 手を左右にブンブン振る弟を見送る。 「…行ってらっしゃい、気をつけてね……川にはもう近づかないで…」 最後の言葉は声が掠れてあまり音を出さなかった。 弟がドアを閉めるまで笑顔を取り繕ったがきっと歪んでいるに違ない。 弟が去った瞬間力尽きた様にその場に泣き崩れた。 濁流の如く頬を伝う涙は私の思考を掻き回す。 あれは私の弟ではない。 恐ろしい化け物だ。 私が大好きだった弟はもう居ないのだ。 分かってる…全部わかってるけど……… それでもいい。 化け物でもニセモノでもいいから、可愛い可愛い弟と一緒に居たいよ…。 そうして私は明日も、明後日も、その次の日も、弟によく似た化け物にオムライスを作るのだ。
自己紹介と注意書き等々
はじめまして☺︎︎ 和(かず)って言います。 初心者やけどよろしく☺︎︎☺︎︎☺︎︎☺︎︎☺︎︎☺︎︎ 書き溜めとった小説を誰かに見て欲しくてこのアプリをインストールしました。 俺の作った物語を誰かに見てもらえるだけでほんとにめちゃめちゃうれしいんでほぼ自己満足です笑 多分フォロバ100 不定期低浮上 長編一応あるけどちゃんと未完成なんで完結させられるかは定かでは無いです あと腐男子やけ恋愛ものとかはBLになる率バカ高いですご了承を。 俺の物語が誰かの心に残りますように。