29 件の小説
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必要なもの

この世界には属性というものが存在する。 炎。 水。 毒。 雷。 風。 動物も、もちろん人間も属性が決まっている。 これは相性の悪い2人のお話。 炎属性と水属性は相性が悪い。 でも2人は愛し合っていた。 くっつくとお互いに消えてしまうので離れて生活をしていた。 水は炎にそばにいてほしかった。 だから部屋に閉じ込めた。 出られないようにドアにも窓にも鍵をかけて。 数日後、炎は消えていた。

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覚めない夢

何回目よ。 また同じだわ。 薄暗い空。 入ると2度と出られなくなりそうな森。 街灯の上でなく一羽のカラス。 そして手に持っている空っぽのバッグ。 周りが暗いせいで光っているように見える赤色のドレス。 キラキラとしているくせにあたりを照らさない3つの指輪。 あぁもう。 どうして道がひとつしかないの? 前に進むしかできないじゃない。 でも、はやく行かなきゃ。 これで最後かもしれない。 走って。 走って走って走って。 何回も見た切り株。 何回も見た紫色の小さな花。 何回も見た小鳥の死骸。 何回も見たGo straightの文字。 何回も見た、神々しい光。 ここがゴール。 この光に入れば、きっと目が覚める。 私は何回も同じ夢を彷徨っている。 はやくでたい。 光へ進む。 あぁ…。 あぁ、もう、ほんとに

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猫を轢いたのは

最近、私の孫が猫を飼いたいと言うんです。 それも野良の。 私はそれに反対しているんです。 汚いし、ノミだらけじゃないですか。 なのに言うことを聞いてくれなくて。 まぁでも、もう心配いりません。 その猫、つい先日死にましたし。 車に轢かれてね。 孫は泣いて悲しんだようで、少し可哀想でしたが でもこうしないと諦めないでしょう?

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眠れぬ騎士と借金取り

結局、あのあとあいつの顔で遊んどったんバレて追い出されてもうたし。 どこ行こかなぁ。 とりあえずすまほ?やいうやつで誰か呼ぼ。 「うわ」 あいつん家に忘れてきとうやん。 最悪や。 「よぉ、一昨日ぶりやの」 「げ、もう最悪続きや」 「げってなんやざ」 「金やったら今返せんで」 「なんで?」 「よう寝る馬鹿の家に忘れてきたわ」 嘘やけど。 「お前もあほやが」 「とにかく、今は返せんからまた今度来てや。ほなねー」 「ちょっこし待てや」 「せやから、金やったらないって」 「そうじゃのうて、隈ひどいぞ。今日は休みね」 「…へぇ、そーゆーとこもあるんや」 「なんやざ」 「なんもないでぇ」

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眠れぬ騎士と眠れる王子

「なぁ、今日泊めてくれん?」 「はぁ?それ先言えや。寝る場所用意してへんで」 「床でもええけん泊めてぇ」 「わかったわ、もう」 「ありがとぉ」 「で、今度はどしたん」 「それがなぁ、ちょっと追われとんねん」 「は?誰に?」 「借金取り」 「あー、あいつなぁ。なにしたん」 「ちょっと揶揄っただけやで」 「そぉなん…」 「…寝る?」 「?まだ寝んけど」 「眠そうやん」 「そぉ?あー、でも…そう言われたら、眠いような」 「ベッドまで歩ける?」 「んー、歩ける」 「じゃおやすみ」 「おやすみ」 あいつよう寝るなぁ。 夜の22時に寝て朝の9時に起きて んで昼寝と居眠りやろ。 はぁ、俺と代わってほしいわ。 最近寝たんいつやっけ。 あー、昨日の1時間だけか。 …暇やしあいつの顔で遊んどこ。 「邪魔すんでぇ」 「んん、」 うなされとうし。 「なんの夢見てんのー」 「…」 「…俺が守ったるから、安心してねーや」

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stay friend.

「今宵は月が綺麗ですね。…あぁ、夏目漱石ではありませんよ」 しまったというような顔で笑う君。 君の全てが愛おしい。 光の少ない瞳も 神秘的な黒髪も 華奢で小柄な体も 枝のように長く細い指も 全部が愛おしい。 そんな想いをひたすらに隠して なんでもないように振る舞うんだ。 そうしないと彼はもっと遠ざかってしまう。 「夏目漱石」 ぽつりと呟いた。 聞いたことはあるが、なかなか思い出せない。 「あぁ、そうでしたね。すみません」 ふふ、と笑う彼の光の少ない瞳に俺が映る。 「そういえば外国の方でしたね」 少し目が細くなった。 全てを見透かしているようだった。 いままで綺麗だと思っていた瞳が とてつもなく恐ろしく感じた。 「おや、どうして目を逸らすのです?」 「…いや、特になにも」 「そうですか」 見ないでくれ。 俺を見ないで。 醜い俺を映さないで。 綺麗な俺だけを映してくれ。 このままでいたいんだ。 このままで。

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不満

同性の子と付き合ってるんです。 その子、とてもかわいくて。 まえに、恋人にかわいいと言われると特別嬉しい って聞いたんです。 だから何度もかわいいって伝えるようにしてるんです。 もちろん本当に思っていますよ。 それはそれとして、私もかわいいって言われたいんです。 付き合ってすぐの頃は言われなくてもいいって思ってました。 でも最近、かわいいと伝えてほしくなってきて。 彼、私には言わないくせに アニメのキャラクターや芸能人にかわいいって言うんです。 どうしてなんでしょう。 私と彼、性格が似ていて、 承認欲求が強いところも似ているんです。 彼は満たされてるかもしれませんが 私はどうでしょう。 ちっとも満たされてませんね。 どうして言ってくれないのと詰め寄ったことがあるのですが、 ごめん これだけです。 私は謝罪を求めたのではないのです。 理由を知りたかった。 ただそれだけなのに。 って、こんなこと聞かせられても困りますね。 ごめんなさい。

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愛しとうよ

「おまえとは…こうやって存在を確かめるぐらいがちょうどええわ」 そうなん? そうやったん? 俺は本気で好きなんやで。 たしかに男同士やけど おまえ気にせんいうとったやん。 嘘だったん? あれ、でも ほんならなんで あんな哀しい顔するん? 「なぁ!」 「ん?まだなんか言ってほしいことあるん?」 「本音を…ほんまのことを言うてほしい」 「…せやねぇ」 ほんまは本音を聞くんが怖い。 好きやなかったらどないしよう。 でも絶対聞かんとあかん気がする。 理由はわからへんけど、 聞かな後悔する気がする。 「俺は     」

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言い訳

「なぁ、好きやで」 「…」 「なんでなんも言わんのぉー」 「はは、なに言ってほしかったん」 「えぇ?いや、なんもないけど」 「じゃあええやん」 「そうやけどぉー」 拗ねた顔もかわええなぁ。 ほんまは俺も好きって言いたいんやで。 でも、 俺らは絶対に愛しあったらあかんのよ。 ごめんなぁ。 「なーなー、ご飯食って…」 愛しあったらあかんのやけど、 でも、 「なな、なにしてん!?いきなり…ち、ちゅー…とか…頭沸いてんちゃう!?」 「おまえとは」 「…?」 「こうやって存在を確かめるぐらいがちょうどええわ」

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愛憎

恋人がいるんですけどね、僕。 その恋人、僕が欲しいもの全部持ってるんです。 とても羨ましいです。 僕がいくら努力しても手に入れられないものを 生まれたその瞬間から持っている彼が。 みんなから慕われて 頼りにされて 言いたくないけどモテてますし。 一回だけ僕はあなたになりたかったと、 伝えたことがあるんです。 彼、なんて言ったと思います? 自覚ないし、そんなにいいものじゃない って言ったんです。 彼にとってはそうかもしれませんけど 僕にとっては全然そうじゃなくて 正直、少しイラっときました。 僕が死ぬほど努力しても手に入れられないものを持っているのに どうしてそんなことが言えるのか ってね。 僕は彼を愛しています。 本気ですよ。 でも、たまらなく憎い。 きっと彼がいても辛くて いなくても辛い。 困りましたね。 どうしましょうか。

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