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全部、私のせい 5

4ヶ月 「…よし、今日は遊園地に行こう!」  初めての2人での外出から約1ヶ月。あれからというもの、私は健師とあらゆるところに行った。2回目は動物園、3回目はショッピング、4回目はカラオケ、5回目は…  健師は、20回目の外出となる今日遊園地を提案してきた。健師と遊べるならどこでもいいので、私は二つ返事で了承した。  そして、今私たちは星を見ている。星と言っても、人工物だけど。遊園地に入ると、健師は吸い込まれるようにここに入っていったのだ。 『西側から、水瓶座、ペガスス座、うお座、牡羊座…』  ほぼ睡眠導入と言っても過言では無い囁きボイスのガイドさんが、ひとつひとつ、丁寧に星の解説をしてくれている。  私はそれほど星に興味のない人種なので、もう瞼が限界だ。健師が先に寝ていれば寝よう。そう思って、健師のいる方を向く。  「…ん?華、どうしたの?って、超眠そうだね。」  私の視線に気づいた健師は、全く眠くなさそうな様子で見つめ返してきた。 「華、眠い?」 「…うん、もう無理……」 「うそぉ。華、星に興味無さすぎじゃない?もっと興味持ったら眠くならないと思うよ?」 「…いや、だって星のこと知っても何の役にも立たなくない?せいぜい地学くらい。」 「えぇ〜。星見るの楽しいと思うんだけどな〜。」 「全然わかんない。私星好きじゃないし。」 私が肯定してくれないのが悲しいのか、健師はちょこっと唇をとがらせてムッとした顔をした。 「僕は好きだよ?星。」 「なんで?」 健師は、こっちを見て微笑んだ。 「だって、星ってすごいじゃん。僕らが想像もできないくらい遠いところから、自分の輝きを届けてる。これって奇跡だと思わない?そんな奇跡が、数え切れないくらい沢山起きて、夜空が創り上げられるんだ。それを見てると、奇跡って起こるんだって前向きになれる。希望が持てるんだ。」 そうやって口早に言う健師の目は、見たことがないほど輝いていて、眩しくて、なんだかとってもかっこよくて。 「……好き」 そんな言葉が、無意識のうちに私の口からこぼれ落ちていた。 「…え?何、星が?」 健師は、きょとんと目を丸くしてそう言った。 「…あ、そうそう!なんか健師の話聞いたら、星もやな奴じゃないのかなって!」 「何、やな奴って!…でも、そう思ってくれたなら嬉しいよ。」 健師はまた、そのキラキラした目で天井を見上げた。 私は、自分の口から勝手に出た言葉の意味がわからずに、その後の星の説明なんかほとんど頭に入ってこなかった。

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全部、私のせい 4

※若干の体調不良描写あるかもです🙇‍♂️苦手な人はおやめ下さい! 3ヶ月 1か月前に発作を起こしてから少したった頃、健師が私に隠れて苦しそうに胸元を触っていることに気づいた。表面では明るそうにしているけど、実はもうかなり辛いのだろう。だって彼の余命は、もう9ヶ月を切っているのだから。 健師は1週間に1回程の頻度で、苦しそうに胸元を握って私に 「…ちょっとごめん、トイレ行ってくる……」 と言っていなくなることがある。きっと私に迷惑をかけたくないからと、私の視界に映らないところで発作と戦っているのだ。 「別に隠さなくてもいいよ。」 そう言ってあげたいけど、人が一生懸命隠していることをさらっと言ってしまうのも良くないと思い、未だに言えずにいる。 「華、今度どっか行かない?」 「…へ?どっかって外?この村から出てってこと??」 「うん。」 ある日、健師は急にそう言った。 「なんで急に??」 「…いや、だってここに来てからもう3ヶ月だよ?いい加減どっか遊びに行きたいじゃん。」 「……あぁ、もう3ヶ月もたってるんだ。そろそろ帰んないとな…」 一応私は健師の家に居候している身だ。長居しては行けないと分かっていながらも、健師の優しさに甘えてしまっている自分がいる。 「そんなこと気にしなくていいよ。僕も華がいるおかげで退屈しなくて済んでるんだから。」 ほら、こういうところ。健師は優しすぎるんだよ。まあ、口には出さないけど。 「…んで!どっか行こうよ。2人で」 「まあいいけど、どこ行くの?」 「それがさ、気になるところがあって…」 そう言って健師は私にスマホを見せてきた。 「…西山水族館?」 「うん。最近できたとこらしいんだけど、ここからなんと電車で3時間!!近くない?」 「いやどこがだよ!」 この村のポツンと感を舐めてはいけない。なんとそれでも1番近い遊びスポットらしい。 「まあ移動は大変かもだけどさ、たまにはいいじゃん?お出かけ!行こうよ。」 …まあ最近ずっとここに居っぱなしだし、たまにはいいか。 「わかった。いつ行く?」 「やった〜!…うーん、いつでも暇人だし別にいつでもいいよね?(笑」 「確かに。いつでもいーよ?暇だし(笑」 「よし、じゃあ明日行こう!」 「…えぇ!?明日って急すぎない…?」 「暇でしょ明日でもいつでも。思い立ったらすぐ行動!」 こういうところ、やっぱり健師は陽キャだな。 「…しょうがないな〜。じゃあ明日は7時起き!わかった?」 「えぇ〜…早くない?」 健師は分かりやすく眉間に皺を寄せた。 「早くない!移動に3時間だよ?始発の電車が7時半出発だからこれくらいに起きないと。」 「そっかー…次の電車は何時なの??」 健師はまだ諦めたくないらしい。そんなに早起きが嫌なんだか。 「次は9時半まで来ません〜。田舎の電車を舐めちゃだめだぞ!」 「なんで2時間も間あるんだよ……まぁしょうがない、7時起きするかぁ…」 「よし!となれば早く寝るに越したことはない!健師、寝るよ。」 早く、と言ったってもう夜の11時を回っていた。 「うわ、もうこんな時間だったんだ…よし、華おやすみ!」 「うん、おやすみ。」 そう言って私たちは別々の部屋に入った。 …楽しみだな、明日。久しぶりに外に出れて、しかも健師と一緒に。健師の前では乗り気じゃない感じを出してたけど、実はかなり楽しみにしている。 「明日、どんな服着よっかな…」 色々考えて、全然眠れない。気づけばもう結構時間が経っている。ベッドに入って、布団を被って、電気を消しても、全然眠れない。 …やばいやばい。このままじゃ明日起きれない。早く寝なきゃ…… そう思った時だった。 「…ガチャン!!ドタ……」 何かが落ちたのだろうか。大きな音が健師の部屋の方から聞こえてきた。 気になった私は、健師のいる部屋に向かった。 「コンコン…健師、大丈夫?大きい音したけど。」 「……」 反応がなかった。なんだか嫌な予感がして、すぐに扉を開けた。 健師は、ベッドから落ちて苦しそうに胸を押さえたいた。 「健師!?どうしたの、大丈夫?!」 「…ぃ…痛い……胸、助けて…」 「胸??胸が痛いの?薬は??」 この前の発作の時、健師は薬を飲んで治していた。今回も、薬を飲めば… 「…だめ……もう今日飲めない……ぃっ!!」 「健師?健師!!どうしよう…」 どうやら今日飲める上限に達してしまっていたようで、もう薬を飲んではいけないらしい。平然としているように見えたが、今日は具合が悪かったのかもしれない。 「…の…飲む薬じゃないのがあるかも……」 突然、健師は苦しみながらも閃いたように私に訴えた。 「…注射薬、そこの…棚の2番目…ぁっ!」 私があたふたしている間にも、健師の症状は悪化していく。慌てて棚を開けて、それっぽいものを見つけた。 「健師!あったよ、これ??」 「…そ、それ……やるから、貸して……」 健師は力の入らない手で私からそれを受け取って、震える手で処置をした。 「ハァッハアッ……はぁ……ごめん、華。」 「良かった、治って。もう大丈夫?まだ顔色悪いね。」 「ううん、大丈夫。顔色悪いのはさっきまで発作起こしてたからだし気にしなくていいよ。起こしちゃってごめんね、こんな夜中に。」 「…ううん、全然。…さすがにそんな体調で外出するのは良くないし、明日やめよっか。」 この状態で健師を連れ出しても、きっとどちらともいい思い出にはならないだろう。 「…ぃや、大丈夫。明日までには治ってるから。だから明日、行こ?」 「え?なにいってんの健師。だめだめ!出先でもし倒れたりしたら、私も健師も大変だよ。」 「大丈夫!ほら、もうこんなに元気だから。苦しかったのはさっきだけだからさ。行きたい。行こうよ!」 健師は腕をぶんぶん回して見せた。でも、本当に元気そうだ。こんなに行きたそうなのに、だめなんて言えない。でも倒れられたりしたら… 「…うーん……よし。じゃあ条件付きね。」 「やったー!いいよ、行けるならなんでも!」 健師は満面の笑みを見せてきた。ずるい。 「…ぁ、えっとまずは1つ目!」 「はい!」 「朝起きて具合悪かったらちゃんと言うこと。朝の時点でもし具合悪かったら行くのなし!」 「…わかった!2つ目は?」 「うん、2つ目は、出先で体調崩した時は絶対私にすぐ伝えること!倒れるまで我慢とか無しだからね。」 「勿論!具合悪くなったら言います!」 やけに素直だ。そんなに行きたいんだろうか。まあでもほんとに元気そうだから、条件付きならいいかな。 「…じゃあもう寝よう。やばいやばい、もう12時になっちゃうから。」 「うわ!ほんとだ。じゃあおやすみ!」 「うん、おやすみ。」 自分の部屋に戻ったら、焦り疲れたのかあっさり寝てしまった。 翌朝。私は6時半に目覚ましが鳴って起きた。ちゃんと身だしなみを整えてから、健師の元へと行く。 「…健師?おはよー」 体調悪くなってないかな、とドキドキしながら扉を開ける。 「…ん、華?おはよぉ。」 まだ眠そうだけど、顔色は全然いい。良かった…… 「健師、体調どう?」 「うん、全然元気!大丈夫だよ!」 良かった。ひとまず安心だ。 「じゃあ行こっか。もう7時10分だから急いで!」 「わっやばいやばい。20分に家出るんだもんね。ちょっとまってて、華!」 「いっそげ〜」 身支度を終えた私は、玄関で待つことにした。何だかんだ、久しぶりの遠出だ。ソワソワしてしまう。何話そうかなとか、何しようかなとか、色々考えてしまう。 「華おまたせ!行こっか。」 そうこうしているうちに、健師も身支度を終えて玄関に来た。 「おっけー、行こ。ちゃんと鍵閉めてね??」 「分かってるわかってる。」 玄関の鍵を閉めて、駅へ向かった。 もちろん人は誰もいなかったけど、電車がすぐ来たので退屈せずに済んだ。 「…楽しみだね、西山水族館。」 「うん、楽しみだな〜。水族館なんていつぶりだろ!」 健師はわくわくした声だった。やっぱり相当楽しみなんだな。 色々と話している間に、3時間経っていたようだ。目的地に到着した。 そこは想像以上に人がいて、賑わっていた。 「…やばい、華以外の人と会うの久しぶりすぎてめっちゃ緊張しちゃう……」 「わかる。なんかすごい変な感じ!」 無駄にキョドキョドしながら、私たちは水族館に着いた。 「1人1100円だってさ。案外安いから僕が払うね。」 「…えっいやいやいいよ??自分のは自分で払うから……」 「大丈夫大丈夫!こう言ってるけどどうせ親のお金なんだもん。どっちかと言えば親に感謝だね〜」 「ごめん、ありがと。」 「ぜーんぜん!」 そんなこんなで、水族館に入った。 「うわ、凄っ」 「ほんとだ…迫力あるね……」 私たちは魚に魅了されながら、館内を回った。 「いや〜凄かったね!あんなの初めて見た!」 「ほんとね…じゃあどっかでご飯食べて帰ろっか。」 「だね。」 水族館を出てすぐのところに、オシャレなカフェがあったのでそこに入った。 「いい雰囲気のお店だね…」 「だね…華、何頼む?」 「うーんオレンジパンケーキセットかな〜美味しそうだし…」 「ほんとだ!あと食べたいのある?今あんまりお腹空いてないから僕の半分くらいあげる。」 「え、いいの??じゃあ……このベリーアンドベリーパンケーキでいい??」 「うん、美味しそう。じゃあ注文するね。」 「ありがとう。」 お昼時をややすぎていたからか、注文して直ぐに食べ物が届いた。 「うわぁ〜美味しそう!いただきます…」 頼んだオレンジパンケーキセットを食べた。やっぱり都会のカフェの食べ物は美味しい。幸せだ…… 「…僕のやつも食べていいからね、まだ口つけてないし。」 健師はそう言って、私に自分のパンケーキをおすすめしてきた。 「え、健師まだ食べてないの??……もしかして具合悪い??」 一口も食べていないし、よく見たら、暑くもないのに汗をかいている。顔色も悪いような…… 「…あーいや、大丈夫。ちょっと体調悪いけど心配する程でもないよ。」 「ほんとに言ってる?汗びっしょりじゃん。程々にして帰ろっか。」 自分では大丈夫とか言ってるけど、私から見たらかなり辛そうだった。 「ちょっとまってて、自分のやつ食べ切るから。」 残すのも申し訳ないので、少し待ってもらおう。そう思って急いで食べる。 「あぁ、うん。…ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね」 「えっ健師大丈夫?」 声をかけたものの、健師は口を押えて小走りでトイレに行ってしまったので、おそらく伝わらなかった。 少し考えたけど、ここは食べ物屋さんだからそりゃあ食べ物の匂いで充満している。この匂いで吐き気を催してしまったのかもしれない。配慮が足りなかったな、と反省する。 とりあえず健師が戻ってくるまで食べよう。そう思いパンケーキを食べたが、さっきまでの美味しさはどこかへ消えていった。 パンケーキを食べきって五分ほど待ったら、健師がトイレから戻ってきた。酷い顔色だ。 「…健師、大丈夫??顔色悪いよ…??」 「…ごめん、ちょっと匂いキツくてさ。お金僕が払うから先出てて。」 そう言うと、ふらふらした足取りでレジへ向かい、会計を済ませた。レジのお姉さんもかなり心配した目で健師を見ていた。 「ごめんね、また払ってもらっちゃって。今度返すから。」 「……ん?あ、ごめん聞いてなかった…」 「あ、こっちこそごめんね?体調どう、歩ける?」 「…歩ける、大丈夫。」 口ではそう言っているものの、足元は覚束無い。 「一旦あのベンチ座ろっか。あそこまで行こ。」 「…うん、ごめんね華……」 「いいのいいの、一旦横になる?」 「ごめん…そうしたい。」 頭と足は高い方がいい、と聞いたことがある。私が先に座って、ぐったりした健師の頭を膝に置いた。足は手すりにかけた。 「…膝枕??そんなことしなくていいよ……」 健師は遠慮気味に伝えてきた。 「ううん、こうした方が楽でしょ?良くなったら駅行こ。」 「ごめん、ありがとう」 …こんな時に思うような事じゃないけど、今私が健師を独占してると思うと、少しだけ嬉しかった。

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全部、私のせい 4

全部、私のせい 3

「僕、死ぬんだよね。11ヶ月後に。」 「,,,え?」 彼の口からは、まるで、ドラマの台詞のような言葉が出てきた。 「実は僕、3年前くらいに余命宣告されてて。それで」 「いやちょっと待って。,,,,,話が急すぎて訳わかんないから。」 「あぁ、まあ急に一緒に住むことになった相手から死ぬって言われても困るか,,,」 健師は苦笑いをした。 「,,,,よし、決めた。華には全部話すよ。」 そう言って健師は、私がまだ混乱している中淡々と、自身の過去と病気を打ち明けた。 ︎✿︎ 「,,,,健師くんの体は、もって3年でしょう,,,」 健師は、私、高咲華が自殺未遂をした日の2年前に、余命宣告を受けた。彼は元々、病弱な体という訳でもなかった。余命宣告を受ける3日ほど前に、急に自宅で倒れて救急搬送されたのだ。 もちろん彼は、受け入れることが出来なかった。サッカー部のエースだった彼は、人一倍運動が大好きで、これから先も一生運動して生きていこう、と思っていたぐらいだったから。 「,,,嘘ですよね、お医者さん。ねぇ!!!!,,,,」 健師が泣きながら叫んでも、医者も親も、何も言ってはくれなかった。 「ねぇ、お母さん!!僕、まだまだ運動できるんだよね!?サッカー、できるんだよね!?」 ,,,母親は、無言で首を横に振った。母の目も、涙で溢れていた。 ーーーその後の医者の説明は、何も聞こえなかった。 家に帰宅した健師は、呆然としていた。まさか、つい数日前まで青春を謳歌していた自分が、余命宣告されるなんて。 ショックが大きすぎたのか、健師は、長い間部屋から出ることが出来なかったそうだ。 そしてその日から2年がたったある日の事だった。健師の母親が、健師の部屋の前でこういったのだ。 「,,,,健師、自分でも分かっていると思うけど、あなたの体はもう持って1年なの。そんなに部屋に居続けても、誰のためにもならない。だから、部屋から出て欲しいの。」 彼の母親は、続けてこう言った。 「,,,,こう言ったって、あなたが部屋から出てこないのは分かってる。どうせ出たって、みんなから変な目で見られるから嫌なんでしょう。私や、お父さんにも。だから、あなたには、この家から出て行ってもらおうと思うの。」 「,,,え?」 急にこんなことを言われるとは思ってもいなかった健師は、困惑した。 「私の母、つまりあなたの祖母の家は、誰も住んでいないような廃村にあるの。そこに行って気持ちを落ち着かせて、心の整理が着いたら戻ってきて。,,,大丈夫、ご飯は毎週食材を送ってあげるから。あなた、料理できるわよね。電気代も水道代も、私が負担する。だから行ってきて、お願い,,,,」 母の声は、話すにつれ震えていった。きっと考えに考えた結果なんだろう。健師は、こんなに頼み込まれると行かないという選択肢はないな、と思った。だから、 「,,,分かった。僕、出てくよ。」 と母に伝えて、その日のうちに家を出ていった。 荷物は郵送していたようなので、心配は要らなかった。交通費だけ渡されて、言われた場所に向かった。 「,,,,ここ、ほんとに日本か?」 彼は思わず、そう口にしていた。見渡す限りが畑。人は見える範囲では一人もいなくて、これこそが殺風景だ、と思うほどだった。 家の場所を探し歩いていたら、誰もいないと思っていたこの村に、1人の少女がいることに気づいた。 声をかけようと思ったのだが、様子がおかしかった。よく見ると、その少女は、自殺しようとしていた。僕は、気付かぬうちに叫びながら走っていた。 「,,,はぁっはあっ,,,,,,!何やってんの!死んじまうよ!」 ︎✿ 「って感じで、今に至るんだよね。」 衝撃だった。私が健師と出会った日は、健師が初めてここに来た日だったのだ。 「,,,ごめんね、長話しちゃって。」 「あぁいや、全然,,,健師のこと、知れて良かった。ありがとう。」 本当に、知れてよかった。このまま知らずにいたら、大変なことになったいたかもしれないから。 「いや、こっちこそ聞いてくれてありがと。,,,,,,あーぁ、なんか長話したから疲れたなぁ」 彼は、わざとらしく話を逸らした。この空気感が嫌だったんだろう。 「,,だね。私もちょっと、情報量多すぎて疲れたかも笑」 「ハハ、確かに!!急に色々喋りすぎちゃったか。ごめんごめん笑」 私たちは、2人で笑いあった。この辛い現実を忘れようとするかのように。 でもまた1ヶ月後、私たちは、この辛い現実を忘れてはいけない、と思い知らされたのだった。 ※注意事項※ 前話(優しい彼の優しくない罰、優しい彼の優しくない罰2)の台詞などを1部変更しました💦💦まだ結末も何も考えていないので、これからも台詞を変えたりすると思います🙇‍♂️そこも含めて、この作品を楽しんで頂けたら嬉しいです✨✨よろしくお願い致します!!

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全部、私のせい 3

全部、私のせい 2

2ヶ月 「ねぇ健師ってさ、親は?」 彼の家に居座らせてもらってから1ヶ月ちょっとたった頃、私は勇気をだしてずっと気になっていたことを聞いた。ここはおばあちゃんの家で、健師の家ではない。訳あって、今ここにいる。あと、毎週月曜日に彼の母という人から食料や衣類が届く、ということも教えてもらっていた。私はそれしか知らない。もう1ヶ月も居させてもらっているんだから、そろそろ聞いてもいい頃だろう。 「,,,あー、そういえば言ってなかったね。今両親は、僕の本当の家??って言うのかな。僕が住むべきところで暮らしてる。」 「へー,,,そうなんだ。」 こっちから聞いておいて申し訳ないけど、何を言えばいいか分からなくて、一言しか返せなかった。健師は一見いつも通り優しい笑顔を向けてくれているようにも見えるけど、なんだか、これ以上そのことを聞くな、みたいなオーラを感じた。本当は、なんでこんな村に1人で暮らしているのか聞きたかったが、また今度にしよう。そう考えていると、 「華は??親、どこにいるの?」 と、聞き返されてしまった。聞き返されるとは想定外だった。私にその質問は、若干地雷かもしれない。 「あー、私の親はまぁ、ちょっと色々あって,,,」 いい感じに濁した。よし、このまま行けるか? 「,,,もし、華が嫌じゃないんだったら教えて欲しい。お互い隠し事してても、居づらくなるだけだと思うし。」 まじか。濁せなかった。,,,これはもう、隠せない。 「,,,話すと長くなるんだけど、良い??」 「うん、聞きたいし、知りたい。」 「,,,わかった。」 私は健師に、過去を打ち明けた。 ‪✿  私の母親は、大手食品メーカーの社長で、父親は、警察官だった。  親の影響もあって、私は裕福に、大切に育てられた。母は毎朝、豪華な朝食を作ってくれるし、勉強も教えてくれるし、遊び相手にもなってくれた。社長ではあったけれど、私との時間を1番に思ってくれていた。父親は警察官で忙しくて、あまり家で会えることは無かったけれど、たまに暇な時間ができた時に遊んでくれるのが、たまらなく嬉しかった。私は、優しい母のことも、格好いい父親のことも、大好きだった。  でも、平穏な日常は、ある日突然崩れた。父親が勤務中に強盗犯と対峙し、殺されたのだ。幸い強盗犯は捕まったものの、父親が殺されてしまった悲しみは、私も母も、大きな苦しみになった。  そして、父親が亡くなってから3日ほど経った時、母は自殺した。父親が亡くなったことで仕事に大きなミスを出してしまい、会社が倒産寸前に陥ってしまったらしいのだ。遺書には、『独りにして、ごめんね。でももう、無理なの。』と、書かれていた。私は、母親に対して少し怒りを覚えた。自分が死んだら子どもが独りになることをわかっていて、それで死んだのだ。私は、独りになった。  引き取ってくれる人は居なかった。親戚は両親共々少なくて、その少ない親戚は連絡先すら知らなかった。高1だった私は、いくつもバイトを掛け持ちして、独りでの生活を始めた。そして、ちょうどその頃ぐらいから、七彩と粲露は、私をマネキン扱いし始めたのだった。 ‪✿ 「,,,こんな感じで両親、いないんだよね。」 「,,,そう、だったんだ。」 健師は、黙って私の話を聞いてくれた。黙っていた、というか呆然として声が出せていなかったようにも見えたけれど。 「話してくれて、ありがとう。」 彼はまた、優しい声でそう言った。本当に優しい声だ。なんだか、彼の声を聞くと、泣きたくなる。自分のダメなところを、全部受け止めてくれているような気がする。 「,,,優しいね、健師は。」 つい、口から零れた。でもきっと、彼のことだから『そんなことないよ。』なんて、否定してくるんだろうな。ぱっと、彼を見た。 「,,,え、健師??」 彼は、いつのまにかしゃがみこんで、荒い息をしていた。かなり辛そうで、意識も朦朧としている。 「え?!大丈夫!?ねえ、健師!」 私は慌てて話しかけた。なんだか、ただ事じゃない気がした。 「,,,く、すり,,,上着,,,,,,の、ポケットの、中,,,取って、華,,,」 彼は、荒い呼吸を繰り返しながら、途切れ途切れに言ってきた。私は急いで、彼の上着のポケットにあるポーチを取り、その中に入っていた錠剤を渡した。すると、 「,,,ごめ,,,水、とって,,,」 と、彼が言った。またまた私は大急ぎで、近くにあった水のペットボトルのキャップを開けて、彼に渡した。 「,,,あり、がと,,,」 そう言うと、彼は錠剤と水を口に含み、飲み込んだ。 次第に、彼の呼吸は落ち着いてきた。 「,,,ねえ健師、大丈夫??」 「,,,あ、うん、大丈夫。ごめんね心配かけちゃって。」 「あ、いや,,,全然。落ち着いてよかった。」 何だか聞いてはいけないような気がして、これ以上何も言えなかった。 「,,,,,,」 沈黙の時間が流れ始めた。何か言わなきゃ。そう思った矢先、彼が先に言葉を発した。 「ごめん、やっぱり気になるよね。」 「,,,うん。ごめん。」 「なんで華が謝るのさ。,,,まあ、これから一緒に暮らすんだから、話した方がいいか。」 なんだか、嫌な空気だ。これから健師が言う言葉は、聞かない方がいいような気がした。でも健師は、耳を塞ぐ間なんて与えてくれなかった。 「僕、死ぬんだよね。11ヶ月後に。」

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全部、私のせい 2

全部、私のせい

プロローグ  彼は、星が好きだった。  彼は、優しい人だった。  彼は私に、この世界の素晴らしさと、残酷さを、教えてくれた人だった。  これは、そんな彼と私が紡いだ、 ーーー12ヶ月の物語 1ヶ月  私はその日、死にたかった。  何も無い日常とは、一見楽な生活にも見えるだろう。肉体的苦痛を抱えている人は、きっと何も無い日常を望んでいるのだろう。  でも、何も無い日常は、つまらないものだ。ただ起きてご飯を食べて、学校に行って、帰ってご飯を食べて、寝る。私の人生はこれの繰り返しだった。  そんな日々を送る中で、この生活に、この人生に何の意味があるのか、私は今なんのために生きているのか、分からなくなった。友達も、居なくなってしまったし。  私には、学校でいつも一緒にいる2人がいた。佐藤七彩(さとうななさ)と、丘田粲露(おかだいいろ)という。七彩はクラスのリーダー的存在で、頼れる。粲露は、七彩とは幼馴染で、七彩と似ていて芯がある。2人は、転校してきて友達ができなかった私を、笑顔で迎え入れてくれた。  でも、気づいた時には、私はただ2人の近くにたっているだけで何も喋らない、マネキンのようになっていた。  2人が私に構ってくれなくなったのだ。  仕方の無いことだと思う。元々2人は幼馴染だったし、私は、何の個性もない、つまらない人間だったから。  何も無い日常を送り続けている人間には一緒にいる価値がない。そう判断されたのだろう。    もう生きる意味なんてない。どこかで死のう。死んで、つまらない日常から抜け出そう。  そう考えて、家から100キロほど離れた、誰もいない廃村まで来た。どうせ死ぬなら、誰にも見つからないところで死ぬほうがマシだろうし。  私はホームセンターで買ったロープを、木にしっかりと結んだ。そして、輪の中に首を通した。最後に、土台から足を外したら、死ねる。 そう思った時だった。 「,,,はぁっはあっ,,,,,,!何やってんの!死んじまうよ!」 そんなことを叫びながら、見たこともない男の子が、私をロープから突き放した。 「,,,,,,ねえ、大丈夫?怪我、してない?」 何が起こったのか、分からなかった。 でも、死ねなかった。 「,,,,,,,,,何邪魔してくれてんの。」 「え?」 「もうすぐ死ねるところだったのに!!あんたのせいで死ねなかった!あんたのせいで!」 つい、死ねなかったのが悔しくて、知らない人に当たってしまった。だめだ、こんなのただの八つ当たりだ。こんなに善意で溢れた人に当たるのは良くない。我に返った私は、走って逃げようとした。  でも逃げることは出来なかった。彼に腕を掴まれていたから。 「ちょっと!離してよ!!なんであんたが私を止めるの!!」 「だって、この手離したらまた死のうとするだろ!1回見たんだ、放っておけるわけない!!」 呆然とした。彼は、急に口調が変わった。そして、怒った目でそう言った。なんで私に怒るの。死ぬ事の何が悪いの。つい、カッとなった。 「何、あんた、私に死んで欲しくないの!?今日初めてあったばっかりの人だよ?!あんたには関係ないじゃ 「あんただけに死んで欲しくないとかそういうことじゃない!せっかくもらった命なのに、なんで自分から捨てようとするんだよ!」」 私の言葉をさえぎって、彼は、もっと命を大切にしろと、そう言ってきた。何も知らないくせに。 「あんたに私の気持ちがわかるわけない!生きてる方が辛いの、死ぬよりも!!」 何か言わずにはいられなくて、言い返した。どうせ、彼はまた何か怒ってくるだろうけど。 そう思っていたけれど、彼は何も言わなかった。暫く経ってから、 「,,,ごめんなさい、何も知らないのに」 と言って、私を包み込んだ。今私は、何をされているんだろう。分からない。分からないけど、自然と涙がこぼれおちてきた。 「,,,えっ,,,,,なんで、なんで泣いてるの、私は,,,」 彼は、私がなんと言おうと、私が泣き止むまでその手を離さなかった。初対面だったけど、知らない人だったけど、その人の手は、温かくて、優しくて、なんだか落ち着いた。 「あの、どこから来たんですか??名前は?」 自殺を阻止された私は、ひとまずその男の子の家にいれてもらった。彼は一人暮らしらしく、家には彼と私以外誰もいないみたいだった。 「,,,ここから多分100キロくらい離れた街から来た。名前は高咲華(たかさきはな)。貴方の名前は?なんでこんなところに??」 「100キロって,,,凄いですね。僕は佐藤健師(さとうけんし)って言います。別にここに住んでる訳じゃないので、この家は僕の家じゃありません。おばあちゃんの家です。もう亡くなっているんですけど、訳あって今ここに来たって感じです。」 彼は、優しい口調でそう言った。今までに聞いた事のない、優しい、優しい声だった。そして続けて、 「あの、華さんって何歳ですか??多分僕ら、同い年くらいですよね?」 と聞いてきた。 「私は今高2で16歳。後、華でいいよ。健師くんは??」 「やっぱり!僕も高2の16歳です。あと僕も、健師でいいですよ。」 「わかった。じゃあ同い年だし、お互いタメ口にしよ!よろしくね、健師!」 「うん、よろしく、華。」 自分から言い出したものの、急に呼び捨てのタメ口は心臓に悪い。健師は世間一般で言うイケメンの部類に入る顔立ちだから、顔を見るのも底辺人間の私からするとハードルが高い。ましてや呼び捨てタメ口だ。女子校だから男子と関わること自体少ないし、この先慣れて行けるか不安だ。 ん,,,??この先?私ってこの先どうするんだろ。 「,,,ねぇ、こんなこと急に聞くのもちょっとあれだけどさ」 「なになに?どうした??」 「あの,,,,,,私ってこの先どうすればいいと思う??」 「え??」 あー、流石にこれは健師に聞くことじゃなかった,,,失敗した〜。健師困っちゃってるし、前言撤回しなきゃ。そう思い口を開いたら、 「でも、僕が自殺を止めたんだから、僕が責任取るべきだよね。死にたく無くなるまで、ここ住む?」 と、先に健師に言われた。いやいや、申し訳なさすぎる。死にたく無くなる日なんて、一向に来ない気もするし。,,,でも、断ったら帰る先がない,,,,,, 「,,,凄い申し訳ないんだけど、そうさせてもらってもいい??絶対なんでもやるって、約束するから。」 「もちろん、全然いいよ。,,,そうだな、でも、一つだけ条件がある。」 「何??」 「,,,12ヶ月、つまり1年が期限。それまでには絶対に出て行ってね。」 彼にしては、強めに言ってきた。まだあって数分だから、よく分からないけど。なにか事情があるのだろうか。 「分かった。そうする。,,,じゃあ、最高でも12ヶ月間、よろしく。」 「うん、よろしくね。」 こうして、健師と私の12ヶ月は始まった。    

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全部、私のせい