ひめり

2 件の小説

ひめり

4月から電車通学になって時間が出来たため、恋多き人生を過ごす私が5分足らずで読めるかるーい短編恋愛小説を自由気ままに投稿します。

スズランを傍観するラズベリー

17時03分 スズランは咲くことを決意する。 17時05分 スズランはラズベリーに開花を告げる。 17時09分 スズランはラズベリーを連れて自分が咲く場所に向かう。 17時15分 スズランはラズベリーを抱きしめ頬にキスをする 17時18分 スズランは土の中へと入って行く。 17時20分 日差しが近づく音がする。 17時22分 ラズベリーは目を閉じる。 17時23分 スズランは芽を出す。 17時24分 スズランは開花し、潰れる。

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眼鏡に取り憑かれた悪魔

悪魔は狡猾で貪欲なものだ。 今まで惚れた男をあらゆる手段で手に入れ捨てた。今までの男たちは皆同じだった。 適当に考えた過去の不幸なエピソードを話し「2人だけの秘密にしてくれる…?」と涙目で見つめれば好きになってくれた。そこからは超簡単。 「〇〇くんの未来の彼女は幸せだなぁ。こんなに良い人と付き合えて」と言えば付き合えた。 でも、彼は違う。だからこそ悪魔の心は燃える。 高身長で頭が良くて運動もそこそこできて弦楽器が趣味。丸眼鏡がよく似合うキリッとした目で、イケメンとは言えないけど優等生顔。 嫌われがちな悪魔と連んでくれる数少ない友達。 彼は悪魔と小中学が同じの一つ上の先輩であり、悪魔は中学の時から彼がずっと好きだった。 悪魔は惚れっぽいから他の男と付き合うこともあったけど、それでも頭の片隅にあったのは彼だ。 5月の暖かい日差しの下、悪魔は彼の隣にいる。 休日に彼と2人でお茶をした帰り道、大好きな彼の匂いや雰囲気に呑まれて悪魔は天使のように穏やかだった。ニヤつく口を欠伸をするフリで誤魔化しながら、堤防沿いを歩いた。 悪魔は今から生まれて初めて告白をする。 普段の他愛もない話ならLINEでするし、他の男にはLINEで告白させるよう仕向けたことさえあった。 でも手強い彼にはそんなわけにいかない。 息を吸って口を開いた。 「ねぇ」 「どうしたの?」 「中学の時からずっと好きだった」 「気づいてた」 「付き合ってって言ったら嫌…?」 悪魔の想像以上に最高のシチュエーションだった。 春風で髪と上着が靡き、堤防に生える草が揺れて心地の良い音を立て、少し潤んだ目に日の光が差し、空は雲一つなく青かった。 普段なら「落ちた」と確信する悪魔でも今は全身が熱くなって息が詰まり、心臓が跳ねる。 丸眼鏡が少し上にズレ、光った。彼が悪魔を抱きしめたと同時に悪魔の目に涙が浮かんだ。彼が頭を撫でてくれる。 1週間後に訪れた彼の高校の定期演奏会で告白以来初めて顔を合わせた。眼鏡が消えて顔が少し寂しくなった彼が声をかけてきた。 「髪、思い切ったね。前も綺麗だったけど似合うよ。」 「ありがとう。そっちこそ、眼鏡卒業おめでとう。」 あなたはいつだってそう。「綺麗だよ」は言うくせに「愛してるよ」は言ってくれないのね。そして「嫌いだよ」って言って諦めさせてもくれない。 さよなら、でも離さないよ、眼鏡さん。

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