とわ

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とわ

自分なりに楽しく書きたい!そして読んでくれた人を楽しませたい😁 ガチの初心者ですがどうかよろしく

SECOND Life

名付け屋。それは誰かに生きる意味を与え、新しい未来を提供する仕事だ。そしてここは名付け屋によって名前を貰い、新しい人生をスタートさせた人が働く場所である。彼らはどんな名前を貰い、どんな生活を送っているのだろうか。この物語は彼らの存在を証明するためにあるものである。       コードネーム=界  「自分の世界を自分で作りなさい。その世界はお前にとって今よりずっと過ごしやすいものとなるだろう。」  そういうと男は手を差し伸べながらこう言った。  ー今日からお前は界だー    あの日以来、俺の世界は変わった。(いや、正確には変えてもらったと言うべきだろう)でも俺自身は何も変わっていないのかもしれない。そもそも俺の世界ってなんだ……?わかるわけもない答えを考えながら事務所に戻る。定期的にくる自滅モード。最近変な仕事が多いせいかどうやら精神状態がおかしいらしい。今日の仕事は早めに終わったし、久しぶりに昼から部屋で休もうか。  「ダメですよ」  ふと後ろを振り返るとスーツをしっかり着こなした細身の女と目が合った。  「なんだ、お前か」  「私で何か問題でも?それよりどうせ今から部屋でゆっくり…とでも考えていたんでしょう?ダメですよ。今日はまだまだ仕事がたくさんあるのに。」   こいつは色(しき)。俺の部下?的なやつだ。  「聞いてますか、界さん」  「ああ。それで仕事って?俺じゃなくても他にも暇なヤツいるだろ。」  「いないです。暢(のん)さんは商店街の近くに住んでいるおばあちゃんの失くしてしまった保険証を探しに、遊は(ゆう)はUFOがいるとの通報からUFOを探しに山登りへ、陣(じん)さんは子供に自転車を……」  「おい待て。ここは何でも屋であって、とんでも屋ではないはずだが。というか、遊は本当に何をしてるんだ?」  「あぁ、それはUFO探すならできるだけ空に近い所がいいと山登りに……」  「いや、そうじゃない。UFO見つけてどうするんだよ。」  「気象庁にでも連絡ですかね」  「お前、とんでも通報すんなって怒られるぞ。」  頭が痛くなってくる。ここには馬鹿しかいないのか。  「今日の仕事はもう終わらせたんだ。帰る」  「なに夫婦喧嘩の仲裁に入っただけで満足してるんです?ほら早く用意してください。次の仕事に行きますよ」  「お前は夫婦に挟まれ永遠と暴言を吐かれるつらさを知らないから…」  「何か言いました?」  「何も無い…それで次の仕事って?」  「それは昼ごはんでも食べながら話しましょう。」      事務所から一番近くにあるファミレスで食事をとる。俺が肉をがっついている隣でサラダだの野菜だのを食べている色を見ているとこっちまで心配になってくる。  「お前、そんなもんばっかで夜までもつのか?それに、これ以上痩せるとお前やばいぞ。」  色は上目遣いに俺を見て何も無かったかのようにまた食べ始めた。 「男の人と女の人は体が違うんです。一緒にしないでください。そんなことより大丈夫なんですか?」  「何が?」  「事務所に戻ってきた時、難しい顔をしていたので、何かあったのかと。界さんは定期的に自滅モードに入りますからね。まぁ話を聞くぐらいなら私にもできますよ。」  全部勘づかれているのか。図星すぎてぐぅのねも出ない。話を聞いてもらうって言ったって、十年も前にもらった名前について未だに悩んでるなんてかっこ悪すぎて言えるわけないだろ…。 「界さんのことなんで悩みを後輩に素直に打ち明けるとも思えませんけどね。考え事してるなら飽きるまで考えてください。悩みがあるならほかの先輩方にでも頼ってください。暴れ足りないなら好きなだけ暴れてください。私はただ界さんの味方でい続けるで安心していいですよ。取り返しのつかないことにはさせません。」 「俺が悩みひとつでどんだけ暴れると思ってるんだよ。」  全く先輩に対して失礼なやつだ。すると色はくすりと笑った。 「覚えてないんですか、自滅モードに入り込んだ界さんがシフトをめちゃくちゃにして会社の休日を1ヶ月近く無くしたことを。しかもあの時の界さんの電話対応が酷すぎてクレーム電話の数がたった三日で過去最多に…」 「その記憶は消したんだ。なかったことにしてくれ。」  顔が赤くなっているのが俺自身でもわかる。 「なかったことにするのはなかなか難しいですね。この昼ごはんとコーヒー代ぐらいの価値は。」  全く、いらない技術ばっかり覚えやがって。育て方を完全に間違えた。  「でも、奢るよ。ありがとな」  なんだかんだ言ってこいつらはずっと傍にいてくれたんだよな。うじうじ考えててもしょうがないか。今までは俺の世界を作れている自信なんてなかった。今もそうだ。でもそれでいい。俺の世界には俺がいて色たちがいる、それだけで充分だ。 「…?界さん、ほんとに大丈夫ですか」 「あぁ、気にするな。それで次の仕事って?」 「彼氏に、付き合って一年の記念としてプレゼントをあげたいみたいで。一緒に選んで欲しいとの依頼です。」 「それ俺いらないんじゃ…」 「いえ、ぜひ男の人の意見も聞きたいと」  ため息が出る。まぁいいか、こんな毎日すら楽しいと感じてる俺がいるんだから。

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