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67 件の小説第二十九話
【常闇の王】 黒い城。 空を貫く巨大な塔。 アルカディア城。 その最上階。 巨大な玉座の間。 静寂が支配していた。 玉座には 一人の男が座っている。 常闇の王。 アルカディア。 黒い仮面。 その存在だけで 空気が重くなる。 その時、 闇が揺れる。 一人の女が姿を現した。 第四席。 魅惑の仮面 リリス。 彼女はゆっくり跪く。 「ただいま戻りました」 アルカディアは動かない。 ただ一言。 「見たか」 リリスが微笑む。 「ええ」 「とても面白い子でした」 アルカディアの仮面が わずかに動く。 「時空の仮面」 リリスが頷く。 「カナタ」 「まだ未熟ですが」 「確かに可能性があります」 静かな沈黙。 アルカディアが言う。 「侵食はどうだ」 その言葉に 後ろの影が動く。 一人の男。 仮面。 黒い侵食。 第八席 シオン。 シオンは壁にもたれていた。 腕を組んでいる。 リリスが振り返る。 「ちゃんと見てたでしょう?」 シオンは少し笑う。 「まあな」 アルカディアが聞く。 「どう思う」 シオンが答える。 「弱い」 その言葉は 迷いがなかった。 リリスが言う。 「でも」 「あなたの仲間だったんでしょう?」 シオンの目が わずかに動く。 「昔の話だ」 沈黙。 アルカディアが立ち上がる。 その動きだけで 空気が震える。 彼はゆっくり歩く。 巨大な窓の前。 外には 黒い世界。 アルカディアが言う。 「世界は」 「もうすぐ完成する」 リリスが聞く。 「残る障害は?」 アルカディアが答える。 「時空の仮面」 その声は 静かだった。 「放っておけば」 「いずれ覚醒する」 シオンが言う。 「なら」 「俺が殺す」 リリスが笑う。 「ずいぶん冷たいわね」 シオンは答えない。 アルカディアは少し考える。 そして言う。 「まだいい」 シオンが眉を動かす。 「なぜだ」 アルカディアが振り返る。 仮面の奥の目が光る。 「覚醒するか」 「見たい」 その言葉に 玉座の間の空気が さらに重くなる。 リリスが小さく笑う。 「アルカディア様らしい」 アルカディアは言う。 「だが」 「もし覚醒したなら」 静かな声。 「その時は」 シオンを見る。 「お前が殺せ」 沈黙。 シオンは少しだけ笑った。 「いいだろ」 そして窓の外を見る。 遠く。 荒野の向こう。 小さな影。 カナタ。 シオンが呟く。 「次は」 「逃げない」 黒い城の中で 常闇の計画は 静かに進んでいた。
第二十八話
【常闇の城】 荒野。 夕暮れ。 Rとの修行が終わり、 カナタは地面に座り込んでいた。 全身が痛い。 腕も震えている。 ガルムが笑う。 「ボロボロだな」 カナタが息を吐く。 「Rが本気すぎるんだよ」 Rは何も言わない。 剣を静かに納めるだけだった。 レナが空を見上げる。 黒い雲。 その奥に、 遠く黒い塔が見えていた。 「あれが……」 「アルカディアの城」 カナタも見る。 巨大な城。 まるで空を突き刺している。 カナタが呟く。 「シオンは」 「そこにいるんだよな」 誰も答えない。 その時だった。 風が吹く。 冷たい風。 レナが振り向く。 「……誰か来る」 一人の女が歩いてきた。 黒いドレス。 長い黒髪。 優雅な歩き方。 まるで散歩のようだった。 カナタの目が鋭くなる。 女が微笑む。 「こんばんは」 ガルムが大剣を握る。 「お前は」 女は軽く礼をする。 「第四席」 仮面が現れる。 美しい仮面。 妖しく光る。 「魅惑の仮面 リリス」 空気が凍る。 カナタが言う。 「八将……」 リリスは楽しそうに笑う。 「噂は聞いてるわ」 「侵食の仮面を追ってる子達」 カナタが言う。 「シオンを返せ」 リリスが目を細める。 「返す?」 クスッと笑う。 「面白い子」 ゆっくり近づく。 ガルムが前に出る。 「これ以上近づくな」 リリスは止まる。 そして 少し首を傾げる。 「今日は」 「戦いに来たわけじゃないの」 カナタ達が警戒する。 リリスが続ける。 「ただ見に来ただけ」 カナタが言う。 「何を」 リリスが答える。 「あなた」 カナタを見る。 「時空の仮面」 その言葉で Rの目が細くなる。 リリスが微笑む。 「アルカディア様が」 「興味を持っているわ」 カナタが剣を構える。 「俺も」 「会ってやるよ」 リリスは笑う。 「そう」 「楽しみにしてる」 その時、 彼女の後ろの空間が歪む。 黒い影が現れる。 一瞬だけ。 その姿。 侵食の仮面。 カナタが叫ぶ。 「シオン!」 だが 影はすぐ消えた。 リリスが振り返る。 「まだ早いわ」 カナタが怒鳴る。 「待て!」 だが リリスの身体が 闇に溶ける。 最後に彼女は言った。 「次は」 「戦いましょう」 静寂。 風だけが吹く。 カナタは拳を握る。 「くそ……」 Rが言う。 「見られたな」 カナタが聞く。 「何を」 Rが答える。 「お前の力」 遠く アルカディアの城。 玉座の間。 シオンが窓の外を見る。 リリスが戻る。 「どうだった?」 シオンが聞く。 「カナタは」 リリスが笑う。 「面白いわ」 そして アルカディアの声が響く。 「この城に来る…」 その声は 静かだった。 だが 圧倒的だった。 「時空の仮面」 「この城へ」 戦いは すぐそこまで来ていた。
第二十七話
【剣神の試練】 荒野。 昼。 黒い雲の隙間から わずかな光が落ちていた。 その中央で 二人が向かい合う。 カナタ。 R。 二人とも剣を構えている。 少し離れた場所で レナとガルムが見ていた。 ガルムが言う。 「本気か?」 レナが頷く。 「Rは」 「いつも本気よ」 その瞬間。 Rが言う。 「来い」 カナタが地面を蹴る。 速い。 剣を振る。 ガキィィン!! Rが受ける。 火花が散る。 カナタが叫ぶ。 「まだだ!」 連続斬撃。 右。 左。 突き。 だが すべて受け止められる。 Rが言う。 「遅い」 次の瞬間。 カウンター。 ガキィィン!! カナタの剣が弾かれる。 Rの刃が カナタの首元で止まる。 沈黙。 カナタが息を切らす。 「……くそ」 Rが剣を下ろす。 「もう一度」 カナタが剣を構える。 「まだ終わってない」 再び突撃。 だが 同じだった。 ガキィィン!! ザンッ!! カナタの肩が裂ける。 倒れる。 ガルムが言う。 「終わりだろ」 レナが首を振る。 「まだ」 カナタが立ち上がる。 血が流れる。 それでも 剣を握る。 Rが言う。 「なぜ戦う」 カナタが答える。 「決まってる」 剣を握る。 「シオンを止める」 Rが聞く。 「倒すのか」 カナタの目が揺れる。 だが 答える。 「……倒す」 Rが言う。 「覚悟はあるか」 カナタが叫ぶ。 「ある!!」 再び突撃。 剣が振られる。 ガキィィン!! だが Rの動きが変わる。 速い。 圧倒的に速い。 ザンッ!! カナタの腹が裂ける。 カナタが倒れる。 地面に膝をつく。 Rが言う。 「それでは足りない」 カナタが息を吐く。 「何が……」 Rが仮面に触れる。 剣神の仮面を被る。 「仮面の力は」 「ただの力ではない」 カナタが言う。 「……知ってる」 Rが首を振る。 「違う」 剣を構える。 「限界を超えろ」 その瞬間。 Rが消えた。 カナタの目が開く。 「速い!」 次の瞬間。 斬撃が降る。 カナタが必死に受ける。 ガキィィン!! 衝撃。 膝が沈む。 Rが言う。 「見ろ」 カナタが叫ぶ。 「見てる!」 Rが言う。 「違う」 次の瞬間。 連続斬撃。 ガキィィン!! ガキィィン!! ガキィィン!! カナタの腕が震える。 Rが言う。 「感じろ」 カナタが叫ぶ。 「何を!」 Rが言う。 「時空だ」 その言葉。 カナタの意識が 一瞬 止まる。 世界が ゆっくり動いた。 風。 砂。 Rの剣。 すべてが わずかに遅く見える。 カナタが呟く。 「……これ」 Rの目が光る。 「それだ」 次の瞬間。 カナタが動く。 Rの剣を 紙一重で避ける。 ガルムが驚く。 「今の!」 レナが言う。 「時空の感覚……!」 カナタの仮面が わずかに光る。 Rが笑う。 ほんの少し。 「いい」 カナタが息を吐く。 「見えた」 Rが剣を構える。 「だが」 その目が鋭くなる。 「まだ足りない」 カナタが構える。 Rが言う。 「覚醒には」 「まだ遠い」 カナタが言う。 「なら」 剣を握る。 「超える」 Rが頷く。 「来い」 二人が 同時に踏み込む。 剣がぶつかる。 ガキィィン!! 衝撃が 荒野に響いた。 遠く 黒い城の塔。 その頂上で 侵食の仮面が 静かに笑っていた。
第二十六話
【失った仲間】 朝。 荒野に光が差していた。 だが その光は弱い。 空は相変わらず 黒い雲に覆われている。 瓦礫の街跡。 その中央で カナタは座っていた。 剣を握ったまま。 何も言わない。 動かない。 レナが遠くから見ていた。 ガルムは腕に包帯を巻いている。 誰も声をかけない。 静かな時間。 やがて 足音がする。 Rだった。 ゆっくりと歩き カナタの前で止まる。 カナタは顔を上げない。 Rが言う。 「寝ていないな」 カナタが答える。 「……眠れない」 沈黙。 カナタが言う。 「R」 「俺」 拳を握る。 「何も出来なかった」 シオンの顔が浮かぶ。 笑った顔。 怒った顔。 戦った顔。 そして 最後の言葉。 「またな」 カナタの声が震える。 「なんでだよ」 Rは黙って聞いている。 カナタが言う。 「助けるって言ったのに」 「仲間だって言ったのに」 剣を握る手が震える。 「結局」 「俺は」 「何も出来なかった」 沈黙。 風が吹く。 Rが言う。 「違う」 カナタが顔を上げる。 Rの目は まっすぐだった。 「お前は」 「まだ何もしていない」 カナタが言う。 「……え?」 Rが言う。 「終わっていない」 「戦いは」 カナタが言う。 「でもシオンは……」 Rが言う。 「敵だ」 その言葉は 昨日と同じだった。 カナタが怒る。 「そんなの!」 Rが続ける。 「だからこそ」 「お前がやる」 カナタが黙る。 Rが言う。 「倒す」 カナタの胸が痛む。 「……そんなの」 Rが言う。 「出来ないか」 カナタは答えない。 Rが続ける。 「なら」 「世界は終わる」 その言葉は 静かだった。 だが 重かった。 Rが空を見る。 黒い空。 「常闇は止まらない」 「アルカディアも」 「八将も」 「そして」 「侵食の仮面も」 カナタが言う。 「……シオン」 Rが頷く。 「お前しか」 「止められない」 沈黙。 長い沈黙。 カナタの手が震える。 やがて、剣を握り直す。 ゆっくり立ち上がる。 カナタが言う。 「……わかった」 その目には 涙が残っている。 だが 迷いは少し消えていた。 「俺がやる」 Rが頷く。 「いい顔だ」 カナタが言う。 「でも」 「その前に」 仮面を触る。 時空の仮面。 「強くなる」 Rが言う。 「当然だ」 カナタが聞く。 「どうすればいい」 Rは少し考える。 そして言う。 「戦う」 カナタが言う。 「誰と」 Rが剣を抜く。 剣神の刃。 「俺だ」 カナタが驚く。 「Rと?」 Rが言う。 「お前は」 「まだ弱い」 カナタが笑う。 「知ってる」 Rが言う。 「だが」 「時空の仮面は」 「そんなものじゃない」 カナタが聞く。 「どういう意味だ」 Rが答える。 「覚醒がある」 カナタの目が開く。 「覚醒?」 Rが言う。 「仮面は」 「限界を超えた時」 「本当の姿になる」 カナタが呟く。 「本当の姿……」 Rが言う。 「その時」 「お前は」 「アルカディアと戦える」 カナタが空を見る。 黒い空。 そして 拳を握る。 「やる」 Rが剣を構える。 「来い」 その瞬間 カナタが走る。 剣を振る。 ガキィィン!! 剣と剣がぶつかる。 戦いが始まる。 遠くの空で 黒い雲が ゆっくり動いた。 まだ誰も知らない。 この少年が やがて 世界を変える仮面を 目覚めさせることを。 空界の仮面。
第二十五話
【第八席】 黒い城。 空を貫く巨大な塔。 その内部。 闇の回廊。 リリスが歩いていた。 その後ろに 一人の男。 黒い仮面。 侵食の仮面。 シオン。 彼の足音は静かだった。 まるで 何も感じていないように。 やがて 巨大な扉の前に着く。 リリスが言う。 「ここよ」 シオンは黙っている。 リリスが扉に触れる。 ドォォォン…… 重い音と共に 扉が開く。 その先は 巨大な玉座の間。 闇の広間。 そして 玉座。 そこに 一人の男が座っていた。 長い黒髪。 白い肌。 王の仮面。 常闇の王。 アルカディア。 シオンはその男を見上げる。 アルカディアが言う。 「来たか」 声は 静かで 穏やかだった。 リリスが跪く。 「連れてきました」 アルカディアの視線が シオンに向く。 その瞬間 空気が変わる。 圧倒的な存在感。 だが シオンは動かない。 アルカディアが言う。 「侵食の仮面」 少し笑う。 「美しい」 シオンが言う。 「……あんたが」 アルカディアが答える。 「アルカディア」 シオンが言う。 「この世界の王か」 アルカディアが頷く。 「そうだ」 静かに立ち上がる。 ゆっくりと シオンの前まで歩く。 二人が向かい合う。 アルカディアが言う。 「どうだ」 「その力は」 シオンは手を見る。 黒い侵食。 それは もう身体の半分を覆っていた。 シオンが言う。 「悪くない」 アルカディアが微笑む。 「当然だ」 「それは」 「常闇の力だからな」 沈黙。 アルカディアが続ける。 「お前は選ばれた」 「侵食の器だ」 シオンが言う。 「器?」 アルカディアが言う。 「そう」 「そして」 後ろを指す。 玉座の間。 そこには 八つの席があった。 そのうち 四つが空いている。 アルカディアが言う。 「八将」 シオンが見る。 アルカディアが続ける。 「この世界を支配する」 「常闇の仮面」 そして 一つの席を指す。 一番奥。 まだ誰も座っていない席。 アルカディアが言う。 「第八席」 沈黙。 シオンが聞く。 「俺に座れと?」 アルカディアは答える。 「そうだ」 「侵食の仮面」 「お前に相応しい席だ」 シオンは少し黙る。 そして 席を見る。 ゆっくり歩く。 その席の前に立つ。 リリスが微笑む。 「おめでとう」 シオンが振り向く。 アルカディアを見る。 「一つ聞く」 アルカディアが言う。 「なんだ」 シオンが言う。 「カナタ」 その名前が出た瞬間 アルカディアの目が少し細くなる。 シオンが続ける。 「殺していいのか」 リリスが笑う。 アルカディアは少し考える。 そして 言った。 「好きにしろ」 「だが」 その声は どこか楽しそうだった。 「もし出来るなら」 「連れてこい」 シオンが聞く。 「なぜ」 アルカディアが答える。 「時空の仮面」 「興味がある」 沈黙。 シオンは席を見る。 そして 座った。 その瞬間 空気が震える。 仮面が光る。 黒い力が広がる。 アルカディアが言う。 「歓迎する」 「侵食の仮面」 「第八席 シオン」 その言葉が 闇の城に響いた。 遠く 世界のどこかで カナタが 拳を握っていた。 知らないまま。 仲間が 完全に 敵になったことを。
第二十四話
【仲間との戦い】 夜の荒野。 黒い空の下。 二つの剣がぶつかる。 ガキィィン!! 衝撃が走る。 カナタが歯を食いしばる。 「ぐっ……!」 目の前には シオン。 黒い仮面。 黒い瞳。 侵食の仮面。 シオンが笑う。 「弱いな」 カナタが叫ぶ。 「うるさい!」 再び剣を振る。 だが 迷いがある。 シオンはそれを見逃さない。 ザンッ!! カナタの腹が裂ける。 血が飛ぶ。 カナタが膝をつく。 「くそ……」 シオンが言う。 「まだ甘い」 次の瞬間。 Rの剣が割り込む。 ガキィィン!! シオンが後退する。 Rが言う。 「集中しろ」 カナタが怒鳴る。 「出来るかよ!」 Rが振り向く。 「出来なければ死ぬ」 シオンが笑う。 「その通りだ」 次の瞬間。 シオンが消える。 レナが叫ぶ。 「右!」 カナタが振り向く。 だが 遅い。 ザンッ!! カナタの肩が裂ける。 ガルムが突撃する。 「てめぇ!」 大剣が振り下ろされる。 ドォン!! 地面が砕ける。 だが シオンはいない。 後ろから声。 「遅い」 ガルムが振り向く。 ザンッ!! 背中が裂ける。 ガルムが倒れる。 「がはっ……!」 レナが炎を放つ。 「フレイム!!」 炎がシオンを飲み込む。 だが 次の瞬間 炎が割れる。 黒い斬撃。 ザンッ!! レナの頬が裂ける。 レナが後退する。 「強すぎる……」 カナタが立ち上がる。 「シオン!」 叫ぶ。 「もうやめろ!!」 シオンが言う。 「なぜ?」 カナタが言う。 「仲間だろ!」 シオンが少し黙る。 その目が わずかに揺れる。 だが 次の瞬間 笑う。 「そうだったな」 その言葉は あまりにも軽かった。 カナタの胸が痛む。 シオンが言う。 「だが」 「もう違う」 剣を構える。 「今の俺は」 「八将の八席シオンだ」 カナタが叫ぶ。 「違う!!」 その時。 Rが前に出た。 静かに言う。 「カナタ」 カナタが振り向く。 Rの目は 冷静だった。 「現実を見ろ」 カナタが震える。 「何を……」 Rが言う。 「敵だ」 その言葉は 残酷だった。 カナタが叫ぶ。 「そんなわけ――」 その瞬間。 シオンが動く。 Rと衝突。 ガキィィン!! 凄まじい衝撃。 二人が激しく斬り合う。 剣神。 侵食。 力がぶつかる。 Rが言う。 「カナタ!!」 カナタが動けない。 Rが叫ぶ。 「決めろ!」 カナタが震える。 シオンを見る。 仲間。 一緒に戦ってきた。 笑った。 喧嘩した。 助け合った。 その全てが 頭に浮かぶ。 カナタの手が震える。 「俺は……」 剣を握る。 「俺は……!」 その時だった。 黒い衝撃が爆発する。 ドォォォン!! 全員が吹き飛ぶ。 砂煙。 視界が白くなる。 カナタが立ち上がる。 「……シオン?」 その先。 黒い影。 シオンが立っていた。 だが その背後には もう一人。 女。 長い黒髪。 魅惑の仮面。 リリス。 彼女は笑う。 「十分ね」 カナタが叫ぶ。 「お前!」 リリスが言う。 「連れていくわ」 シオンが動かない。 カナタが叫ぶ。 「シオン!」 シオンがカナタを見る。 その目は 完全に闇だった。 リリスが言う。 「行くわよ」 空間が歪む。 黒い渦。 シオンが最後に言う。 「カナタ」 カナタが叫ぶ。 「戻ってこい!」 シオンは少しだけ笑う。 「またな」 その言葉を残し 二人は 闇の中に消えた。 静寂。 カナタは立ち尽くす。 剣が 手から落ちた。 カナタが呟く。 「……シオン」 空は 相変わらず 黒かった。
第二十三話
【侵食の仮面】 荒野。 夜の空。 黒い雲が流れていた。 その中央で―― 二人の剣がぶつかる。 ガキィィン!! 火花が散る。 Rが一歩踏み込む。 剣神の斬撃。 シオンが受ける。 だが その腕は 黒い力に覆われていた。 Rが言う。 「戻れ」 シオンが笑う。 「遅い」 次の瞬間。 シオンの剣が振られる。 ザンッ!! Rが後退する。 カナタが驚く。 「……Rが押されてる」 ガルムが歯を食いしばる。 「冗談だろ」 シオンが言う。 「これが」 「力だ」 黒い霧が溢れる。 大地が軋む。 レナが震える。 「常闇の力……」 Rが剣を構え直す。 「それは」 「お前の力じゃない」 シオンが笑う。 「違う」 「これは」 「俺の力だ」 シオンが踏み込む。 速い。 さっきまでとは別次元。 Rの横を通り抜ける。 ザンッ!! Rの肩が裂ける。 血が落ちる。 カナタが叫ぶ。 「R!」 シオンが言う。 「弱いな」 Rは静かだった。 ただ 剣を握り直す。 そして言う。 「カナタ」 カナタが振り向く。 Rは言った。 「覚悟しろ」 カナタが震える。 「……何の」 Rの目は シオンを見ていた。 「もう」 「戻らない」 その言葉が 空気を凍らせた。 カナタが叫ぶ。 「そんなわけない!」 「シオンは――」 その時だった。 ドクン。 シオンの仮面が 脈打った。 黒い光。 シオンが頭を押さえる。 「ぐっ……!」 空気が揺れる。 大地が割れる。 黒い霧が 渦を巻く。 レナが叫ぶ。 「仮面が!」 シオンの仮面に 黒い模様が広がる。 まるで 侵食しているように。 シオンが叫ぶ。 「止まれ!!」 だが 止まらない。 ドクン。 ドクン。 仮面が変形する。 黒い角のような形。 禍々しい紋様。 ガルムが呟く。 「……嘘だろ」 リリスの声が 遠くから聞こえる。 「綺麗」 「やっぱり」 「あなたなのね」 カナタが叫ぶ。 「シオン!!」 その瞬間。 仮面が完成した。 黒い仮面。 禍々しい仮面。 侵食の仮面。 シオンが ゆっくり顔を上げる。 その瞳は 完全に 黒かった。 そして 笑った。 「なるほど」 その声は もう シオンではなかった。 「これが」 「常闇か」 カナタが震える。 「……シオン」 シオンが言う。 「違う」 その剣が 黒く光る。 「今の俺は」 「侵食の仮面」 レナが後退する。 「そんな……」 シオンがカナタを見る。 その視線には もう 仲間を見る感情はない。 ただ 興味だけ。 「カナタ」 カナタの手が震える。 「……なんだ」 シオンが言う。 「強くなったな」 そして 剣を構える。 「試してみよう」 その瞬間。 シオンが消えた。 次の瞬間。 カナタの前。 剣が振り下ろされる。 ガキィィン!! カナタが受ける。 衝撃が走る。 カナタが叫ぶ。 「くそ!!」 Rが言う。 「下がれ」 Rが前に出る。 剣神の仮面が光る。 シオンが笑う。 「いい」 「剣神」 二人の剣が 再びぶつかる。 ガキィィン!! 衝撃が 夜の荒野を揺らした。 遠くで リリスが微笑む。 「完成ね」 空を見上げる。 そして 静かに言う。 「アルカディア様」 「新しい八将です」
第二十二話
【侵食覚醒】 夜。 荒野には 静かな風が吹いていた。 誰も喋らない。 さっきの戦い。 そして リリスの言葉。 その余韻が まだ残っていた。 ガルムが言う。 「……あいつ」 「また来るな」 レナが頷く。 「間違いなく」 カナタは黙っていた。 視線は シオン。 少し離れた場所に立っている。 背中が見える。 カナタが歩く。 「シオン」 声をかける。 シオンは動かない。 カナタが言う。 「さっきの奴の言葉」 「気にするな」 沈黙。 シオンは空を見ていた。 黒い空。 カナタが言う。 「侵食なんて」 「俺たちで何とかする」 その瞬間。 シオンの肩が わずかに震えた。 カナタが言う。 「……シオン?」 シオンが呟く。 「何とかする?」 カナタが止まる。 シオンが振り向く。 その目は 完全に黒く染まりかけていた。 カナタが息を呑む。 「……それ」 シオンが笑う。 だが その笑いは いつものものではない。 「何とかするって」 「どうやって?」 カナタが言う。 「それは……」 シオンが腕を見せる。 黒い侵食。 肩を越えて 胸元まで広がっていた。 レナが叫ぶ。 「そんな……」 シオンが言う。 「止まらない」 その声は どこか遠い。 「何をしても」 「止まらない」 カナタが言う。 「でも!」 シオンが叫ぶ。 「うるさい!!」 空気が震える。 ガルムが身構える。 「おい……」 シオンの仮面が 黒く光る。 ドクン。 鼓動のような音。 レナが震える。 「仮面が……」 シオンが頭を押さえる。 「くそ……」 「止まれ……」 だが 黒い霧が 体から溢れ始める。 カナタが近づく。 「シオン!」 シオンが叫ぶ。 「来るな!!」 ドォォォン!! 黒い衝撃波が広がる。 カナタが吹き飛ぶ。 「ぐあっ!」 ガルムが叫ぶ。 「カナタ!」 レナが炎を構える。 「シオンやめて!」 だが シオンは聞いていない。 その目は 完全に黒くなっていた。 シオンが呟く。 「……力」 その手を見る。 黒い力。 「すごい」 ガルムが怒鳴る。 「正気に戻れ!」 シオンがゆっくり顔を上げる。 その視線が ガルムを捉える。 そして 笑った。 「正気?」 次の瞬間。 シオンが消えた。 ガルムが目を開く。 「なっ――」 ザンッ!! ガルムの胸が裂ける。 血が飛ぶ。 レナが叫ぶ。 「ガルム!!」 カナタが立ち上がる。 「シオンやめろ!」 シオンが言う。 「やめる?」 その声は 冷たい。 「なんで?」 カナタが叫ぶ。 「仲間だろ!」 シオンの目が 揺れる。 一瞬だけ。 だが すぐに消える。 シオンが言う。 「……そうだったな」 その時。 Rが前に出た。 静かに。 剣を抜く。 シオンが見る。 「剣神」 Rが言う。 「そこまでだ」 シオンが笑う。 「止めるのか」 Rは答える。 「当然だ」 シオンが剣を構える。 黒い力が 刃にまとわりつく。 「なら」 「やってみろ」 カナタが叫ぶ。 「やめろ!!」 だが もう止まらない。 Rとシオン。 二人が 同時に動いた。 ガキィィン!! 剣と剣がぶつかる。 衝撃が 荒野を揺らす。 レナが震える。 「嘘……」 カナタが呟く。 「シオン……」 その瞬間。 遠くの闇の中で 誰かが笑った。 「始まった」 魅惑の仮面。 リリス。 彼女は静かに言う。 「もうすぐ」 「八将が生まれる」
第二十一話
【魅惑の仮面】 夕暮れの荒野。 戦いの跡が残っていた。 砕けた地面。 焦げた瓦礫。 そして 倒れた八将の残骸。 ガルムが息を吐く。 「三人目か……」 レナが言う。 「でも」 「まだ半分よ」 カナタは黙っていた。 目は シオンを見ている。 シオンは少し離れた場所に立っていた。 空を見ている。 風が髪を揺らす。 カナタが近づく。 「シオン」 シオンは振り向く。 「……なんだ」 カナタは腕を見る。 黒い侵食。 それは さっきより 確実に広がっていた。 カナタが言う。 「それ」 シオンは隠す。 「大丈夫だ」 カナタは言う。 「でも」 シオンが少し笑う。 「気にするな」 だが その笑顔は どこか 空虚だった。 その時だった。 風が止まる。 レナが眉をひそめる。 「……何?」 空気が変わる。 甘い匂い。 どこか 不気味なほど 心地いい香り。 ガルムが言う。 「なんだこの匂い」 声がした。 「気に入った?」 全員が振り向く。 瓦礫の上に 一人の女が座っていた。 長い黒髪。 細い体。 そして 仮面。 レナが息を呑む。 「……八将」 女は笑う。 「正解」 ゆっくり立ち上がる。 「第四席」 仮面が光る。 「魅惑の仮面 リリス」 カナタが剣を握る。 「また八将か」 リリスは首を傾ける。 「そんな怖い顔しないで」 笑う。 「今日は」 「戦いに来たわけじゃない」 ガルムが言う。 「嘘つけ」 リリスは肩をすくめる。 「本当よ」 その目が ゆっくり シオンを見る。 「今日は」 「見に来ただけ」 カナタが言う。 「何を」 リリスが答える。 「あなた」 シオンの目が揺れる。 リリスがゆっくり近づく。 誰も動けない。 空気が 重い。 レナが言う。 「……精神干渉」 リリスが笑う。 「正解」 指を鳴らす。 パチン。 その瞬間。 景色が変わった。 カナタの視界が揺れる。 瓦礫が消える。 空が変わる。 目の前には 懐かしい家。 カナタが震える。 「……ここ」 祖父の家。 声がする。 「カナタ」 振り向く。 そこには 祖父が立っていた。 カナタが呟く。 「……じいちゃん」 祖父が笑う。 「帰ってきたのか」 カナタの手が震える。 その時。 遠くから声。 「騙されるな」 Rの声。 景色が歪む。 祖父の顔が崩れる。 黒い霧になる。 カナタが叫ぶ。 「くそ!」 現実に戻る。 荒野。 リリスが笑っている。 「危なかったわね」 ガルムが怒鳴る。 「ふざけんな!」 だが リリスはもう見ていない。 彼女の目は シオンだけを見ていた。 「ねぇ」 シオンが動かない。 リリスが言う。 「苦しいでしょ」 シオンの指が震える。 リリスが優しく言う。 「その力」 「止まらないわよ」 カナタが叫ぶ。 「シオン!」 リリスが続ける。 「侵食」 「止まらない」 シオンの腕。 黒い侵食が 肩まで広がる。 レナが叫ぶ。 「まずい!」 リリスが囁く。 「でもね」 「方法がある」 シオンがゆっくり顔を上げる。 「……方法?」 リリスが笑う。 「こっちに来ればいい」 カナタが叫ぶ。 「聞くな!」 リリスは続ける。 「アルカディア様なら」 「あなたを救える」 シオンの目が揺れる。 カナタが言う。 「シオン!」 リリスが微笑む。 「あなた」 「選ばれてるのよ」 その瞬間。 シオンの仮面が 黒く光った。 ドクン。 空気が震える。 カナタが感じる。 嫌な予感。 リリスが言う。 「もうすぐね」 ガルムが怒鳴る。 「何がだ!」 リリスが笑う。 「覚醒」 そして 消えた。 風だけが残る。 静寂。 カナタがシオンを見る。 「シオン」 シオンは 立っていた。 だが その瞳は わずかに 黒く染まり始めていた。
第二十話
【常闇の王】 世界の中心。 巨大な城があった。 黒い塔。 空を貫くように伸びている。 その周囲を 無数の仮面兵が歩いていた。 だが 彼らの顔は恐怖ではない。 むしろ―― 敬意。 崇拝。 「アルカディア様の御心のままに」 静かにそう呟いていた。 城の最上階。 巨大な玉座の間。 そこには 一人の男が座っていた。 長い黒髪。 白い肌。 そして 仮面。 王の仮面。 それが 常闇の王 アルカディア。 玉座の前には 三つの影が立っていた。 仮面を被った者たち。 その一人が言う。 「報告します」 「第一席グラド」 「第二席ヴェイル」 「第三席ラグナ」 「……討伐されました」 沈黙。 広い玉座の間。 静寂。 やがて アルカディアが口を開いた。 静かな声だった。 「そうか」 怒りはない。 ただ 興味だけがあった。 「剣神か」 一人の八将が言う。 「はい」 「異世界から来た存在」 「剣神の仮面」 アルカディアが小さく笑う。 「面白い」 別の八将が言う。 「問題は」 「もう一人です」 アルカディアが視線を上げる。 「時空の仮面」 その名前が出た瞬間 空気が変わった。 八将の一人が言う。 「危険です」 「伝承では」 「時空の仮面は」 「世界を越える力」 アルカディアは頷く。 「知っている」 ゆっくりと 玉座から立ち上がる。 長いマントが揺れる。 「だが」 アルカディアの声は どこか楽しそうだった。 「それだけではない」 アルカディアが言う。 「もう一人」 八将が言う。 「……侵食」 アルカディアの目が わずかに光る。 「そう」 「侵食の力」 八将の一人が言う。 「すでに始まっています」 アルカディアは笑った。 「早いな」 八将が言う。 「どうしますか」 アルカディアは 窓の外を見る。 黒い空。 その先。 遠くにある カナタたちのいる場所。 アルカディアが言う。 「見たい」 八将が驚く。 「王自ら?」 アルカディアは首を振る。 「いや」 指を一本立てる。 「第四席」 その瞬間。 闇が揺れた。 玉座の影から 一人の女が現れる。 細い身体。 長い黒髪。 静かな仮面。 彼女は跪く。 「命令を」 アルカディアが言う。 「行け」 「そして」 「観察しろ」 女が聞く。 「殺しますか?」 アルカディアは答える。 「いや」 その声は 冷たく 静かだった。 「その男を」 「こちら側にする」 八将たちが黙る。 女が言う。 「侵食の仮面」 アルカディアが頷く。 「空席がある」 玉座の奥。 そこには 八つの席があった。 だが 三つは消えている。 そして 一つは 最初から空席だった。 アルカディアが言う。 「第八席」 女が静かに言う。 「新しい八将」 アルカディアは 笑った。 「楽しみだ」 「侵食が」 「どこまで進むのか」 女が立ち上がる。 「承知」 仮面が光る。 「第四席」 「魅惑の仮面 リリス」 闇が揺れる。 そして 彼女の姿は消えた。 玉座の間。 アルカディアは 空を見上げる。 そして 静かに言った。 「来い」 「少年」 「剣神」 「侵食の器」 その声は まるで 世界そのもののように 静かで 恐ろしく 優しかった。 「世界は」 「すぐそこだ」