ハシビロコウ
21 件の小説ホームボタン
ホームボタンを、間違えて押した。 見慣れた景色だ。 アプリアイコンが背景にずらり。 帰りを待っていたようだ。 スマホだって何だって、 帰る場所がある方がいいじゃない。 「ただいま。」って。 ホームボタンを間違えて、押した。
さ し お さ え
「しー。ね?」 怖かった。 限りない恐怖を感じた。 とても。 とても。 彼女の口に当てた人差し指は、 僕に向いていると思った。 「しー。ね。」 今度は念を押すように。 はっきりと、僕に死ねと言ったんだ。 僕はここで抗うことだってできたのに、 手も足も言葉も出なかった。 「誰にも言わないでね。」 僕の体はあっという間にさしおさえられた。 首は縦にコクリと動くしかない。 「私も黙っててあげるから。だから、しー、ね。」 死を引き換えに秘密をくれた彼女を、 それでも天使だと思う自分がいる。 やっぱり僕はおかしいんだ。 「本っ当に、私達が付き合ってること誰にも言わないで。」 僕は黙ることができない。 思い留まることができない。 医者からはADHDと言われて、 僕はまた、 手も足も言葉も出せなくて、 息苦しい。 好きな人で、息ができない。 さ し お さ え。
班デ
「これから皆でディベートをします。グループを作りなさい。」 ある会場でディベート大会が行われています。 続々と人が固まっていきます。 まるで片栗粉を混ぜたスープみたいに。 人々は人数を増やそうと必死です。 一人混ざれない女の子がいました。 会場の隅でモジモジしている姿が、 男の目を引きました。 大きなモニターに課題が移し出されます。 難しくて男には理解できません。 女の子はモニターを真剣な眼差しで見ています。 男が来てもその目は変わりませんでした。 「顔が怖いよ?」 「,,,,。」 人々は作ったグループを棚に上げ、 口々に言葉を発します。 主催者は嬉しそうです。 女の子は悲しそうです。 人々の顔はたくさんあって、 確認することはできません。 「,,,何で来てくれたの。」 女の子は言います。 疑い深く、でも待ち望むように。 「一人じゃ寂しいじゃん。」 それを聞いて女の子は酷く失望したのは、 男が“誰なのか”分かったからです。 「私は,,,」 少女が持論を述べようとすると、 男の手が出ました。 女の子はこの瞬間少女になったのです。 一つのグループがこちらを見ています。 「行こうよ。」 少女には男の手が宝石のように見えました。 キラキラと危険に輝き、 まるで生きているようです。 そう。命。少女の命です。命のハンデ。 少女はそれを手に取ってしまいます。 男にその手は見えません。 ただ少女が頷いたように写ります。 されるがまま。 こうしてグループに人員が増えます。 グループはそうやってあっという間に5つに減ります。 4つに、3つに。 2つになってディベートが終わります。 「大変面白い対決でした。課題の最終意見としては人数の多いA班の意見とします。皆さんお疲れ様でした。」 こうして一つになりました。 片栗粉を混ぜればすぐです。 主催者は心底楽しそうです。 たくさんの人々。 少女らの顔はどこでしょう 皆さんの顔はどこでしょう。 聞いても誰も答えません。 みんな分かってるから。
ダイヤモンドキック
人生切り開き歩く道、鎖だらけ。 ごつい暖簾、鉄格子、人。ゲートはたくさん。 寄り道寄り添う危ないハエ達。 急がば回れとか急かすサル共。 ごつい暖簾、鉄格子、人。もうたくさん。 目眩まし増々。あんたら、 毒吐いてるマムシかなんか?その口。 蹴り潰しちゃえ。 Kick off!! 振りかざせ、歩み。 これまでの足、ダイヤに変えて。 叫び蹴散らせ。心。 信念で輝き磨く蹴り。 Very sporty。
衝突
「,,,!!いってぇな、どこ見て歩いてんだこらっ!!」 「あぁ!?うるせぇな、どこ見て歩きゃいいんだよ!!」 「知るかよ、てめぇの不注意だろ!!」 「おめぇの肩なんか眼中にねぇんだよ!!」 「んだとこらぁ!!!」 「でけぇ図体しやがって肩パッドでもつけてんのか!!!」 バチバチとお盛んな悪ガキの側を素通りする。 こんな狭い歩道で。 どこ見て歩きゃいいんだよおい。 気も体もデカいガキにビビるいい歳した俺。 小さいなぁ。 情けって言葉知らねぇのか、ガキンチョ。 「他の人の邪魔だよ。どけおら。」 「肩パッドがイキんな。」 「だから違ぇっつてるだろ!!脱臼させるぞこら!!」 小さいのはガキの方か。 肩パットがイキったからって何なんだよ。 肩パットは何が嬉しくて、 そうじゃないやつは何が悲しいんだよ。 俺なんか肩どころか至る所痛いんだぞ。 「舐めんなよてめぇ!!」 「こっちのセリフだよ!!」 「図も肩も高ぇんだよ!!さっきからよぉ!!」 「図にノッてんじゃねぇぞ!」 「だっきゅーって何だよっ!!!」 そんなんで大丈夫かよ。 本当に最近のいさかいには心底せいせいする。 価値観の衝突ってやつ? グチグチ言えば良いってもんじゃない。 そのうるさい口をもっと良いことに使って欲しいんだけどな。 どこもかしこも衝突ばかり。 その傷をどこで癒しているのかと思えば、 衝突。 どいつもこいつも汗も反吐も垂れ流し。 頭おかしいというか、何というか。 そうやって、 衝突。 どこ見て歩きゃいいんだよマジでと視線を迷わせて、 衝突。 それを避けようとしてまた、 衝突。 サイかお前らは。
あの子のカタチが分からない。
あの子のカタチが分からない。 あの子の好き。 あの子の嫌い。 あの子の嬉しい。 あの子の悲しい。 あの子の楽しい。 あの子の苦しい。 分からない。 粘土のよう。 僕と話す時は四角形。 友達といる時は柔らかな楕円。 見る度、会う度、カタチを変える。 ,,,,誰か。 誰かが変えているのか? あの子のカタチをグシャグシャに荒らし、 こねてカタチを捏造する。 だとすればあの子は作り物。 あぁ。 僕が、 僕が手を。 僕が手を加えれば。 何だってできるのに。 僕は粘土が得意だから、 思うようにカタチを作れる。 今も粘土で練習しているんだ。 どんな四角形にも、 どんな楕円にもなるよ。 見たこともないシャープに。 あの子の顔はとてもよく分かる。 あの子の笑顔。 あの子の苦顔。 あの子の明るい顔。 あの子の暗い顔。 あの子の泣き顔。 あの子の怒り顔。 あの子の困り顔。 全表情。全コマ。 でも粘土には出せない、伝わらない。 どうして? あの子の顔手に取るように分かる。 なのにあの子のカタチはいつも違う。 もし、 もう一度“チャンス”をくれるなら、 あの子の汗。 あの子の涙。 あの子の時間。 あの子の音。 あの子の脳。 あの子の血流。 あの子の心臓まで。 全てこの粘土、乾かして。 固めてあげられるのに。 なのになぜ? 何がダメなの? 何が無理なの? 分からない。 彼女に振られた理由が、分からない。 愛のキモチは分かるのに、 僕のカタチは分からないの? 何がいいの。何がイヤなの。 あの子は、彼女は、 僕ではなく、僕の愛を褒めた。 粘土を作った僕ではなく、 乾いた土。粘土を褒めたのだ。 怖かった。 だから捨てた。 今はもうただの粘土だ。 気づけばまた形が変わっている。 違う。こんなんじゃない。 あの子の形が分からない。
サイレントシャワーヘッド
お風呂に入ろう。 湯舟に浸かる。 温かいお湯が体を包む。 心地いい。 これ程までに心地がいい場所があっただろうか。 毎日の微細な幸だ。 たっぷり使ったら体を洗う。 ,,,シャワーヘッドの形がおかしいような? 気のせいか。 体の泡を入念に洗い流す。 なぜかお風呂に入ると目が覚めるのは、 私だけだろうか。 鏡が雲っていく。 「,,,冷たっ!」 さっきまで温かかったシャワーが殺気を帯びる。 心臓に悪いぞ。殺す気か。 あるあるだ。 微細な不幸。 誰かがトイレを使っているとよく起こると、 祖母が言っていたけど、 今トイレは空だ。 お風呂に逃げ込む。 怒る体を慰める。 温かい水は浸かるもので、 冷たい水は飲むもの、それが私の持論。 一息ついたから頭を洗おう。 「あれ?」 シャワーじゃなくて下のお湯が出ている。 そこまでレバー下げたかな。 たまにこういうことがある。 シャワーを出す。 うん、温かい。 頭を出して目を閉じる。 目を閉じる。 水が滴る。 鼻に水が詰まる。 息が詰まる。 首の角度を変えてもまた詰まる。 まるで水の中にいるようで、 少し苦しい。 どんどん詰まっていってる気がする。 レバーに手を伸ばす。 見当たらない。目は閉じている。 頭が混乱する。 耳に水が詰まる。 苦しい。 音が詰まる。 何も聞こえない。 口にも詰まる。 詰まる。 苦しい。 息が詰まる。 まるで水の中にいるようで、 詰まる。 苦しい。 頭が混乱する。 詰まる。 何も聞こえない。 苦しい。 レバーに手を伸ばす。 苦しい。 詰まる。 苦しい。 詰まる。 苦しい。 詰まる。 目を開ける。 目が眩む。 辛うじて顔をあげれば、 ぼやける視界にシャワーヘッド。 そのまま静かに溺れ、 のたれ死んでいくあなたが、 鏡に映っている。 「うわぁぁ!!」 男が何かを落とした。 ガコンという鈍い音がして、 男の体を濡らす。 目の前に死体が横たわっている。 「やべぇ,,,!!やべぇよぉ,,,!!」 鏡を見て、男は震える。 水しぶきが散ったガラスにくっきり映る男と女の死体。 落としたシャワーヘッドが無惨にも水を吐く。 男がヘッドを叩くのは、 パトカーであろうサイレンが聞こえてきたからに他ならない。 『次のニュースです。昨日夜9時頃、20代女性を風呂場のシャワーで溺死させたとして、交際関係にあった20代の男が逮捕されました。当時同じく女性宅におり、通報を届けた20代男性も交際関係にあたり、警察は男女間トラブルとみて捜査を続けています。,,,,,』
フォーエバー奥行き
スマホをポケットに、 机に、カバンに、隣の部屋に、二階に、外に 。 奥。 とにかく奥へ。手の届かない場所へ置く。 勉強に取りかかって40分。 壁にブチ当たる。 堅い壁だ。 ポケット、机、カバン、隣の部屋、二階,,, どこを見ても出てこない。 壊すためのハンマーが頭のどこを探っても出ない。 ,,,分からない。 問題が解けない。 ポケット、机、カバン、隣の部屋、二階。 考えても考えても出てこない。 ポケット、机、カバン、隣の部屋、二階。 頭が回って空を仰ぐ。 ハンマーは降ってこない。 ポケット、机、カバン、隣の部屋、二階,,, 頭どころか目が回る。 脳回路が熱くなってきた。 目の前の空白が見てられない。 危険だ。止めよう。 ポケット、 机、 カバン、 隣の部屋、 二階,,,,,,,あった。僕のスマホ。 ゲーム、動画、SNS。 どこを見ても壁がない。 広大な草原。 プラネタリウムみたいで気持ちがいい。 僕だけだ。僕だけの世界だ。 勉強は一旦奥へ置く。 もう少しここにいたい。 もう少し。 草原を駆け回る。 空は回る。星が輝く。プラネタリウムだ。 どれだけ行こうと朝はない。 どれだけ行こうと行き止まりがない。 ずっと続く。 まるで人生じゃないか。 僕だけの世界。 奥へ、奥へ。 かっぱえびせんを食べながらYoutubeshortをスクロール。 駆ける草原。照らすブルーライト。 プラネタリウムに光る一つの星。 あっ前に見た面白いYoutuberだ。 奥行きがどこまでも。 『人の欲望はすごい。 どこまで行っても限界がない。 奥へ奥へ、踏み止まる壁がない。』 あっヤバい。 間違って文字にして投稿してしまって目が覚めた。 人の欲望はすごい。 自己顕示欲という語弊。 で行き着く先は自己嫌悪という誤壁。 望む奥行き。ブレインタトゥー。 フィーバーの目眩まし。 奥には何が待ってるの? 叩き壊すハンマーはどこ。 時間が奥へ迫る。 奥行きは永遠に。
ハシビロコウ(主)の話
「ハシビロコウかなぁ。」 ペルシャ猫みたいなやつの口から、 いきなり出てきた言葉に心底驚いた。 そんな、 今日の夕飯何にする?―餃子がいいかなぁ〜。 みたいなノリで言われても。 「すごいね。なんで?」 「静かだから。後は,,,うん。何かぽい。」 ちょっとムカついた。 何ハラだこれはと考えていると 「うちを動物に例えると、何やと思う?」 とペルシャ猫。 野良猫、コウモリ、牛、豚、タヌキ、ネズミ,,,, 考えられる仕返しはたくさん思いついたけど、 「チーターとか?」 「定番やね。」 静かにしといた。 初めてのクラス替えの自己紹介にて、 隣の人と自分が動物だったらディベートでハシビロコウなんて出てくる発想に正直惚れた。 「とか、何?」 自分から火起こしにくるとは愚かな奴め。 火傷しても知らないぞ。 言え! ペルシャ猫だって言ったれ! 言いようもない衝動を『初対面だぞ』という理性が留める。 言いたい! ハシビロコウに対抗して凄みを出したい! コンマの葛藤を経て出した答えは,,, 「,,,ハチドリな、感じ。」 「ハ?」 「ハチドリ。」 ペルシャ猫じゃないとしたらどことなくぽいなぁとか考えてたら、 脳の指示をミスって口が即決してしまった。 秘密は間違ってバラさないタイプなので、 自分で内心爆笑していたのも悟られずに済んだ。 「ハチドリって何。」 「日本一ちっちゃい鳥らしいよ。」 「あぁ〜。」 終始無表情だった顔がちょっと曇ったのを見てヒヤッとしたけど、 それから関係が悪くなることはなく、 これは忘れることのない思い出となりましたとさ。 めでたしめでたし。 全部実話です。うろ覚えだけど。
お熱熱
「あっ。」 知らないお姉さんが公園のベンチで寝てる。 夕方だから公園には誰もいない。 そもそもここに人が来たところを、 僕は見たことがない。 ここは田舎の団地で僕はぼっちだから。 家の近所の公園に連れて行く相手は誰もいないし、 遊具も少ないから一人だとつまらない。 知らない、女の人だ。 いいなぁ。僕も寝たいなぁ。 周りを見る。 人の気配はない。よし大丈夫だ。 女の人に行く。 「,,,?」 お姉さんが起きて、僕を見た。 「おはよう。」 「,,,おはよう,,,どうしたの?」 「もう夕方だよ。」 「,,,本当だ。」 ちっとも思ってなさそうなその顔は、 なんとなく悲しげで、 何だか僕も悲しくなってきた。 「,,,ずるいよ。」 「?」 「僕だって寝たい。」 「顔赤いよ?」 「熱。」 いきなり出てきた言葉に僕は風邪を引いた。 「なのにお母さんはさぁ、学校行けって言うんだよ。」 こんなことで悲しくなっちゃ駄目だ。 そう思うのに、酷いお母さんを思い出す。 久しぶりに零れた涙が溢れる。 ゴホゴホと咳まで出てきた。 わざとじゃないもん。 「ひぐっ,,,ひぐっ,,,うぅ,,,」 どのくらい零れただろう。 僕の中のお母さんはびしょ濡れだった。 お姉さんを見ると、 まるでアリの行列を見る目だった。 僕のお母さんは涙と引っ込んだ。 「お姉さんは一人なの?」 「うん。」 「,,,そうなんだ。」 「学校、行かないの?」 僕はそこでやっと思い出す。 でも、行ってはいけない気がして頷く。 「フフッ。,,,こっちおいで。」 お姉さんがベンチをはたく。 僕はお姉さんの横に座った。 そしたら、お姉さんが僕のおでこに手を当てた。 「すごい、冷えピタみたいだ。」 「ジンジン痛くない?」 「平気。お姉さんは?」 「,,,温かい。,,,,」 なぜかお姉さんはそう言って悲しい顔をした。 そんな目で見てきても僕には分からないよ。 なんで、笑いながら泣いてるの,,,? 「,,,帰りたくない。」 お姉さんの声だったから僕はとても驚いた。 「僕も。一緒だ。」 本心を打ち明けると、 また僕には分からない顔をした。 「おいで。」 お姉さんは僕を強く抱きしめた。 忘れないで ボソッと空気に飛んだ言葉を、 僕は見逃さず捕まえた。 「忘れないよ!お熱で見た夢でも、覚えてる!」 僕は焦りに駆られた。 もっとここにいたい。 「,,,温かい。」 お姉さんがまた零す。 さっきとは違うかたちをしている。 「お姉さんは子供がほしいの?」 この人がお母さんだったら良かったのに。 「嫌。」 お姉さんははっきりと言って、 優しくない顔をした。 僕は何だかほっとした。 「僕のお熱、とって良いよ。」 僕のおでこに手が乗る。 プールに入った時みたいに、 僕の熱をお姉さんの手が奪っていく。 周りの空気が僕とお姉さんの熱で、 温められた気がした。 「温かいね。」 僕が言う。 お姉さんは熱っぽく 「おねつねつだね!」 って。面白そうに。 それが僕の熱だと気付くのに少し時間がかかった。 僕のお熱熱。 咳は止んでいた。 「いたぞぉ!」 知らない声を聞いて公園の入り口を振り返る。 数人の男の人がこっちへ向かってくる。 お姉さんよりも悲しげで怖い顔をしている。 バクバクな僕に、お姉さんは 「ありがとう。」 一言で、僕のおでこにチューした。 僕が分からない顔で。 心の中が少しずつくしゃくしゃにされる感じで、 すごい泣きたくなった。 「こーさんでーす。」 お姉さんは男の人達に笑顔を見せる。 まるで遊び終わった子供みたいに。 両手を上げて。 それは僕に似ていた。今の僕に。 やっと解放されるって。 その晴れやかな顔が、 僕と男の人達を悲しくさせた。 それからお姉さんは男の人達に両肩を掴まれ、 両手を紐で縛られた。 僕に何も言わないから、多分警察じゃない。 「じゃあね。」 お姉さんは優しく言った。 僕の分からない いや、今の僕には痛いほど分かるその顔で。 とても、とても僕に似ていたんだ。 お姉さんのお熱熱を感じた。 お姉さんは連れて行かれた。 振り返りはしなかった。 公園を出ていく時に大粒の涙を残して。 僕はまた一人になった。 「,,,帰りたくない,,,。」 いつの間にか、 お姉さんと同じことを言った。 「,,,また、会えるかな。」 無理だろうと僕は悟り、 一人で帰って熱で倒れた。 いつまでもお姉さんを覚えていようと思うと、 熱が上がった。 お姉さんのお熱熱でだ。