ハシビロコウ

13 件の小説
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ハシビロコウ

人生初の友達に言われたあだ名。 迷いが晴れかかってる子羊 いや、小鳥です。 画像は飼い主。

ハシビロコウ(主)の話

「ハシビロコウかなぁ。」 ペルシャ猫みたいなやつの口から、 いきなり出てきた言葉に心底驚いた。 そんな、 今日の夕飯何にする?―餃子がいいかなぁ〜。 みたいなノリで言われても。 「すごいね。なんで?」 「静かだから。後は,,,うん。何かぽい。」 ちょっとムカついた。 何ハラだこれはと考えていると 「うちを動物に例えると、何やと思う?」 とペルシャ猫。 野良猫、コウモリ、牛、豚、タヌキ、ネズミ,,,, 考えられる仕返しはたくさん思いついたけど、 「チーターとか?」 「定番やね。」 静かにしといた。 初めてのクラス替えの自己紹介にて、 隣の人と自分が動物だったらディベートでハシビロコウなんて出てくる発想に正直惚れた。 「とか、何?」 自分から火起こしにくるとは愚かな奴め。 火傷しても知らないぞ。 言え! ペルシャ猫だって言ったれ! 言いようもない衝動を『初対面だぞ』という理性が留める。 言いたい! ハシビロコウに対抗して凄みを出したい! コンマの葛藤を経て出した答えは,,, 「,,,ハチドリな、感じ。」 「ハ?」 「ハチドリ。」 ペルシャ猫じゃないとしたらどことなくぽいなぁとか考えてたら、 脳の指示をミスって口が即決してしまった。 秘密は間違ってバラさないタイプなので、 自分で内心爆笑していたのも悟られずに済んだ。 「ハチドリって何。」 「日本一ちっちゃい鳥らしいよ。」 「あぁ〜。」 終始無表情だった顔がちょっと曇ったのを見てヒヤッとしたけど、 それから関係が悪くなることはなく、 これは忘れることのない思い出となりましたとさ。 めでたしめでたし。 全部実話です。うろ覚えだけど。

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ハシビロコウ(主)の話

お熱熱

「あっ。」 知らないお姉さんが公園のベンチで寝てる。 夕方だから公園には誰もいない。 そもそもここに人が来たところを、 僕は見たことがない。 ここは田舎の団地で僕はぼっちだから。 家の近所の公園に連れて行く相手は誰もいないし、 遊具も少ないから一人だとつまらない。 知らない、女の人だ。 いいなぁ。僕も寝たいなぁ。 周りを見る。 人の気配はない。よし大丈夫だ。 女の人に行く。 「,,,?」 お姉さんが起きて、僕を見た。 「おはよう。」 「,,,おはよう,,,どうしたの?」 「もう夕方だよ。」 「,,,本当だ。」 ちっとも思ってなさそうなその顔は、 なんとなく悲しげで、 何だか僕も悲しくなってきた。 「,,,ずるいよ。」 「?」 「僕だって寝たい。」 「顔赤いよ?」 「熱。」 いきなり出てきた言葉に僕は風邪を引いた。 「なのにお母さんはさぁ、学校行けって言うんだよ。」 こんなことで悲しくなっちゃ駄目だ。 そう思うのに、酷いお母さんを思い出す。 久しぶりに零れた涙が溢れる。 ゴホゴホと咳まで出てきた。 わざとじゃないもん。 「ひぐっ,,,ひぐっ,,,うぅ,,,」 どのくらい零れただろう。 僕の中のお母さんはびしょ濡れだった。 お姉さんを見ると、 まるでアリの行列を見る目だった。 僕のお母さんは涙と引っ込んだ。 「お姉さんは一人なの?」 「うん。」 「,,,そうなんだ。」 「学校、行かないの?」 僕はそこでやっと思い出す。 でも、行ってはいけない気がして頷く。 「フフッ。,,,こっちおいで。」 お姉さんがベンチをはたく。 僕はお姉さんの横に座った。 そしたら、お姉さんが僕のおでこに手を当てた。 「すごい、冷えピタみたいだ。」 「ジンジン痛くない?」 「平気。お姉さんは?」 「,,,温かい。,,,,」 なぜかお姉さんはそう言って悲しい顔をした。 そんな目で見てきても僕には分からないよ。 なんで、笑いながら泣いてるの,,,? 「,,,帰りたくない。」 お姉さんの声だったから僕はとても驚いた。 「僕も。一緒だ。」 本心を打ち明けると、 また僕には分からない顔をした。 「おいで。」 お姉さんは僕を強く抱きしめた。 忘れないで ボソッと空気に飛んだ言葉を、 僕は見逃さず捕まえた。 「忘れないよ!お熱で見た夢でも、覚えてる!」 僕は焦りに駆られた。 もっとここにいたい。 「,,,温かい。」 お姉さんがまた零す。 さっきとは違うかたちをしている。 「お姉さんは子供がほしいの?」 この人がお母さんだったら良かったのに。 「嫌。」 お姉さんははっきりと言って、 優しくない顔をした。 僕は何だかほっとした。 「僕のお熱、とって良いよ。」 僕のおでこに手が乗る。 プールに入った時みたいに、 僕の熱をお姉さんの手が奪っていく。 周りの空気が僕とお姉さんの熱で、 温められた気がした。 「温かいね。」 僕が言う。 お姉さんは熱っぽく 「おねつねつだね!」 って。面白そうに。 それが僕の熱だと気付くのに少し時間がかかった。 僕のお熱熱。 咳は止んでいた。 「いたぞぉ!」 知らない声を聞いて公園の入り口を振り返る。 数人の男の人がこっちへ向かってくる。 お姉さんよりも悲しげで怖い顔をしている。 バクバクな僕に、お姉さんは 「ありがとう。」 一言で、僕のおでこにチューした。 僕が分からない顔で。 心の中が少しずつくしゃくしゃにされる感じで、 すごい泣きたくなった。 「こーさんでーす。」 お姉さんは男の人達に笑顔を見せる。 まるで遊び終わった子供みたいに。 両手を上げて。 それは僕に似ていた。今の僕に。 やっと解放されるって。 その晴れやかな顔が、 僕と男の人達を悲しくさせた。 それからお姉さんは男の人達に両肩を掴まれ、 両手を紐で縛られた。 僕に何も言わないから、多分警察じゃない。 「じゃあね。」 お姉さんは優しく言った。 僕の分からない いや、今の僕には痛いほど分かるその顔で。 とても、とても僕に似ていたんだ。 お姉さんのお熱熱を感じた。 お姉さんは連れて行かれた。 振り返りはしなかった。 公園を出ていく時に大粒の涙を残して。 僕はまた一人になった。 「,,,帰りたくない,,,。」 いつの間にか、 お姉さんと同じことを言った。 「,,,また、会えるかな。」 無理だろうと僕は悟り、 一人で帰って熱で倒れた。 いつまでもお姉さんを覚えていようと思うと、 熱が上がった。 お姉さんのお熱熱でだ。

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お熱熱

文学少女の手足、首

ある軍隊が貧相な村に押しかけました。 軍隊は横柄な輩でした。 食い物は荒らし、人を脅し、 獰猛に村を駆け回りました。 残念なことに、 彼らに届く苦情は一つもありませんでした。 軍は理不尽でした。 ある日、 軍隊の一人がとある集落へ押し入りました。 軍隊のことなので理由は明らかになりませんでしたが、彼が正気でなかったのは確かです。 集落は静かでした。 軍隊の一人は集落で暴れ回り住人を殺していきました。 たくさんの一般人が亡くなります。 集落はあっという間に廃村になりました。 軍がしていたことなので軍は動きませんでした。 軍は理不尽です。 このような時代がどこにも長くありました。 彼は軍にも時代にも逆らうことになりました。 集落の最後の家では、 一人の少女が本を読んでいました。 少女の家と集落は少し距離があり、 何ら不審ではありませんでした。 軍の一人は少女に手をかけます。 手足、首。 どこを狙おうかなと考えます。 銃で脅し、ナイフで息を荒らします。 しかし逃げませんでした。 少女は逃げませんでした。 ただ本を胸に構え、彼をじっと見ます。 彼はこれまでにないイタミを感じて、 やっと自分のしたことに気づきました。 少女は言います。 「私が死んだら、この本を持ち帰ってください。どうかお願いします。」 彼は少女を見据えます。 文学少女の手足、首は、 なんとしなやかなことでしょう。 それに比べて彼の手は、 血生臭くとても脆い。 軍の手です。 彼は正気を取り戻しました。 軍に言葉はありません。 なので彼は少女にたくさんの金と涙をよこし去りました。 彼は後に、 たくさんの少女はこうやって死ぬのだと、 軍の輩に知らされます。 このような時代はとても長く続きました。 やがて彼は軍に抹消されますが、 いつか、 彼が残した涙やたくさんの遺体があの日の 少女と共に、 軍の戦車共を爆撃する日が来るでしょう。 手足も首もなくなった同然の彼らが今度は火薬となるのです。

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ノンセンスはナンセンス

どうしても起きたくない朝。 いやいや起きて、いつも通り通学の準備。 毎日チャリ登校で事故無し。 学校でももはや自己無し。 先生の話も耳から耳へ。 終わればすぐ帰宅。 宅、讃。 スマホに飲んだくれ暮れ。 画面寄って眺めて恨めしがって画面酔っての放課後。 順風満帆で良かったわって皮肉。 運動しないから変なところに溜まっちゃたね。 明日もまだ平日だな。 面白味なんてない、 無味で無意味な生活。 噛み締めてる。 味付けて弄らない方が綺麗になると思ってる。 バカみたいだって分かってる。 けど毎度おおきに言えるのは、 無個性。 レッテル貼っられてる。自分に。 〈無個性〉。ノンセンス。 趣味も特技もない無臭の画用紙。 筆が進まなくて白紙で出して、 せいぜい「良い紙選びました。」。 無駄、無断。 自分一人じゃ判断もできない。 ぼやける輪郭。転がす色鉛筆。 折れる芯。 破れる紙。かく髪。 なんて白々しい。 本当に考えてんの? もう、 書けないなら塗れ。 ノンセンスはナンセンス。 塗りつぶせ。イメージの大変さをしって。 無能は才能。紙一重。 マネしてでも完成させた方がいい。 写せば、討つ背。 無光性でしけった無個性。 熱で焼け。

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白勝て、黒勝て、どっちも負けろ。

白色の軍団と黒色の軍団が戦っている。 何で争っているかは分からない。 途中から見に来たから。 隣のおじいさんはずっとこの闘いを見ているようだった。 「白頑張れ〜! 黒頑張れ〜! 白勝て、黒勝て、どっちも負けろ♪」 年長者とは思えない、 なんて遊戯的なかけ声。 白と黒の団扇を間抜けに振って、 軍団に届きもしない声援を張る。 闘いの喧騒に対してまるで失礼だ。 おじいさんは一人で、 声援がキャッチできるのはたぶん私だけだった。 「あの、ずっとここで見てるんですか?」 「そうだよ。嬢ちゃんもやるかい?」 そう言って黒の団扇を差し出したが、 突っぱねた。 「勝負事まで煽るのは辞めてください。」 このおじいさん全体に言い放ったつもりだった。 「別にいいじゃないか。第三者の意見というのは大切なんだよ。」 おじいさんは私の真意を受け取って尚、 嗜めるように言った。 舌より頭が回ってないタイプかなと思ったけど、 お酒臭は皆無だった。 「白勝て、黒勝て、どっちも負けろ♪」 「あの、これって何で闘ってるんですか?」 「まぁ相撲みたいなもんだ。腕っぷしと運で勝つ。嬢ちゃんには分からんかね。」 おじいさんから私の方向に風が吹く。 少しタバコの匂いがして、 大体はおじいさんが何なのか分かった気がした。 ただ加齢臭がないのに驚いた。 「どっちが勝ってほしいですか?」 「何?」 「その団扇、風向きはどっちですか。」 無駄に言い直したのが無駄だった。 「どっちも負けてほしい。」 「え?」 「風なんざ元からないさ。それこそ遠くで応援している私らのように人肌に掠れもしない。」 おじいさんは続ける。 「勝負ごとっつうもんはそこまでいった時点で勝ち負けは存在しない。ケンカを売ったやつも負けだしそれを買ったやつも負けだ。逆に言うとどっちも「カチ」というもんがある。」 「カチ,,,」 勝敗のそれとはイントネーションが違った。 「売ったやつのプライド、買ったやつが賭けた金とかな。」 「ちょっと分かんないです。」 「だろうなぁ。」 おじいさんは悲しげもせず零した。 「まぁそれでいいさ。あんた達は。」 ちょっとイラッときていい事を思いついた。 「白貸してください。」 「ん?あぁ。ほれ。」 私は真っ白の団扇を持ち、 2つの軍団に向けて、 これまで出せると思ったことがないほど声を響かせた。 「白頑張れぇぇ!」 おじいさんが目を見開く。 「白、頑張れぇぇぇ!!」 白色の軍団から旗と声が上がった。 「うっしゃ行くぞぉぉ!!!」 私は少し嬉しくなった。 「どっちも負けろぉぉ!!」 おじいさんも物凄い声を張って応戦した。 「声出るじゃないですか。」 「そっちこそ。」 「身を切り裂くほどの風も悪くないでしょ?」 面白半分で呟いただけだが、 おじいさんには堪えたようだ。 「面白くないなぁ。」 そう言うおじいさんの顔は笑っていた。 それから私達は声援を送り続けた。 その風に飛ばされるように、 両軍団は闘いの中段々と私達から遠ざかっていった。 やがて両軍が見えなくなると声が枯れた2人は倒れ込んだ。 「ふぅ、どっちも勝ちですね。」 「,,,いや、私はまだ追う。」 ちょっとかっこいいなと思って、 スカした笑いが出た。 しばらく休んだ後、 おじいさんが先に動いた。 「健闘を祈る。」 おじいさんは私に言って、 両軍に向かい発った。 帰ろう。 私は帰路につくことにした。 喉がカラカラだ。 少し酒を飲みたい気分だった。 負けた感じはない。 この白い団扇をおじいさんに返す気もない。

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白勝て、黒勝て、どっちも負けろ。

「似てるね」

小さい頃から誰かと同じが嫌だった。 「強がりなんだね。なんかかっこ悪い。」 そんなことを言ってくる人達も嫌いだ。 最近増えた気がして気が滅入る。 今もそう思っている。 何でかなって考えたら、 特別に扱われたいのかもしれないな。 という答えがあった。 それは皆同じなんだなと、 周りをみてハッとした。 皆一人じゃ空っぽだから、 特別になりたいんだ。 誰かと何かになりたいんじゃなくて、 誰かの何かになりたいだなって。 皆似てるね。 「ありえないわ。」 だからわざと突っぱねた。 あんな言葉は嫌いだから。 「身勝手で最低だね。」 自分の口から出たのに、 自分が言われているんだと思って涙が出た。

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ナンプラー

ナンプラーというのはタイの醤油らしい。 タイというのは中国の南。 ミャンマーの西。 ずっとグランモンテのようなワインかと思っていた。 そうじゃなければあるゲームキャラクターに名前が似ている。 灯をモチーフにしたキャラクターだ。 美味しいのだろうか? ナンプラーというのは。 タイでは定番だという。 ここにしかない「醤油」というのが外国にもあるというだけで、 想像性が欠けた私には少しワクワク感じる。 お寿司店で置いてあるところないかな。 生魚にやるものじゃないのか。 こうやって少し遠いものに思いを馳せるのも、 たまには悪くない。

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フォト・ミラクル

カメラをかざすと、皆いい顔になる。 フィルターがかかっているから。 カメラと現実のギャップというべきなんだけど、 皆はそれを映えと茶化す。 フィルターに映るその顔をレジン液か何かで固められたらいいのに。 これを加工なんて呼ぶやつは、 心が粘土や蜂蜜に塗られている。 写真を撮ればその人が見える。 背景、フィルム関係なく。 驚くほどによく見える。 今まで見ていた顔が取り繕った仮面だと、 すぐ分かる。 これがフォトミラクル。

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コスモに付き合って。

こんなDMがきてた。 「人間関係って「宇宙」だと思う。 人は惑星でその関係は宇宙空間だってこと。 そう思わない? だから、 人間関係どうしたら良いですかって、 言われてもわかんない。 宇宙空間はどうにもできないでしょ。 たまには惑星どうし衝突することだってあるよ。 そこで化学反応でも起こしてしまえば、 爆発して散るとしても。 宇宙空間はどうにもできない。 でも、 宇宙なんて私達正直知らないじゃない? 理解しようとも思わない。 輝く目で飛び立っていく宇宙飛行士か、 理系の哲学系物好きぐらいだよ。 知ろうとすることが大切なんじゃない? 相手との宇宙空間を。 人も惑星もたくさんいるよね。 地上から見れば。 塵みたいに。 ところどころ銀河として固まって、 どこまでも広がっている。 そんな中、私とあなたは出会いました。 知りたいよ。あなたのこと。 あなたのコスモを。 お友達になりませんか? 」 スパムメールで間違いないので、 ブロックした。 宇宙交信だ、すげー。 なんて言うと思ったかバカヤロウ。 後日、 異性の友達が、 一緒にご飯を食べてる時にこう切り出した。 「人間関係って宇宙だと思うんだよね。」 限りないコスモを感じて、身を引いた。

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列車

ガタンゴトンガタンゴトン。 列車は続くよどこまでも。 線路を走り、客を乗せ。 車掌を介し、町から町へ。 金を貰わなくとも、 修理されなくとも、 線路と客と車掌あらば。 ガタンゴトンガタンゴトン。 人生は続くよどこまでも。 金を貰わなくとも。 修理されなくとも。 車掌は私。 乗せる思いや、色んな貨物も、 客ともてなして損はない。 ガタンゴトンガタンゴトン。 山あり谷あり続くよ。どこまでも。 車掌は私だから。 悪意ある迷惑人や、厄介な撮り鉄は、 たまにゃ線路からはじいても良いさ。 町越え、駅越え、私越え。 向かうるは幾多もの人の声。 ガタンゴトンガタンゴトン。 私は続くよどこまでも。 道に次ぐよどこへでも。 愚痴のアナウンスでも響かせながら、 次なる客と街を追う。 今日も安全運転。 線路が続く。 ことを祈る。 走ってゆけ。どこまでも。 ご乗車ありがとう御座いました。

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