ハシビロコウ

35 件の小説
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ハシビロコウ

人生初の友達に言われたあだ名。 心はカカポ。 画像は飼い主です。 シリーズ「宇宙のどこか」 作品集「未完成」、「シアター」ご賞味ください。

逆探知

恋愛はトリックの一種。 「愛してる」はレトリックの一歩。 その裏側にある物は何? バックヤードにいるアレは誰? 「付き合おう」から始まる長電話。 長く赤く細い糸電話。 クモのように忙しく張る巣。 何人と繋がってるの。 逆探知。 Trace the call you。 まだ未だ未だまだだ、切らないで。 近くにくるまで近くにいて。 事実を探してるから動かないで。 愛を探知するまで長電話。 確実犯までじっくり事情聴取。 しっかり聞いてるからね。 回線侵されないように接地(アース)。 感電はしたくない。 逆探知。 Trace the call you。 君の謝罪で終わる長電話。 5回コールまで待つよ再電通。 短絡(ショート)で済めば怖くない。 電気、気持ち、通る糸電話。 駄目ダメだめな、愛の巣。 一回切っただけでダルンダルン。 編み感も股もユルユルで、 はみ出る出会いしまってあげる。 恋愛はトリックの一種。 「愛してる」はレトリックの一歩。 バックヤードは楽屋だけで十分。 まかり通るのは舞台まで一途。 「付き合おう」で始まるマジック。 騙された君で作る理想のロジック。 仕掛けは全部撤収して。 これから本番、長電話。 逆探知。 Trace on you。

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逆探知

刹那、切ない。

一人の夜、ふと切ない。 空を見ても星一つ見えない。 俺の周りを巡る悶々とした思いを乗せたまま、 地球は廻る。 輝きもせず衝突もせず静かに埋まる気持ち。 掘り起こしたくても、スコップがない。 いっそ俺が輝いてやろうか。 暗闇ならよく見えるだろう。 俺も廻れば目が回る。 犬も歩けば棒に当たる。 途中でどれだけ酔おうと吐こうと、 メリーゴーランドは止まらない。 このままでいたいけど、 このままじゃいたたまれない。 踏み台を踏むにも、 そこまで登っていけない。 成長できない、 低身長な心。 口に含むほど暗みが増す夜に立ち眩み。 「一人の俺」の背中も押せない一人の俺。 精一杯光ろうと誰一人反射してくれない。 こんな感じでも朝は来る。 夜明けになるにつれ自分の痴態に目を覚ます。 また吐いちまったよ。 朝日に照らされる寒い風に、 刹那、刹那、切ない。

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オートマティックチルドレン・アンド・マニュアルアダルト

「なぜ僕らは無潤なのだろう。」 高水先輩は最近哲学に躍起になっている。 入社当時は哲学者をことごとく嫌がっていたくせに、 5年も経てばこのザマだ。 「無潤ってどういうことですか?」 「潤いがないんだよ。僕ら大人は、子供たちに比べてとても貧相だ。」 高水先輩は最近若者叩きにも躍起になっている。 若者の僕がいる前で叩くことはないが、 喉奥にはまきびしが敷いてあることだろう。 なぜかは僕には分からない。 なぜかは僕には分からない。 「貧相な大人がいずれ何をするか分かるか?」 「分かりません。」 話題を替えようと思ったが何も良いものが考えられない。 少し胃が痛くなってきた。 「略奪だ。」 矢印が先輩に刺さっているように見える。 なぜか?分からない。 それは人の指、人の手。 ある手は先輩に向かってたくさんのお金を落していく。 ある手は先輩を撫でる。 ある手は先輩を捏ねる。 なぜか?分からない。 先輩は次第に手を引っ張り出す。 撫でてもらうために売り込みに行く。 捏ねられるためにしがみつく。 褒められるなら服すら脱ぐ。 なぜか?分からない。 そして、 いいねを貰うためなら僕らを殺し、 登録者(ファン)を守るためならシタを出す。 なぜか?分からない。 なぜか、分からない。 「僕は君を奪った。」 「もう辞めましょうよそんな話」 高水先輩は『ガッコー』で働いている。 ガラスや宝石でできた僕ら少年少女を熱で溶かして成形するお仕事をしている。 ガッコーには他にも酷い業務がたくさんある。 いわば工場だ。 色とりどりの子供達が煙にまみれて、 一色になりベルトコンベアに流されていく。 大人達はひたすら子供を成形して、 血と汗や脳、心臓を流して使いやすくなったものが階段で子供達と共に行く。 子供は自動。大人は主動。 時々子供(ショーヒン)がいなくなるのはこの会社の労働環境が証拠にある。 子供は自動。大人は主動。 品質が悪くなったものはカラス達に突かれる。 誰もそれを止めることはできない。 「略奪だ。」 それは禁句の二文字。 そう教えられてきた。 僕らは金も訓もないから。 「僕はショーヒンを盗んだ。君を助けた。」 僕らは売り物だった。 僕らは搾取されていた。 「そう思っていた。けど違うんだろう?」 僕は良い品だった。 下品でも上品でもない。 そんな品を大人達は求めていた。 純粋で、無垢で、豊潤。 先輩はまだそうだった僕に何度も言い聞かせた。 先輩もほしかった。 「でも今の僕には君という潤いがある。」 「僕もそう言えれば幸せなんですけどね。」 子供は自動。大人は手動。 これが逆になれば何かが変わって、 なぜか分からないことが分かるかもしれない。

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全自動彼氏

私の彼氏は全自動。 お喋りが得意じゃないの。 まるで地蔵。 私の主動に従ってくれる。 私に主導を導いてくれるの。 何を言っても頷いてくれる。 認めてくれる。 見惚れてくれる。 受け入れてくれる。 自動に、受動で、手動。 ワンちゃんみたいに尻尾振って、 ワンチャンスの恋。 冷めたら錆びちゃう。 猫ちゃんみたいに可憐で、 枯れんでいてね。 お水はないけど私を日光にして。 私の彼氏は全自動。 なくならないよう、 愛が電池♡ 足りなくなったら足すだけ。 お話をすれば分かってくれる、離さないで慰めてくれるの。 何でもしてくれる。 何回も。 難解なプロセスを踏んで、 お決まりの褒め言葉。 私は何でもしていれる。 お花にはならないで、 手指を飛ばさないで。 私にとっての植物。 寄り添うだけでいいの。 返り咲かないで。 決まった通り最低、決して切り裂かないで。 私の彼氏は全自動。 ちょっと壊れちゃった。 修理が必要。 非道に是正されないように、 私の道を守るの。 どこにいてもついてきてくれる。 そうだよね? どこへでも連れてってくれる、 赤い糸にガッツポーズ。 石みたいに硬い絆。 傷なんて見えない、綺麗なはずだったのに。 機械みたいにただそこにいて、 後は温かくしてくれればそれでいいの。 お願いやめて。 目ザメないで。 お手もお座りもジョウズだから。 下手なんじゃない、躾は私が下んだから。 私の彼氏は全自動。 余計なことしないで。 プログラムが止まるでしょ? 愛着なんてもってのほか。 これから離陸するところだったのに。 もういらない。 一緒にいてらんない。 サメ肌が怖くて抱けないし、 お口がよく動くようになったから、 いちいち止めるのが面倒くさい。 他の男みたいに役立たず。 なんで私が動かさなきゃいけないの? 人形じゃなくて私の気持ちを縫ってよ。 ちょっと言う通りにするだけでいいから、 言われなくても愛してほしかった。

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全自動彼氏

祝 30作品突破

ちょっくらここで祝わせてください。 読者の皆様も少し息抜きに。 祝いたいって人は、 31日までナデナデコンテストっていう企画をやってるので、 そこで私を褒めてください。 30作品突破しました〜やた〜。 ここまで見届けてくれたであろう、 フォロワー様。感謝、感激、感無量。 これからもよろしくね。 30作品の中でみんなの好きな物語をぜひコメント欄で教えてください。 自分の過去作品よく見てベンキョーするタイプなので。 せっかくなので雑談でもしましょうか。 みんなは小説のアイデアとかってどんな感じで考えてるんだろうな。 って最近思います。 色々ありますよね。 ちょっと語らせてください。 私はアニメを想像してます。 物語を執筆し始めてから、 「アニメや漫画のような小説」を書いてみたいなっていう野望が秘かにあるんですよね。 それでまずアニメ・漫画と小説の違いを考えたんですよ。 まず『発想力』だと思いました。 まぁ当然ですね。 チェンソーマンなんて思いつく作家さんはいません。たぶん。 本、物語を書く人には脚本力が足りないのかなって思います。 もちろんアニメ化や映画化してる小説だってたくさんありますよ。 でも私が目指してるのはそれじゃなくて。 アニメーションで漫画のような独創的な物語を書きたいんです。 ファンタジーとかが書きたいわけじゃないですよ? 文字だけで、 アニメの躍動感と臨場感 漫画の絵柄と世界観を 表現できるような物語にしたい。 なんじゃそらって思うでしょ。 私も最初はぼんやりしてました。 それを形にしてくれたのがnoveleeの皆さんです。 ここに来るまで何個か小説サイトを旅してました。 でもどれも何というか、 ピンと来なかったんですよね。 夢小説とか二次創作も最近多いし。 それで正直ナイーブになってました。 面白い小説なんかネットにはないのかなって。 偶然誰かの小説サイト一覧でここを見つけて、 最初はすごい驚きました。 みんなちゃんと小説なんですよ。 いろんな小説。 ラノベのありきたりなつまらん展開なんか一つもなかったし、 落書きしましたって感じの物語なんかもっての他でした。 全部個性があって面白かった。 ここで書こうって思いました。 ここなら目標にしたい人がたくさんいる。 民度も高いし。 そうやって今に至ります。 お付き合いいただきありがとうございます。 熱くなりすぎました。お恥ずかしや。 真面目な話するとどうしても長くなっちゃうんですよね。 冷えたら固まって縮んじゃうと思うので気にしないでください。 あんまお喋りは得意じゃないけどね。 ハシビロコウなので。 長くてつまらない話をしちゃったので お詫びに、 自分の作品を自画自賛したいと思います。 私が一番好きな作品は 「多様性のせい」です。 多様性をボコボコにするのが読んでて爽快でした!(ニパっと笑う、顔) こんなふうに、 ・30作品の中で良いと思ったやつ 初見さんも1から選んでぜひ ・小説のアイデアどうやって考えてるか 高校生のまだまだ学び盛りなので、 たくさん教えてやってください。 2倍の60作品が突破した頃、 またアイコンのサムネイルで会いましょう。

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祝 30作品突破

つまらない日々は秒で終わる

誰もいない夜の高校。 静かな教室で一人好きに踊る。 一度やってみたかったんだ。 つまらない毎日を謳歌するように時々ここで踊る。 どんな変なことをしても、 誰にも見られない。 どうせ誰も気にしないんだ。 生徒も、先生も、親も、世界も,,,。 2年間経っても誰とも喋っていない、 僕のことなんて。 僕が見えてる人なんて誰一人いない。 はずだったけど、 ギィィ (!?) 突然教室のドアが開く。 「あ,,,◯◯君、今日も来てたんだね,,,。」 今日も ,,,, 「ずっと見てた。ごめんね。」 一人の夜に今夜明けが来た。 朝になれば 教室に、行こう。

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つまらない日々は秒で終わる

心臓マッサージ、あなたへ

もしもし。 私だよ。 最近どう?調子。 ,,,そっかぁ。 そっちも大変だよね。 そりゃ疲れるよ。 だって明らかに元気ないじゃん。 電話越しにも分かるくらい。 そんなに落ち込まないで。 大丈夫。大丈夫。 って言うだけでもだいぶ違うでしょ。 ほら言って。 大丈夫。大丈夫。 じゃあ私がもうちょい大丈夫になる方法教えてあげる。 悲しいときには手をグーにして胸にポンポン当てる、 アザになるまで〜♪ 面白くないんですけど〜!って? そうだよね。 ウサギがパンツ履いて何なんだって感じだよね。 うん。大丈夫。 気にしなくていいよ。忘れて? 私もちょっと疲れてるのかもね。 ね。 はい。 元気だそう。 気を取り直して。 心臓をマッサージするの。 心臓分かる? そこは、腸だね。 いろいろ元気になると思うけど、 そういうことじゃなくて。 そう。そこそこ。 そこに優しく手を当てて。 ゆっくり目を閉じて。,,,, どう? ちょっとは楽になったかな。 この広告を見たらもうちょっと大丈夫になれるけどどうする? ,,,冗談だよ。ごめん。 なんだか暖かくなった気がしない? やっぱり温もりが大事なんだなって。 人じゃなくてもさ、 趣味とか。好きなことでも良いし。 自分の手でも,,, いや、そんな悲しむことじゃないって。 誰かに打ち明けて、 自分なりに模索してるだけであなたはすごいよ。 褒めてばっかの私よりずっと。 辛かったら吐き出していいんだよ。 大丈夫? 私がいいこと言い過ぎて泣いてない? 私は、大丈夫。 待って。 最後におまじないかけてあげる。 効果はそんな期待できないけど。 1回リラックスして、肩の力を抜いて。 私が5回気合いを入れるから、 それを心臓に当てて。 説明分かったよね? いい?行くよ。 大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。 大丈夫っ! はい。 今あなたの体は丈夫になりました。 大、丈夫になりました。 元気でたでしょ。 私の心臓マッサージ届いた? よかった。 私も嬉しいよ。 私のこんな励ましで元気になってくれて ありがとう。 えらいね。

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信号待ち

信号を待っている。 今か今かと。 誰かからの信号を、待っている。 そんな人は案外たくさんいる。 「お。青信号だ。お前ら渡るぞ。」 今日も鶴の一声でやっと渡る。 誰かが渡らないと渡れないんだ。 ペンギンみたいにヨチヨチ渡る。 はいはいしょうがねぇな。と車は待つ。 ヨチヨチ、ハイハイ。 赤ちゃんみたいだなぁ。 僕らはいつまで経っても赤ちゃんだ。 辛い世の中にバブバブ文句を言い、 怒られてえんえん泣き、 疲れが溜まればおぎゃぁと叫ぶ。 無力で可愛くて儚い僕ら。 上司と保護者に泣き寝入り、 時には土下座してまで守ってもらう。 そのくせ、 突然車に轢かれてぽっくり死んでしまう。 そんな僕ら。 指示を待っている。 今か今かと。 誰かの指示を、待っている。 そんな人は意外といっぱいいる。 「ええい!もう待てねぇ!赤信号だが渡ってしまえっ!」 ある時誰かは言うだろう。 鶴じゃなく、悪魔の一声。 どんな集団も光と天がなければ、 魔が差すというものだろう。 例え悪魔だろうが天使だろうが上司だろうが、 「車が来てねぇうちに、急げっ!行けぇ!」 と言われれば行かなきゃならない。 急いで渡る。 必死に走る。 赤信号 みんなで渡れば 怖くない 渡りきって後ろを見れば、 一人もいない。 そんなこともあるだろう。 みんな轢かれて死んだんだ。 しょうがねぇにも限度がある。 だがそんな節度にも限界がある。 渡らなければ、従わなければ、 置いていかれる。 そうやって僕らは生きている。 そうやって僕らはできている。 体はとっくに赤信号。 でも行くのさ。 生きていれば赤も黄も黒もあるものよ。 赤信号 みんなで渡れば 罪はない お母さんお父さん、神様閻魔様。 どうかこんな僕らをお許しください。 次の信号を待つ。

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多様性のせい

頭に、ぱっと広がる景色。 ニパっと笑う、顔。 絵の具みたいに染みる色。 メモリーみたいに浮き出る君。 それを、それを、 ぐっと押しつぶし、握り殺す。 「多様性」。 キミのせい。 人間の性。 私の、私の彼を。あの人を。 「多様性」。 むちゃくちゃにする。 頭の景色が絵のように閉じ込められて、 魂が行き場を失くし、 彼が生き場を亡くす。 私の彼の顔が整形されて見るに堪えない表情。 こんなの彼じゃない。 彼じゃない。 「多様性」、 お前のせい。 お前のせいで彼氏は「自分」を捨てた。 鏡を信じれなくなって、 どこの馬の骨とも知らない他人の目を気にするようになった。 多様性。 何が多様性。 良いふうに成り上がって、 いい気になりやがって。 たった数千歩の散歩さえも、 彼はビビる。人目をビビる。 聞こえる、響く、ヒソヒソ声。 そよ風と一緒に。汚らしい。 見せ物じゃねぇぞ。 どこへ行こうと、 評価・批評。 プライベートはどうした。 ヒソヒソ、呟き。 付けられる点数。 学校のテストか。バカじゃないの? 顔が悪いから40点。 彼女さんに合ってない、20点。 服装がだらしない。5点。 楽しくなさそう。25点 陰キャ。 根暗。 世間知らず。 身の程知らず。 堅苦しい。 〜。 〜。 〜。 〜。 うるさい! 飛んでくる言葉を叩き落し、 タバコカスみたいに踏み潰してやる。 言ったもん勝ちってか。 言ってやるよ。 黙れ。 静かに見てろ。 お客さんは神様じゃないし、 お前らみたいのは客じゃねぇんだよ。 お前らの言葉が私に、彼に、 役立つことなんてない。 批評しただけで思い上がるな。 自分の思いを押し付けたごときで、 その人の背中を後押しできたと思うな。 「多様性」、 お前のせい。 お前のせいで、 自分がどんな酷いことをしても相手は良いふうに受け取ってくれると信じるバカが増えた。 道徳とかそういう問題じゃない。 お人形遊びからやり直せ。 ネットのコメントじゃなくて、 絵本をじっくり読み聞かせしてもらえ。 お前は童話の主人公じゃない。 そんな絵本いらない。 めちゃくちゃにしても、 何してもいいなら、 お前が主人公のその絵本をビリビリに引き裂いて燃やしてやる。 耳栓をするつもりで、 彼と二人だけで歩いていく。 湧き出す罵詈雑言の胸ぐらを掴み、 蹴り殺す。 ここまでしなくちゃならないの? 評価なんてどうでもいい。 したくもない。 それもこれも多様性のせい。 頭に、ぱっと広がる景色。 踏み殺す雑踏。 汚い文句にテーピング。 お前達は0点だよって、 評価を評価。 ニパっと笑う、顔。 二人だけの笑顔。 誰になんと言われようが、 仮面を作ってまで笑顔。 幸せなの。 あんた達が首をツッコむから不幸になる。 絵の具みたいに染みる色。 綺麗な彼色。 誰にも塗らせない。 絶対的な色。 混ざれば彼も何も見えなくなってしまう。 メモリーみたいに浮かぶ君。 宝物。 それをっ,,,それをっ,,, ぐっと押しつぶし、握り殺す。 それをまた誰かに売りさばくんでしょ? ぐちゃぐちゃにして。 彼はネタじゃない。 売り物じゃない。 彼は彼。 私は私。 口コミもミシュランもコンテストも、 もう終わったの。 勝ち組、負け組。 これはダメ。あれがいい。 好き勝手言って。 国を上げた戦争でも、 仕切ってるつもりか。 「多様性」 キミのせい。 人間の性。 いい加減にしろ。 評価・批評も寿司屋も戦争も、 全部妄想でしとけばいいよ。 どうせ全部、お前らの偶像だから。

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わ。

「お゛い゛ひぃ゛か゛も゛ぉぉぉ!」 ヤバい、ヤバい。 音量最大にしてた。 電車内でこんなにジロジロ見られたのは初めてだ。 電車内で音量マックスyoutube、 恥ずかしくないのかっ! って斜め向かいのおじさんが思ってる。 顔に出てるよ、ブサイク。 本当に、恥ずかしくないのか。 スマホに私も目で訴える。 画面越しではポン酢に致死量の七味を混ぜて、 お肉をしゃぶしゃぶしている。 何がシャア専用だ。 赤色代表みたいに言いやがって。 字幕はお決まりの、 「お゛い゛し゛い゛かもー。」 恥ずかしくないらしい。 絶対咳き込んでるな。 視線を感じてスマホを閉じる。 さっきのおじさん。 場を乱すかもー。 なんて思ってんのかな。 場にふさわしくないだの、 輪を乱すだの、 協調がないだの。 輪って乱れるもんなの? 駅で降りてスマホを開ける。 画面は次の動画に移り、 コインランドリーで缶ビールを開けて、 ステップを踏んでいる。 こんなやつでも輪の中にいる。 その場にいる。 考えてみる。 人と人が支え合ってできる「友」。 これは乱れる。 ちょっとしたことで壊れてしまう。 友の間にできる「情」。 決して変わらないものじゃない。 情が溜まって「親」。 これも変わる。血縁が関係ないのなら。 親しい成れの果ては何だろう、「愛」? これも変わる。 永遠の愛を欲しがった時、人は死ぬ。 いずれも乱れてしまい、 それは良くないことだ。 待てよ。 「友」の前にできる、 本当に大事な輪を2つ思いついた。 「握手」と「仲間」。 私達は手を繋げる。 一度手を繋いだら仲間と呼び合える。 その輪はとても大きくて、 優しくて、 全ての人ができる。 あんなおじさんだろうと。 そんなアル中だろうと。 こんな私だろうと。 それは乱れない。 とても大きくて、優しいから。 話、和、輪。 話して和めば輪になれる。 だからおじさんの考えは違う。 残念ながら本当にブサイク。 価値観とか関係ないから。 好きも嫌いもない。 乱れるも、整えるも。 汚いも綺麗も。 四角でも三角でもない。 わ。 気づけばまた次の動画に移っていた。 結婚式場で泥酔してるみたいだ。 意気揚々と新郎新婦に近づいていく。 どうしようもないアル中に、 優しく手を繋いで輪に入っていくのが見えた。

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