tocchi
3 件の小説感情が続くのって3日らしいよ #3
これ以上ここで立っていると不審に思われるかもしれない。 早く、店に入るか別の場所に移動しなくては。 思い悩んでいると、一人の男性が悩んでいる俺の横を通って楽器屋に入っていった。 「今、ひとが入っていったか?」 まるで自分の家に入るかのように、 するりと入店したからか一瞬入ったか、どうか分からなかった。 ふう、すごい人が居たもんだ。 それでもって俺はどうすればいいんだ……。 いや待て! 今の人に続いて入店すれば、いい感じにどさくさに紛れて行けるんじゃないか? これが楽器屋に入るラストチャンス……なのか? よし、入店しよう。
感情が続くのって3日らしいよ #2
俺に語彙力があれば! この感情も言葉として言い表せただろうに! 俺は居ても立っても居られないそんな気持ちで 家を飛び出していた。 行く先は決めていなかった。 気持ちが先走ってそれに合わせて行動していた。 それだけ興奮して感激していた。 気持ちというは実に単純で真っ直ぐなもの、 俺は汗だくになりながら楽器屋の前まで走ってきていた。 俺は楽器屋の前で立ち止まっていた。 既に5分はここで立ってる。 最初は息が整うまで待っていただけだが、 そんなのは1分もすれば落ち着く。 なのに、なぜ5分以上ここで立っているのか。 それは店の中に入るのが怖い、 少し億劫になっているから。 音楽初心者がこういった場所に入るのは勇気のいる行動なんだ。 息を整えて冷静になった弊害で思いっ切りの良さが無くなってしまった。 「どうしようかな、」
感情が続くのって3日らしいよ
スラっと細長く綺麗な指が、 白く細長い板とそれより少し短い黒い板を華麗に押し弾いている。 その光景は誰が見ても綺麗、素晴らしいと思い。 そして、その音を聴くと誰もが感動し手を止め足を止め聴きとめるだろう。 「かっこいいなぁ~!!かっこいいなんて言葉 じゃ表現できないほどかっこいい!何て言えばいい! はぁ……俺に語彙力があれば、この気持ちも言 葉として言い表せるのだろうか?」 俺は見てしまった、聴いてしまった。 動画配信サイトに上げられた一本の動画。 再生数の少ない、登録者はもっと少ない そんな動画。 内容は至って普通、男性一人がピアノの演奏するそれだけだった。 俺は感動している!感激だ! 動画のことを思うだけで素晴らしく何とも言えな い感情に支配されてしまう、感情で胸が一杯だ。 「これが恋、なのか……?」恋ではない。