コーヒーな思い出①
「ふぅ…」思わず漏れる息に気づかないままコーヒーを啜る。錦糸町の星乃珈琲店が私のお気に入りだ。そんな哀愁に満ちたような雰囲気に浸る私は、小松さとみ。なんだかんだで夢を叶えて図書館の司書として東京で働いている。
コーヒーは私にとってなんなんだろうとたまに考えてしまう。体の一部なのかな、生活リズムの一環…。答えはいつもその時次第だったりしなかったり曖昧なのがいつも嫌だ。趣味はカフェ巡りなのだが、結局ここに戻ってきてしまう。レトロな内装に美味しいコーヒー、甘いスイーツ…お気に入りはアツアツのチーズケーキなんだが、あのなんとも言えない濃厚さはいつ食べてもコーヒーがよく合うのだ。
そういえば私は何かとコーヒーが思い出によく出てくるような気がする。
上京する前よく父と父の書斎でコーヒーを飲みながら語り合っていた。
「さとみは何になりたいんだ?」
「私はずっと本が読める環境だけあれば何でもいいかな。」
「だったら司書にでもなったらいいさ。本に囲まれていられる。でも刺激は薄いかもな。」
ほぉ…と思った。その時の私はとにかく本が好きだったからすぐにそれを目指したんだ。
「私司書になりたいかも。」
「まぁ向かなかったらすぐ別の道を探せばいい。さとみはゆったり生きなさい。」そして父は私にコーヒーを一杯入れてくれた。
「なんか…いつもよりホッとする…」
その時飲んだコーヒーが一番フルーティで鼻に抜けた香りが心地良かった。
一番ほっこりした思い出だったかも…
今でも父の淹れるコーヒーは真似できない。「喫茶店でもやろうかな…」
そう呟いて済ませた会計のレシートを眺めながらエレベーターで一階に降りた。
「500円か〜…」意外と重い金額だ。
明日も来ようかな。そう思いながら徒歩30秒の駅まで歩いた。
〜①完〜