碧海 梢
6 件の小説イジワルな子
これは私がまだ7歳のお話。 満開の桜が窓一面を覆い尽くす。 先生「今日から一年生の皆さん!一年間よろしくね〜!」 新たな生活。今日から小学一年生。 先生「では、早速!自己紹介をはしめましょうか…前のA君からスタートだから皆んなも考えておいてね〜」 私は…一番最後のアンカーだった。 …ふと隣の男の子にこっそり話しかける 私「…あの!私○○って言うのよろしく!」 隣「……。」 返事は返ってこなかった。 あっという間に自己紹介から午前の時間は終わった。 昼食の時間が近づいた。 初の給食! ワクワクしながら、近くの三人と席をくっつけ準備をする。 私を入れた4人グループ。 先ほどの隣の男の子。 前の席の男の子2人。 1人は小柄で細い子。 もう1人は大柄で逞しい子。 私と隣の子は同じくらいの背格好。 と言っても、私はクラスの女子の中で一番大きい。 前の大柄な子がクラスで一番大きいから… 隣の子は2〜3番目くらいかな? そんな事を考えてると給食の配膳が始まる。 席で大人しく待っていよう。 ……暇だな。 頭をぼーっと前を眺めていると 小柄の男の子が大きな本を取り出し、読み始める。 私「ねぇ!それなんの本?」 ?「えっ?あ…これ、は……虫の、本だよ。」 私「ほえ〜虫か…私も一緒に見たい!」 ?「…へ!?あ…、、、えっと虫が好きなの?」 私「んー…興味はあるかな!」 ?「そう…なんだ。いいよ…。」 私「わーい!やった〜ありがとう!…えっと何君だっけ?」 ?「あ…僕の名前は、シン…だよ。きっ君は?」 私「シン君!私は〇〇だよ!よろしく〜」 シ「〇〇…。うん!よろしく。」
胸
18歳になるまで残り…1ヶ月と20日 ここ最近、夜に眠れなくなった。 眠くない訳じゃない、ただ不安や恐怖が増えただけ。 あぁ、まだ課題が終わっていない。 しまった、鞄にアレとかアレ入れったけな? …明日こそ大丈夫だろうか。 …また色々と言われるだろうか。 …怖い。何もない自分が 妙なことばかり頭浮かび、不安ばかりが募る。 分からない自分が、 行動することができない自分が、 情けなくて何もなくなった自分が、 はぁ… ただ一粒、また一粒と はぁぁ… 漏れでてきては、頭を抱える。 このままでは近いうちに倒れるな… そればかりは避けたい。 ただでさえ、親の足をひぱっているのに … ダメだ。 頭が痛い、気持ち悪い、腹もグルグル。 眠い、眠い、、、眠い。 胸が痛い、息がしづらい、もうヤダ。 泣きそう、、 助けて、、ってどう言えばいいの…?
望みは
どこかへ逃げてしまいたい。 今、目も前のドアノブを引けば 誰にも気づかれず 飛び立っていける。 どこへ? どこへ向かえばいい? どこに行っても同じ 最後には【家】に戻される。 目の前のドアノブは 簡単に触れることができるのに …できるはずなのに 眺めていることしかできない。 何度も繰り返す 誰もが寝静まった場所で 何度も 何度も 何度も …何度でも 捨てきれぬ思いを ただ抱えながら 泣くこともできず 憎むこともできず 朝日を迎えるのです。
モノローグ
「自由」…母から告げられたその言葉は私が苦手とする一言。 辞書の中では「他からの束縛を受けず、自分の思うままにふるまえること」 「哲学用語。自由な行動により生じた結果は本人が引き受けるべきという社会通念があり、 自由と責任は併せて語られる事が多い。」 …私自身から見て、自分の行動や考えには責任を持つのは当たり前のことだと思う。 規則を守るにしても守るのは自分自身。 「どう考えるかは私の自由でしょ!」 「自由に振る舞えないのは辛い」 「自由が欲しい」 ……… 「自由」を口にせず、望まず、必死に耐えている人がいたら? それを選んだのは「その人自身」? 目の前にその人が現れれば大抵の人は同じことを口にする。 「自由にすればいいじゃない。」 その言葉に責任を置いている人はどれほどいるのだろう? 相手に責任をとってもらいたい訳でも、 望みを持っている訳でもない。 私にとって「自由」という言葉が意味をなさないだけ… 「自由は己が望んでしまえば、それは自由ではなくなる」 それは自身の胸の内に聞いて腑に落ちた言葉だった。 本当に「自由」は望むものなのだろうか? 実際はとても単純明白で多くの人と論戦することでもないんじゃないのだろうか… …はぁ、なんとも無責任で幼い考えだろう… 明確な理由がなければ人は納得しない。 同じく納得できない理由があるから人は納得しない。 随分、身勝手で情けないものだろう… こんな自分も随分… 身勝手な無知の【子供】なのだろう。
私が辿る筆跡
18歳になるまで残り…2ヶ月と15日 小さい頃の夢は「お母さんになること」。 子供の頃から子供が大好きだった… その時は、いつか自分にも弟か妹ができると信じていた。 大きくなり母にそのことを告げたのだが、 「あんたは、一人っ子だからそう言えるのよ。 上や下と比べられることもなく自由だったアンタにはわからないだろうけど。」 …確かに周りの兄弟・姉妹が皆、仲良しかと言われればそうでもない。 母には10歳ほど離れている妹が1人いるが 年が離れていることもあって比べられることはなかったと言う。 ただ歳の近い従兄弟が十人もおり、当時一番年下の母はよくいじめられた話す。 ……昔は子供が7〜8人いてもおかしくない時代、 仮に全員大人になって子供を持てば… まぁ子供の数は倍になる。 現代では、なんとも恐ろしい話である。
薔薇の瞳(下書き)
【人物】 ……マット ……アリス マ「先生。私に触れてはくれませんか?」 美しき青年は瞳をこちらに向け、誘い文句を口にする。 ア「残念ながら接触行為は禁止されていますので。」 甘く誘うような声に一刀の遮りを入れる。 マ「ンフフ、つれない方ですね。」 その「つれない」は「釣れない」という意味だろうか…。 私と彼の間には長さ55センチの机が置いてある。 目の前には距離以外何も遮るものなどない。 手を一振り伸ばしてしまえば、首に手をかけれると言うのに。 あいも変わらず何を考えているか全く読めない。 今から一ヶ月ほど前に捕まった彼。 彼の名は「マット」悪魔として名の知れている犯罪者だ。 マ「先生、アリス先生…今日はなんのお話をしましょうか。」 私、アリスは彼の専属精神科医としてここにいる。 大半は自身の犯罪心理の研究として彼に興味があるだけだが、 どうもこの男。私を気に入ったようで刑事達の話は全く聞かず 私の言うことだけに受け答えをするらしい。 物好きに好かれると言うのはこんな感じなのだろうか…。 ア「…そうね、では前回の話の続きでもしましょうか。」 マ「いいですよ。前回、あぁ確か私の幼少期について…でしたっけ。」 ここ一ヶ月間で彼について分かったこといえば、 幼少期に両親からの虐待を受ける。おまけに仲の悪かった双方に 相手を消せと命じられ二人同時に埋葬をしたと…。 犯罪特有の中にある、「愛情」を向けられなかった子供。 それもタチの悪い子供だ、なんせ彼の心に〝嘘”の文字はない ……【純粋】なのだ。 自身が一度気に入った【モノ】の為ならなんでもする。 マ「あなたと言う人は……ずるい方ですね。全く…」 ア「どうゆうこと?」 マ「涙もなければ慰めもないなんて…それに私ばかりに話をさせて、自分のことはさっぱりではないですか…」 ア「……。」 マ「ただ私はもっとあなたを知りたいだけなのに?ねぇ先生の話…私にだけ聞かせてください。」 まただ。優艶に誘い、この手に触れようとする声が…。 哀れであるとは思う、しかし情をかけようとは微塵も思わない。 55センチの距離。これが「私」と「彼」の境なのだから。 が、ここで下がるのも彼の思うツボなのだろう。 人を惑わし、誘い出す、美しく純粋な悪魔らしい彼。 否定し振り払えば彼の興味が惹きつける【オモチャ】に、 心のうちを覗かせれば彼が欲する【美味の果実】に。 ならば、いっそ腹を割って話せばいい。 所詮過ぎ去った日々の話なのだから。 最も重要なのは、ここで彼と向き合い決して目を逸らさないこと。 喰うことも喰らわれることもないように…。 ア「構わないわよ。大した話でもないし…」 マ「へーそうなのですね。ンフフ」 面白そうに…しかし喜びにも見える彼の笑顔。 マ「アリス先生のお話…聞かせてください。」 満面の笑みを見せる悪魔に、私は語り始める。 …そう。どこにでも転がっている、ありきたりの話を…