モーモーミルク
2 件の小説明日も君に会えるかな(2)
人物紹介2 クウガ(高校3年生) 中学時代からのハヤトの友人。 手先がとても器用であり、ゲームの大会では日本大会準決勝まで進んだこともある。 そんな彼はメガネをかけているせいか物静かに見えるが、実はその逆でとても会話力があり一部女子からはギャップがすごいと言われている。 好きな教科 理科 情報 好きな食べ物 柑橘類の果物 趣味 ゲーム 絵を描くこと 人と会話すること ハヤテ(高校3年生) 彼も中学時代からの友人であり高校野球部の副キャプテンである。 野球のうまさは本物であり試合では4番を務めるほどだが、勉強は本当に苦手らしく高校2年生の時には全教科赤点を取るほど。 ここ最近筋トレを始めたらしく、よく鉄棒で懸垂をしている。 好きな教科 保険体育 好きな食べ物 プロテイン 趣味 筋トレ マイ(高校1年生) ユメの友達で吹奏楽部に所属している。 最近はガチャガチャにはまっているそうで、本人曰く家に100個以上のカプセルがあるんだとか。 そんな彼女は普段は優しいが、怒ると本気で人が変わるくらい怖いのだそう。 好きな教科 社会 美術 好きな食べ物 うどん 趣味 SNS 6 ハヤトが入浴を終えてリビングに戻ると、ユメはテーブルの横のラグの上で眠っていた。よほど疲れていたのだろう。 彼の視線は自然と彼女の体へと向かう。その体は白く、とても綺麗だった。胸は大きくはないが形が整っており、くびれもしっかりとある。肌触りの良さそうな太腿には少しむっちりとしていて肉付きが良い。 思わず見惚れてしまうほどだった。 すると彼女が寝返りを打ったので、ドキッとした。仰向けになり、無防備な姿を晒すと同時に彼女が目を覚ました。 「あれ?私いつの間にか寝ちゃってたみたい。」 と彼女は伸びをしながら言った。 「じゃあそろそろ寝るか?」 と言うと、ユメは少し寂しげな表情を見せたあとに、 「そうだね。」 と答えた。ベッドは一つしか無いので必然的に一緒の布団に入ることになる。 ハヤトが電気を消して真っ暗になると、ユメは彼に抱きついた。 「どうしたんだ?」 と聞くと 「怖いから・・・」 それ以上に言葉は出なかった。 今日のこともあってか断れるはずもなく、 「いいよ」 と言うと安心したのか 「ありがとう!」 と声が高くなったのが分かった。
明日も君と会えるかな(1)
登場人物 ハヤト(高校3年生) この物語の主人公。 2週間前に彼女と別れ、最近はずっと落ち込んでばかりいる。 元陸上部で100メートル走のタイムを13秒89から11秒21まで縮めた超人。 そんな彼はなぜか日本語よりも英語が好きという謎な一面も持ち合わせている。 好きな教科 英語と数学 好きな食べ物 お寿司 趣味 旅行 ユメ(高校1年生) 可愛い見た目とは裏腹に柔道部の時期エースと呼ばれるほど柔道が強いが、運動神経はそこまで良くない。 そんな彼女は最近あるドラマのせいでロマンチックな恋に興味を持ち始めたと言う。そのためかはわからないが料理をし始めたそうだ。 好きな教科 国語 好きな食べ物 ハンバーガーやパンなどの炭水化物 趣味 SNS 1 高校3年生の最後の夏。 甲子園での対戦を楽しみにしていただけに、残念な気持ちは大きい。 だが同時に、上杉がプロ志望届を出すことは分かっていた。 だからむしろ、これで良かったのかもとも思う。あと一歩届かなかったのは悔しいが、もうあの時とは違うのだ。 プロに進むのなら、いつかどこかで対戦するかもしれないし、その時こそ全力で戦うことが出来るだろう。 樋口にとっては、この一年でさらに実力をつけたであろう大介との対決が、最も楽しみである。 そんなテレビの番組を見ていたハヤトは自分の高校3年間でやってきた陸上人生と比べて明らかに次元が違うようにも見えていた。自分の通うH高校の野球部もこの高校に負けて甲子園出場機会を紛失した。 それはつまり甲子園に出場できる機会すら失ってしまったということだ。 野球の強豪校ではあるのだが、それでも甲子園に出場するというのは特別である。 今年の夏まで、そして次の春まで。 それぐらいしかチャンスはない。 だがここで勝てばセンバツの出場も決まるわけだし、そうすれば夏のシード権もある。 いやもうそんなことはどうでもいいかもしれない。何かこうやって違うことを考えても前の彼女のことをなかなか忘れることができない。こんなにも自分は未練たらしい人間だと思う。 そして時々思ってしまう。 彼女はまだ自分を忘れていないだろうか? もし忘れられていなかったら、また付き合いたいと言ってきたら、付き合うべきなのか? いやでも今は新しい彼がいるかもしれないなどと考えてみるものの、やはり気になってしまう。 そんなことを考えてると、学校が無償でやってくれる夏期講習を受けるために家を出発する時間がきていた。 「行ってきます」 とだけ空の家に言い残して自転車に乗り駅へ向かう。 駅から電車に乗って約2時間。そこから10分ほど歩いたところに学校はあった。 教室に入ると何人かは既に来ており、それぞれ友達と話しながら待っていた。 すると後ろから肩を叩かれた。振り向くと見知った顔があった。 彼の名前はクウガと言う。 「お前も補習受けるんかぁ〜」 そう聞かれたので 「そうだけど?駄目か?」 と答えると彼は首を横に振った。 「いや別にダメじゃないけどよぉ〜。お前成績学年トップレベルでいいだろぉ?ならさすがにそこまで勉強しなくても大丈夫じゃないのぉ?」 と謎に自身ありげな顔で言ってきた。 「まあ確かに成績は悪くないけど、結局英語で点数取れてるだけだからだと思うんだよなぁ…………」 「じゃあいいだろ!」 「うーん……まあ入試は現代文もあるからさぁ」 と苦笑いしながら言うと 「俺なんて古文と漢文もあるんだぞぉ!?」 と言い出した。 そんな会話をしているうちに先生が来たので席に着いた。 現代文の授業が始まり黒板の文字をノートに書く。ペンはスラスラ動いていたが頭は例の件があったせいかほぼ無回転だ。そんなこんなで授業が終わりこの後も授業が無かったのでそのまま帰ることにした。クウガと共に駅までの道を歩く。 そして道の途中にあるコンビニでアイスを買った。もちろんソーダ味だ。 「今でも思い出すのか?元カノのこと?」 少し遠慮気味にも聞こえたその声はハヤトに痛いほど刺さる。 何も答えなんて出ない。いや出せないの間違いなのかもしれない。 「うん…….そうだね……」 曖昧な返事をする。 それから二人は沈黙が続いたまま歩き続けた。そして駅のホームに着くと同時に電車が到着した。二人とも乗り込み座席に座ったところでようやく口を開いた。 「やっぱり好きなんじゃねぇの?」 と質問してきた。しかしハヤトは即答する。 「いや、好きとかそういう感情ではないと思う」 と答えると、 「ふぅーん。そっかぁ。まあそりゃ色々あるもんなぁ。とりあえず俺は応援してっから!頑張れよ!」 と励ましの言葉を貰うも正直に頷き返すことはできなかった。 その時だった「あクウガ先輩!」と女の子の声が聞こえた 彼女の名前はユメと言う。 見た目の可愛いさとは裏腹に柔道部に所属している彼女は1年生だが、試合にも多く出場しており、かなりと言っていいほど期待されている人物のひとりだ。 1年生の頃は記録会にしか出たことのないハヤトからすると彼女が羨ましかった。 そんな彼女はこちらを向いてこう言い出した 「ハヤトさんですよね!?100メートル11秒21の化け物で有名な!」 「ああ、はい、そうですけど……」 突然のことに動揺しながらも答える。 「凄いなぁ!私、柔道してて去年の新人戦で見た時からずっと憧れてて、いつか絶対倒そうって思ってて、それで今年もインターハイに出るんです!だから今度試合見に来てください!」 と興奮した様子で言う彼女に圧倒されたハヤトは思わず「はい」と答えてしまった。 「やったぁー!!ありがとうございます!!」 満面の笑みを浮かべながら喜ぶ彼女を見て、ハヤトは胸の奥でチクリとした痛みを感じた。元から才能があった訳ではなかったので、人の5倍以上の努力を積みに積み重ねてきた。タイムを出すためなら遊ぶ時間も削ったり、練習が終わった後も一人で残って練習をしてきたりした。だから何も知らないで結果だけを見て褒められるのはとても嫌だった。 だがやはり自分は女の子には弱いのだろう。自分の気持ちなど声に出来なかった。そんなことを考えているとあっという間に駅に着き解散した。 (やっぱり、あの時ちゃんと自分の気持ちを伝えていれば良かったのかな) と思ったがもう後の祭りだ。そんなことを考えても意味が無いと思ったのでとりあえず試合は観に行くことにした。 2 今日も暑い日が続く。 昨日のこともあってかあまり寝付けなかった。そのためか、頭がぼーっとしている。 いつも通り朝ごはんを食べて学校に向かう。そんな状態で椅子に座っていた今日の授業が全て終わっていた。それに気づきたのか本能的にそうなったかはわからないがとりあえず自分の席の机で仮眠をとった。 すると、 「おはよー!」 という元気な声で起こされた。 「おはよう」 と返してからまた目を瞑ろうとした時、空がオレンジ色になり始めていることに気がついた。17時を過ぎたあたりであろうか。そしてオレンジ色が作る光の方角にはユメが一人で立っていた。きっと起こしてくれたのも彼女だろう。 「部活終わった後すぐ来たの?」 と聞くと、 「そうですよ!」 と彼女は答えた。 「ちょっと話したいことがあるので一緒に帰りませんか?」 そう言われるとどうしようか少し考えたが、特に断るような理由もないので一緒に帰ることにした。 正門を出て車道側を歩く。相手は女の子なので当たり前のことだが、この行動がまたハヤトの心を締め付ける。だが相手はそんなこと知るはずもない。 「そういえば、大会いつなの?」 気まずそうな口から言葉を発した。 「えーっと8月3日にあります!」 「へぇ〜結構近いんだね」 「そうなんですよ。県予選を決勝まで勝ち上がってきたら関東大会に出場できるんでそこで優勝できたらいいなと思ってます。先輩も関東大会に進めたら会場まできてくださいね?」 「お、おう・・・」 どんな質問を答える時にも笑顔で答える彼女に少し惚れそうになったせいだろうか、予定にはなかった関東大会の観戦まで約束してしまった。だがなぜか後悔した気持ちはなかった。 その後も話は弾みに弾み、気がつけば駅に着いていた。 「じゃあな!気をつけて帰れよ!」 と言って別れようとすると 「待ってください!」 と呼び止められる。 「ん?どうかしたの?」 「その……LINEとかインスタとか交換してください!」 「あ、全然いいよ!」 と快く承諾する。そしてお互いの連絡先を交換した後 「じゃあ、また明日!」 と言い彼女は反対方向の電車に乗った。 ほんのさっきまでオレンジ色だった空は青色に変わっていた。いや青というよりも紺色に近い気もする夜空だが、ハヤトには夜空の中に黄色に光る住宅街の街並みが直で見ても眩しいとは感じなかった。今なら太陽を望遠鏡で見ても視力を失わない感じさえした。そのくらい周りから見て自分が眩しい光を放っている気がした。そういえばこんなことは前にもあった気がするがなぜだろう、先程までのように例の件を勝手に思い出して心が痛むことはなかった。 家に帰ってから早速ユメとのトーク画面を眺めていた。 『改めてよろしくお願いします!』 と書いてあるスタンプと共に送られてきたその言葉に少し嬉しさと誇らしさを感じる。 『こちらこそよろしく』 と返すと10分過ぎたくらいに既読マークがつき 『ありがとうございます!これからたくさんメッセージ送りたいと思います!』 と言われた。 『ああ、分かった』 と返すと今度はすぐに返事が来た。 『俺もユメさんと話したかったから嬉しいよ』 と送った。 すると彼女は 『ありがとうございます!私も先輩ともっとお話したかったのでとても嬉しいです!』 と返ってきた。 『でも先輩って呼ばれるのなんか恥ずかしいなぁ笑笑』 と送ると 『あ、ごめんなさい!ハヤト先輩!』 と送ってくる。 『まあ、それでもいいんだけどさ、なんて言うか距離感があると言うか……』 と返すと彼女はこう言った。 『それってつまり友達みたいな関係になりたいんですか!?』 『まあ、そうだね』 『分かりました!ハヤト先輩!今度からはハヤト君って呼びますね!』 『お、おう!そうしてくれ!』 それからはハヤトもユメも少しずつではあるが、メッセージをやりとりするようになった。 ユメはハヤトよりも2歳年下だったが敬語を使わずにタメ口で話すようになった。 ハヤトはそんな彼女との距離が近くなっていくことに少し戸惑いながらも、どこか心地良さを感じていた。 ユメはハヤトのことを『ハヤトくん』と呼ぶようになってからというもの、毎日のようにハヤトにDMを送ってくるようになっていた。 内容は他愛もないことで、学校のことや好きな食べ物、最近見た映画などだ。ハヤトはそんな彼女に優しく接していた。 そんな日々が1ヶ月ほど続いたある日、いつも通りユメからDMが来る。 『ハヤト君は夏休み何して過ごすの?』 と送られてくる。 『特に何も考えてないけど。強いて言えば受験勉強かな』 と返すと 『えーつまんなーい!せっかくの夏なんだからどっか遊びに行こうよー!!』 と返してくる。 『どこ行きたいの?』 と聞くと 『海!!あとプールにも行ってみたい!』 と言われて、飲んでいたコーヒーを吐き出しそうになった。そしてわかりやすく頭を抱えた。 「女の子と二人で海にプールか……」 と呟く。 もちろんこれはデートではない。だがやはりどうしても意識してしまう。 『わかった。行くのはいいけど水着持ってるの?』 と聞くと 『うん!去年のやつあるよ!』 と返してくる。 『じゃあ来週の日曜日、午前9時に駅前集合ね!遅刻しないでよー!』 と一方的に決められてしまった。 『了解。遅れないようにするよ』 と返信をしてから少し後悔した。 (これ、完全にデートじゃん) と思いながら眠りについた。 3 日曜日の朝の4時ごろ、楽しみすぎるせいか予定より早く目が覚めてしまった。 とはいえ何かしなければいけ無いこともなかったため英単語を覚えることにした。 だがそんな気にもなれず独り言で 「たまにはシスタンサボるかぁ」 と小さな声を放ったが、結局何もし無いまま時間になりずっとモヤモヤしながら海に行くのも嫌だったので素直に100単語覚えることにした。 集中しているといつのまにか目標までのページが来てシスタンを閉じた。 「あーー疲れたぁ」 とおもいっきり伸びをして時計に目をやると8時半を過ぎようとしていた。 慌てて朝飯を食べて、歯を磨き、準備をして駅へ向かった。 「お待たせー」 「いえ、大丈夫ですよ」 なんとか待ち合わせ時刻の5分前に着ことができたが、それよりも早く彼女は着いていた。薄い水色のワンピースにリボンのついた麦わら帽子を被っている。その格好はまるで天使のような姿であった。思わず見惚れてしまう。 「どうかしました?」 「その白いワンピース可愛い!すごく似合ってる!特にこの部分とか!」 と指を指したのは胸元の部分である。 「えっ!そんなところですか!もう!褒められて恥ずかしくなったのこれが初めてです!」 と顔を梅干しのように赤く染めて、少し怒っているかのように見えた。 「ごめん!つい本音が!」 「全く!でもありがとうございます!」 怒っているかと思った彼女はそんなことはなく、むしろ嬉しそうに微笑んでいた。 「じゃあ、そろそろ電車に乗りましょう!」 「おう!」 そう言って二人はホームへと向かった。 京急線の改札を通り抜けてハヤトがこう言う。 「そういえば前から思ってたんだけど敬語やめない?」 「え?なんでですか?嫌だったらやめますよ?」 「いや、ではないんだけどさ、なんか距離感じるというか……それに敬語で話されるのあんまり好きじゃないんだよ」 そういえば敬語は社会に出て大切なツールと誰かが言っていた。自分も陸上部の後輩には敬語を使わせていたし、相手も初めてからそうしていた。もちろんその行動自体に問題は無いのだが彼女だけは違う。自分が彼女を異性として認識しているからだろう。 「じゃあ、ハヤトくんって呼んでもいい?」 「ああ、全然いいよ」 「じゃあこれからはそうするね!」 「おう!」 嬉しさのあまり『ハヤトくん』という響きのいい声が自身の体重を軽くしたような気がした。そういう会話をしながら赤い電車に乗りこむと夏の暑さとは逆にキンキンに冷えたエアポート急行の車内は少し肌寒くも感じた。そのせいかはわからないが、普段混み合うこの電車も今日は人が少なく感じた。空いている2人掛けの席に座ってを逗子の駅を目指す。目的地まで40分以上はかかるだろうこの車内で何をして過ごそうか迷ったのだが彼女は朝早かったせいかハヤトの肩に引っ付いて眠っていた。 (俺が寝るのはちょっとは難しそうだな) そう思いずっと外の風景を見ていた。 そんなこんなで逗子の駅に着き、そこから歩いて数分のところに目的地の海があった。 海に着き2人は更衣室で水着に着替えた。 ハヤトが更衣室から出てしばらくすると 「お待たせ…」 と自信なさげなユメの方を見るとそこには上は水色のふりふりと下は白の花柄ビキニを着ており、その姿はまさに天使そのものだった。 「どう……かな」 と聞いてきたので 「可愛い!!特にこの花柄!」と答える。 すると彼女は顔色を変えて 「ありがとう!ハヤトくんもすごいカッコイイよ!筋肉凄いし!」 「だろだろ!鍛えてるから結構自信あるんだぜ!」 と腕の血管を見せびらかす。 すると彼女は恐る恐るとハヤトの腕に触れた。そしてユメの心臓がドクンと跳ね上がる。 ハヤトの身体は想像以上に硬かった。それはまるで鋼のようであり、男らしくてかっこよかった。 彼は上半身裸でズボンだけ履いている状態なので、余計に目がいってしまう。 「とりあえず行こうぜ!」 ハヤトがそう言うと綺麗な青色の海の方向へユメの手を握りながら走った。 そして彼女もその期待に応えるかのように後に続いた。 もし今世界の時間が一斉に止まっても悔いはないだろう、いや止まってほしいとさえ思った。 7時間後の夕暮れ時、2人が休憩している時ふと彼女がこう言った。 空を見上げながら 目を細めてこう言った。 とても綺麗な声で 優しい笑顔を浮かべながら まるで大切な思い出を思い出すかのようにこう言った。 「ハヤトくんと見た景色は どれもこれもが輝いて見えるよ 」と。 その言葉を聞いた瞬間、ハヤトは彼女のことが愛おしくて堪らない気持ちになった。 ハヤトは今まで恋愛経験は何度かあったがこんな感情は初めてだ、ましてや女の子に対してここまでの想いを抱くのも初めてだ。 ハヤトはそんな彼女にこう返した。 心の底から溢れ出るような声と表情で 優しく包み込むように こう言った。 ユメの目を見て 真っ直ぐに自分の思いを伝えるようにその一言を放ったのだ。 「俺はユメのことが好きだと―――。」 4 それからというもの、二人は付き合うことになった。最初の方は上手くいかないこともあったが、それでもなんとか乗り越えてこれたのは二人の愛の力だと思っている。 今では二人で学校に行くことも当たり前になっている。 お互いに忙しい毎日を送っているため、一緒にいられる時間は限られているが、それでも幸せな日々を過ごしている。 だがそれとは裏腹に受験勉強はなかなか思うようにはいかなかった。 今日はもう8月14日。つまり夏休みが終わる1週間前だと言うのに成績を向上できる自信があまりにもなかった。 気晴らしに飲み物を買いにコンビニにでも行こうと思い財布とスマホだけを持って家を出た。 外に出るとジリジリと焼けつくような暑さを感じる。夏というのはどうしてこう暑いのか、彼には理解できなかった。 歩いていると公園が見えてきたので、その近くにある自動販売機で飲み物を買うことにした。 100円玉と10円玉を3枚入れてボタンを押す。ガタンという音とともにペットボトルが落ちてきてそれを取り出し口から取り出して、蓋を開けようとしたその時、背後から誰かに声をかけられた。 振り向くとそこには見覚えのない人物が立っていた。 その人物は黒いキャップ帽を被っており、マスクをしている。さらにサングラスまでかけているので、顔はよく見えない。 だが相手は男であることはわかった。 身長は180cm以上はあるだろう。体型は痩せ型で、少し猫背である。 服装は上下共に黒一色である。 ハヤトはその人物に警戒しながら 何か用ですか?と聞いた。 すると男は、 少しの間沈黙してから口を開いた。 「お前がH高校のハヤトだな?」 その声はとても低く、不気味な印象を受けた。 そして、こう続けた。 「残念だがお前には死んでもらおう!神からの命令だぁ!逆らいはできないよぉ?」 といきなり現れて死ねと言われても、はいそうですかと言うわけがない。 そもそも何故自分が狙われなければならないのか? 理由がわからない。 だからハヤトはこう答えた。 「何言ってんすか!俺を殺すとか無理っすよ!それに人違いじゃないですか?」 と聞くと、 「黙れ!神が間違えるわけがない。確かにお前は殺さなければならない。」 と更に意味不明なことを言い出した。さすがのハヤトも恐怖を感じ始めた。 そしてナイフらしいものを突き出してー男が一歩ずつこちらへ近づいてくる。 殺される!そう思った時からか懸命に走り出した。30キロは出ていたろうか。とにかく必死に逃げた。 走って、走って、走った。 どこに向かっているかなんて、考えている余裕はなかった。ただひたすらに走った。 気がつくと大通りに出ていた。人通りも多くここなら大丈夫だと一安心した。 すると、ポケットに入れておいたスマホが鳴っていることに気がついた。電話に出てみると、聞き慣れた声が聞こえてきた。 ユメの声だった。そういえば21時から電話する約束をしていたのを完全に忘れていた。 何もなかったかのような声で 「ごめんな、すっかり忘れてたわ!」 と言いかけたところで、ある違和感を感じた。 彼女の様子がおかしいのだ。 息が荒く、苦しそうな様子だ。 どうしたんだ!?大丈夫か!?と問いかけると、彼女は消え入りそうな声でこう言った。 「ハヤトくん…….ねえ今家まで来れる?」 そう言われた瞬間、ハヤトは少し嫌な予感がした。 ユメに今どこにいるのかと聞いてみる。 彼女は震える声で 「私の家だよ。」 と答えた。 そして家の電話の向こうがわでさっきの男の声がした。 「早く酒よこせや!せっかく夫を返してやろうと思ったのにさぁ?なんだよこの酒?」 察しがついた。 「今すぐ行くから待ってろよ!!」 と伝えて通話を終了した。 全力疾走して彼女の自宅へ向かう。 走っている最中、先程のことを思い出す。 あの時、男は自分の名前を呼んでいた。 なぜ自分のことを知っていたのだろうか? だが今はそれよりも間違いなく彼女を助けることが大事だと。一体、自分に何ができるだろうか。考えたが何も思いつかない。 だが、今は走るしかない。 ハヤトは足を止めることなく、前だけを見て駆け抜けた。 ユメの自宅に着くと、外からも声が聞こえていた。音の反響から男は1階にいることを感じ取った。 彼女の部屋は2階にあるため、庭の木をのぼり彼女の部屋の窓前まで行く必要がある。 なんとか木をのぼり、窓を開けるとそこにはユメがいた。 「よかった無事で。もう警察呼んでるから。」 と声をかける。すると彼女はハヤトのほうに駆け寄り赤子のような大きな声を出して泣き始めた。 しばらくして警察が到着し男はパトカーに連れられてどこかへ行ってしまった。 彼はようやく大ごとが終わり帰ろうした時、彼女は彼の手を握り離さなかった。 「ごめん、まだ課題が山のようにあるんだ。」 そう言うと彼は彼女の手を振り解いたと同時にそれを後悔した。 部屋にはクーラーがゴーゴーと音を立ててついていたが、ミンミンゼミのミンミンという鳴き声も同じくらいの大きさで聞こえた。庭に木が生えているからだろうか?いやそうではない。 そんな時間が10秒ほど続いて彼が再び口を開けた。 「だからってわけではないけどさ・・・俺の家に・・・来ない?」 後から言葉を付け加えたことがバレバレだったが、彼女は表情を180度変え首を大きく下へ向けた。クーラーの音が少し小さくなった気がした。 5 夜道を二人で歩く。 「それにしてもまさか本当に関東大会に行くとはねぇ〜」 「でしょーさすが私!」 声を弾ませながら放ったその言葉は、先ほどのことも忘れさせるかのような明るい太陽にあったているかのような心地がした。 そんな彼女を見て一息つくことができた彼は 「なに自画自賛してるんだよ」 と軽くツッコミを入れる。 「えーすごいことでしょー?だって関東大会だよー?」 「はいはいすごいすごーい」 棒読みする彼はどこか少年のような眼で彼女を面白がっていた。それを汲み取ったのか 「ちょっとー!!面白がらないでもうちょっと褒めてくれてもいいじゃん!!」 と怒り気味に見せて言うと彼はワハハろ笑ってごまかす。 こんなことをしていると家に着いていた。 鍵を開けて自分の部屋に案内する。 部屋の中に入るとエアコンの風が涼しく感じられた。 ようやくの思いでソファーに座るとユメが隣に座ってきた。そして再び怯えているのか体が小刻みに震えている。 そんな彼女を優しく抱きしめながら、俺はここに居るぞ。と声をかけた。 すると少しずつ落ち着きを取り戻してきたようで、震えが止まった。 その後、二人で夕食を食べてから。お風呂の時間になった。 先にハヤトが入り、次にユメが入る。 彼が上がった後、すぐに入れ替わるように浴室へと入っていった。 ハヤトはテレビを見ながら時間を潰していたのだが、一向に出てこない彼女を不思議に思って浴槽の中を覗いてみた。 そこには湯船に浸かりながら寝てしまったユメの姿があった。 「おい、起きろ。」 と肩を揺らすと目を擦りながら起き、そのままぼけーっとしていたが、ハッと我に返ったのか慌てて出てきた。 それと同時に彼女の裸を見てしまい、お互い顔を赤くしながら目線を逸らし彼女がこう言った。 「エッチ」 それを聞いた彼は 「え、あああぁ」 と赤鬼のように顔を赤めて慌て出す。 すると彼女は笑いながら 「冗談だよ」 と言ってから 「ありがとう」 と感謝の言葉を付け加えた。 (2)に続く