ニ華
35 件の小説気になる話題
「なっ......!?」 「ほら、また僕の勝ち」 試験結果が張り出された掲示板の前で悔しがるルゼと、その様子を意地悪な笑みを浮かべて眺めるノア。 学院に入学してから2年間、この光景はずっと続いている。 「結局2年生最後まで勝てなかった......」 「卒業してからも勝てないだろうね」 「そんなわけないでしょ!次は勝つわ!」 「君、フラグって知ってる?」 (何で......何でこいつに勝てないんだろう!?) 自分よりも頭1つ分背の高いノアを見上げ、ぐぬぬと唸る。それに気づいたノアは私を鼻で笑った。 (うわぁあ!ムカつくぅ!) 恐る恐る目を 如何にしてノア負かすか考えていると、廊下の向こう側から先生が歩いてきた。 「おーい、そこの2人。もうすぐ授業始まるから席に戻れー」 「あ、もうそんな時間か」 腕時計を見ると授業開始時間の3分前を指していた。 廊下から教室の自分の席に戻ろうとしたところ、教室の入口で何かにつまづき、転びそうになった。 「え、ちょ、うわっ......! 両手にファイルを持っていて、すぐに手が出せなかった。このままでは顔面から床にぶつかってしまう。 (やばっ......) 反射的に目を閉じ、グッと力を入れて衝撃に)備えたが、なかなか衝撃が来ない。それに変な感触がする。 「......?」 恐る恐る目を開けると、床が目の 前にある状態で止まっていた。 「......重い」 「ノ、ノア!ごめん! どうやら、私の顔面が大変なことになる前にノアが腕で支えてくれたようだ。慌てて、立ち上がり、ノアを見遣る。ノアはため息をついた後、私がつまづいた所を静かに睨んだ。そっちを見ると、ニヤニヤと不快な笑みを浮かべてこっちを見ている3人がいた。 「ダっせぇの!何も無いところで転んでやがる」 「見事なコケっぷりだったな!」 「今のを皆にも見せてやりたかったぜ!」 楽しそうにこっちを見て笑っている。 (こいつらまた......) この3人は、入学当初からやけにルゼに絡んでくるのだ。徹底的に無視していたら、ムキになってこんなことまでしてくるようになった。 「何も無い所で......ねぇ......」 ノアがゴミを見るような温度の無い目で3人を見る。 「さっき君がルゼの足元に足を出して転ばせたんでしょう?そんな馬鹿みたいなことやめたら?......ああ、本当に馬鹿だったね。失礼」 (うわぁ......) みるみる馬鹿達の顔が真っ赤になっていく。 「お前、言わせておけば......!」 「はいはい、やめろ。お前ら」 馬鹿その1が何か言いかけた所で、先生が来た。 「もう授業始まるぞ。席に着け。......ポルード。後で職員室な」 ポルードはノアと私を睨みつけながら静かに頷いた。 「ちょっと、そこどいてくれる?通れないんだけど」 「あ、ごめん。ありがとね、ノア」 私が立っていたところは丁度ノアの席のすぐ横だった。落ちたファイルを拾い、助けてくれたお礼を言って、急いで自分の席に戻る。 私の席はノアの斜め前の席だ。席に座り、先生の話を聞く。 (全く、朝から嫌な目にあった) いい加減、あいつらを何とかしないと、そのうち何をしだすか分からない。 どうしてやろうか......と考えていると、先生の口から気になる話題が出た。 「さて、今日は学年末のキャンプの班組をしていくぞー」
2人の天才
「なんで......」 がやがやと騒がしい廊下で今日、定期試験の結果が張り出されていた。 そして、その前で、頭を抱えて目の前の結果を凝視する少女がいた。 「なんでまた2位なのよ!?」 喋りさえしなければ大人しそうな美少女に見える為、彼女がその言葉を発するまで、周りにいた少年達は少女に見とれていた。彼女が喋った瞬間にとこか悲しそうな顔をしてその場を去っていったが。 自分の教室に戻っていく生徒が多い中、試験結果が張り出されている掲示板へと歩いてくる美少年が1人。彼は悔しそうな表情を浮かべる彼女を見て、その美しい顔に意地悪な笑みを浮かべた。 「また僕の勝ちだね、ルゼ」 「出たわね、ノア......!」 「化け物が出たみたいに言わないでくれる?━━━━━“2位“のレイス・ルゼさん?」 「な、なんですってぇ!?」 ここ、国立魔法学院では、1年生から5年生まで、約1000人の優秀な生徒たちが魔法に限らず、あらゆる分野を学んでいる。その中でも、特に目を引く才能を持つ者が2人いた。それがこの、レイス・ルゼとノアだった。 「次の定期試験では絶対に負けないんだからね!!」 「はいはい。その言葉はよく敗者が吐く言葉だよ」 「ふんっ!せいぜいそうやって余裕かましてなさい!1位の座は私の物よ!」 「期待せずに待ってるよ」 次の定期試験でも、2人の順位は変わっていなかった。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 新しく連載始めました。 この物語の設定等については次からのお話で徐々に触れていきます。
不穏な空気と告白と4
「━━━━━━━ということがあったんです。」 私が話終えると、コルク公爵が顎に手を当てて何か思考する素振りを見せ、続いて私に質問した。 「その事件は私の記憶にも残っている。爆発の原因は未だに不明だったが......今の話と関連性があるやもしれない。この件について、私の方で再調査してみよう。 では、ルシア・メイビス。この件に関しての質問は以上だ。だが、後日、再度君に協力を頼むことがあるかもしれない。その時はよろしく頼む。......私からは以上だ。だが、グレイ・ユール。君から言わなければならないことがあるだろう。」 「グレイが......?」 (何だろう。グレイが私に、言わなければならないこと......?) 私より1歩下がった位置にいたグレイが前に出てきた。 「今回の件を、王は非常に重く受けている。また、今回の狙いがルシア・メイビスであった可能性があるため、王命によりこの私、グレイ・ユールが、今後、ルシア・メイビスの護衛に当たることとなりました。」 「は」 (待て待て待て) 驚きすぎて変な声が出た。取り敢えず自分を落ち着かせる。そして、1つ目の疑問をコルク公爵に問いかけた。 「あ、あの......狙いが私だったかもしれないって、どういうことですか」 「学園を襲ったあの魔物達だが、群れの何体かは騎士団が倒していた。そして、その騎士団員が、魔物がうわ言のように同じ言葉を繰り返していたのだ。」 冷や汗が出てくる。嫌な予感がする。 「ルシア・メイビスを捕らえるのだ、と。」
不穏な空気と告白と3
「なんだろ、これ。なんだか、不思議な…い……し………」 (あれ、なんだろう……ぼーっとしてきた……それに、何、これ、体が…) 何故だか思うように体が動かない。意思に関係なく、手は石を拾おうとする。 (ダメだ……) 根拠は無いが、そう思った。 (この石は) 心の奥深くにある何かが、それを強く拒絶した。 ((コレはふれてはイケナイ)) 気の所為だろうか、自分の中で自分ともう1人、知らないような、ずっと一緒にいるような誰かの声が重なった気がした。 石に指先が触れた瞬間、石が強い光を放ち、同時に体が石に吸い込まれるような錯覚を覚えた。 カチャ。 何かの扉が開いたような、そんな感覚がした。今まで封印されていた何かが開放されたような、そんな感覚。 それと同時に、石が粉々に割れ、何やら後ろでドゴォォと大きな音がし、少し地面が揺れた。 「っ、いやっ…!!」 急に体が自分の思うように動くようになり、体のバランスが取れなくなってその場に倒れた。 「っ、い、たい……」 うまく受身を取れず、頬のところを少し切ってしまった。 「おい!」 「何が起きたんだ!?怪我人はいないか!!」 「どうしたのかしら……」 「怖いよ…パパ……」 「大丈夫だ、怖くないから……」 「誰か騎士団を呼べ!!」 (なんだろう、周りが騒がしい) 先程の大きな音がした時から周りの様子が変だった。 「大丈夫か、ルシア!?」 お父さんが遠くから駆け寄ってきて、私の両肩を掴み、慌てた様子で私に怪我がないか見る。 「この頬の傷は…!?」 「だ、大丈夫、ちょっと転んだだけだから!それより、一体何が起きて……」 後ろを振り向きながら言いかけた言葉は、どこかに消えてしまった。 眼前に広がる光景に私はただ口を開けて呆然としていた。 視界の隅で先程までお父さんと話していたであろう団の人が魔法で何かメッセージを飛ばしていたが、そんな事も気にならなかった。 私の目の前には、直径50メートルほどの巨大なクレーターができていた。
不穏な空気と告白と2
「はい」 私は抜かりのないように、あの時のことを思い出していった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「……そうか」 コルク公爵が組んだ両手をこめかみに当て、少し俯いた。 「結界が破られたのか!?」 「Aランクが3体だと…!」 「よく無事だったな……」 周りの人達は驚愕の色を顔にうかべ、ざわめいている。 コルク公爵が指先でコンコン、と机を叩いた。途端に全員静かになる。 「すまない、いくつか質問があるのでそちらにも答えて貰えるか」 (質問…?) 「はい」 「まず最初に、魔物が学園内に侵入したとき、人の気配は感じなかったか?」 「人の気配……ですか」 (あの時は人の気配なんてなかった) 「感じませんでした」 「そうか。では次に、結界に閉じ込められたのは君だけで、あとの2人は無事に逃げていたということで間違いないんだな?」 「はい」 「…ふむ。では最後に、君は学園に入学する以前、人前で大きな魔法を使ったことはあるか?」 「いえ、なかったと思いま………あ」 「どうした」 「………魔法を使ったことは無かったと思います。ですが、不思議なことが1度だけ、ありました。」 「不思議なこと?」 「はい。確かあれは……私が10歳の時、父と一緒に市場に行った時でした。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ルシア、欲しいものはあったか?」 「うん!あそこのお店のアップルパイと、その隣のお店の 果物屋さんのぶどうと、それからー」 「ま、待て、ルシア。ゆっくり、ゆっくりな」 「あ、ご、ごめん」 (久しぶりのお父さんとの買い物だからつい……) 今日は珍しく仕事が休みのお父さんと共に市場に来ていた。今日はキャラバンも多く来ていて、異国のものと思える品物が沢山あった。特徴的な刺繍が施されたハンカチ、綺麗なゆったりとした服、スパイスの匂いが強い料理等、どれも興味を引かれるものばかりだ。 「う〜ん、おいひい」 お父さんに買ってもらったアップルパイは想像以上に美味しかった。出来たてで、体もあったまる。 「わっ」 人が多く、ぶつかりかけてしまった。 (よかった、アップルパイは無事だ) 危うくアップルパイも落としてしまうところだった。 「あっちの噴水広場で食べるか」 私の様子に気づいたお父さんが指さした方向には、大きく開けた、中央に噴水があるスペースがあった。 「うん。ちょっとここじゃ食べにくいかも。行こう」 お父さんの後ろに続き、人混みの中を進み、噴水広場に出た。 「あ、おーい!ガイ!」 「…ああ」 「お父さん、団の人達でしょ?私はいいから、ちょっと話してきたら?そこ座って待ってるから〜」 「そうか?…なら、ちょっと行ってくる」 「うん!」 噴水の囲いのところに座り、アップルパイを食べながら、周りの人達をボーッと見る。 楽しそうにお父さんの腕の中ではしゃいでいる小さい子と目が合った。軽く手を振ると、ふにゃりと破顔してふりふりと手を振り返してくれた。 「か、かわ……」 (どうして子供ってあんなに可愛いの………!) ルシアは同じく破顔した自分に見蕩れている男子には気づかずに、アップルパイを完食した。 「美味しかった〜」 ………コロン 「ん?」 何かが転がってきたような音がして、足元を見た。 「……なんだろ、これ。黒い、石?」 足元には、拳程の大きさの真っ黒の石が落ちていた。
不穏な空気と告白と1
一瞬の浮遊感と激しい光が体を襲い、すぐに床に着地した。 目の前には煌びやかな光景が広がっていた。白を基調とし、空間を鮮やかに彩る花々が美しく生けられているその空間からは品の高さが感じられる。大理石のよく磨かれた床には天井のシャンデリアが映り込んでいる。 「こ、ここって……」 自分でも真っ青になっていくのがわかる。帰ってくる答えなんて分かりきっているが、ケイト先生に聞いた。 「王城だ」 (違うと言って欲しかった) やはり転移直前に聞いたあの言葉は聞き間違いではなかった。 「ほら、遅れないようにさっさと行くぞ」 「……はい」 (……というか) さっきから、すれ違った女性の使用人達がこちらを見て頬を赤く染めている。 (原因は……こいつ) ちらりと後ろを見る。爽やかな美しい笑みを顔に貼り付けてグレイが歩いている。私の視線に気づいたのか、こちらをちらりと見やる。 「何?」 不機嫌さを顔に出しながら聞かれる。 「……本当に、外面だけはしっかりしてんのねー」 フッ、と鼻で笑い、先程浮かべていた笑顔を再度顔に貼り付ける。 「ユール様、今日もお美しいわ……」 「ええ、本当に…」 後ろからボソッとそんな会話が聞こえてきた。私は耳がかなり良い方だ。50メートルほど先の話し声でもはっきり聞こえる。 「グレイって、何度も王城に来たことあるの?」 再び後ろを見て問いかけてみる。 「まあね。一応公爵家だから」 ………そうだった。 何となく忘れがちだったが、グレイは公爵家の長男だ。 長い廊下を右に曲がると、大きな扉と騎士が2人いた。 「ケイト・ノースカベル様、グレイ・ユール様、ルシア・メイビス様。お待ちしておりました。」 騎士の2人が扉を開けてくれる。 ケイト先生に続き、私も中に入っていく。 中には楕円状の大きな机があり、20人の人達が椅子に座っていた。 (あ、学園長……) 学園長、エクトール・クローもそのうちの一人だ。 「よく来てくれた。ケイト・ノースカベル、グレイ・ユール、ルシア・メイビス」 1番奥に座っている男性が話し始めた。 「私はガサド・コルク。この度の会議の進行役を務める。………さて、早速だが、当時の事を聞かせてもらいたい。ルシア・メイビス」
平和は続かない
教室の目の前まで来た所で、教室の中からガヤガヤと話す声が聞こえてきた。 「ちょうど授業が終わったところみたいね」 少し前を歩いていたクロエ先生がこちらを振り返って言った。 「ほら、入った入った」 「わっ」 背中を押されて教室によろけながら入る。 「……………」 皆の視線が私に集まり、シンと静まりかえる。グレイだけはちらりとこちらを見ただけだったが。 なんだか微妙な空気だ。とりあえず、姿勢を正して皆に向き合う。 「え、えぇっと、復活、しました」 小さくガッツポーズをとって言った瞬間、 「ルシア!」 堰を切ったように皆がわっと押し寄せてきた。 「ルシア、だ、大丈夫だったのか」 「カール」 眉尻を下げて心配そうな顔でカールが聞いてきた。 「うん、なんともないよ。ありがとう」 「…そうか。よかった。だがまだしばらく安静にな」 「ルシアさん!」 「サルサ」 「ごめんな、さい…わた、私、何も…できなくって………」 「サルサが謝ることなんて何も無いよ!心配かけてごめんね」 「よかった…無事で、本当にっ…」 泣き出してしまったサルサの背中をさすっていると、後ろから誰かに抱きつかれた。 「ルシア!本当に、…っ本当に心配したのよ!」 「ルミス」 涙声で怒りながら私に抱きついている。 「ごめんね、ルミス。ごめんね」 振り返ってルミスの右手を両手で包む。 左手で目元を拭い、ルミスが顔を上げた。いつも綺麗に施している化粧が崩れてしまっている。 「もう、無茶、しないでね」 「……うん」 なんとなく、その問いに素直に頷けなかった。これから先も、こんなことがあるような気がして。 「ルシア」 「ケイト先生」 「元気そうでなによりだ。…復活したばかりで悪いが、お前に呼び出しがかかっている。体調に支障がなければ、この後すぐに会議に出てもらいたい」 「は、はい」 「グレイ、行くぞ」 先生に呼ばれて席に座って本を読んでいたグレイが顔を上げた。 「グレイもですか?」 「…あの時、グレイも現場にいたからな」 (そっか、カールを助けに……結界の中にいたのはカールじゃなくて私だった訳だけど) 「グレイ」 「何?」 こいつは、気に食わないけど、 「助けてくれて」 きっと、悪い奴ではない。 「ありがとう」 眉根を寄せて、変なものを見るような目で見られた。 「……別に、目の前で首が飛ぶのなんて見たくなかったから助けただけだけど」 「……それでも助けてくれたことには変わりないでしょ」 更に眉根を寄せて、私から目を逸らした。 「はぁ、先生、行きましょう」 「おお。お前も素直に受け取ればいいものを」 何やらニヤニヤしながらケイト先生がグレイの肩をバシバシと叩いて言った。 「やめてください。痛いです」 心底嫌そうな顔をして、なおも叩こうとするケイト先生の手を掴んだ。 「全く……ルシア、行くぞ」 「はい」 教室を出たグレイとケイト先生の後について行く。 ケイト先生の後に続いて歩き始めて3分くらい経った。こっちは確か転移陣がある方だったはず。 転移陣は国内の至る所に繋がっている。 (そういえば、会議ってどこでやるんだろう) 「わぶっ」 そんな事を考えていたら、歩みを止めたグレイの背中にぶつかった。 「何やってんの」 「痛い……」 痛む鼻を押さえて顔を上げると、水色の淡い光を帯びた転移陣が床に広がっていた。 全員が転移陣の中に足を踏み入れた所でケイト先生に尋ねた。 「け、ケイト先生、会議ってどこでするんですか」 「あぁ、言ってなかったな」 「王城だ」
繋がりましょ〜
最近プロセカにハマっておりまして、、 プロセカやってる皆様繋がりましょ〜 ⤵︎ ︎プレイヤーID 325157578417819659
頑張ります
今年から高校生活が始まります。 投稿した小説を見て下さっている皆様、ありがとうございます。 環境が変わり、忙しくなる事で投稿が更に不定期になってしまうと思いますが、小説の投稿頑張ります。 素敵な小説を投稿してくださっている皆様、いつも様々なことを教えて下さり、ありがとうございます。 今年からも、皆様の描き出した多様な小説の世界を見て、楽しませて頂きたいです。 ⋆⸜ᵀᴴᴬᴺᴷ ᵞᴼᵁ⸝⋆
気を失った後の事
(あれ……ここ……どこ…?) 目を覚まし、視界に入って来たのは白い天井と緑のカーテン。 「私…魔物に結界内に閉じ込められて、それで、えっと…あ、そうだ。危なかったところにグレイが来て助けてくれて」 (後でお礼言っとこう。あんまり気に食わないけど、悪い奴では無いんだろうし、助けてくれたことに変わりは無い) ゆっくりと身を起こし、ベッドから降りてカーテンを開ける。 「…あ、ここ、保健室か」 見覚えのある机と椅子、ポーションの棚等が見えて分かった。 ベッドから降りて机の方に歩いていくと、保健室のドアが開いて、クロエ先生が入ってきた。そして私を見るなり驚きと喜びが混ざったような表情で、こちらに飛びかかる勢いで駆け寄ってきた。 「ルシアさん!?目が覚めたのね!」 「ク、クロエ先生」 「どこか痛いところは?気持ち悪いとか、ない?」 「だ、大丈夫です。」 「そう?無理してない?」 「はい」 「良かった〜」 私の体調が良好であることを知ると、安堵したように胸を撫で下ろした。 やり取りを終え、椅子に座ると、先生がお茶を出してくれた。喉が渇いていたので、ありがたかった。 「あの、クロエ先生。私、途中から記憶が無いんです。私が気を失った後、何があったか教えてくれませんか?」 「そうね。魔物が学園の結界を壊したところから言うわ」 ━━━━━━━━━━━━━━━ 先生達は、結界が壊されたのを確認してすぐに生徒の避難、破壊部分のすぐ近くにいた上級クラスの生徒達の安全確保、結界の修復に当たってくれたようだった。そして、まだ森の中にいた私達の保護にクロエ先生が動いてくれたらしい。途中で、2人の事も見つけてくれて、2人は無事だったそうだ。 (良かった。逃げてる間も気がかりだったんだよね) 「そこからなんだけれどね、私はルシアさんが閉じ込められていた結界を見つけて、壊そうとしたのよ」 「はい」 「でも、魔法をぶつけようとした時、結界が突然壊れて、グレイくんが出てきたのよ。ルシアさんをお姫様抱っこして」 「そうなんですか。やっぱり魔物を倒した時に気をうしな……えっ?…おひ、お姫様??」 「ええ。魔力枯渇で気を失ったルシアさんをお姫様抱っこして出てきたわ」 「………」 なんだそれは。いや、運んでくれた事には感謝する。けど、お姫様抱っこって…。なんか恥ずかしい。あいつなら容易く浮遊魔法ででも運べただろうに。 (うん、忘れよう!聞かなかったことにしよう!) 「え、えっと、そうだ!そもそもどうしてグレイは結界の、森の中に?」 「本人に聞いたところ、カール君がまだ森の中にいると聞いて、体が動いていた、らしいわよ。で、森の中に入って、結界を見つけた。それまでに偶然カール君達と会わなかったから、結界の中に閉じ込められていると思って、結界の1部を壊して結界に入った、という感じよ」 グレイは女子達を掻っ攫っているため、1部の男子にたまに絡まれているが、カールはそうでは無い。グレイともたまにだが話しているのを見た事がある。グレイは友達思いなのだろうか。 「実際には結界の中に閉じ込められていたのは私で、魔物に襲われている私を助け、気絶した私を結界から運び出してくれた、と」 「そうそう。王子様とお姫様みたいだったわよ〜、うふふ」 「やめてください……」 「その後、ポルメルと先生達の所へ戻って、全員揃ったのを確認し、校舎の中に入ったの。私達が戻った頃には結界が直っていて、壊れたところから入ってきていた魔物たちも全部討伐し終わっていたわ。」 「みんな、無事でしたか」 「ええ。皆無傷だったわ。……あ、そうだルシアさん。この3日間分の授業の分補習を放課後に少しずつ行っていくから、そのつもりでね」 「はい、わかりま……え?3日間……?」 「ええ。ルシアさん、3日も目を覚まさなかったから、先生もクラスの皆も心配そうにしてたわよ〜」 「ま、魔力枯渇って、そんなに回復に時間がかかるんですか!?」 「普通は翌日には全回復してるわ。けど、ルシアさんは元々の魔力量が多いから全回復には時間がかかるし、身体強化をかなり無理して使ってたみたいだから、その分回復に時間がかかってしまったみたいね」 「ええ…。次もしまた魔力枯渇になってしまったら、3日まではいかなくても普通よりずっと時間がかかるってことですか?」 「いいえ。魔物と戦った時にかなり魔法を使った影響か、魔力量や魔力回復のスピードがかなり上昇しているわ。確かに他の人に比べれば全回復は時間がかかると思うけど、そこまで差はなくなると思うわ」 「よ、良かった…」 「うふふ、動いても問題なさそうなら、教室に行ってみる?皆心配してたから、あなたが目を覚ましたことを知ったら喜ぶと思うわ」 「そうですね。行きます。」 そして私は近くにかけてあった制服のローブを着て保健室を出た。