氷雲
2 件の小説第1話 青天霹靂
ここは、魔法が存在する世界。そして様々な種族が共存している。 かつて、この世界は種族の争いが絶えなかった。人間は数ある種族の中でも知性があった。しかし、彼らには力がなかった。そんな中このままでは絶滅すると思い、人間は『魔法』を生み出した。そしてその『魔法』を使いこなし種族の共存へと導いたのが7人の魔道士達だった。そして彼らはこう呼ばれた。 『七魔道士』 火の魔道士 ホティア 水の魔道士 ヒュドール 雷の魔道士 ケラウノス 風の魔道士 アネモス 大地の魔道士 テラ 氷の魔道士 ニエベ 光の魔道士 フォス そして、彼らの使っていた杖は今、王宮で保管されている。そしてこんな伝承がある。 「厄災が再びやってくる。杖に選ばれた7人が厄災を収めるだろう。」と。 高い塔。暖かな日差しが入る窓。魔導書や杖、ペンが置かれ散らかった机。そんな環境に住んでいるのが、この僕。ルベリア・フォン・イリアだ。なんでこんなとこにいるのかって?それは、ここが魔法に学ぶにはもってこいだからだ!塔に降りれば森があるし、塔には誰も寄り付かず魔法に集中出来る。継母や弟にいじめられて閉じ込められてるとかのお約束展開ではなく僕の意思で塔に住んでいる。なんなら、 僕の家族は優しい。僕はルベリア伯爵家次男。まぁ、貴族なわけだ。長男は第1王子の護衛を務めるほど優秀だ。母も父もこんな塔に引きこもることを許可し面倒を見てくれている優しい人達だ。 もう、貴族教育や基礎的な知識は習ったしなんも心配なく引きこもっている。 「まぁ、でも、いつか親孝行はしないとだなぁ。」 いつものように、魔法やら実験やらで楽しく日々を過ごす。 「あ、薬草足りなくなっちゃった………まぁ久しぶりに顔出さないと…死んだかと勘違いされる…」 使い古した籠と杖を持ち、塔を降りた。 「うひょー!✨️薬草が宝の山だー!」 久しぶりに来たけどここまで育っていたとは! 「さっそく、収穫っと!」 杖を取りだし、頭の中でイメージをする。そうするとお腹の辺りが温かくなる。すると薬草は吸い込まれるようにカゴの中へと入っていく。 「ざっとこんな感じかなー、」 ガサ 「?」 草が踏み潰された音がした。魔獣でもいるのだろうか……?だとしたらまずい。一応確認しとこう。害あるものは直ぐに駆除した方がいい。父の教えだ。 杖をかまえ勢いよく音のした方へ突っ込んだ。 「!……ひ、人?!」 そこに居たのは魔物ではなく、人だった。 木によしかかり黒いローブには穴が空き赤黒いシミがついていた。 「し……死んでる?」 急いで腕を掴み手首に人差し指と中指を添える。 「いや、脈はある…..。」 見てしまったものはしょうがない。このまま放っておいて領地で死体が見つかったとなった方が面倒だ。生きている黒いローブを着た人を魔法で浮かせ塔へ向かった。 本当は薬草を採った後、母上と父上に顔を出す予定だったんだけどなぁ。 塔に戻り、ベッドにローブの人を寝かせた。 治療のためローブを取った。 「!顔整ってるなぁ」 ローブのフードをとると長く毛量のあるまつ毛、高い鼻と彫りの深い顔つき。綺麗な黒髪の男性の顔があった。 「治癒魔法はあんまり得意じゃないんだよなぁ。」 「………?」 「あ、起きた。」 「…………!」 黒いローブの男はこちらの顔を見た瞬間部屋の角へ行きナイフを構えた。今にも刺してきそうな殺気の詰まった視線をこちらに向けた。 「待て待て…!お前に危害は加えない…!というか、そんな所にまでナイフ持ってたのかよ……ごめんな?手当をするために上半身は脱がした。一応簡単な治癒魔法はかけたけど安静にした方がいいぞ」 脱がせた時に刃物やら銃やら物騒なものがボロボロ出てきた。 「お前……何者だ……ここはどこだ?」 いやこっちのセリフだ!!というセリフを飲み込み、素直に打ち明けた。 「僕はルベリア家次男のルベリア・フォン・イリアだ。ここは、ルベリア伯爵家の領地にある塔だ。」 「ルベリア………」 「さぁ!今度はお前の番だ!何者だ?」 「………」 「無視とは凄いなぁお前。ある意味尊敬するわ」 「俺はもう行く。」 素早く自分の持ち物を持ち窓から飛び降りようとしていた。 「待て待て、そこから降りたら怪我するから…!」 「いい。心配ない。」 「あーもう!」 素早く杖を取りだし、ローブの男に浮遊魔法をかけた。 「お前…何をした…………?!」 「何って普通の浮遊魔法だよ」 「魔法なわけないだろう!詠唱してなかったじゃないか!無詠唱で魔法を発動させるなんて王宮魔道士でもできる人は少ないぞ?!」 あー、そうだった。無詠唱は珍しいんだっけ 「まぁー置いといて、怪我人はベッドで安静にしてくださいー」 怪我人はベッドへ、武器や彼の持ち物はロックがかけれる箱へしまった。 逃げると大変なので軽い封印魔法を彼にかけた。 「残念でしたー!この塔から出ようとすると怪我するよう魔法かけましたー!早く出たいなら安静にしてくださーい笑」 「クソが……」 「じゃあ僕は魔法の研究するから邪魔しないでよー」 「………お前、治癒魔法を使ったと言ったな」 「?…うん」 「光魔法の適性があるのか?」 「いや?光魔法のような治癒魔法じゃないよ。皆が習う基礎的な魔法さ。擦り傷とか切り傷を治す程度のね」 「かすり傷などしか直せない基礎的な治癒魔法で 銃創を治せたというのか…?」 「応急処置しかしてないって言ったろ?完全には治してないからここにいろって言ってるんだよ」 「でも、痛みはないぞ」 「痛み止めを塗っているからね」 「この痛み止め……どこで買える」 「買えないよ。僕の手作りだし」 「は?」 「まぁ、値段次第なら売ってあげてもいいよ?笑」 「いや、お前っ……」 「?」 「いや…なんでもない。」 「そういや、お前名前は?」 「………ユーリ」 はて、どこかで聞いたことのあるような…… 「ユーリか…じゃあ、ユーシャって呼ぶね」 「はぁ?なんでお前に略称で呼ばれなくちゃならない?!」 「僕は君の命の恩人だよ?偉そうな物言いしなーい!」 「くそっ」 それからぼくとユーシャの共同生活が始まった。最初のうちは質問攻めにあっていた。 「おい。その魔導書はなんだ」 「七魔道士様たちの魔法のすすめ」 「面白いのか?」 「普通」 段々と回復してきたので封印魔法の発動範囲を広げていき塔の近くの森の1部まで行けるようにした。ベッドに寝たきりだと体に悪いから たまに薬草採集という名の運動をさせた。 「おい、これただのパシリじゃ……」 「これは運動だ!あ、!これ薬草じゃないよ、!毒草じゃん……」 1ヶ月が経ち、ユーシャは完治し今までどうり体を動かせることができるようになった。 ユーシャがなぜあんな状態だったのかは触れない方がいい気がし聞かなかった。理由は無いただの勘だ。 「じゃあね。ユーシャ。」 「あぁ。」 彼は塔を去った。黒いローブを羽織って。 「はぁー、やっと今まで通りの生活に戻れるー!」 コンコン ドアを叩く音がした。 誰だ? 「入れ」 「失礼します。イリア様。主人と奥様がお呼びです。」 完全に忘れてた……!そうだよなぁ、3ヶ月も顔出さなかったら心配になるよなぁ、 急いでルベリア伯爵伯爵家本邸に向かった 「イリア〜生きてた?」 「はい、心配かけてすみません、」 この人はルベリア伯爵夫人こと ルベリア・フォン・リアーナ。僕の母だ。 いつもこんな感じで物事を重く受け止めずほわほわしてる包容力のある優しい人だ。 「私はいいのよ、1番心配かけて厄介なのはお父さんよ?」 「イリア………」 「あ…ち、父上〜元気でしたかぁ〜?」 「心配したんだからなっっ?!いつも二ヶ月に1回は本邸に来るのに三ヶ月も来ないんだ!どれほど不安になったことか……..!」 この人はルベリア伯爵ことルベリア・フォン・アレクサンドロス。僕の父だ。 「ごめんなさい……」 「ほら。あなた。今日イリアを呼んだ理由を忘れた訳では無いでしょう?」 「あぁ、そうだった。」 「?」 「イリア……お前に。王立学園の推薦状がきた。」 「………え?」 王立学園???? いやいや、夢だ。うん。これは夢だ。 ほら!瞬きをすれば覚めるのだ。 「伯爵という立場故、いつかは来ると思ってはいたが………」 「いやいや、僕は跡継ぎじゃないし行く理由はなくない?!それに、基礎的な知識はもう学んだし……!」 「とは言ってもなぁ、王立からの推薦だから断るにも断れないのだ」 「あらぁ。いいんじゃないかしら?魔法についてもっと詳しく学べるし道具とかも揃ってるらしいし!行ってみたら?」 「嫌です!僕が引こもるためにどれだけ努力したか………」 「イリア。これは、決まったことだ……私の息子だ!行ってこい!」 「嫌だァァァ」 こうして、王立学園の受験にも首席で受かり見事イリアの引きこもり魔法ライフは無くなったのでした。 「はぁー、来ちゃったよ……首都ベルガリン……」 王立学園は首都ベルガリンにあり、僕は王立学園に通うため首都に来た。これから僕の学園でも生活が幕を開けるのだった。 つづく
前編
12月31日。あと5分で今年が終わろうとしていた。 「みんなこんな寒い中お祭りとかすごいですねぇ、」 「まあ、うちの村ではそういう伝統行事じゃし、何より黒龍様がいらっしゃる日でもあるからのう」 「黒龍様、?」 「あぁ、お前さんは来たばっかりだしのぉ、知らぬのも無理は無い。昔、ここは荒れ果てており草木も水もない土地だったんじゃ。」 「ここが、、?」 「そんな時、白い龍と黒い龍がこの地に現れ恵みをくれたのじゃ。その龍が黒龍様と白龍様なのじゃ」 「そして、この村は御二方がまもってくださっておるのじゃ。そして1年が終わるこの日に御二方の感謝と今年もよろしくお願いしますの意を込めてお祭りをするのじゃ」 「あれ?でもおかしくない?さっきお祭りにくるのは黒龍様って言ってたけど白龍様は?」 「白龍様は、、今年、お亡くなりになられたんじゃ、病気での、、」 「龍にも病気とかかかるの?!」 「龍と言っても御二方は神様じゃ力を失わない限りは消えないし、死ぬという概念はないのだが、、詳しくは皆知らないのじゃ」 「そ、そうなんだ、」 シャンシャン 何処からか鈴の音の音が聞こえた。 どこから鳴っているのかも、鈴の姿も見えないが耳の近くで鳴らされているようにハッキリ大きく聞こえた。 「ほら、はじまるぞ、」 「!」 目を向けた先には夜空の星たちに負けを劣らない黒い龍が綺麗に輝いていた。 踊っているかのように鱗を輝かせながら舞っていた。 シャン また鈴の音が響いた 「黒龍様がお降りになれるぞ!」 村人達が群がっている中心には、この世の人かと目を疑う程に美しい顔立ちをした男性が立っていた。 「!お主、見たことがないな。新入りか?」 「は、はい!11月くらいに村に来ました、!」 「そうか、私の名は黒珀(こはく)困ったことがあったら遠慮なく言うのだぞ。」 「はい、」 そう言って微笑む黒龍様の笑顔は優しさの裏に寂しさが感じられる、、そんな顔をしていた。 「黒龍様、この後の花火、どうしますか?」 「甘酒と魚をくれ、いつも白結とかっていたな」 「はい、分かりましたわ」 そう言って甘酒と焼き魚を貰った黒龍様は重いような軽いような足取りで山の上へと向かっていった。 「来たぞ、白結、」 儚く、寂しいような瞳で誰かのお墓を見て語りかけていた。 「お前の言う通り持ってきてやったぞ。お前はいつも年越しの儀の花火を見る時は甘酒を必ず嗜んでいたよな笑」 「、、、なぁ、白結、、この気持ちはなんなんだ?」 「胸が苦しくてお前の面影を追うような真似ばかりしてしまう、、こんなの今まで感じたことはなかった、。」 「ぐすっ、お前のいない家もさみしいもんだぞ」 そういって黒珀は甘酒を勢いよく飲み干した。 「不思議なものだな生きるとは」 「じゃあな白結。また」 そう言って黒珀は山の奥深くへと帰って行った。 「ん、、」 小鳥たちの鳴き声と少しばかり空いた窓から差し込んだ光によって黒珀は目を覚ました。 羽織に袖を通し朝の散歩へと出掛けた。 白結と毎日のように通い歩き慣れた道を進んでいくと、とあるものを見つけた。 「、、!こども、、?!」 「すー、すー、」 寒い早朝。朝日が登り始めた頃だというのにその子供は薄着で気持ちよさそうに眠っていた。 (村の子が迷い込んだのかもしれない、手当しなければ) そう思い手馴れた手つきで子供を抱き上げ家へと向かった。 (とりあえず、服はきせたし布団入れたし大丈夫だよな、、、?) 「、、なんか、白結に似てるな」 白結、、俺たちはいつも一緒だった。 生まれた時も2人で生まれ、2人で村を納め、2人で年を越し、2人で生きてきた。俺の右側にはいつも白結がいた。白龍の白結。黒龍の俺。 いつの間にか俺たちは2人でひとつだった。 『あーあ、髪の毛、抜けてきちゃった。』 『、、大丈夫だ。すぐ生える』 『ねぇ、黒珀、』 『?』 『お前は僕が居なくなってもちゃんとやっていける?』 『子供じゃないんだぞ。』 『僕は無理。黒珀がいないと死んじゃうよ。』 『なら、頑張ってその病気治すんだな。』 『うん、そうだね』 ぱちっ 長く毛量のあるまつ毛がゆっくりと上がり黒珀の目が開いた。 (寝てしまった、朝食も食べていないのに。) 「じー」 「うおっ、?!」 気づいたら黒珀の膝の上には先程拾った子供が膝の上に乗り、こちらをじっと見つめていた。 「お、起きたのか、お主名は?」 「、、ない、、わからない」 「?この村の者ではないのか?」 「わからない」 「お主、、記憶が無いのか?」 「わからない、自分がなんなのかも分からないんだ。」 「あいまいだなぁ、村長に話して引き取ってもらうか」 ぎゅ、 少年は黒珀の羽織の袖を引っ張った。無意識だったのか、引っ張ってしまったあとに『あ、』 という表情を浮かべていた。 「どうした?」 「その、、ここに住みたい」 「え」 「ここ、、落ち着くっ、!とても、!」 黒珀はしばらく考えてからこう言った。 「わかった、、だが、お主が記憶を取り戻したらここからは去ってもらうぞ」 「わ、、わかった、、!」 少年は安心した顔で微笑んだ。 ぎゅるるる〜 大きな音が鳴った。 「///」 「ははっ、笑お主のお腹の音か笑」 「っ〜///」 「恥ずかしがらなくてよい。私もお腹が空いていたところだからな。」 「何か食べたいものはあるか?」 「、、、わ、わからない、」 「そうか、、なら、私の思い出の料理でも振舞おう」 「思い出の、、料理、?」 「あぁ、楽しみにしといてくれ」 そう言って黒珀は台所へと向かった。 「はい、どうぞ」 机にはふわふわな卵焼き、湯気がたっているお味噌汁、食欲が湧く匂いを放っている焼き魚が並べられた。 「じゅる、、」 美味しそうな匂いに鼻をひくつかせ気づけば少年の口にはヨダレが垂れていた。 「卵焼きは私の思い出の料理だ。味わいながら食べるのだぞ」 「「いただきます」」 「あむっ、」 「!、、お、美味しい、、」 「ふふっ、だろう?」 「た、たまごやき、、?すごく、、おいしい」 「あぁ、ゆっくり食べなさい。」 「だって、おいしくて、!」 「っ、、!」 「そ、そうか、、、」 ふと、黒珀に昔の記憶が蘇る 『おいしいっ、!黒珀の卵焼きは世界一!』 『全く、食事の時位は静かにしろ、』 『はーい、』 勢いよく卵焼きを頬張る。 『ちょ、白結、!ゆっくり食べろ、!』 『だって、美味しいんだもん、!』 「、、ん、、、さん、、お兄さん、!」 「!あ、すまない、、少し昔のことを思い出してな、、」 「あと、私はお兄さんという年齢ではないぞ」 「え、、!うっそだー」 「名前を伝えていなかったな、私のなは黒珀(こはく)」 「こ、、はく、」 「お主の名前は?」 「、、、しらゆい、、」 「、、!?」 「しらゆい、だと思う」 「だと思う、、?」 「多分、、、そう、、呼ばれていたような気がする、、」 「そ、、そうか、、」 しらゆい、、たまたまだろう。 漢字まで同じだとは限らない。 白結が、、生きているわけないのだから、、 こうして、、私が1人なのは、、素を見せる相手かいないのは、、私、、いや、俺の罪だ。 あいつの傍に最後までいなかった、、な、、 しらゆいを拾ってから不思議な日常が続いた。 「あら〜、しらゆいちゃん!こんにちわ」 「こ、こんにちわ、」 「挨拶できて偉いわねぇー!はい、お菓子あげちゃう!」 「あ、ありがとう、」 「黒龍様!またいつものやってー!」 「好きだなぁこれ」 そう言って村の子供を抱き上げ空高くまで上げる。 「きゃー!笑」 「次俺もやって!」 「わ、わたしも!」 「順番だぞ?」 「黒龍様、いつもありがとうございます、💦」 「村の人々の笑顔を守るのが仕事だからな。それにあいつとの約束だしな」 「、!雨、、ふる、、」 「あら、そうなの?」 「うん」 「しらゆいちゃんはそんなことまで分かるのね!」 するとさっきまでの晴天が嘘かのように、綺麗に澄んでいた青い空は薄暗い雲におおわれポツポツと雨が降ってきた。 「あら、ほんとに雨が降ってきたわ」 「みんな!お家の中へ入んなさい」 「「「はーい!」」」 「黒龍様方も上がっていきますか?」 「いえ、お気遣い感謝します。私達は、もう帰ります。」 そう言ってしらゆいの手を引き2人は山の中へと帰っていった。 「あめ、、止まないね、、」 「あぁ、でもこの雨が村の人々の助けにもなっているんだ」 「ふーん」 「黒珀はお菓子ってたべたことある?」 「ん?あぁ、多少はな」 「これ、おばちゃんに貰った」 「!」 しらゆいが持っていたのは巾着袋に入った色とりどりのあめが手元にあった。 ふと、昔の記憶が蘇る。 『見てー!黒珀!』 『ん?なんだ?その丸い物体』 『飴だよ飴!食べたことない?』 『あぁ』 『もったいない!人生損してるよ!』 『食べた方が損すると思うけどな』 『黒珀はそう言って新しいものとか食べないんだから』 『自分の好きなものを見つけると厄介だからな』 『?厄介?』 『自分の好きな物が分かって、いつかそれがなくなったら、悲しくなるからな。特に食べ物はどれだけレシピ通りに作っても、その味にならないこともある。』 白結は眉間に皺を寄せ思い悩んでいると、何か吹っ切った顔で袋に入った飴を人差し指と親指で持ち 『えいっ!』 黒珀の口に雨を放り込んだ 『んぐっ?!』 『、、、うまい、』 『でしょ?!それは、蜜柑味!』 『蜜柑、、、』 『黒珀は、何味が好きなんだろうね!』 「今食べてもいい?」 「あぁ、お前は何味が好きなんだろうな」 「この、白いの食べる」 「あ、それは、」 「!?か、、からっ、、!?」 「それはハッカだ、、」 「からい、、」 目に涙をため今にも泣きそうな顔をしていた。 「あー、ほら、だせだせ」 黒珀が手に持っていたちり紙に飴をだした。 「ハッカの飴は俺が貰おう。」 「黒珀は、大丈夫なの、、?」 「?あぁ、スースーするだけだしな」 「黒珀は、何味が好きなんですか?」 「俺か?、俺は、、、蜜柑味が好きだ。」 暗闇のなか提灯を持ち、茂みの中を慣れた足取りで歩いていく。空には満月が浮かび、月明かりに負けないくらい数多の星々も輝き提灯などいらないくらいに空は光り輝いていた。 「ついた、」 黒珀がいたのは山のふもとだ。 集落だけでなく、村の近くの大きな湖も隣の集落も木々の邪魔がなく村の活気や自然が見れる所となっていた。 そんな所にお墓があった。手入れが行き届いていて墓の辺りの雪は除雪されていた。 「久しぶり、白結。」 「最近、妙な子を拾ったんだ。お前とどこかにていて、姿もどこかお前の面影があるんだ。」 「そいつが今日飴をもらってな、お前の好きなスモモ味の飴を少し貰ってきたぞ」 そう言ってすももの味がする飴が数粒入った巾着袋を墓の近くに置く。 「お前の好きな花は暖かくなるまで供えることはできないわ、ごめんな、」 「、、ここ、いいだろ、、お前の大好きなこの集落をみれる。景色もいいだろ?」 墓を手で撫で、どこか寂しく、儚げな視線を墓におとす。喋ることなく静寂な夜、黒珀の綺麗な黒い長髪が月明かりに照らされて輝きながら風に靡かれていた。 「お前、、早く帰ってこいよ、、、力なんか俺があげるのに、、」 「今更か、。またな」 そう言って黒珀は深い森の中へと消えていった。 最近、気づいたことがある。 僕は黒珀と同じなんじゃないかと。 あの日、黒珀に拾われた日何も覚えていなかった。自分の名前も自分がなんなのかも全部記憶にモヤがかかったように思い出せなかった。 でも、黒珀の家にきたら少しづつ思い出せるようになった。最初にわかったのは自分の名前。 僕の名前は 白結。 黒珀と一緒にこの地に現れ、黒珀と一緒に村を治め、黒珀と一緒に年を越し、黒珀と一緒に生きてきた。 このことを何度黒珀に言おうとしたことだろう。言おうとする度に色んな不安が襲いかかる 黒珀にはもう僕は必要ないのでは無いのか 今の僕は黒珀にとって邪魔なのでは無いのか 相方に固執してるのは黒珀ではなくて、 僕なのでは無いのか。 このことを言ったら君は、どんな顔をするのだろう? でも、まだ思い出せないこともある。 それは、 僕は何故、死んだのか。 神様も同然な僕らに死ぬなどというものは存在しない。力が弱まり消えるしかないのだ。 黒珀が僕のお墓を作っていたけどそれは僕の衣服や小物の一部を埋めているだけだ。 小物や衣服を埋めたのは力が少し籠って死体の代わりになると思ったのだろう。 黒珀は知っているのだろうか?僕が何故死んだのか 「しらゆい、そろそろ起きろ」 「んー、」 「まったく、、、ねぼすけなのもアイツに似てるのな」 「今日は卵焼き作ったぞ早く起きないと冷めるぞ」 「んー」 俺は、時々思うことがある。 この急に現れた白結にそっくりな子供は、 白結なのではないのかと。 名前も言動も行動も仕草も好みも全てあいつと似ている。自分でも醜いと思う。自分の罪を認めたくないからなのか、罪悪感から逃れる為なのか 他人の子に白結の面影を着せ、心を軽くしようとしている自分に嫌気がさしてくる。 でも、もし、もしこの子が白結なのであれば俺は泣いて喜ぶだろう。そして耳にタコが出来るぐらい謝り、ここを出ていくだろう。 これは俺に出来る最大限の贖罪だ。 「うひょー、やっぱりデカイなぁこの屋敷。元気かなぁ黒珀と白結」 「最近白結から手紙来てないもんね、村は活気があるから大丈夫だとは思うけど、、忙しいのかな?」 チリンチリン 扉の前にあるベルが鳴る。 誰がお客さんが来たのかと思い玄関に向かう。 「はーい」 「よっ」 「!青依、、!それに赤梨も、、!」 「やっほー!」 「元気にしてたか?黒珀。」 「あぁ、」 「あれ?白結は?お出かけ?」 「、、!、詳しいことは、、後ではなす、、」 「?うん、、」 「黒珀、、!美味しそうな山菜とれ、、た、、よ、、」 「「か、、隠し子、、?!」」 「違う!!」 「だっ、だって、、!この子凄く白結にそっくりじゃん!」 「そうだぞ黒珀!白結の子供なのか、?!」 「だから、上がってから話す!!」 「単刀直入に言う。白結は、死んだんだ。」 「「は?」」 「死ぬって冗談やめてよ!僕らに死ぬなんて概念はないでしょ?!」 「そうだ!力が無くなったて消えるならわかる。しかし、白結はそこまで力を使っていなかっただろう!」 「僕らは何故2人ずつで村を治めていると思う?それは、2人で治めた方が使う力が少なく済むからだ!なのに、、!」 「そんなの俺が1番分かってるんだよ、、!」 部屋に音が消えたように静かになった。 いつも聞こえる時計の音も窓から聞こえるすきま風の音も無くなった。 「失礼します、お茶を持ってきました」 しんとした部屋と下を俯きながら強く握っている手を机の上に置いている黒珀を見てすぐに察した。今、僕は入るべきではないと。 「し、失礼しました、、!」 「しらゆい」 「は、はい!」 「こっちにきてくれ」 「!」 初めてだった。いつも優しくて包容力のある声がこれほどまでに怖く、胸を締め付ける声に聞こえたのは。 「今から話すことは、嘘じゃなく真実だ。」 嗚呼、なんてことをしてしまったんだろう。 自分でも反吐が出る。俺はこの子供に俺に都合の良い妄想を着せていることを深く認識してしまった。もし、この子が、白結が何らかの影響で小さくなって、記憶を無くしたんじゃないかと思ってしまう。今から話そうとしていることを話したら、白結はホントのことを思い出すのではないかとそんな偶像を夢見てしまっている。 「おい、黒珀、!顔色が酷いぞ!無理に話さなくていい、俺らが悪かった、、!」 「ごめんね、!黒珀、、話したい時に話してもらって大丈夫だからっ、、!無理強いしちゃってごめんね!」 「黒珀、、!」 「いや、、いいんだ、話させてくれ、、、 白結が、、なぜ死んでしまったのかを」 それは、一際寒く空が澄んでいた冬の出来事だ。俺は白結と一緒にいつものように村の見回りをしていた。 「さむー、、もう早くコタツに入って温まりたいよぉ、」 「あともう少しだ。帰ったら白湯を入れてやろう」 「やったー!早くおわらせよ!」 その時、背筋が凍るような鋭い殺意が後ろから背中を突き刺すようにつたわった。そして感じた。その殺意は自分に向けられたものでは無いこと。それと同時に沈み始めた太陽に照らされて光っている銀色の刃物が白結の胸元を貫通し胸に赤い花が狂い咲いた。 「っ、、、あ、、」 理解できなかった。目の前で何が起きているのか。自分の心臓の音がうるさく周りの悲鳴も言葉もきこえなかった。 そして、白結は倒れ白結の後ろにいたのは スグリだった スグリは、白結によく懐いていた。孤児だったためよく俺らと遊び15になってもよく話をしたほどの仲だった。 しかし、最近は来なくなり白結に聞いてみてもはぐらかされるばかりだった。 俺は気づくとスグリの胸ぐらをつかみ今にも首を掻き切る勢いだった。 「お前っ、、、!なんで白結にこんなことをした!お前が白結に受けた恩を忘れたのか?!」 「.......」 すると、憎悪に満ちた目つきでこちらを見つめた。 「!」 スグリの目付きに怖気付き少し力を緩めたすきにスグリはどこかへ消えてしまった。 「まて、、!」 追いかけようとしたその時 「 黒珀様、!白結様が、、、!」 「!、」 そうだ、、白結、、! 「白結!!」 大丈夫、死にはしない神力を分ければ何とか、、、、 「は、、?」 神力を、、わけられない? その後の記憶は無い。近くの村人によると俺は自分の神力を限界まで白結に分け与えようとしたらしい。そして俺は気を失い、自宅に帰ってきていた。 「、、ここは、、」 「!白結!気がついたか、、、」 そして俺は起きた一連のことを話した。 「そう、スグリが、、」 「なぁ、話してくれスグリと何があったのかを」 「........」 「答えない、、、か、、」 「まぁいい、というか、すぐ治せよその傷俺の神力を分けることが出来なかったからそのまま神力が回復するのを待つしかないな」 「ねぇ、黒珀、白湯持ってきてよ」 「あぁ、」 それから半年がたった。なのに白結の神力は回復するどころか減っていった。 「なんでだよ!なんで戻らないんだよ、、、」 「多分、僕はもう無理だ。」 「無理だなんて言うな!!俺たちは死なない!神であり!神力を失わないかぎり!」 「わかるんだよっ、、、!」 「死を僕はよく分からない、多分神として生まれた僕は今後知る由もないだろう。でも、分かるんだ。不思議と。死が近づく心地が」 「馬鹿言うな、!何が死の近づく心地だ!」 「黒珀。」 凛とした声が冷静さをなくした熱い脳内に冷たく響き渡る。 「僕のことは、僕が1番わかってる。」 「死ななくても死んでも、僕は、僕の記憶は 黒珀と笑いあってる記憶でいっぱいにしたいんだ。だから、もう、、やめてよ。僕で苦しまないでよ、、、一生に最後まで笑っていようよ」 「っ、、!そうだなぁ、、俺の方が馬鹿だったな、、白結が刺された時だって普通は白結の元に駆け寄るのが先だろうに私欲に溢れお前を後にした、、そしてお前の気持ちを理解できなかった、、、。済まない白結、、、すまないっ、、」 続く