とある転生のお話(登場人物割愛)
「君、カワイイねえ、、そこら辺でお茶しない?」
少しは鍛えました!と、腕の逞しさをアピールしたいのか露骨にチカラコブを見せつける男と少しは顔に自信がある風の大学生の二人組が目線の先の相手を口説いている。
「待っている人いるんで、止めてもらっていいですか?」
口説かれた相手が、めんどくさそうに手でしっしと追い払おうとする。
「釣れねえなあ、いいじゃんか」
少し苛立ったのか、語気を強めに言い舌打ちをするイケメンの男。
「連れに何か用か」
彼らが声がした方に振り向くと、爽やかなサラリーマン風の男と着崩しているが派手目のジャケットを肩に掛けた男が彼らを見下ろしていた。あきらかに彼らより背が高く、腕っぷしもいい相手に彼らは怖気付いて退散していった。
「魅力がある人は、罪だね…なあ総司」
総司と言われた相手は、ふくれっ面で言い返す。
「あんな奴ら、八つ裂きにしてやるよ!」
「まあまあ、ふくれなさんなって!美人なんだし怖い事言いなさんな」
総司と呼ばれた彼を、派手目の男がなだめる。総司は、女性と見間違えられるくらいの美貌の持ち主だった。
「そのくらいにして、はよ店に行こうかトシ」
彼らの言い合いに、しびれを切らせたサラリーマン風の男が二人を置いて歩き出そうとする。
「勇さん、待ってよ!」
びっくりした二人が、彼を追いかける。
そう、彼らは一度命を落としまたひょんな巡り合わせで再会を果たしたのだ。
「いらっしゃいませー」
勇という男は、行きつけのお店なのか入ってくるなり店員の挨拶を遮るように矢継ぎ早に注文を出す。
「相州そば、野沢菜のおにぎり付きで!」
後から二人もお店に入って来る。
「勇さん、早いよーって注文早っ」
総司は、呆れてますよアピール。
「勇さんは、通常運転だねえ…」
トシと言われた男は、ため息をつく。
「腹減ってるんだよ!お前らも注文しとけよ」
茹で上がったそばが、冷水で洗われるのを見届けながら今か今かと待ちわびる勇であった。二人も注文を済ませて、カウンターでそばが茹で上がっるのを待っている。
三人の食事が揃った時点で、壁側の席に三人並んで腰をおろす。
「やっぱり、夏はそばに限る!」
後の二人が、いただきますという前に勇は箸を進めていた。
「せっかく、時間作って会えたのにそば屋だなんて!」
総司が、口を尖らせながらふくれっ面をする。
「まだ、時間はあるんだし今は天下泰平だ。そうむくれるなよ総司」
三人は、また会えた喜びと今の世の平和の日々を屈託のない笑顔で笑っていた。