【漫才】番犬の条件
友人がキテレツだという悩み事、それは一見ありふれたペットを飼いたいというものだと思われた。
うかつに相談に乗ったツッコミ役と二人で考えるのは、番犬の条件!?
※漫才脚本です。
※他サイト「小説家になろう ゲラゲラコンテスト2」応募作品
ボ=ボケ ツ=ツッコミ
◇◇◇
二人「どーもー、こんにちはー」
ボ「突然ですが僕今悩んでて、ちょっと奇天烈なんですが聞いてくれます?」
ツ「キテレツ? いいですよ?」
ボ「ペットをね、買おうと思ってるんです」
ツ「ほう、いいじゃないですかペット。どこも奇天烈じゃないよ」
ボ「あ、そうですか?」
ツ「うん全然。何飼うんです?」
ボ「……ケルベロスっているじゃないですか」
ツ「奇天烈ですね」
ボ「え?」
ツ「えじゃなくて、何て?」
ボ「ケルベロスっているじゃないですか」
ツ「いませんね!」
ボ「いやいる、あの地獄の番犬って言われてる、三つ首の犬、空想上の怪物のやつ!」
ツ「空想って言っちゃった! え、何もしかしてその、空想上の生物として、いるかいないかの話?」
ボ「他に何があるんですか。あんな三つ首のがそこら辺歩いてたらおかしいでしょ」
ツ「うんおかしい」
ボ「大丈夫? 現実と空想ごっちゃになってない?」
ツ「いやペットの件くだりで言い出すから……いやごめん大丈夫。それでそのケルベロスがどうしたんです?」
ボ「強そうですよね?」
ツ「まあ、地獄の番犬ですからね」
ボ「三つ首ですしね」
ツ「うん三つ首……」
ボ「僕、ケルベロスって名前にするつもりなんです」
ツ「何を!?」
ボ「ペット」
ツ「いやそうじゃなくて! だから最初に聞いたでしょ何を飼うんだよ!」
ボ「それを悩んでるんでしょうが! 名前も飼うペットも決まってたらわざわざ相談しませんよ!」
ツ「ええ、逆切れ?」
ボ「とにかく、ケルベロスって名前が似合うペットが飼いたいんです。何かありませんか?」
ツ「何かって……まあ番犬って言うくらいだから犬……柴犬とか」
ボ「三つ首でも地獄犬でもないじゃん。まじめに考えなよ」
(ビンタ)
ツ「いい加減にしとけ? 首三つの生き物はいない。地獄もない。まじめに考えろ!」
ボ「……あい」
ツ「それと四国犬みたいなノリで地獄犬って言うな!」
ボ「はい」
ツ「現実と空想ごっちゃにすんな! そんなんじゃいつまでもケルベロス飼えないぞ!」
ボ「はい!」
ツ「よしじゃあ最初だけ、最初だけだぞ、ケルベロス想像しろ。そこから現実的じゃない要素を抜いていく。したらそのうち近いペット飼えるだろ。知らんけど!」
ボ「じゃまず」
ツ「まず三つ首は無理だから」
ボ「二つ首」
ツ「そこ刻む必要ある?」
ボ「オルトロス」
ツ「オル……何それ。二本首の、空想上の?」
ボ「うん」
ツ「オルトロスって言うの?」
ボ「うん」
ツ「……首、もう一本減らそうか」
ボ「うん」
ツ「はいじゃあ首一本のケルベロス想像して?」
ボ「ドーベルマン」
ツ「よしドーベルマンだ決定ね」
ボ「ちょちょちょ待って、待って!」
ツ「もういいよお前の中でケルベロスの首減らしたらドーベルマンなんだろ? 完成だよ、『地獄の番犬ドーベルマン命名ケルベロス』の誕生だよ」
ボ「待てって、まだ抜かなきゃいけない現実的な要素あるんだよ」
ツ「一番抜くべきなの名前のこだわりだけどな」
ボ「うちのマンション大型犬NGなのよ」
ツ「先言えや! つかお前マンション住んでんの!? 番犬いらんじゃん! 地獄の番犬どこの番すんだよ!」
ボ「リビング……」
ツ「フローリングでツルッツルなるだけだわ!」
ボ「ええ……でもドーベルマン型小型犬なんているか?」
ツ「犬種を型式にすんな! じゃああれだ、毛並みとか色合い似てる小型犬にしろ」
ボ「ポメラニアン」
ツ「毛並みも色合いも違う! けどもういいやそれで! よし、もう『地獄の番犬ポメラニアン命名ケルベロス』、でいいな?」
ボ「ああ、でも」
ツ「まだなんかあんのか」
ボ「僕犬アレルギーだから」
ツ「だから先言えや! 無理じゃん! 何なら番犬ってスタンスから破綻したわ!」
ボ「なあ小型犬型小型ペットなんているか?」
ツ「がたがたうるせぇわ。じゃあもう猫! 四つ足で小さいしもう実質小型犬だろ!」
ボ「あ、だったらマンチカンがいい!」
ツ「満面の笑みやめろ! お前のわがままの裏でケルベロスは首二本落として小型化した挙句猫になってんだぞ! もう可愛いだけだよ! 威厳失墜もいいとこだ!」
ボ「だが見返りに仕えるべき主を得た」
ツ「失ったものの方がでけぇよ! ……じゃあもういいな? マンチカンで」
ボ「うん」
ツ「『地獄の番犬マンチカン(猫)命名ケルベロス』でいいのな!?」
ボ「うん!」
ツ「よしじゃあペットショップ行ってこい!」
ボ「はい!」
ツ「あいつ返事だけいいからな……お、買えた?」
ボ「店内犬多くて入れなかった」
ツ「犬アレルギー!!」
二人「ありがとうございましたー」