葉月一

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葉月一

葉月一(はづきはじめ)です。2023/4/3から投稿始めました。アイコンは拾い画です。

あいつの正体

我…鴉月黒音(あづき くろね)こと、クローネは、魔界『マギック』(魔界の中でも上位の魔族が住む場所)から来た堕天使かつ姫である。神から授かりし暗黒の力を自在に操ることができる(暗黒の力とは言ったが、本当にそうだったか覚えてない)。 そんな感じで魔界『マギック』で誕生した我はその世界で132年…この世界で言う12年を過ごしていた… 「おいおいちょっと待て、まさかその時間を全て話すと言うのか…?何時間…いや、何日かかるんだよ…。」 と、目の前に座った飯島に、いちゃもんをつけられた。 「仕方ないな、じゃあかいつまんで話すとするか…」 まじで全部話すつもりだったのか、と飯島が零した。 とまあ我はその世界ですくすくと成長していったのだが、この世界で言う10歳になった頃。魔界『マギック』…いや、それ以外の場所も大災害が起こったのだ。 我が住んでいた城も、もちろん大災害に見舞われた…のだが、我の父と母は大した能力も持っていなかったが、単に王族の血を引いていたため、すぐに王女、国王に即位した。 そう、“大した能力も持っていなかった”のだ。 母は堕天使、父はメフィストの血を引いていた…が、力はない。権力はあったのに。 なので、その大災害に遭った時、我は暗黒の力を使って羽を生やし、逃げ出したが、両親は逃げきれず…使用人たちももれなく死んだ。 我は1人になった。生きていくのは怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い… そんな我の思いから、暗黒の力が暴走して、自我を持って生まれたのが 「クロリンってわけなんだ」 「半分わかって半分解らん。それに…」 飯島は思い出したように続けた。 「俺が魔法…?を使えた理由もわからな…」 「灰彦ー?黒音ちゃん来てるのー?」 飯島母が帰ってきたようだ。 「んー、来てるー!」 「さて、我は帰るかな」 今日は飯島にも迷惑かけたしな。 「え、ちょっと魔法のこと…」 我は飯島を無視して部屋を出た。 時刻は午後7時を回りかけていた。春の日はまだ落ちるのが早く、辺りは十分に暗い。 「あ、“使者”のこととか話してないな」 我は不意に思い出した。 まあいいか、後で話せば。 「後何体のクロリンが残っているのやら」 いつまでこの生活が続くのだろうか。 気が遠くなりそうな思いだった。 歩いて30秒ほど…家を二軒挟んだところに鴉月家は在る。だいぶ近い。 「ただいま…」 とりあえず呟くが、返事を返す相手はいない。 …我と同棲している者は誰もいない。

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あいつの正体

お前まじか

鴉月(あづき)は俺が帰ったと思ったのか、あのきっっしょいバケモノと闘い始めた。 「█▍▆▋▇▄▅▉█▌」 「いやだ!私は…」 ドゴゴゴゴゴ… というあのバケモノの攻撃によって、言葉がかき消されてしまった。 「ヤばい?!」 テンパって思わず飛び出してしまった。 「だ、大丈夫か鴉づ…」 俺は目を疑った。 攻撃を直に受けた筈の鴉月が謎の壁によって守られていた。 「ふう…」 鴉月は俺に気づいていないようだった。 いつもの厨二感は完全になくなっていた。 「くっそクロリンつよ…」 ク、クロリン?ってこのキモいやつか。 「…って飯島?!」 まだ帰ってなかったのか、と鴉月が呟いた。 「鴉月大丈夫か?俺、頼りないかもしれないが…何かできることがあれば…」 「いい。」 やはり俺じゃ… 「と言いたいところだが、今回は助けてもらおうかな。」 鴉月はそう言った。 俺を頼るなんて相当だぞ…。 自分で考えてて虚しくなってきた。 頼ってくれと言ったものの、何をしたらいいかがさっぱり分からない。 その旨を伝えると、 「細かいことは後で説明する。とりあえず、それっぽい呪文を詠唱してくれ」 と言った。 それっぽい、と言ってもどうするべきかが分からなかった。 頭の中が?で巡りきった頃に 「いつも部屋で言っているように、な」 と鴉月が付け加えた。 なんか嫌な予感がする。 「ほら、言ってるだろ?『滅べ!バーストフレイム!』『喰らえ!シャインシールド!』とかな。まあ、くらえでシールドはちょっと意味わからんが」 と、鼻で笑いながら言った。 こいつに揶揄された気がしてとてもイラッとしたが、今はそれどころでは無い。 「おい、お前なんでそれを…」 「いいから早くするんだ。お前、私を手伝う気はないのか」 いや、そんなアホみたいな顔で言われても…。 と思ったが、本当に時間が無いようだ。もうどうにでもなれ…。 なんかいい感じの呪文…。 頭の中の厨二病ゾーンを探し回っていると、攻撃が飛んでくる。 いざ喰らうとなるとこわい。口も、体も動かない。 どうにか腕を動かして、手で攻撃を防ごうとした時、 「あ、死ぬやつ…」 −−−−− 目の前が明るい。 これか天国ってやつ?ウケる。 「…い!おい!」 鴉月が叫んでるなー。 まあまともな友達(性格はまともでは無い)は鴉月しか居ないからな…。 「早う起きないかこの阿呆!」 ビタァァァン… と平手打ちを食らった。 ???? ここはどこ俺は飯島…。 あ、そうだバケモンと戦ってたんだ。 「お前…お前…」 何が起こるのかと身構えていると、 「お前も暗黒の世界からの使者だったんだな?!」 出た、暗黒の世界。俺はもう驚かないぞ。 …ん?お前“も”? いや、鴉月のただの妄想だろ。 「いやいや、ただの一般ピープルですよ」 「そんなこと無い筈だ!こんなに立派な結界が初めてで張れるわけがない!」 ほんとにこいつ脳外科行った方がいいんじゃないかな。 と思ったのも束の間。 まじでアニメとかでよく見る結界的なやつがあった。 電気みたいなのでビリビリしてるし、なんか読めない文字的なのもある。 当然、化け物は入ってこれていないようだ。 「え、まじ?」 ていうか暗黒の世界からの使者なのに結界が光り輝いていていいのか…。 まあ、攻撃防げたようだし、いいか。 俺は驚きで動けなかったが、鴉月は戦いに向かっていった。 −−−−− …え? あのクソ強そうな敵はどこへやら。 しっかり死んでいる。 そして戦い慣れてそうな鴉月だったが、なぜ今まで戦っていることを周りが知らなかったのかと問うと 「クロ…あいつらは戦う時、外から見えないような結界を張るんだ。」 と言った時は正直引いた。 少しボロボロになった鴉月はこの市街地では目立つ。 「と、とりあえずうち来て!」 と強引にうちに入れた。 −−−−− 本日の驚き2度目。 俺が救急箱を持ってから2人で部屋に行くと、鴉月の傷は完全に無くなっていた。 ちなみに、学校帰りなのでもちろん制服だったが、それもちゃっかり綺麗に治っていた。 思わず救急箱を、ガシャン、と落とすと鴉月はびっくりしていた。 「急に大きな音を出すでない。わたっ…我が驚いてしまうでは無いか」 いや、お前の所為でこのでかい音が生まれたんだよ。 丁度両親は仕事のため家には居なかったので、鴉月の傷を不審がられずに済んだのは良かった。 「ていうかさっきまでの傷はどこに行ったんだよ」 「ああ、それなら、さっき治した」 サッキナオシタ…さっき治したか。 理解するまで時間がかかった。 「ほら、お前が結界張ったのと同じ。念じたら治る。」 …まあ、もうなんか、そういうことにしておこう。 「それで?さっきの化け物…なんだっけ、ケロリンだっけ?は何者なの?」 「そんな蛙みたいな名前では無い!まあ、我もあまり詳しく名前は覚えていないのだがな。」 えぇ、と俺は明らかに困惑したような声を出した。 一方鴉月は話を、自分語りを始めた。

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お前まじか

このカバンいっぱいの、

「違う!私はあなた以外の男の人に興味ないの!あなたもそう言っていたでしょう?!」 1人の女が特別棟の空き教室で叫んだ。 「なにが違うっていうんだ。クラスのあいつも、幼馴染のあいつも!LINEを消さないで!なんで興味がないと言えるんだこの嘘つき!」 相手も反撃した。 このまま行けば殴り合いにもなりかねない程、喧嘩はヒートアップしていった。 「もういいよ。お前が俺のことを愛していないことがわかったから。」 「待って、行かないで!私を1人にしないで!」 女も身振り手振り激しく、長い黒い髪の毛を揺らしながら言い放った。 「俺が記念日にあげたブランド物のバッグ、返してよ。別れるんだからいいでしょ」 男は金持ちだった。 学生でブランド物は少々やりすぎな気もする。 「あれは…鑑定してもらったけど」 女は発言を止めようとしたが、 男の視線に負けた。 「ぜ、全部偽物だったわ。」 しかし、僕は全て本物だと知っている。 そして、あいつが虚言癖であることも。 「そうだったか?お前に興味がなかったものでな。お前にあげたもんなぞ覚えとらんわ」 男はそう言って、出ていった。 さて、 僕も大好きな幼馴染のところに行きますか。 早くこの教室から出て、幼馴染の元へ行きたかった。 あいつの所持品のほとんどには、GPSや発信機、盗聴器やカメラをつけてある。 もちろん、あの振ったクソ野郎にも。 そして、そいつらにつけたやつのデータは このカバンいっぱいのノートパソコンやスマートフォンに入っている。 あいつは僕がここまでの感情を持っていることをことをきっと知らない。 だって言っていないから。 今から伝えに行こうかな。 このカバンいっぱいに詰めた愛と 僕ではない、私が吐いていた嘘を。 ダイスキなカノジョのところに。

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このカバンいっぱいの、

終わりを告げたホームルーム

新しい高校。 舞う桜吹雪。 普段なら期待で胸が高鳴るだろう。だが教室に着いた時、俺は絶望した。 ああ、"また"こいつか、と。 色々考えていると、担任と思われる30代くらいの女性が入ってきた。 「こんにちは。担任になった……」 担任は自己紹介をしていたようだが。頭に入ってこない。 あいつの所為だ。 初日なので、まあ当然授業はなく、教科書やノートが配られただけであった。 −−−−− 2日目。 期待とちょっとの不安に包まれる… なんてことにはならなかった。 どうせ2日目だし、自己紹介とかするんだろうな…。 陰キャコミュ障には地獄すぎるイベントだな、おい。 −−−−− 「今日のHRは自己紹介をお願いします」 ぐ…予想が当たってしまった。 しかも俺あ行だから早いんだよな。 「じゃあ順番に鴉月(あづき)さんからお願いしますね」 やっぱり鴉月だったか…いや、クラス発表の時点で分かってはいたが。 そして、彼女が口を開くと、ギリ想定から外れた言葉が漏れた。 「我の名は鴉月黒音(あづきくろね)であるッ!暗黒の魔界から舞い降りし堕天使!魔界名クローネ! そしてこの世界に蔓延る悪の組織を撲滅するためにッ」 大きく呼吸して、 「我の左手に宿りし黒龍、メテルと共にこの世界にやってきたッッ!」 左手を高々と掲げながらそう言い、座った。 …教室が凍りついた。 比喩表現とかでは無い。 誰一人として動こうとはしない。 やはり凍っているというのが正しいだろう。 そして、後ろの席だから感じるこの風。 多分あいつの動きの所為だ。激しすぎる。 もうなんか、恐怖するレベルまで来てないか? 「あっ…ありがとうございまし…た(?)」 ほら、先生も困ってるじゃん。 やっぱこいつ… 「やべぇ…」 と、声に出してしまった。 「えー、と…じゃ、じゃあ次の人の…飯島さんお願いします」 「はっ、ヒャい?!」 うわ、声裏返ったんだけど…最悪。 緊張とプレッシャーで潰れそうになっていたが、仕方がないので喋り始めた。 「い、飯島灰彦(いいじまかいひこ)、です。あ、えっと…しゅ、趣味は漫画を読むこと…です…。よろしくお願い…します」 パ、パチパチ 皆が拍手を始めた。 わ、わあい? 「あ、ありがとうございました(嬉しそう)。じゃ次、伊南崎(いなさき)さん、お願いします」 先生めっちゃ笑顔になってますぜ。ウケる。 「はい!」 伊南崎さんか…初めて聞いたな…。この辺の人じゃないのかな。 「伊南崎朱吏(いなさきあかり)です。好きなことは妄s…読書です。よ、よろしくお願いします」 周りの拍手と共にはあ、と後ろの席からため息が聞こえた。なんかこの清楚系メガネ美少女から妄想とか聴こえた気がしたんだけど多分気のせいだよね?ていうかめっちゃタイp… 「ありがとうございました。次は…」 既にカオスになる未来しか見えない。 −−−−− … え? 情報量多すぎて笑えてきたわ… 蘇る自己紹介↓ 「ちょーっす!洲崎橙子(すざきとうこ)です!気軽にトーコちゃんとかあだ名で呼んでね!」 と、ギャルっぽい人とか 「…三木藍造(みつきあいぞう)。」 と、ガラの悪そうなヤンキーっぽい人もいた。 俺、このクラスでやって行けるかな。 −−−−− なんだかんだで帰り道。 この学校、桜とか…植物系綺麗だよな…。 「くっ…この日光と桜色の明るさにより我が盟友メテルが悲鳴をあげている…」 情景描写あざす。 俺とこいつ…厨二病の鴉月がなぜ一緒に帰っているのか。 それは… 家が近所だからだ。 中学から転校した俺だが、近所の同級生はあいつしかいなかったので、あいつと一緒に学校に行ったりしていた。 その頃から知っていたが、こいつは重度の厨二病である。 昔を懐かしんでいると、あと数分で家というところまで来た。 すると、なんか変な生き物…いや、あれは生き物なのか? 「くっ…」 鴉月がなんか声を出した。 な、なに…? 「飯島…!ここを離れろ!」 「鴉…月…?」 なになに?!え、なんか怖いんだが…。 「▅▆▉▋▌█▍▇▆▂▄」 な、なんて? 「待て!私はまだ其処に帰らない…帰りたくない! 散々他の町で暴れ回ったくせにまだ戦うというか!」 この変な生き物と鴉月は会話ができているようだ。 「な、なあ、鴉月…。このヤモリとカマキリとカブトムシを合体させたみたいな幼稚園男児の夢みたいなきしょい生き物…なんだ?!」 「こいつらは…魔界…。いや、お前に話すことはない。いいから早く其処をどけッ!」 「だめだ…お前なんかが勝てるわけ…」 いや、ありえるかもしれない。 もし今までの厨二病発言が本当ならば…いや、やはり信じきれない… 俺は陰でこっそり鴉月を見守った。

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