委員長と春風
私は間違ってなんかいない。
「あなたがやったんでしょ!いい加減白状しなさいよ!」
「だから、ちげーつってんだろ!」
目の前の床には割れた花瓶。
言い訳を必死にしてるみたいだけど、朝一番にこの教室に来てたのは、この男子生徒なんだから、こいつが犯人に決まってる。
正しいことをするのは、気持ちがいい。
そんな私の価値観は、とある一人の問題児によって覆された。
「悪い委員長さんだ」
放課後、教室に残って勉強していたら、突然話しかけてきたのは、銀糸の髪に、紅茶色の瞳をした(アルビノというやつだろうか)美しい少女だった。
「何のこと・・・?」
「花瓶だよ〜犯人を決めつけた。確実な証拠があるわけでもないのに、あの男子をみんなの前で晒しあげてたよね?」
「そんなもの!日頃の生活態度が悪いからよ!自業自得でしょ?」
「私、見てたんだよね、花瓶の犯人。おいでー」
彼女が手招きすると、クラスでも大人しい女子生徒が現れ、私に深々と頭を下げた。
「ごめんなさい・・・すぐに名乗り出なくて・・・ただ、黒川さん、大きな声だして、みんなの前で怒ってて、怖くて・・・」
私は驚いて呆気にとられてしまった。
「・・・い、いいわよ。今更」
「だってさ!よかったね!じゃ、私はこれで〜」
言うが速いか、銀髪の少女はふわりと教室を出ていってしまう。
「あ、待って!」
私が、遠のいてゆく豊かな銀髪に向かって叫ぶと、少女は歩みを止めた。
「あなた、それだけ目立つ見た目なら、私も知っているはず。でも学校で見かけたことないわ。同じクラスなの?」
銀髪が夕陽に透けてキラキラと揺れた。
「そうだよ〜でも身体がどっかおかしいみたいでさ。あんまりガッコ来れないんだよね」
その笑顔に寂しい色が一瞬浮かんだのを、私は見逃さなかった。