消えない傷跡
小さい頃の夢は大人になること。
自分は何も出来ない弱者。
いつも他人からバカにされ、暴力を受けて育った。
ロッカーに閉じ込められ、放課後にはリンチされ、締められる。
こんな自分が嫌いで死のうと考えた。
僕の名前は一宮 春輝 (いちみや はるき)
今年の春から小学校1年生。
幼稚園のみんなと同じ小学校に入学した。
初めての学校は緊張であまり覚えていないが授業参観で教科書に書いてある“とある文を読んで欲しい”と先生から言われた。
僕はどこを読めば良いか分からず、その場で泣いてしまった。
みんなが居て恥ずかしい気持ちなど、
その時の自分にはなかった。
そんな弱い僕を見たクラスメイトが僕のことをイジメるようなことをした。
先生にクラスメイトが春樹から酷いこと言われた、と言ったり、こんな嫌なことされました、と濡れ衣を着せられ、僕は先生と昼休みの時間や授業終わりの短い時間で椅子を持っていき、図工室へと入って行った。
先生が僕にこう聞く。
春輝くんはクラスメイトに酷いことや嫌なことしたんでしょ?
正直に言いなさい。
正直に言ってくれたら私は嬉しいの。と…。
僕自身、そんな覚えもないし、自分自身気持ちに弱い性格な為、そのような言葉すら知らなかった。
そんな出来事が3ヶ月以上続いたある日、僕はその出来事から逃れたく、
先生に………言いました。と言ってしまった。
先生は笑顔で最初から言いましたって言えよ。
と言われた。
精神的に追い込まれていた僕は言ってもないことを言ってしまったと言った自分に腹が立った。
とは言え、逃れられたという開放感もあった為、その場では少しの安堵感があった。
しかし、その安堵感はすぐに消えた。
先生がクラスメイトを呼び、こう話した。
(春輝くんがみんなに酷いことをしていたことを認めました。ほら、春輝くん。クラスのみんなに謝りなさい。)と…。
僕は心が折れ、泣きながらみんなの前で謝った。
その日、家に帰ると学校から一本の電話が入った。
その電話の相手は担任の先生だった。
(春輝くんがクラスメイトに酷いことや嫌なことをしていました。)と…。
僕のお母さんはその電話を切った後、僕にこう聞いて来た。
……本当にクラスメイトにそんなこと言ったの?と
僕は説明不足のまま、………言った。と言ってしまった。
お母さんは先生に電話し、クラスメイトの誰にそんなことを言ったのかを聞いた。
しかし、先生はそのクラスメイトの名前を教えてくれなかった。
その日以降、クラスメイトからのイジメは増え、小学校四年生の終わり頃に引っ越しをする事になった。
お母さんはもう一度その先生に挨拶も兼ねて、その件を尋ねた。
しかし、返ってきた言葉は(言えません)と。
お母さんは確信したのだろう。
僕が暴言や嫌な事をしたと言うことが嘘だと言う事を。
お母さんは(そうですか。分かりました。)と言い、僕を連れて、その場を立ち去った。
忘れもしない。大人は弱い人の味方ではない。強い人の味方。と言うことを小学校1年生の時に僕の頭に植え付けたのだ。
時は流れ、今は立派な社会人だ。
仕事もうまく行き、幸せな家庭を持つことが出来た。
子供が小学校に入学して間もない頃に子供が急に“学校に行きたくない”と言い始めた。
僕はあの頃を思い出した。
僕は学校へ行き、担任の先生含め、学校長とも話をし、早急に解決をした。
しかし、相手の親が中々しつこく、立ち往生していた。
そんなある日のこと、子供の口から(先生は僕の味方じゃない。いつも他の子の味方なんだ。)と…。
僕はその言葉を聞いた時、あの頃の自分も(大人は弱い人の味方ではない。強い人の味方。)
と言っていた。
今度こそ自分の子供にはそんな嫌な思いをさせたくない一心で子供を守った。
時が流れ、子供も二十歳を迎え、自分の孫が出来た。
孫に僕はこう言った。
…恐らく、同じ繰り返しなんだろう。
…きっと、パパが助けてくれるさ。
…信じてるぞ。パパ。
そう言い残し、僕は息を引き取った。
END
※登場人物の名前、学校などは全てフィクションです。
−あとがき−
物語は………ご想像にお任せします。
物語の春輝くんはリアルの僕なのかも知れません。
僕自身、イジメは消えて欲しいです。
春輝くんを演じた僕自身はこれ以上に酷いことをされて生きてきました。
人は何かしら消えない傷跡を背負い、
今を生きる人が沢山います。
どうか、僕を含め幸せなことが起きる事を心から願っています。
読んで頂き、有難うございました。