unknowIMO
52 件の小説救済
ポロリン 今日も僕の携帯に相談のLINEが飛んでくる。 僕は昔から自分の話をする方じゃなくて相手の話を聞く方でそっちの方が好きだし得意だ。 相手が共感を求めているのならば共感を。 相手が助言を求めているのならば助言を。 相手の求めているものに合わせて言葉を紡ぐ。 そうして仲のいい人たちの間で頼れる人の地位を確立した。 恋愛のことや勉強のこと、交友関係のこと、様々な相談が持ちかけられた。 その都度それを解決もしくは相談者の心の負担を軽減することが出来て、僕は間違いなくその人々を救済していた。 空っぽな僕にとってはそれが何よりの救済だった。
悲しみに気づかないように
おはよー!! 今日もそうやって元気よく家族に挨拶する。 そのクマどうしたの?って母に聞かれたけどゲームやりすぎちゃったってとぼける。 ゲームばっかりじゃなくて勉強もやりなさいねといつもの言葉が飛んでくる。 にいつもの如く遅刻しそうだから急いで支度をして 行ってきまーす!! そう家族に言う。 小走りで駅に向かい、既に来ている電車にギリギリで滑り込む。 電車内で音楽を聞いていると最寄りについて1人で学校に向かう。 よし。教室の扉の前でそう息を着く。 おはよー!!! そうクラスメイトに言っていつもどうり友達と談笑する僕の世界は白黒だった。
出来心
おはよう。 今日も朝起きて少し時間を開けて2人の恋人にそうメッセージを入れる。 1人はスタンプをいれて、もう1人には絵文字を入れて。 彼女たちは僕のただひとりの恋人であると各々が思っているのだろう。 そう考える度に、この嘘が露呈した時の終わりを想像する。 僕はずっとそうだった。 一度に1人はだけど付き合ったのなんて初めての恋人だけだ。 その時にはっきりとわかったんだ。 僕の携帯が鳴った。 いつもは僕が起きるより先にメッセージを送ってくるやつからのメッセージだ。 「ねぇ、あなた浮気してるの…?」 あぁ、、 こういう時に返すのはいつも決まっている。 「ごめん。つい出来心で…」 「そう…」
ゾンビ
いつも妄想していた。 町中にゾンビが溢れ、日常が崩壊する。 いつも妄想するのはそこまでで、自分がゾンビを倒すヒーローになるとか、自分が噛まれてゾンビになるとかまでは考えていなかった。 今日も仕事疲れたな。 明日も朝早いし寝るか。 もう朝か。 眠い目を擦りながら、ジリジリと鳴り響くアラームを止める。 顔を洗い、いつもと同じ食パンを食べ、スーツに着替える。 いつもと何も変わらない日常。 それなのに何だこの違和感は。 一瞬考えたがいつも通りの時間に玄関を出る。 いつも通りの電車に乗るはずが、今日は遅延していたらしい。 会社には間に合うだろうか。 いつもギリギリまで寝るために時間ギリギリで出勤している。 電車が来ると乗り込み、いつもの5号車の真ん中より少し運転席側の椅子の前に立つ。 いつも通りなんのためなのかネットニュースを開いてて、芸能人のスキャンダルだとか、今人気の音楽だとかの記事を見ていた。 トンネルに差し掛かり、窓に自分の顔が映る。 何だこの酷い顔はまるでゾンビじゃないか。 ふと周りの人間を見ると皆同じような顔をしているのを見るとなんだか安堵した。 そしていつも通りの駅で降りて、改札を出て、少し急ぎ足で会社に向かうのだった。
ただいま
ただいま〜。 ごめんねぇ。遅くなった…ってまた机に突っ伏したまま寝てるよ。 僕の帰りまっててくれようとしたのかな。 ごめんねぇ。なかなか仕事終わらなかった。 寝てくれてていいのに。僕のかわいいかわいい彼女さんに無理させたくないんだけどなぁ。 ふふっ。それにしてもかわいいなぁ… え、なんだ起きてたの。 もううるさいなぁ。 彼女にかわいいって言って何が悪いんですかー。 僕だってこういう時くらいありますぅー。 はいはい。かわいいかわいい。 もうおしまい。僕お風呂入ってくる! なんだよ起きてたなら言ってっての。 恥ずかしいじゃんか。
朝
夢を見ていた。 はっきりとは思い出せないけど、とても素敵で、幸せな夢だった気がする。 とても暖かくて、心地いい。 そんな夢。 でも君の声が聞こえた。 むにゃむにゃ。まだ眠いよぉ。夢も見てたいし。 あと10分だけ、、 でもそんな望みは彼女によって儚く散った笑。 眠りたいのもあったけど、君に起こして欲しくて…みたいなとこもあったんだ。 てもそれを悟られないように、ちょっと不機嫌そうにおはようって言った。 君に少し怒られるけど、ぎゅーってしたらデレデレしちゃうの可愛いね。 そう言われて頬を赤くしちゃうのもほんとに可愛い。 こんな日々がずっーと続けばいいのになぁ。 ん?なんでもないよ。 はーい。ご飯手伝いまーす。 ずっと僕のこと好きでいてね。
噂話
僕は学校で浮いている。 何やら良くない噂が流れているようで、誰も僕には関わろうとしない。 僕が近づくと皆露骨に後退りをし、道をあけ、何やら周りの人間となにかこちらを見て話している。 まあいいさ。 僕もそんなヤツらとはつるむ気は更々ない。 そもそも誰かとつるむ気がない。 だってそのために噂を流したんだから。
ロボット
私に心は無いらしいのです。 ならこの感じはなんなのでしょうか。 ただのプログラムのバグだと言われるのでしょうか。 彼を見る度湧き上がるこの感じは、なんなのでしょうか。 ただの回路の異常でしょうか。 私はじきに修理に出されて、この感情らしきバグを直されてしまうのですね。 ああなんて残酷なのでしょうか。 こんなならば私はロボットに生まれたくはありませんでした。
仮面をつけるのは
だりぃ 今日も目覚めの悪い朝が来た。 スッキリしない天気、重い空気。 それでも仕事に行かねぇとだからパパっと支度をして家を出る。 今日もこれだな 俺はそう思いながら仮面をつけた。 この社会では誰もがそうやって生きてる。 周りの目をうかがって、それに合う仮面を無数に作り、自分を繕うせいでもうどれが元の自分なのかもわからない。 こんなクソみたいな世界でどうやったら幸せなんてなれんだろうな?
紫
ピリリ。 携帯がなった。 君からの電話だった。 またいつものだろうと気だるげにスマホをとった。 ……… 僕は家を飛び出した。 君とすごした日々が、回想シーンのように頭に浮かんだ。 まるで君がこれから死んでしまうみたいに。 息を切らしながら必死で足を動かした。 あたりは日の入り時で、オレンジ色の空とキラキラ光る海が、君を待っているようだった。 君のもとへたどり着く。 君はこちらをびっくりした様子で振り返った。 君はなにかを僕に言っているようだったけど全部無視して言う。 僕も一緒に連れて行って。 …… 君は嬉しそうな顔を必死に隠して僕に微笑んだ。 綺麗だった。 その瞬間時が止まったようだった。 気がついたら君は僕の前から姿を消していた。 その日が落ちる直前の紫色の空が君を飲み込んだんだ。 僕はただ呆然とその空を眺めるしか出来なかった。