藤 羅羅
7 件の小説➖センゴク➖ 7
第7話 ➖武田信繁➖ 序盤で越後軍を燃えるように圧倒し大きく戦局を 優位に迎えた武田軍。 まさに、武田信玄の軍旗に記される〈風林火山〉 疾はやきこと風の如く、 徐しずかなること林の如く、 侵略すること火の如く、 動かざること山の如し。 武田軍は圧倒的火力を出し前線を押し上げた。 -武田本陣- 信玄「なかなか押し込んでいるな!勘助。」 勘助「えぇ、思いの外、兵達が圧倒しております。長期戦での作戦なので、あまり出過ぎないよう伝えたのですが。あの流れは私達でも止められませんね」 信玄「そうだな、このまま突破する作戦に変えてしまうか!ハーッハッハッ!」 状況に少し頭を抱える勘助と活気な信玄であった。 そんな中、ある男が本陣に現れ、信玄の下まで来た。 「兄上!ただ今、参りました!」 大胆に跪き、告げるこの男は信玄の弟、武田信繁である。 歳は4歳離れているが、鋭い眼に体格、容姿や声、放つ空気感までも信玄に似ている。 幼い頃から兄を慕い、弟として、家臣として、支え続けるそんな信繁に、信玄はおろか、他家臣達をも皆、絶大な信頼を置く武将である。 また、武田軍最強戦力の騎馬軍の長を担う甲斐の副将軍である。 信玄「おぉー、信繁、騎馬隊の準備はどうだ?」 信繁「兄上、完の璧です!まもなく全隊配置に着きます」 信玄「ご苦労だ!ま、でもお前の出番はもっと後であろうな!ハッハーッ」 信繁「そうであるかもですね!ですが敵軍の脅威はあの長尾景虎、侮れません、ましてや今戦は景虎を怒らせている分、前回よりも危険がございますので。」 勘助「さすが。信繁殿!! 御館様っですので気を抜かずです。」 信玄「ぇっ俺、気ぃ抜いてないもん」 勘助「真田殿から聞いた噂話しでありますが、長尾景虎は、戦いの神、勝利の神、自らが毘沙門天の化身であると。と話しているようで。今の越後はその力をもって治めたと聞いております。」 信玄「毘沙門天…フッそんな話、まーでもこの信玄を相手にするのであれば、神の力でも借りないとな!ハッハッハーッ」 信繁「確かにそうですなっ!ハーッハッハ」 勘助「・・・」 陽気な2人を前に、顔が引き攣り始める勘助であったが、信繁は勘助の肩に手を当て冷静に声をかけた。 信繁「山本殿、そう心配は入りませぬ、某がすぐに前衛まで参りますゆえ、反撃にも備えるよう要所に指示致します」 勘助「さすが信繁殿、お頼みします。」 信繁「それでは勘助殿、御館様、行って参ります!」 そう言って信繁は、前衛に指揮を取りに向かい、 本陣の勘助達は戦況を見守る形となった。 だが、事は信繁が前衛に到着する前に起きるのであった。。。 しばらくして前線までまもなくの距離まで来た信繁は、なにか異変に気付く。 信繁「ん⁈なんだ、この感じは、前の方が少し騒がしく…味方の声か?…ま、まさか!!」 味方の声にしてはいつもとは違い、嫌な気を感じた信繁は、前線が見える場所まで慌てて馬を走らせた。 恐る恐る見渡すとそこには、大部分が越後の軍に押し込まれ、崩壊し崩れている武田軍の前線の姿であった。 恐れていた事がまさに起きてしまったのだ。 信繁「なんだと、あれ程押し上げていた前線をこの短時間で…まずい、急がねば取り返しがつかない事に!… 異常事態の戦況に信繁は急いで馬を走らせた。 そして武田本陣もこの時、同時に前線の崩壊に気付き、全体の前線、要所に援軍の指示を出した。 ようやく前線の自軍の陣に到着した信繁 赤く統一された馬鎧を着せた馬が並ぶ。 そして騎馬兵が慌てて信繁を迎した 騎馬兵「信繁様!戻られましたか!」 信繁「あぁ!昌秀はどこだ!」 騎馬兵「部隊の半分を連れて最前線まで出陣致しました!異変に気付きいち早く対応に向かわれましたので、出陣から大分時間が経っております!」 信繁「承知した!我らも残りの部隊で突撃するぞ!出陣だ!!」 昌秀が対応してもあの崩壊ぶり、これは尋常ではない、このままでは昌秀も危ないぞ…頼む耐えてくれ…… -川中島国境最前線- 序盤の戦況が覆り、押し込んだ前線も武田の兵達の死体を残し、今では要所にしていた陣も越後の軍に追い上げられ大打撃を喰らった戦況であった。 戦況にいち早く異変に気付いた昌秀率いる騎馬隊が、なんとか越後軍の進軍を対応していた。 この騎馬隊を指揮しているのは工藤昌秀。 信繁と同じく騎馬軍を担う武将である。 信繁とは同世代であり、互いに信頼を厚く寄せる。 数々の戦の勝利に貢献し、前回の川中島合戦でも大いに武功をあげた実力者である。 荒れ崩れた前線の中、昌秀は兵達に叫ぶ 昌秀「耐えろ!!必ず援軍が来る!それまで耐えるんだ!!」 勢いを増し押し寄せる越後軍に騎馬隊の火力を出しなんとか抵抗する武田軍。 昌秀「おかしいぞ、きっとなにかが起こったに違いない…大きいなにかだ…相手の士気が猛烈に上がっているのを感じる… 刀を振るいながらも冷静に辺りを一度見渡す昌秀。すると異様なほど甲斐の方へ押し込み進み続ける箇所を見つけた。 そして昌秀はそこで掲げている旗を見て覆った戦局の原因に確信を迫った。 昌秀「中央が異様にやられている… 待て、、あの高く掲げた旗は…毘の旗… 毘沙門天……まさか…あり得ない… だが恐らくあれが元凶だ…あの部隊を食い止めなくては… 昌秀「後衛部隊は俺に続け!中央の戦場まで行くぞ!」 昌秀は、各箇所の後衛部隊を引き連れながら中央へ向かい、その部隊と突撃する作戦に出た。 そして進軍していると自ずと確信した。 敵の尋常ではない士気が、溢れるほど湧いて出ているのが肌で感じるほどであった。 昌秀「間違いない…毘の旗…越後の大将、長尾景虎だ… 「皆、よく聞け!この先に敵国の大将、長尾景虎がいる!あの軍旗を見ろ!間違いない!状況はよくないが、これは最高の機会だ!討ち取れば戦いも終わり、最高の武功を手に入れられる!勝利の為に我々でこの前線を打ち砕くぞ!!」 冷や汗が止まらない昌秀であったが、またとない機会と捉え、率いた部隊で突撃した。 だが、昌秀の部隊は、毘の旗を大きく掲げた越後の部隊まであと一歩のところで、遮られてしまうのであった。 増援してきた昌秀部隊に対して越後軍は、待っていたかのように騎馬隊を当ててきたのである。 越後軍の完璧な対処に突撃した部隊は勢いを殺され、昌秀率いた部隊はそのまま前線にただ飲み込まれるような形となってしまった。 昌秀「くそ!なんなんだっこの敵は…また部隊がやられ過ぎている…これでは時間稼ぎさえも出来ない…なんとか一度後ろに後退するしか… 昌秀は立て直す為に後退を試みたが、やはり猛烈に攻めて来る越後の軍に隙は無く、ただ抵抗し続けるだけとなった。 勢いが止まらない越後軍を相手に昌秀が率いた部隊は次々に倒れ、ついに昌秀の喉元、側近の者まで血しぶきをあげていった。 絶体絶命の状況で昌秀は死を覚悟した、 昌秀「もはやこれまで…届くか分からぬが刺し違えてあの陣の将を……必ずいるはずだ…長尾景虎… そして、昌秀は決死の覚悟で残った部隊に特攻の合図を出そうとした。 とその時であった、後方からなにやら騒がしく、なにかが地響きを鳴らし向かってくる音が。 振り返るとそれは、 夕日になりかけた太陽が赤く辺り一面を照らし 炎のように輝きを放つ大軍の姿であった。
➖センゴク➖ 6
第6話 ➖龍の反撃➖ 川中島の国境手前まで進んだ越後軍。 直江「前方に見えて参りましたぞ殿!」 景虎「わかってる!!」 怒り口調で放った景虎。 そして前方を見ると、普段は殺風景な国境先の景色だが、辺りは燃えるように赤く染まっていた。 武田の軍だ! 武田軍とは前年戦っているが、あの赤く統一された鎧は、2度目となる兵も変わらず威圧感に晒された。 もちろん初めてとなる兵には恐怖となった。 直江「あ、相変わらず派手ですな武田の軍勢は」 苦笑いで言う直江 景虎「あんなもの的になるだけだ。」 そして、しばらく進むと直江はあるものを見つけた。 直江「殿、あれはもしや関東の北条《ほうじょう》の軍」 景虎「やはり。。甲斐の同盟国の北条か」 ・・恐らく今川も援軍を出してくる。 くそっ!武田め完全に固めてきたな。 ・・だが三国で来ようが俺は負けない 必ず報いを受けさせるぞ武田よ。 そうして両軍同時に国境を挟んで、睨み合う形で到着した 直江「殿!皆配置につきました」 景虎「あぁ!行ってくる」 そして景虎は大軍の前に喝をいれる 景虎「これより甲斐の侵略を阻止すべく、武田軍をここで打ち砕く!越後の家族に内乱まで促し、害した武田信玄を断じて赦すわけにはいかない!」 「必ず討ち取るぞ!!!!」 「武田軍が動いた!ゆくぞ!全軍!前進だ!!」 ・・武田すぐに貴様の首を引き裂いてやるからな… そうして両軍出陣し、第二次川中島合戦が始まり、大軍のぶつかり合いで大声が空に響き始めた。 景虎の軍は短期による作戦で組み、景虎の怒りのままに突掛けるよう激突した。だが、しばらくすると戦況は動いた。 景虎軍が押される様になったのだ、やはり赤備えに圧倒されたところであろう。 よって序盤で早々に越後は崩され始めた。 直江「殿!早くも戦況が!」 景虎「くそっ!」 ・・・所々の隊が押し込まれてる、騎馬隊を出すにもこのままではダメだ。 ここはまず、崩れた陣から立て直し、騎馬はそれからだ・・・。 景虎「じぃ!少し本陣から離れる!何人か連れて、もっと前に行くぞ!!」 直江「殿、今、前に出られるのですか?!」 慌ててついていく直江と家来達、景虎は一気に前線近くまで小隊と到着した。 危険な状況だったが、景虎は“毘”と描かれた旗を掲げ、前線の兵達に呼び掛ける。 景虎「お前達!惑わされるな!こんな物恐るに足らん!ただの見せ掛けに過ぎない!」 「お前達の強さはそんなものでは無いぞ!」 「行くぞ!皆俺に続け!!!」 そう言って最前線まで一気に、景虎小隊自ら先陣を切り兵達を駆り立てた。戦況は一変。息を吹き返した前線が押し戻すようになり、それだけでは収まらず、景虎の凄まじい戦術眼で、騎馬隊の猛烈な急襲により武田軍は大打撃を喰らう。 戦場は一気に越後の軍が優勢となった 景虎「このまま攻め抜くぞ!」 景虎の言葉に兵達が活気に満ち応えた そうしてまもなく日が落ちるところまできた 直江「はぁーはぁーっ殿っやりましたね!」 直江は息を切らしながら、景虎に言った。 「武田軍は極めて深傷を負ったでしょう」 景虎「そうだな。」 直江「さ、殿っ、日が落ちますので本陣まで戻りましょう。」 景虎本陣➖ 直江「今日戦は、我々、越後の勝利でありましょう。また、殿自ら先陣切っての戦いぶり、見事でありました!」 景虎の戦いぶりを、自分事の様に嬉しそうに喜び、称える直江。 景虎「うん、」 素っ気なく返し、続けて話した。 景虎「明日、武田軍は反撃に来るだろう。だから反撃に備えつつ、このまま最短で討てるように前線を押し上げる。」 直江「えぇ!そうですな!…… ですが今日の前線での戦いぶりは本っ当にっ 騎馬の指示も完っ璧で、、、」 景虎「あーもーわかったよ、じぃ、ありがとね!」 直江の雰囲気に流され少し落ちく景虎だった。 翌日。決戦2日目。 景虎・・よし、武田軍は変わらず同じ陣形だ 景虎「じぃ!」 直江「えぇ!全軍配置についております!」 景虎「行くぞ!全軍、前進だ!!!」
➖センゴク➖ 5
第5話 ➖甲斐の出陣➖ 勘助「御館様、真田殿、予定通り善光寺別当の栗田殿が、旭山城に入城致しました。」 信玄「よし、真田ぁー完璧だなっ!!」 真田「いえ、御館様のお力あってこそです」 信玄「北条《きたじょう》に反乱を起こさせている間に、善光寺の栗田の調略を決めるとは。」 そんな真田の知略、策の深さに信玄ながらも、身震い催したが笑いながらに称えた。 信玄「本命は北条では無く、栗田であったと。いったい何手先を読んでおるのだおぬしは!ハーッハッハハハ!」 真田「とんでもないことです!たまたまでございますよ!。栗田とは割と領土が近所ですから。川中島が重なる戦の被害によって荒れている事を知っておりましたので。」 信玄「もー尚更こわいんだけどお前ーー、もーなんか、やめてよー、裏切ったりとかー。」 勘助「御館様、、冗談が過ぎます。。。」 真田「それでは、そろそろ到着しますゆえ先に参ります!」 真田はそうして一足先に自軍の本陣へと向かった。 真田「十蔵どうだ?"いけそうか"?」 またどことなく現れる十蔵。 ササッー 十蔵「ハッ!」 真田「よし!」「なら頼む!」 なにやら真田が十蔵に伺い、十蔵は再び去っていった。 そして、越後の景虎・甲斐の武田の両軍が川中島の国境を挟んで、睨み合う形でほぼ同時に到着した。 信玄「おおー。越後も着いているな!。早く、景虎がどんな顔をしているのか見てみたいのぉ」 勘助「御館様、この戦は長期戦に持ち込む作戦ゆえ、せっかちでいてはなりませぬ。折角の真田殿の策も水の泡に。」 信玄「わがってる!!!」「独り言だ!」 武田軍は、真っ赤に染めらた鎧に統一されている。 いわゆる赤備《あかぞな》えというものだ。 遠くからでもかなり目立って的になりやすいが、1人1人武勇に秀でた精鋭兵の様に見えた。 そして信玄が大軍を前にし、士気を入れ始めた。 信玄「皆の者これより!北上作戦を始める!敵はその行手を阻む目の前の越後の軍、我々はこの戦に勝利し、海陸地まで領土を広げる!甲斐の命運を懸けた戦いだ!皆の者! 出陣じゃあぁ!!! そうして旗掲げ武田軍が始め先陣を切り、二回目となる川中島合戦の火蓋を切った。 戦況は初め武田軍の劣勢で大きく長尾軍を押し込んだ。 赤備えの効果もあるのか、敵はやはり多少恐怖に圧倒されたであろう。 だが、武田軍はここから、大いに押し返される事となる。
➖センゴク➖ 4
第4話 ➖怒り➖ 越後 北条城 北条高広《きたじょうたかひろ》の謀反の件が景虎によって許され、事は収まった。 北条家は皆、追放を覚悟した、だが 景虎「じぃ!!!今すぐ北条家を皆、城近くにて匿う!守りは、 北条の家来達に張らせろ!」 直江「なっ殿っ、、か、かしこまりました!!」 異様な景虎の判断に一瞬、反覆しようとした直江だが、それこそ事態に相応しくない事は、景虎の眼を見てすぐに理解した。 血相を変え、まるで鬼のような空気を出す景虎 景虎「すぐに甲斐の武田に文を出せ!まったく北条に裏切らせ内乱を、戦いになれば援軍をとも促し、結局一兵を送らぬとは、武田め。一当主として、いや、人として恥ずべき行為、卑怯かつ愚か!」 景虎「すぐに甲斐へ伝を!」「宣戦布告だ!」 「すぐに川中島に向かい陣を張る!国境近辺の城にも、全て早馬をだせ!急げ!」 こうして甲斐、越後の両者が国境にもなる川中島に出陣し、世に言う、第二次川中島の戦いが始まるのであった。 そうして越後軍は準備が整い進軍し出した。 ところが景虎には、ある凶報が届く。 家臣「殿、ほ、報告致します」 恐る恐る言葉を出す家臣 景虎「どうした!今はしょうもない話しは聞けないよ!」 家臣「善光寺《ぜんこうじ》の、、善光寺の栗田が寝返りました!!」 家臣は頭を深く下げながら声を上げて言った 景虎「なんだと.....なぜ..だ」 直江「これは、殿、作戦を変えなければなりませぬな。」 いつもよりまして、鎧をピッカピカに磨き上げ、気合いの入った 直江だったが、艶が落ちる様だった。 善光寺とは、越後の領土である川中島付近にある寺、現代では国宝とされ(うしにひかれて善光寺参り)と言う伝説で有名である。 栗田は、その周一帯を支配し、川中島周辺に絶大な影響力を 持った、長尾家の家臣である。 景虎「栗田、あの者まで武田に調略されたと言う事か、まずいぞ....」 直江「栗田がどう動くかですな、」 怒りを抑え少し目を閉じる景虎 ・・そのまま攻めて来る事は考えにくい。 景虎「.....栗田は甲斐の旭山城《あさひやまじょう》だ! そこに陣を張りに行くはずだ!」 旭山城は、甲斐と越後の国境線の、中央に置く、甲斐の最重要拠点である。城の先には大きな川があり、壁の役目をしている。つまり、そこに張られてしまうと景虎の軍は、右側からの攻撃が出来ないという事を景虎は想定した。 景虎「栗田に旭山城に張らせ、そして甲斐は、殆どの勢力を左側からぶつけて来る。」 直江「さすが殿!では、先に向かった兵達を 景虎「待って、じぃ、それだけじゃない!栗田に旭山城を守らせる、という事は左側に俺が勢力を動かした時に、越後本国が危ない。本国までの地形を知る、栗田なら一気に押し掛けて来る。」 直江「ぐぬっ」 景虎「..まずは急いで、全軍で善光寺を奪還する!!」 善光寺に到着した長尾軍は、凄まじい勢いで制圧した。 奪還には成功したが見立て通りの事が起きた 直江「やはり殿の言う通り本陣はもうありませんでしたか....。」 景虎・・やはり遅かったか、 ・・・おかしい....相手の動きが完璧だ.... ......事が周到すぎる・・・ 北条の謀反が起きた時からの事を思い出す景虎 まさか、"最初から"!?そうだ間違いない.... 景虎「くそっ!」怒りをあらわに吐き出す景虎 ・・してやられた、 大きく先手を打たれた、このままでは、まずい。 他にも仕組まれているかもしれない..... 景虎「じい!まずは、旭山城の警戒だ!そこに大きくはないが、新たな拠点を作る!ここの善光寺にも陣を張って守らせて、それ以外の全軍で、左側へ進軍させ武田軍を迎え討つ!!」 ・・いいだろう武田よ、ここまではよくやった、だがこの景虎の守るべき家族を揺さぶり、傷つけ、俺の大切な越後を攻め込んだ事を絶対に許しはしない。 すぐにその首、体から引き裂いてやる。
➖センゴク➖ 3
第3話 ➖策の為の策➖ 策を提案してきた家臣の真田 信玄「ほぅ、なるほど、調略という形で まずは裏切りをさせると。」 真田「えぇ、もし仮に、"上手く事"が進まなかったとしても、 この"策"なら、必ずとも越後の景虎であっても。。」 信玄「フッお前がもし敵国にいたらと考えると、つくづく恐ろしいのー」 真田「策の為の策でございます!」 真田の眼は、虎の様に鋭く、誰もがその姿をみたら身震いしたであろう。 信玄「真田、お前の眼つき、すごく怖いよ、」 真田「え、そんなこと、までもきっと、御館様程ではありませぬ。」 信玄「えっ、、、」 真田「まーひとまずは、一手指して参りますゆえ、御館様、失礼致します!」 信玄「あ、あーはい!」 早々と去って行く真田 信玄 え、俺そんな、怖い系の眼・・・ 真田は屋敷を出て 十蔵《じゅうぞう》!! 真田がそう呼ぶと ササッ どこからともなく男が現れた。 真田家を支える、忍びの1人十蔵だ。 十蔵「ハッ!」 真田「頼みたい事がある」 「まず、お前には越後に向かってある所に行ってもらう、 そして・・・ その頃、信玄は 信玄「おーい!勘助!」 勘助「はい!御館様!」 信玄「真田には早速進めてもらっている。 勘助、お前は俺と北条と今川に話しをしに行くぞ!」 勘助「かしこまりました!」 信玄「あ、勘助、それとさ、俺、そんな眼つき悪い感じ?。。」 そして時が経ち、越後を戦前に、混乱させる事に成功する。 真田「御館様!越後に遣わせていた者から報告が、越後で長尾家家臣、北条高広《きたじょうたかひろ》が、謀反お起こしたとの事です!」 信玄「そうか!ならいよいよという事か、真田よ」 北条高広に宛て書かれた文には、脅迫だけでは無く、謀反を起こす際には甲斐から武田軍の援軍をすぐに送るという事まで書いていた。 だが武田からは一切送る事は無かった。 これも真田の"策"であった。 真田「ええ、すぐに制圧され、北条一家は滅亡、武田と内通していたとの噂もしっかり広めてますゆえ、怒りのままに甲斐へ攻め込んでくる事でしょう。」 信玄「んー、やはり卑怯者扱いされるのは気にいらないが、これも甲斐の為だ、そしてお前の策だ、仕方ない。」 真田「申し訳けありません。ですが、これから起こる戦で、景虎を降伏まで追い込める事でしょう。」 信玄「あぁ」 真田「して御館様、同盟国の今川と北条は如何ですか?」 信玄「あーそれだが微妙だ!」 真田「微妙、、、、」 信玄「今川にはキッパリ断られた!あ奴どうも文句気味に 断りやがって、北条は相変わらず変な態度で、 ”えぇんぐんを手配しょおう” とか言っていたが、、あれはあてにならないだろう。」 真田「..........」 信玄「ま、大丈夫だ!俺にはお前を含め優秀な家臣達がいる!!ハーッハッハッハ!」 ほんの少し不安な感じがしたが、信玄の思いを聞いて、戦の勝利の確信までも感じてしまった。 信玄「おぉう!勘助!来たか!ハーッハッハハハ!」 勘助「御館様はなにをそんなに笑っておられるのですか?」 真田「これは山本殿、お久しぶりにございます」 勘助「おー真田殿!ここに居られると言う事は、そろそろでございますか。 ところで十蔵はおりますか?建築の件で教えをと」 真田「十蔵は今・・・ また時が経ち、 越後から甲斐宛てに宣戦布告の状が届いた。 信玄「皆の者これにて出陣いたす!」 家臣達「ハッ!」 皆、力強く応え、川中島に向け進軍した。 信玄「景虎め、"まんまと"かかったな、のう真田よ。」 真田「ええ、御館様!」
➖センゴク➖ 2
第2話 ➖甲斐の虎➖ 北条城の件より少し時間はさかのぼり、場所は越後から南に移る。ここは言わば山の国、海は無く、沢山の木々で溢れている土地。 人が住むには、少々難しいところはあるだろう。 その地の名は、全国の武将から恐れられている、戦神、武田信玄が当主とする、という国がある。 当主の武田信玄は、若くして甲斐当主となり、甲斐周辺一帯次々と攻略し、その圧倒的強さに甲斐の虎と呼ばれる程に。 現代でも語り継がれ、名言でわかる様に、 人は石垣、人は城、人は堀、情けは味方、仇は敵なり、と。立派な城があっても、人の力がないと役に立たない。 人こそが城であり、人こそが国であると。 まさに、一国の当主とある武田信玄であったが、城を一切持たなかった、そんな武将である。 この信玄の人間性により、甲斐の国を支える家臣達の繋がりは、相当なものであった。 また、家臣の能力を、正当に評価することで、国内をまとめ、領地を大幅に増やし、今では大きな国となった。 だが、この甲斐は、長年に渡り抱えている問題がある。 屋敷の中庭で1人、黙々と刀を振る信玄。。 「御館様。」 信玄「ゔおぇいっっ!びっくりしたー!」 背後に急に現れ堂々と立っている男、軍師の山本勘助だ。 戦略の天才であり、築城術を得意とし、その知識を活かし、取った城の数多く、武田の片腕とまで言われるようになった。 信玄「勘助、最近それ多いぞ!急に出てくるやつ。」 勘助「ありがとうございます。」 信玄「いや、褒めとらんぞ」 また真田の者に習ったりしてるのか・・ 勘助「御館様!」 信玄「ぁ、はい!!」 勘助「食料の件でしたが、また、冬頃には厳しくなる、との事で調べがつきました。」 信玄「・・そうか、あいわかった。」 長年の問題とはこの件だ。 甲斐は貧しい土地であった。 山地で耕作面積が少ない上に、川は急な流れで氾濫しやすかった、信玄は治水工事をし改善させたが、甲斐が農耕に不向きな土地であるということには変わりはなかった。 海がないことで塩や海産物の供給は、その時々の同盟国に、武田家は長年頭を下げて頼ってきた。 この当時、同盟を組んでいたのは、甲斐から南側にあたる、関東の北条《ほうじょう》、東海の今川《いまがわ》、であった。 信玄「なんとかせねばならぬ、勘助皆の者を屋敷へ呼べ。」 勘助「はい!」 そして屋敷に家臣達が集まった 信玄「皆の者よくぞ参った、今日は大事な話しを。。」 家臣達は皆真剣に聞き耳を立てる 信玄「北上作戦を再開しようと思う!」 家臣達に驚く者こそいなかったが、素直に頷く者達、不安な空気を放つ者達がいた。 その通りだ、食料問題は家臣達も十二分に理解している、それだけではなく、領地を増やすことで利があるからだ。 だが問題は越後にいる長尾景虎。 越後の景虎とは約2年前に衝突 (現代でいう第一次川中島の戦いである) 武田信玄が、甲斐から北の領土を広げに、敵国を攻めたところ、制圧寸前、さらにそこから北にある越後から援軍が突如現れた、それが景虎であった。 結果、敵国の領土は多少は取れたものの被害は莫大、とても勝利したとは言えない。 連勝で勢いのあった武田であったが、ここにきてその勢いが止まるほど、景虎率いる越後は強かったのだ。 続けて話す信玄 信玄「ただただ攻めるだけではない、越後を侮ってはならぬ、今、同盟を組んでいる、北条《ほうじょう》、今川《いまがわ》達と、越後を共通の敵として進軍させ、攻め入る!」 徐々に納得し始める家臣達。 信玄「苦労を掛けるが、甲斐の為。。必ず勝利し海場まで手にするぞ!」 恐れもあったが、信玄の言葉に皆、覚悟を決める事となった。 信玄「それでは皆の者、それぞれ戦の準備を。」 家臣達「ハッ!」 それぞれ部屋から出て行く家臣達 信玄「あ、!あーそれと真田!!」 信玄は、1人の家臣を呼んだ。 真田「はい、御館様!」 この家臣は、武田信玄の片腕とも言われる重臣、真田幸綱《さなだゆきつな》。この男こそ、後に戦国時代を終わらせる、日本一の兵と呼び声の高い、真田幸村《さなだゆきむら》の祖父である。 信玄「今度は北を攻める、お前の領地が一番近い、なにか策を一緒に考えよう。」 真田「でしたら、御館様、良き"策"を考えましたので是非!」 信玄「は、早いなっっ」 真田「私の、忍びを使う手でございます。」
➖センゴク➖ 1
第1話 ➖越後の龍➖ 時は慶長20年6月(1615年) 100年以上に続いた戦国の世も、 今、終わりを迎えようとしている。 男「佐助、最後まで済まないな、ありがとう」 男は、血で染まった六文銭の飾りが付いた兜を下ろし、静かにそう言った。 辺りはまだ陽の光で暖かくもあったが、男2人、冷えるような静けさだった。 佐助「グスツ...」 酷く悲しみに涙を抑えられない佐助 そして、佐助の前にいるこの男、 その男の眼は、真っ直ぐで虎のような鋭さでもあり、力強く、 でもどこか優しく、愛溢れる眼をしている。 男「まぁ そう悲しむな佐助」 また静かにそう言って佐助の肩に手を当て、腰にある刀を渡して地に座った 男は少し空を見上げ 陽の暖かさを感じながら言った 男「みんなありがとう」 「我!、真田信繁、一生に悔い無し!」 大阪夏の陣 安居神社にて 時はさかのぼる 天文23年(1554年)越後 北条城 辺りは少し騒がしい、人と人との争いの音だ。 馬に乗り、山の岬から、遠くを眺めている青年が1人、老若男女、だれもが惹かれるほどの、美しい顔立ちをしている その男の眼は、真っ直ぐで鋭く、 また、若く勇ましく、名は長尾景虎 だが、今は少し悩んでいる様子だった。 家臣「殿!!」 家臣「殿!北条城、制圧までまもなくですぞっ!」 歳の割に、やけに綺麗に甲冑を着飾った家臣が、 慌てて報告に来た。 長きに渡り、長尾家の当主を支えて来た家老、直江だ。 また、景虎幼少期から面倒をみていた。じぃである。 直江「全く高広め!裏切りおって!景虎様への御恩を、、、」 景虎「そうか、じゃあ急いで行くよ!じぃ!!」 (景虎)改名後に上杉謙信。 若くして、越後の当主となった景虎。 越後の龍、軍神と呼ばれるようになり、欲が行き交う、 戦国の世の中、天下を取れる程の力があったが、 欲で他国を攻める事は、一切なかった。 ただ領土に攻めて来ようものら。。。。 とても義に厚く、義に生きた。 戦国時代、前期の最強の武将の1人となるのが、 この上杉謙信(景虎) 景虎「そいえば、じぃその黄色の鎧、、、 似合ってないよ」 北条城前 兵「おい!殿が到着したぞ!」 城前に到着した景虎 辺りが静まっていた、完全に制圧したみたいだ。 制圧するまで時は掛からなかったが、 少なからず被害が出た 家臣に案内され城奥まで入る景虎 入城するとそこに、いつでも首が切れるように、刀で当てられている北条高広(きたじょうたかひろ)の姿。 直江と同じ家臣である北条だが、謀反を起こし今は拘束されている。 直江「この裏切り者がっ!殿!すぐさま首を切りましょう。」 景虎「少し待て!北条、、どうしてだ、話してくれ、、」 いつも北条の自慢の髭に、皆んなでイジったりしていた事を思い出す景虎。 景虎は、長年、長尾家に尽くしてくれていた北条になんとも言えない感情であった。 北条「仕方がなかったのです」 涙目ながらも、どこか堂々としていた。 北条「私は甲斐の武田に、家族を、子供達を人質に、仕方がなかったのです」 抑えていた涙が少し流れる 家臣達「武田だと!、、」 ざわめく家臣達 景虎「そうなのか、その話しは本当か?」 家臣「偽りであると思われます!」 話しを割るように入った家臣 家臣「城中確認しましたが家族は全員揃っているようです」 北条「ち、違う!」 景虎「どう言う事だ!北条!」 血相を変える景虎 北条「違うのです。」 「あちらにある、小物入れの中を確認下さい」 中を確認すると中から1通の文が出てきた。 景虎「これは、、」 北条「昨年、城の片隅で見つけた文でございます」 その内容は、完全に武田からの脅迫の文であった。 北条「武田と通じ景虎に謀反を起こせと、さもなくば忍びの者を送り、家族もろともと、そして謀反の際には、甲斐から助太刀いたすと、最初は本気にはしなかった。」 北条「ですが次第に、、最後に書いてあるよう、 本気だと信じてもらう為に、激しく痛む毒を子供達に盛ると。 たちまち子供達は、痛みに泣き信じざるえなかった、、。」 北条「景虎様、私は、すぐに首でもなんでも切りになって構いません、ですが妻子供はお許しいただけませんでしょうか。」 許し乞うように泣き崩れる北条。 景虎は少し目を閉じた、 景虎「…」 家臣「殿、状況がどうあれ殿に刀を向けた事、謀反を起こした北条家を生かしてはなりませぬ。一家根絶やしに致しましょう」 景虎「……」 他の家臣、兵達も後を押し始めたが黙りこむ景虎 少しざわつく空気が出始めた 景虎「………」 直江「殿!やはり一家根絶やしにす 景虎「お前達!!!」 それまで黙っていた景虎が、鋭く言い放ち、直江は言葉を無くした。 そして部屋中が一瞬にして氷つく。 景虎「お前達は同じ様な脅迫はされてはいないな!?」 氷ついた家臣達が徐々に迷いながらも頷き始める。 景虎「あーならよかった」 少し安心した表情の景虎だったが、 すかさず家臣達に言い放った 景虎「北条ではなく逆にお前達だったらどうしたんだ?」 「家族を捨ててまでこの長尾家に忠誠を誓えるのか?」 直江「殿!!」 景虎「じぃは黙って!」 景虎「俺は北条を許す」 皆が信じられない景虎の発言で 部屋にいた全員に衝撃が走った 北条「…え、景虎様、」 景虎「北条、お前は確かに謀反を起こした、国内で死人が少なくとも出た、とても許されない事をした、だが北条、俺がもしお前の立場であったら、同じ事をしたかもしれない。」 景虎の言葉に戸惑う家臣達 直江「なんと、、」 景虎「家族を犠牲になど、何かと天秤に掛けるなど、 とても出来ない、、」 「ましてやそんな事絶対にあってはならぬ!」 「粛清されるべきなのは北条ではない。」 「北条は北条の義を通しただけだ!俺は北条高広を許す!」 「北条よ、気づいてあげられなく済まなかった」 北条「景虎様、、うぅ」 景虎の広大な心の器から出る言葉に泣き崩れる北条。 また皆が信じられ無い光景に驚きもあったが、皆胸にくるものがあった。 景虎「今回の謀反の件、それは俺の弱さゆえに起きた事だ、罰するなら俺を罰せ!」「皆、申し訳けなかった!」 家臣達の中には、景虎の言葉、そして思いに打たれ足を崩す者もいた。 景虎 「だが罰する前に一つだけしておきたい事がある」 景虎はまるで悪魔に 取り憑かれたかの様に一気に血相を変えた 景虎「俺の家族をこんな目に合わせた奴を、 俺は許してはおかない、」 「武田め。今度こそ殺す!」