あいか
6 件の小説5.11
最近は、様々な媒体を通して 死 というものが、より近くに感じられるようになりました。 あなたがこの世を去ってから、私は3度目の冬を迎えます。
いなくならないでよ、
どうして? 私はこんなにも貴方を必要としているのに。 どうして貴方は私の中から消えようとするの? 私の何がダメだった? どうすればいいの? ねぇ、教えてよ、 私、なんだか疲れてきたよ。 もっと早くから真剣に向き合って入れば良かったのかな、 もう、やだな 全部諦めて楽になりたいよ 試験前日の夜。 私は数学の問題集とにらめっこ。 早いうちから対策してれば今頃夢の中だったのかな… …… 夜も更けた、もう寝よう。
盆ノ夢
夢を見た。 長い長い夢を見た。 内容は覚えていないけど、苦しいほどに温かくて、切なくて。 まさに夢見心地ねって。 目を覚ますと、霧の深い森の奥に一人。 右手には赤い提灯。 あたりに数人、私と同じような人が立っていた。 7月のはずなのにやけに涼しくて、私は「嗚呼、きっとこれは夢の中なんだ」と直ぐに理解した。 これが夢ならば。 私は裸足のまま草を掻き分けて進んで行った。 しばらく行くと、木蔦(きづた)の絡まる糸杉の木を見つけた。 傍には先の見えないほど長い階段と、彼岸花。 「やっぱり私、昔ここに来たことがある。」 何度も夢で見た森。 道標なんて無くても迷わずに進めるほどよく知るこの森。 でも、階段の先の記憶だけがない。 零れる涙を拭い、足を進めようとしたその時、何かかが私の袖を引く。 振り返っても人影は無い。 そうか、ここから先の記憶が無いのは、忘れた訳じゃなかった。 風が吹く。 鈴(リン)の音が聞こえる。 あれ、私って 夢を見た。 長い長い、誰かの夢。
線香花火
夜空に浮かぶ、大きな線香花火。 頬を掠める煙たい空気。 火薬の匂いに、鼻がツンとする。 次々と咲いては散っていく火の花を見ては、地上に人々の笑顔が咲く。 小さい頃はあんなに怖かった夏の花の爆発音は、今はもう、何も聞こえない。 空を見下ろすと、あれは流れ星だろうか。 願う事もないから、見つけても意味が無いのだけれど。 大地に近づくにつれて、天に近づいていく。 色が無かった世界に、今更、じわじわと命が宿っていく。 嗚呼、これが私の最後に見る世界か。 もう後悔しても、どうすることも出来ないのだけれど。 でも、もう少しだけ生きたかったかもしれない。 なにも、今じゃなくて良かったのかな。 最悪だ、もう遅いってのに。 透明な血液が溢れ出す。 頭上には人々の営みの光が、まるで星空みたいに見えて。 さっき見た流れ星に願えるのなら、願いを聴いてくれるのなら、もう一度やり直せるかな、 ー 線香花火が落ちる。ー
人間灰化現象
−第零章− 最近ニュースでよく耳にするようになった、この国の死亡原因の多くを占める“人間灰化現象”。 その、突如現れた奇妙な現象は年々増加傾向を辿っている。 多くの国民がそれを恐れ、祟りだのなんだのと騒ぐ一方で、『人間として生を受けた者がその命の使命を果たすと灰になり消えていく』、という仮説を唱える者もいた。 昨日まで普通に生きていた人が、なんの前触れもなくふと灰になって、消えていく。 灰化した人間はどうなるの? どうして人間が灰になって、消えてしまうの? 灰になった人間は、もう戻ってこないの、?
深海帝国
むかしむかし、祖父母の祖父母の、またその祖父母の生きていた時代よりももっと前。 この星には、大陸があった。 もちろん今でも大陸は存在する、が、そうでは無い。 陽の光を浴びて、津々浦々に広がる緑。 大空を飛び回る動物や、大地を駆け巡る生き物がそこには存在していた。 一番の不思議は、 自然と、人と、空気が触れ合っていたこと。 今ではまるで想像もできない世界が、この星で確かに存在していたのだ。 そこでは人々は酸素ボンベも、深海スーツも、水圧防止スプレーも使わずに生活していたらしい。 皆が恐れ、目を背けようとするその過去の世界が、私には魅力的に映っていた。 ここではいくら耳を澄ませても、聞こえてくるのは風の音でも、雨の音でもない。 くぐもった泡の音だけ。 私も、この足で大地を走りたい。 私も、この肌で空気を感じたい。 私も、この身体で陽の光を浴びたい。 私も、波の音を聞いてみたい。 そんなこと誰にも言えないけれど、でもいつか、絶対に叶うことはないけれど、そんな世界で生きていたい。