天才だね!
私は小学2年からバスケをしている。
高校もクラブの監督の勧めがあり強豪校に入学した。
そして毎日厳しい練習に耐え、自主練も行い、
1年生の中で唯一レギュラーに選ばれた。
【期待してるぞ。】
色んな人から応援され、期待された。
私は一層気合を入れて練習に取り組んだ。
しかし、そんな【期待】の声は次第に、
【妬み】の声に変わった。
「監督のお気に入りはいいなぁ」
「私も気に入られたぁーい」
「正直邪魔だし、上手くないのにねw」
「先生に媚び売ってるんじゃん?w」
それはレギュラーから外された先輩が
私に向けて毎日のように放った言葉だった。
それでも、私は気にせず練習に取り組んだ。
自主練も朝・夜と1人で取り組んだ。
次第に、先輩からの【妬み】は【嫌がらせ】に変わった。
陰口もさらに増えた。
バスケのシューズの紐を切られた。
練習用のビブスがビシャビシャにされた。
小学生から書いていた
バスケノートに落書きされ、破かれた。
そして毎日のように
【天才】は違うなぁ
そう言われた。
【天才】
この言葉は私に深く深く刺さった。
歯を食いしばって耐えた練習も
日々重ねてきた努力も
この言葉で片付いてしまうような気がした。
私はこの言葉が大嫌いだ。
私の心は折れた。
入部から毎日続けていた自主練も辞めてしまった。
先輩に隠れて毎日泣いた。
毎日の練習が憂鬱になった。
バスケを辞めようか。
そんなことが脳裏に浮かぶ程だった。
ある日、私に声をかけた人がいた。
それは自主練を終えて帰る時に
ひとりで壁打ちをする姿を時々見かける
テニス部の女の子だった。
いつも黙々とひとりで練習をしている姿が印象的だった。
私は、彼女に今までのことを全部話した。
誰かに相談したのは彼女が初めてだった。
彼女なら、この気持ちを理解してくれる気がした。
彼女は私の話を頷きながら最後まで話を聞いてくれた。
そして
「実は、いつも君がひとりで自主練してる姿見てたんだぁ。
それみてさ、すげぇ…。って私、感動しちゃって!
私も頑張らなきゃって思えたんだよぉ!」
「最近見かけないから、気になってたんだよね」
と少し照れくさそうに話してくれた。
曇天の中に光が射したようだった。
自分の努力を見てくれてる人がいる。
自分の努力を凄いって言ってくれる人がいる。
自分の努力は彼女の活力になっている。
それだけで、本当にうれしかった。
そして彼女は
「うーん…天才ね…」
と真剣な顔で考えて
ハッ!と思いついたかのような顔をすると
真っ直ぐ私の目を見て
「言うなれば君は…」
「努力の!」