ななまる
3 件の小説さよちゃんと龍馬さん
○パン屋に勤める花山さよ(22歳) ○長距離トラックドライバー竜崎龍馬(34歳) さよちゃんが勤めるパン屋さんに 買い物に来た龍馬(たつま)さんが さよちゃんに一目惚れをし鈍感である彼女に 真っ直ぐな愛をひたすら注ぐちょっと 怖いお兄さんと言われる龍馬さんとの 〔恋物語〕です。 ○花山さよ▶︎▶︎読み▶︎▶︎(はなやまさよ) ○竜崎龍馬▶︎▶︎読み▶︎▶︎(りゅうざきたつま)
爺ネコ〈物語〉~【中編】~
さて、主家族と出会う前の話をしたところで ここから【中編】といこうではないか。 主家族の中に我を初めて家猫に迎えいれよう そう言った主が我の主人である。 その主人との出会いを【中編】としよう。 ~【中編】~ 我が餌を求めひとしきり歩いた所に 大層、古めかしい家が建っていた。 何か我自身がそそられるものがありそのまま 歩みを進めていくと庭という所に行き着いた そこで見つけた物に我ながら輝いた。 何て爪の研ぎ甲斐がある木なのだろうか。 我を招き入れようとする魂胆ではないのか? そんな罠に我が引っかからない訳があるまい。 高ぶる気持ちを抑え歩みを前へ前へと進める さ、我の爪を研ぐ木へいざ行かん!と 飛びかかろうとした拍子、当時はまだまだ ガキンチョであった主人の妹とやらが 何やらフカフカしておった物に 気持ちよさそうに寝ているではないか。 窓とやらが空いておって我も爪を研ごうと 決めた木よりフカフカしておる物に 興味をそそられてしもうて空いておった 窓から入り我も一緒に寝てしもうたのだ。 どれだけの時間が過ぎたであろうか。 我が目を覚ますと主家族のみなが我を 覗き込んでいるではないか。 我ながら油断してしもうた。 人間というのは我ら野良猫を殺めたいのだ。 嫌われる野良猫であるというのは百も承知。 我の一年と満たない人生もこれまでかと 心に決めたところ、主の妹とやらが一言。 『あなたどこから来たの?可愛いね^^』 我は当時のガキンチョの笑みを忘れない。 今まで我が出会うてきた人間とは違う。 心から我を見て嬉しそうな顔であった事を。 その笑みを見た途端、ふと我の中で、 この家の猫になりたいという気持ちが 大きくなったのだ。 ただ、あまりにも覗き込まれたのが恐ろしく そのまま外に出ていってしもうたのだ。 あのまま主家族の家に居れば良かったものを。 外に出た我は、それからどれほど 歩き回ったであろうか記憶に乏しい。 またしても知らない土地に来てしもうた。 暑苦しい季節というのに移り変わり、 我も飲まず食わず過ごしていた日々が 祟ったのであろうな。 ふと我の視界がおかしく体もおかしい。 今度こそ我の人生もこれまでかと思うた。 薄れゆく遠のく我の意識のなかでどこからか 聞き覚えのある声が遠くから聞こえたのだ。 目を覚ますと、我の主人となるガキンチョの 姉が目から大粒の塊を流していたのだ。 『あれからずっと探してたんだよ! どこに行ってたのよ!死んじゃったかも って思ってたんだからね! もう二度とお外には行かないでね!』 我には何を言うておるのかイマイチ、 分かっておらなんだ。 それから我の首になにやら音がチリンチリン となる物を着けられたのだ。 我の主人は『今日から私の猫になるんだよ。 名前は黒猫だから【くろ】ね!』 それが19年前の主人と主家族と出会いだ。
爺ネコ〈物語〉
我の名は【くろ】と申す。 この世に生まれ早20年。 長生きしていると我がなら賞賛に値する。 野良歴1年と飼い猫になって19年。 主家族と出会う前の話を【前編】と題して まずは語っていこうではないか。 最後までごゆるりとお付き合いくだされ。 ~【前編】~ 我はこの世に生まれ気付くと一人だった。 家族や兄弟ましてや仲間などおらぬ孤独を 感じながら一人、旅へと歩いた。 道中、盛りがついた雄や雌など数多く見かけ 我は『さてなんの戯れとな?』と思いつつも 歩みを止めることはせなんだ。 行く道行く道に怪しい人間から 声をかけられる事が多くなった。 野良猫業界の噂というのは幅が広くてな どんな噂も瞬く間に広がるのだ。 その中でもひっきりなしに聞く噂というのは 【毒入りの餌】を仕掛けた人間である。 人間にしたら野良猫というのは邪魔な 存在と受け取られるのだろう。 我も生まれたくてこの世に生を成した訳ではないのだがな。 その人間というのは明らかに挙動不審だ。 頭のおかしい人間が大半だと我は思っていた。 誰とも関わらず他の猫とも関わらず 毎日毎日、歩き続け雨の日は屋根のある 場所で雨宿りすると人間に怒られ、 夏の暑さにヘトヘトになりながらどこか 涼める場所はないかと彷徨い歩き続け いつからか来た事もない場所に来ていた。 のどかで人間も我の事はあまり 気にとめていないようだ。 野良猫業界の噂によるとどうやら 我の来たここは平和なようである。 他の猫もまったりとしている様子が 見て取れる。 そこで我はここを居住の地にするかと 心に決めたのだ。 それが主家族と出会う一年前の話である。