shin
4 件の小説母さんへ~いつまでも変わらない想い~
宿題したの?とうるさいお母さん。 やったよ!と怒る僕。 ゴミ捨てて来て、とお母さん。 めんど、と愚痴る僕。 行ってらっしゃい、とお母さん。 無視する僕。 何時だと思ってるの!と怒るお母さん。 ため息をしドアを強く閉める僕。 優しく、宿題したの?と聞くお母さん。 やったよ!と叫びながら言う僕。 忙しいから少し手伝ってと思ってゴミ捨てて来てと、お母さん。 苦労も知らずに、めんど、と愚痴る僕。 行ってらっしゃい、といつも見送ってくれるお母さん。 鬱陶しいと思い無視する僕。 夜遅く帰ってくるのは危ないから、何時だと思ってるの!と怒ってくれるお母さん。 お母さんの気も知らないで勝手にイラついて大きくため息をしてわざと強くドアを閉め閉じこもる僕。 他界したお母さん。 お休み。ゆっくり眠ってねと初めて泣きながら優しく声をかける僕。 全部、お母さんが死んでから気づいた事。 もう後悔したって遅い。 これからは頑張って生きよう。 優しく生きよう。 お母さんに対する想いは不変なのだ。
Vorrás Nótos Anatolí Dýsi (略して、VNAD(ヴァンアド))
beginning 第一話 《始》 「全く貴方は、何をやっているの。」 白い髪と瞳。美しいと言うよりも可愛らしい。彼女が呆れた様に言った。そうすると、 「だって、パイナップルを育てるって言いましたよね?」 と、彼女の隣にいた緑色の髪をした彼は答えた。 「そうだとしても、なんでうちの庭にこんなでっかい木があるのよ!」 少し叫びながら彼女は言う。ざっと15mはあるだろうか。太い幹の木が広い庭の中に自己主張激しく立っている。 「良いよって言いましたよね?だから育てているんです。」 彼は、当たり前だと言わんばかり顔を眉をひそめた。再度彼女が呆れる。 「はぁ。話が通じないわね。」 ため息をつく。すると急に警報がなった。彼女は真顔になる。どうやら真剣な話な様だ。 「ノースアナナス。今、私達の領地に魔物が入り込んだみたい。」 ノースエンペラー 彼女は北の領地を統べる者。北の帝王であった。ノースアナナス 彼女の部下である。彼は過去に彼女に助けられここで訓練し暮らしている。アナナスとはギリシャ語でパイナップルという意味である。由来はパイナップルが好物だからだ。 「了解です。白雪様。いや、ノースエンペラー。」 彼女の名は白雪(しゆき)と言う。一方彼の名は優司(ゆうじ)と言う。優司は爆発的な速度で走り去った。 「他の帝王はどうかしら。連絡しないと。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「「「きゃー!!!」」」 住民の叫びが聞こえる。優司は住民の叫び声を聞いてそこに向かう。着いた先には様々な大量の魔物がいた。だが先頭に明らかに魔物のボスの様なものがいる。凄まじい威圧感を感じる。建物を破壊しながら進行していた。 「……っ。酷い有様だ。しかもこの量の魔物。特にあの先頭の魔物、『ヒュドラー』だ。何故今この時期に。」 蛇の頭を沢山もつ魔物、『ヒュドラー』。頭によって攻撃する属性が違う。又全ての頭を破壊及び切断をしなければ攻撃しても直ぐに再生されてしまう。討伐するには本当に厄介な魔物と言える。 「これは建物を破壊する覚悟で技能(スキル)を発動するしかない。」 優司の手が緑色に光りパイナップル型の手榴弾の様なものが現れる。 「せぇぇい!」 手榴弾は魔物の集団へと放物線を描きながら放り込まれ針を放出しながら勢いよく爆破する。 この世界には技能(スキル)という能力がある。技能(スキル)は『典型系』・『論理系』・『特異系』がある。『典型系』は物理攻撃や魔法では無いが魔法とよく似た技能(スキル)である。『論理系』は名の通り論理を扱う攻撃をする技能(スキル)。例えば〇〇しなければ〇〇できないなど。『特異系』は特殊な攻撃や防御、回復、干渉などをする技能(スキル)だ。『典型系』には更に『破壊型』・『防御型』・『威力型』が、『論理系』には『強制型』・『条件型』・『理論型』が、『特異系』には『支配型』(又は操作型)・『具現型』・『強化型』がある。又、魔法と言ったがそれは技法(テクニック)と呼ばれるもので技法(テクニック)には『魔法』・『聖法』・『霊法』(又は呪法)がある。『魔法』発動には『魔力』、『聖法』発動には『聖力』、『霊法』(又は『呪法』)発動には『霊力』(又は『呪力』)がいる。そこが技能(スキル)との最大の違いだろう。技法(テクニック)は『魔力』などが必要な変わりに技能(スキル)より強力だ。 技能(スキル)や技法(テクニック)をまとめて能力(アジリティ)と呼ぶ。技能(スキル)と技法(テクニック)には強さの段階があり技能(スキル)は《基本技能》(ベーシックスキル)・《強力技能》(ストロンガースキル)・《究極技能》(アルティメットスキル)・《法則技能》(ルールスキル)・《混沌技能》(カオススキル)・《極限技能》(リミットスキル)がありそして特異(ペキュリア)と呼ばれる技能(スキル)《独創技能》(オリジナルスキル)と言うのもある。技法(テクニック)も同様である。《独創技能》(オリジナルスキル)や《独創技法》(オリジナルテクニック)は名の通り元々ある技能(スキル)や技法(テクニック)と違い個人が生み出した技能(スキル)や技法(テクニック)のことだ。この《独創技能》(オリジナルスキル)や《独創技法》(オリジナルテクニック)が最強だとされているが作り出せる者は100年に一回に居るかどうかなのだ。優司が今放った技能(スキル)は《強力技能》(ストロンガースキル)の『典型系』、『破壊型』である『菠蘿爆弾』(パインナップルボム)である。爆破しほとんどの魔物は倒れたが『ヒュドラー』はまだ全ての頭を破壊しきれていない。『ヒュドラー』が再生しようとした瞬間に優司は違う技能(スキル)を発動する。 「させない。『北の菠蘿』(ノースパイン)」 そう言った瞬時に優司の周りからパイナップルの幹が生え『ヒュドラー』に絡む。刹那、パイナップルの幹についているパイナップルが小さく爆破すると緑色の雷が走り『ヒュドラー』は一瞬にして死んでしまった。 「白雪様……ノースエンペラーに伝えないと。」 こうして無事魔物を倒した優司は白雪の所へと走って言った。 ・・・・・・・・・・ 「最近、魔物の活動が活発だわ。皆で調査に行く。」 北の帝王(ノースエンペラー)雨叉 白雪(うさ しゆき) 「早く調べないとですね。」 北の菠蘿(ノースアナナス)野薇 優司(のら ゆうじ) 「とっとと潰しゃぁ良いじゃねぇか。」 南の帝王(サウスエンペラー)永不 玲兜(えいぶ れいと) 「そう言う思考やめてください。永不様。」 南の機械(サウスミカニ)和園 綾(わえん りょう) 「ふふ。僕は今行っても準備してから行っても良いよ。」 東の帝王(イーストエンペラー)亜覇理 尽世(あはり つせ) 「私もどちらでもOKですが準備してからの方が安全とは思います。」 東の虚言(イーストライ)詞演妄 麗那(しのも れいな) 「自分は今すぐ言った方が良いと思うけどなぁ。」 西の帝王(ウェストエンペラー)視反 葉対(しは はつい) 「私は葉対様に従います。」 西の悪魔(ウェストディアボロス)夜狗 牙瑜(やえ きゆ) 北南東西、全ての帝王(エンペラー)とその部下が集まった。彼女らは今、意見がバラバラだがいつもなんだかんだで意気投合しておりとても仲が良いと言える。なんせ帝王(エンペラー)の四人全員、幼馴染なのだから。彼女達の正体を知れば誰もが驚くだろう。何故なら彼女達は中学生でこの四つの国を治め支配者なる帝王(エンペラー)となったのだから。彼女達の容姿は幼く見えるが容姿の通り子供なのだ。年齢は15。早生まれを入れて14。中3である。その年で国を治めるとなると報道陣が飛ばない訳が無い。が、彼女達が通っている学校と『元々治めていた帝王(エンペラー)』によって揉み消された。元々治めていた帝王(エンペラー)と言うのは今、彼女達が治めている国を元々治めていた帝王(エンペラー)であるきっかけで帝王(エンペラー)を交代することになった。 「……多数決にしましょう。今すぐ行きたい人は?」 白雪がそう言うと優司・玲兜・葉対・牙瑜が手を上げた。尽世は中立なのでカウントしない。 「私は今すぐ行った方が良いと思うわ。危険なこともあると思うけど一刻も早く被害を抑えたい。さっきも優司が『ヒュドラー』を倒してきたところよ。」 「うん。そうしようよ。僕に異論はないよ。」 「ああ。それが良い。」 「自分もそれで良いよ。」 尽世が頷くと玲兜、葉対も肯定する。自分達の上司が決めたことなので部下達に異論は無い。皆が今現在話あっていた国の中心の『央議館』を出ると早速魔物の群れを探し出す。ただ最初に魔物が発見された森を探すとなると相当大変であり時間が掛かる。そこでまたもや優司の技能(スキル)を発動する。 「『緑の声』(フロロースフォニ)」 この技能(スキル)は植物の声が聞けると言う技能(スキル)である。これで魔物の群れ、発生源を突き止める気だろう。この声は技能(スキル)発動者にしか聞こえないがこれはまた別の技能(スキル)『通信』(シグナル)で解決できる。『通信』(シグナル)は簡単に言えばテレパシーだ。相手に言葉で言わなくても会話ができる。 「こっちです。」 優司が皆を誘導する。と、魔物の群れが見えてくる。ありえないほど大量にだ。しかもあろうことか『共食い』をしているのだ。 「キモっ!」 「ええ。なんでこんな事を……」 玲兜が叫ぶと白雪も同調する。確かに気持ち悪い。大量の魔物が共食いをしているとなると嗚咽感が湧くだろう。本来、凶暴な魔物を除き魔物というのはこちらが攻撃しない限り大人しく冷静である。なんなら働いたりペットとして飼われている魔物もいる。だがひどく空腹の時や『酔狂期』と呼ばれる時期には人に限らず生物を殺す。特に『酔狂期』は生命を殺したいと言う衝動に駆られ殺していると言う。だがしかし魔物は共食いはしない。絶対と言って良い程にだ。理由として殺す価値がないからだ。空腹でも食べられる魔物は少なく、食べられても小部分・少量なので殺すよりかは増やした方が良いと本能的に魔物は感じ取っているのだ。そんな魔物が共食いをしているとなると異常というレベルではない。もはや『災厄』レベルだ。 「……これは…。」 尽世が珍しく顔を顰める。 「どうしたの?」 葉対が尋ねる。 「うーん。もしかしたらの話だけど。」 「いいぜ。聞かせろ。」 言いにくそうな尽世に玲兜が促す。 「多分あれは『災厄の魔王』の復活だよ。」 ・・・・・・・・・・・・ 「『災厄の魔王』って授業でやったあの『災厄の魔王』ですか?」 麗那が尽世に聞く。どうやら『災厄の魔王』に関しての事は授業で習ったらしい。 「うん。脅威度でトップクラスの『災厄』(ディザスター)クラス。その『災厄』(ディザスター)クラスの代表格が『災厄の魔王』プルシェ・ヴィアルド。ヴィアルドは封印と復活を繰り返している。しかも復活する度に強くなっているんだ。その復活条件が殺害が起きた場所、そして大量の魂。」 尽世が『災厄の魔王』ヴィアルドについて説明する。そしてその復活条件がまさに今の状況である。それが何を意味するのかこの場にいる全員が理解していた。 「え、今すぐ逃げないとじゃないですか?!」 「優司、私達は様々な事があろうと逃げずに戦うのよ。それが私達国を治める者としての使命よ。それから逃げる事は許されないわ。」 「そう、ですね。わかりました。」 決心したように優司が頷く。白雪は幼いながらにして帝王(エンペラー)としての使命を全うしこなしているようだ。実に大人びていると言える。刹那、唐突に周りの空間が白く輝く。魔物はすでに殺され尽くしており山ほどの死体は消え魂が具現化され集う。圧倒的な威圧感、禍々しい覇気(オーラ)。間違いなく『災厄』(ディザスター)と呼べる。 「クハハハハ!この私の復活を目視していたのは貴様らか。ちょうど良い。この私の糧としてやろう。『死線』(デットライン)」 赤い線がヴィアルドを囲むようにして現れる。 「『反射斬』(リフレクションスラッシュ)!」 綾が攻撃する前に倒そうとして技能(スキル)を発動する。細かな斬撃が大量に放たれ斬撃は不規則的に跳ね返りながらヴィアルドに襲いかかる。この斬撃の正体は電磁力だ。物理系の技能(スキル)はまず効かない。炎が放たれようとも無傷で攻撃が相手に当たる……はずだった。だが線の中に入った瞬間に消え去った。 「……っ!消えた?!」 綾が驚く。 「これが『災厄の魔王』の力ね……線の中に入ると攻撃は消え人が入ると一瞬にして死んでしまう。そう言う事でしょうね。」 「ご名答。全くその通りさ。さてどうする。」 「決まっているわ。あなたを倒す。『雪』(スノー)」 白き雪が舞い降りる。ゆっくりと散っていた雪は勢いを増し積もっていく。触れたものを凍て付かせる雪だ。白雪達以外を凍り付かせ赤い線の外側もたちまち凍っていく。 「これは……馬鹿な。こんなガキが《法則技能》(ルールスキル)だと?と言う事は貴様ら『世変者』かっ!」 先程の余裕が消えヴィアルドは叫ぶ。 「どうでも良い。死ね!爆(ロー)!」 ヴィアルドの周りが物凄い音を立て爆破する。 「鬱陶しい!まさか『世変者』だったとは。私は見くびっていたようだ。この様なガキが『世変者』となれるとは思いもしなかった。いやそれほどの実力を持っていると言う事か。だがまだまだだ。『世変者』としての力を出しきれていない。」 爆破をもろに受けるもヴィアルドは無傷であった。そして繰り返し放たれる『世変者』と言う単語。それは称号(タイトル)と言われるもので称号(タイトル)を与えられた者は《称号技能》(タイトルスキル)を獲得する。『世変者』は称号(タイトル)の中で最強格と言われている。無論、《称号技能》(タイトルスキル)もトップクラスに強い。そして白雪達、彼女らは 「知らないなら教えてあげるわ。私達は『方位の都』の帝王(エンペラー)と同時に『世変者』の集団『四八方絶』(カテフシンシ)よ。」 彼女達の正体は幼き帝王(エンペラー)だっただけではなく最強格の集まりだったのだ。 「クフフフ。威勢がいいな。だったらその威勢と共に消え去れ!『災厄の厄日』(パンドラ)」 空間が紅に染まる。徐々に広まっていき白雪達に襲い掛かる。 「……っ!!」 その技能(スキル)の攻撃に『世変者』である白雪達でさえ死を覚悟する。その時だ。 「貴様がな。『失せろ』」 彼が言葉を発した刹那、技能(スキル)の効力は消え元の空間に戻った。彼は闇を思わせる姿をしていた。何故ならば、髪も瞳も闇色であり服装までが闇色の格好であるのだ。彼が急に現れヴィアルドの技能(スキル)を一瞬にして消した事にヴィアルドそして白雪達も驚いていた。 「誰だお前は?!」 「我か?我は『闇の始祖』にして『全てなる根源』、エターナル・ブラックだ。」 彼は名乗り堂々とした笑みを浮かべる。それは挑発するような笑みとも思わせる。 「エターナル・ブラックだと……?ま、まさか!」 「ククク。我の正体を知ったところで遅い。」 ブラックは手を前に突き出すと手から黒色の雷が走り球状のエネルギー体の様なものが出現する。 「滅べ。『闇闇気力砲』(ブラックエネルギーキャノン)」 漆黒なるエネルギー体はヴィアルドの元へと放たれる。ヴィアルドが急いで障壁(バリア)を出現させるが虚しく散っていきヴィアルドに直撃する。ヴィアルドの周りの空間ごとヴィアルドは消滅した。その余波で白雪達も吹っ飛びそうになる。 「「……」」 白雪達は今起こった出来事が頭に追いついていないようだ。黙り込んだまま消滅した森を見つめていた。それを壊すようにブラックが話しかけた。 「おい、貴様ら。」 「え、ええ。何かしら。」 「まぁ、良い。また今度話そう。我にまた会いたくなったのならば呼ぶが良い。」 そう言ってブラックは消えてしまった。瞬間移動だろうか。白雪達は最後の最後まで理解が追いつかなかった。 次回 闇闇と帝王(ブラックアンドエンペラー)↓ ※闇闇はあんやみと読みます。
自己紹介?そんなの知らねぇ。虚しいだけ。
どうもShinです。小説家を目指している小学生〜大学生の学生です。あ、数学者や料理人も目指しています。元々厨二病って事でファンタジー小説を書いていました。IQテストしたら200だった。嬉しすぎて笑っちゃう。※これは自己紹介ではありません。
「虚しい無は救われる」
「虚しい無は救われる」 第一話 虚しい日常は変わり出す 4月17日 暖かい風が髪を靡いた。その髪は美しい滅紫色だった。彼女は僕と一緒に学校の屋上にいた。そして叫んだ。 「ピースsin!!!」 その言葉は僕が彼女に最初に教えた数学だった。 ・・・・・・・・・・・・・ 「あー怠い。」 僕の友達の鈴木達也が僕と一緒に学校へ登校する途中そう呟いた。 「・・・」 僕は特に何とも思わなかった。だからとりあえず無視した。だがどうやら達也はそれが気に入らないらしく嫌そうに呟いた。 「心蘭っていつも無口だよな。」 僕の名前は白咲心蘭(しろざき しんら)と言う。達也からは高校の入学式で自己紹介をしてからずっと呼び捨てで呼ばれた。それを『一般人』は失礼と呼ぶらしいが僕に取ってはどうでもいい。だから僕も達也の事を呼び捨てで呼んだ。今日は夏休みが終わり、授業が再開する日である。達也以外にも憂鬱そうに登校する生徒が見える。いつもの学校生活がまた始まるだけなのにどうしてそう憂鬱なのか。僕には分からない。いや、『高校生及び学生の常識』から考えると当然なのか。だから僕も答えることにした。 「どうでもいいと思っただけだ。あと、僕も憂鬱だぞ。」 「いやいや、どうでも良かったら憂鬱って言わないだろ。嘘つくなよ。」 どうやら見抜かれたらしい。結構一緒に居るのもあるが達也は勘が鋭い。だが、勿論全てが分かる訳じゃない。まぁ、達也は嘘発見器みたいなものだ。前に試してみたが嘘と事実を混ぜて言ったら「うーん」と言い困惑して考えていた。本当に嘘発見器なんじゃないかと思えてくる。 「てかさ、心蘭。知っているか?今日、うちのクラスに転校生が来るらしいぜ。」 「そうか。」 僕と達也は同じクラスだ。つまり、面倒な事になるって事だ。転校生が来るとなるとクラスが騒がしくなるからな。僕は騒がしくされるのは嫌いだ。読書の邪魔になるからだ。何故、転校生が来たぐらいで騒ぐのか理解出来ない。いや、この場合僕がおかしいのか。だが、仕方ない事なのだ。嫌いなのだから。 「本当に興味なさそうだな。」 「興味ないからな。」 「たく、そんなんだからクラスで浮かれんだぞ。」 「どうでも良い。」 本当にどうでも良い事だ。クラスで浮かれる事など当に慣れている。小学生の頃からこうなんだから。今更そんな事言われても変わるつもりはないし、『変われない』だろう。『他人からも自分自身からも』。 「そう言う口調をしていると辛辣だって誤解されるぞ。」 「確かに誤解されるかも知れないがそれもどうでも良い。」 そう冷たく言い放った。 「口癖かよ。お前そんなどうでも良いって言ってたら人生楽しく暮らせ無いぞ。」 「僕には数学がある。」 「あんな数式書いてどこが楽しいんだか。」 「理解できる者だけが楽しめる世界だ。」 昔から数学や科学、哲学、読書が好きだった。好きになったきっかけは僕が幼稚園児だった時だ。テレビを見ていてチャンネルを変えたら教育番組がやっていた。それはカオス理論についてだった。バタフライエフェクトや自己相似など見ていて飽きないものだった。幼稚園児の僕がカオス理論を理解できるかと言うと、理解できた。親が驚きIQ診断テストを僕に受けさせると結果はIQ300だった。あのアインシュタインを上回るIQだった。別にそのことを自慢する気は無かったし驚きもし無かった。ただただ僕は数学の虜になった。それから幼稚園にも行かず図書館に通い毎日数学を勉強した。小学生や中学生の算数・数学は簡単だったから参考書を一冊読んだら一回で全て覚えてしまった。どうやら完全記憶能力を保持していたらしい。だから高校の数学も全て覚えてしまった。大学の数学を勉強しようと思ったらいつの間にか小学生になっていた。小学校は幼稚園と違って休む訳に行かないから僕は学校に通いながら数学を勉強した。小学校の算数は勿論他の教科も完全記憶能力を使わずにマスターできた。そしてある日の算数の授業で先生から質問された。 「皆んな、1+1は何か分かるかな?」 皆んなは2と答えて先生は正解と言ったが僕は否定した。 「先生。確かに1+1は2ですがそれだけではありません。1+1=0と言うのもあります。」 「な、なんでかな?」 先生が動揺していたが僕は構わずに言い続けた。 「正確に言えば1+1=0(MOD2)です。MOD2と言うのは2で割れると言うのを表しています。」 黒板に数式を書きながら説明した。 「1+1=2と言う解に対して2と言う和は、あ、和と言うのは足し算の解の事です。解と言うのは答えの事です。引き算は差、掛け算は積、割り算は商と言います。足し算・引き算・掛け算・割り算の4つの計算方法を総称して四則演算と言います。さて、話を戻すと1+1=2と言う解に対して2と言う和は2で割れるので商が0になります。なので1+1=0(MOD2)になる訳です。また、1+1=11又は1,1という解もあり得ます。何故なら1km+1m=1km1m又は1,1kmとなるからです。この事から1+1の解は証明できれば答えは何でも良いと分かる訳です。即ち1+1=∞となります。」 「は、はー。」 僕は数学の話をすると止まらなくなり数学を語ってしまう。その為、このように相手を困惑させてしまう。それから、僕はクラスから浮いた。だが、僕は構わず過ごした。そしてテストがある度に難しく答えるので先生からはもうテストを受けなくて良いと言われた。更に僕は知能だけではなく身体能力や音楽的にも道徳的にも恵まれた。様々な習い事にも行っていたと言うのもあるが僕はあらゆる才能に恵まれていた。親は神童だと周りに自慢した。僕は別に自慢なんかしなくて良いのにと言ったが親は 「何言っているの。あんたは恵まれた子よ。親にとってこれ程嬉しい事は無いのよ。」 「そうだぞ。心蘭は天才なんだ。」 そう言われた。小1にして天才と僕の親にも先生にも他の親にも言われ続けた。だがー 「おーい。聞いてんのか?」 昔の事を思い出している最中に達也から声をかけられ思考が現実に戻った。 「悪い。考え事をしていた。何だ?」 「転校生が女子って事だよ。」 達也がワクワクしながら言って来た。心底どうでも良いんだが。 「さっきよりもどうでも良くなった。」 「なんでだよ。可愛いって噂だぜ?」 「僕が人を好きになった事が無いって前に言っただろ。数学に夢中だったし。」 「うーん。本当かぁ?」 達也が悩んでいる。何故ならこの事は『本当であり又嘘』であるから。昔から僕は数学が大好きだったから人との付き合いより数学の勉強を優先した。だから人を好きになった事が無い。相手がどれだけ優しいだろうが可愛いだろうが数学にしか興味がないからどうでも良かった。でも一番の問題は、理由は僕が小3の時に起こった事件のせいだろう。まぁ、それも『どうでも良い』。 「本当だ。」 「まぁ、そう言う事にしてやるよ。」 そうこうしている間に学校に到着した。1−3の教室に入り朝の支度をする。準備が終わり読書をしていると達也と達也の友達との会話が聞こえてくる。転校生が女子とかその子が可愛いだとか内容は心底どうでも良かった。読書に集中したかったが達也達の話し声が大きくどうしても聞こえてしまう。女子達もその事で話しており男子の様にはしゃいでいる。うるさいから静かにして欲しい。そんな事を『考えた』。『思った訳じゃ無い』。 「はーい。皆さん朝のホームルームを始める前に転校生を紹介します。」 先生が入って来た。そしてその隣には綺麗な滅紫色の髪をした女の子が立っていた。 「皆さん宜しくお願いします。」 その子が礼をするとクラスの皆んなが歓声を上げた。うるさい。 「めっちゃ可愛い!」 「彼氏いるの?」 次々と質問が飛び交う。それを先生が止める。 「はいはい、皆さん自己紹介をさせてあげて。」 やっと歓声が止まった。先生に心の中で感謝をしているとその子が自己紹介を始めた。 「肆星 優衣(つらぼし ゆい)と言います。趣味はピアノを弾く事と歌う事です。」 「まじ?!すご!」 又歓声が響く。本当に飽きないのか。全く。そして先生が驚きの発言をした。 「じゃあ肆星さんは白咲さんの隣の席に座ってね。」 「はい。分かりました。」 まじですか。先生。さっきの感謝を返してください。そしてその子の席を直ちに変えてください。そう願っても無慈悲な事に現実は変わらない。そしてその子肆星、さん?が僕の隣に座って来た。 「宜しくね。」 声を掛けてきた。返せば良いのか?。僕はとりあえず宜しくと返す事にした。 「嗚呼。宜しく。」 「なんか機械みたいだね。面白い。」 笑われてしまった。そんなに面白いのか。本当に理解出来無い。と言うか何故、男子に睨まれているのだろうか。うーむ。俗に言う嫉妬と言う奴か。だがどこをどうしたら嫉妬するのか理解出来ないな。いや、もしや肆星さんと隣の席になったからか。だとしたら僕を恨まないで欲しい。僕だって嫌なんだから。それからSTが終わり一限目の授業の準備を始めた。 「一限目は物理か。」 数学を学ぶ上で科学などの理系は専門家レベルまで学んでいる。又、哲学も好きだ。論理を構築し思考する。その課題が解けた時の達成感が又良い。と言うことで高校生レベルの理科は授業を受けずとも容易にクリアできる。無論、受けるが。高校入学の面接で僕の事を話してIQテストの結果表や数検や漢検、歴検の証明書を出したら理系だけではなく全ての授業を受けなくても良いと言われたし是非入学して欲しいと言われた。好きな事を勉強して良いとも言われた。だが僕は『あえて普通に授業を受けている』。 「ねぇ、物理の教室ってどこかな?教えてくれない?」 肆星さんが話しかけて来た。 「いやいや、俺が教えますよ。」 「いや俺が。」 「僕が。」 男子達が寄って来た。肆星さんにも是非そうして欲しい。僕は目立ちたく無いし面倒事に巻き込まれたく無い。 「私は白咲さんにお願いしてるんだよ。」 何故だ。解せぬ。僕じゃなくて他の人で良いだろう。肆星さんがわざとなのか頬を膨らませて男子達に言った。肆星さん自らそう言ったので男子達は狼狽えた。本当にやめてくれ。 「はぁ。分かった。着いて来て。」 「ありがとう。」 嬉しそうに微笑んだ。 それからだ。僕の日常が狂い始めたのは。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 「いやぁ、難しいね。高校の理科は。」 授業が終わり肆星さんが又話しかけて来た。何度も言う。やめて欲しい。 「そうか。僕は簡単だと思うけどな。」 「凄いね。授業の時も課題とかすぐ終わってたし。」 「理系に関しては専門家レベルまで終わっている。」 「えぇ!本当に天才じゃん!」 そう叫ぶな。僕にとっては当たり前なんだから。別に凄い事じゃないし。男子達の視線が痛い。達也も羨ましそうに見ていた。いやいや、全然良くない。僕の立場になってもらいたい。 「僕は天才でもなんでも無い。だから叫ぶな。」 「もう。辛辣だね。」 「『思った』事を言っただけだが、、、」 達也が言った通り誤解されたな。別に良いのだが。そう話していると男子達が叫んで来た。 「おい、白咲。肆星さんに失礼だろ!」 「そうだそうだ!」 そう言われてもな。僕はもともとこうだし。今更変えようとは思わない。考えようともしない。と言うか肆星さんに言って欲しい。僕に構うなと。男子達が怒っているのを達也が止めに入ってくれた。本当に感謝だ。やはり他の男子と違って優しい。 「お前ら肆星さんがそうしているんだからいちいち文句を言うなよ。あと、心蘭は元々そう言う性格なんだから。」 「達也は羨ましく無いのかよ。」 「羨ましいけどしょうが無いじゃん。」 そう達也が言ってくれたお陰で男子達は去って行った。ついでに肆星さんにも説得して欲しい。だが勿論願いは届かない。実に儚い事だ。 「えーと、鈴木さんだっけ。ありがとうね。」 「達也で良いですよ。」 「じゃあ達也くん。私も優衣で良いよ。宜しくね。」 「宜しく。優衣。」 二人が微笑む。なんかラブコメみたいな雰囲気になって来た。逃げよう。しかし逃げようとした時に肆星さんに声を掛けられた。良い加減にして欲しい。僕を巻き込むなと何度も言ったのだが。いや、直接言った訳じゃ無いが。 「ねぇ、白咲さんも心蘭くんで良いかな。心蘭くんも私のこと優衣って呼んで。」 駄目に決まっているだろう。と言うかさりげなく心蘭って呼ぶな。いやでもここで断ったらどうなる?もっと面倒な事になるだろうな。 「分かった分かった。宜しく優衣。」 「うん!宜しくね!心蘭くん!」 駄目だ。やっぱり眩しいな。まるで『あの人』の様だ。