にゃむ。

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にゃむ。

19さい

手紙

私ね、手紙が嫌いなの。 手紙ってずっとその人が大切にしようと思えば永遠に残るものじゃない? そんなのわたしいやよ。 手紙を書いてる時なんていっときの感情で書いてるのに。 感情なんですぐ変わるわよ。 人間だもん。 私、だから全てスマホで書くことにしてるの。日記も、相手に好きだって伝えることも。 削除できるからね。 言葉が形として残るのはもう懲り懲りよ。

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“親孝行“

母さん、父さん、ごめんなさい。 両親は僕にどんな子に育って欲しかったか。どんな人生を歩んで欲しかったか。 最近この歳になって考えることがある。 32歳。独身。 普通のそこら辺にいるサラリーマン。 なにか優れている訳でも、劣っている訳でもない。 そんな僕だけど、1つ自慢したいことがある。 32年間病気一つもなく、健康に育っていることだ。会社も学校も一回も体調不良で休んだこともサボったこともない。 学生時代、よく学校を休んでいるというかサボっている奴がいた。 そいつにこの前街中で後ろから話しかけられた「佐藤…?だよな?」 大して仲良くもない遊んだこともないのに話しかけられて驚いた。そのまま無視することもできたが、僕はなんとなく会話を続けた。 「皆川か?元気だった?」 すると続けて「え!元気だよー!そっちは?」やけに馴れ馴れしいと思ったが、「元気だったよ〜」と気にせず答えた。 「お前、ほんとに変わってねーな。今何してんの?」 「普通に食品会社の営業部で働いてるよ」 「へー…お前まだ結婚してねーべ?」 と、図星を突かれて少しイラッときたが「うん。まだしてないよ。」と落ち着いた声で言う。 「当たった。俺、もう子供いるんだよ。ほら見ろ見ろ可愛い〜だろ〜」とスマホの待ち受け画面を見せてくる。 そこにはまだ2歳くらいだろうか。可愛らしい女の子が写っていた。 「じゃあ、結婚したんだ?おめでとう」と本当はどうでもいい気持ちで聞く。 「おう!キャバでさ、出会ってさ〜ガチ可愛くてナンパしたら落とせてさ〜」 なんでこんな奴に子供と奥さんがいて、真面目に生きている僕にいないのだろうと心の中で思う。 「俺さ〜学生時代やばかったじゃん?サボってばっかで未成年飲酒とか喫煙で何回も担任にも親にも迷惑かけてたけど、なんか今こう家庭を持つことで安心させられたかなーって。まあ、親孝行ってやつ?」と照れくさそうに言う。 そして、思い出したように「あ、やべ、保育園に迎えに行く時間だわ。じゃあな、佐藤」と自分の人生を満足そうに語って保育園へと走っていった。 正味、あんなやつの人生羨ましいとも何とも思わないが「親孝行」という言葉だけが強く心に刺さった。 最寄り駅から徒歩15分アパートの2階の角部屋。そこが今の僕の家だ。この家には両親以外誰も来たことがない。誰かを呼ぶつもりもないが、部屋は比較的綺麗にしている。トイレやお風呂の掃除も週末には必ずしているし、洗濯物も毎晩必ず洗い、干している。 いつも通り夕飯を簡単に済ませ、風呂に入り洗濯機を回す。そして僕の唯一の趣味である読書をし、眠くなるまでひたすら読む。 これが僕のルーティン。つまらないと思ったことも虚しいとも思ったこともないが、今日は少し、アイツに会ったせいか心がモヤモヤする。読書も集中出来ず、布団で仰向けになる。 天井についてる電気をつけるための紐を眺める。「親孝行…なんも出来ていないなな。」誰もいない部屋に1人で呟く。「親孝行してる?」なんて聞ける友達もいないため、何が親孝行というものなのか分からないが今日アイツが言った「家庭を持つ」というものが"親孝行" というものであるなら、僕は一生果たせないだろう。そんな僕を両親は、どう思っているのだろう。今まで自分の人生なんてご飯を食べられるのであればそれ以外どうでもいいと思っていたが、両親はこの僕の人生を望んでいたのだろうか。 週末、ふと両親に会いたくなり電車と新幹線を使い実家に帰省した。 母は突然帰ってきた僕をみて目を丸くしながら「突然どうしたの、何かあったの?」と聞いてきた。その声は少し期待を込めたような明るい声をしていた。 「なにかなきゃ、帰ってきちゃいけないの?」 はあ。こういうところだ。僕の悪い癖は。 素直に“ただいま“といえばいいのに。可愛くない息子だと思っているだろう。 父も、僕のことをみて少し驚いていたが 「なんだ、誰か来たと思ったらお前か。まあ、上がれよ」と言ってくれた。 「寒かったでしょう。」と母はすぐ卓袱台に暖かいお茶を出してくれた。 上着を脱ぎ、腰を下ろし、胡座をかく。 正面に座っている父は、こっちを見向きもせず、新聞に集中している。 こちらの視線が伝わったのか 「最近はどうなんだ。元気にやってるのか。」と話し始める。 「まあ、ぼちぼち。」 「そうか。」 と短すぎる会話が終わり、何も音がない空間が生まれる。その空間を壊すように母が「お父さん、こんな時ほど新聞やめて何か話してくださいよ。」という。少し空気を読み、僕は「父さんと母さんも元気にしてた?」と下を見ながら言うと、「元気よ。なーんもやることなくて、退屈だったからあなたが来てくれて嬉しいよ。本当はお父さんもこんな感じだけど嬉しいのよ。」と昔から変わらない優しい声で話す。そんな空気感がなんだか耐えられず、予定より早く「………。父さんと母さんこれで旅行行ってきなよ。」と卓袱台にチケット2枚を置く。 北海道行きのチケットだ。小さい頃新婚旅行で北海道に行ったと話してくれた記憶があるため、行先は北海道にした。 少し沈黙の空間が流れた後、「こんなのいいのに…」と申し訳なさそうな感じで母がチケットを手にしながら言う。父は相変わらず何も話さないが、目は確かにチケットの方に、興味を示していた。「父さんと母さん、ごめん。俺こんなのしか出来なくて、なんも“親孝行“らしいこと出来てなくて。」と、僕が言った後に続けて母が何か言おうと口を動かそうとしていたが僕は言わせまいと、「本当は赤ん坊の顔とかみたいよな。安心させてやりたいけど忙しくて。こんなのしか出来ないけど行ってきてよ。」と口をモゴモゴしながら言う。 それ以上は、何も言わずに母が立ち上がり、チケットを持ちタンスの棚にしまいながら「ありがとうね。」とこっちを見ながら微笑んだ。母は、台所に向かいながら 「今日は、泊まっていくでしょ?」というが、僕は、「仕事溜まってるから帰るよ」と適当に嘘をつき、立ち上がる。本当は泊まっていくつもりだったが、少しこんな自分が恥ずかしいと思い帰ることにした。母は、止めてくれたが、昔からの素直じゃない頑固な性格が出てしまい足早に家を後にした。 夜の22:30分を過ぎた頃に最寄り駅に着く。 家に帰って布団を敷き、ダイブする。 「こんな息子でごめん!!」と枕に叫びたかったが、母が帰る前に急いで持たせてくれた手作りのコロッケを思い出す。 「昨日ので悪いけど良かったら食べて。」と5個も持たせてくれた。こんなに1人じゃ食べないのにと思いながら、コロッケをオーブントースターで温め直す。その夜のご飯は、ここ最近で1番美味しかった気がした。 それからというもの、相変わらず“普通“ のなんも変化がない生活を送ってた時、1つ郵便物が届いた。かなり大きいダンボールの上に書かれた送り主の名前は母だった。 社会人2年目まで、毎月仕送りが送られてきてたがさすがにこの歳になると送られてこなくなった。カッターでダンボールを切り中を確認すると、そこには沢山の食品が。食品を1つ1つ丁寧に出し、ダンボールを片そうとした時、1枚の封筒が出てきた。中を見ると、母の字で「楽しかったよ。素敵なものをありがとう。あとね、私たちにとって一番の親孝行は貴方が、元気に育ってくれればそれで十分なのよ。ずっと元気に育っててくれてありがとうね。またいつでも帰ってきてね。」と書かれてある手紙だった。少し胸が熱くなり、ぎゅと手紙を握るとなんだか厚みがある。手紙の後ろにもう1枚何かあるようだった。 手紙をめくると、そこには母と父が写っている北海道で撮ったであろう写真があった。父は、歯も見せずに腕組みをしているが、そんな父が、なんだか愛おしく思えた。そして、なんとなく写真の裏をみてみると、小さな尖った字で「ありがとう。」とたった5字の父の愛が書かれていた。 それでも僕は「ごめんなさい。」という感情しか湧かなかったが、いつまでも元気でいよう。とそう思えた。

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統合失調症

僕の彼女は「統合失調症」という精神疾患を患ってる。 彼女には幻覚が見えたり幻聴が聞こえたりするようだ。 深夜2時頃だろうか。 寝ていたはずの彼女が突然起き、「うう…あっちいって、うるさい だまって」と言っている。 「大丈夫だよお薬飲もうね」そういつものように落ち着かせ、また彼女は眠りに入る。 この生活を僕たちは来月で3年間繰り返している。 翌朝 目が覚めると彼女の姿はキッチンにあった。 「あ、柊くん起きたん? おはよー」 彼女は、自分が幻聴で魘されていたことも 幻覚が見えてたことも翌朝になると忘れてしまうようだ。 いや記憶から消しているだけかもしれない。 だから僕はあえて昨晩のことも病気のことも自分からは聞かないようにしている。 「おはよう。今日は卵焼き上手にできた?」 「今日のは過去一上手くできた!食べてみて!」 「……………うん。おいしいよ。」 「なに、その反応笑 もっと心を込めて言ってよーー」 「ごめんごめん笑 ほんとにおいしいよ。」 「あったりまえでしょー」 こんなに明るくて笑顔が可愛い彼女が毎晩病気と戦ってるなんて誰が見ても想像がつかないだろう。 その日は、ショッピングに出かけることにした。 人混みの多いところは病気を発症しやすいため、普段は避けているが、今日は彼女がどうしても見たいものがあるらしい。 よっぽど楽しみなのかショッピングモールに行く車の中でずっと歌を歌っている。 こんなにテンションが上がってる彼女を見たのはいつぶりだろうか。 しばらくしてショッピングモールに着き、目的の場所まであと少しのところで彼女が突然ギュッと僕の腕を掴み、弱々しい声で 「柊くん、あそこに小さな女の子が一人でいるよ。」と誰もいないところを指しながら言う。こういう時主治医の先生から「幻覚を否定してはいけない」と言われてたため、僕は 「そうなんだ。その女の子はなんかしてるの?」と聞く。 「うーん。きっと、お母さんとはぐれちゃったんだよ。かわいそうに。」と泣きそうな声で彼女は"女の子"をみつめる。 「でもその女の子多分平気じゃないかな」とその場を流そうと、彼女の手を優しく掴む。 しかし、彼女は僕の手を振りほどいて周りにいる人たち全員に聞こえるように 「すみませんー、誰か、だれか、あの子の親見ませんでしたかーー!!!?」と大声で言い始める。 周りの人達の目線が一気に集まる。 僕は慌てて「すみません、、すみません、、大丈夫ですので、、」と頭を下げ彼女を半強引に車がある場所へと帰る。 車に戻っても彼女は興奮が収まり切らず、 目を真っ赤にしながら僕に訴えかける 「あの子は、あの子はお母さんとはぐれちゃって…だから…わたしが帰さなきゃいけないの!」 と繰り返し言う。 興奮が治まらないため、主治医から緊急な時はここに電話をかけてと言われた番号通りに電話をかける。 すると主治医の先生は、「診るからおいで」と、優しく言ってくれたので病院へと向かった。主治医の先生からは、しばらく入院して様子を見ようという事だったので、入院をさせた。 それからの話、僕は彼女を見なくなった。 最初は主治医の先生に彼女の行方を聞いても何も説明してくれなかった。 でも、病院を出て彼女がいない生活をしばらくして気がついた。 彼女なんて、最初から存在しなかったのだ。

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