空何(くうか)
2 件の小説私の青春の漫画がアニメ化する
あれは大学時代だった。 高校のころの友人から、「君におすすめしたい」とタイトルを挙げられたのだったと思う。 買った。読んだ。ハマった。泣いた。 漫画を読んでガチで泣いたの、多分初めてじゃないかなあと思う。 序盤を読んで「ふーんこんなもんか」と思っていて、でもおすすめされたしと読み進めて、中盤からキャラが出そろってから勢いがつき始め、そしてキャラの生き様が突きつけられて、そしてとあるシーンにぶち当たり、泣いた。 最後まで読みきり、そしてこの作品は、私の創作に、人生観に、それはもう深い爪痕を残した。 あの作品が、アニメ化されると発表された。 ヤバい。ヤバい。 あの青春が、またやってくるのか。 「惑星のさみだれ」。 それが、作品のタイトル。
金木犀の香りって…(先輩後輩女子高生百合小噺)
「トイレの芳香剤の季節がやってきたわね」 「金木犀に謝りやがりくださいませ?」 開幕暴言の先輩に、後輩は脳天チョップをぶち当てた。 「後輩、あなたもそう思うでしょう? 素敵な金木犀の並木道を歩いていて『わーおばあちゃんちのトイレの芳香剤のにおいがするー』って懐かしい気持ちに」 「わざわざ『素敵な』なんて枕言葉をつけたうえでトイレの方向に広げないでくださいません⁉︎」 「そうそう、金木犀といえば、私こないだ下血してね」 「それ『金木犀といえば』じゃなくて『トイレといえば』ですよね⁉︎ 花の女子高生が下血とかやめてくれません⁉︎」 「そう花なのよ、こうパーっと白磁の便器に血が広がってね、まあなんて素敵な光景まるで彼岸花みたいーって」 「全国の彼岸花に謝って⁉︎ この世のどこに下血を見て彼岸花を連想する人間がいますか⁉︎」 「いるじゃない、ここに一人」 「今すぐ抹殺してカウントゼロにしてさしあげましょうか⁉︎」 「危うくそうなりかけたのよね、川の向こうに死んだおばあちゃんが見えて」 「彼岸ー⁉︎ 出血多量で彼岸花じゃなくて物理的に彼岸が見えてるー⁉︎」 「あのときはさすがの私も死を覚悟したわ。 後輩との楽しいトイレタイムの数々がフラッシュバックして」 「あたしたちがトイレタイムばっかりしてるみたいに言わないで⁉︎ もうちょっと走馬灯するべき思い出があるでしょう⁉︎」 「ちなみにトイレを流すことも英語でフラッシュというわ」 「つづりが違いますけどね⁉︎」 「つまりトイレでフラッシュバックということは」 「その口からそれ以上言葉を発するなら腹を殴って昼飯をバックさせますよ⁉︎」 「まあ、冗談と下品な話はここからにして」 「『ここまで』にしてくれません⁉︎ ここから冗談と下品な話が始まるんですか⁉︎ 今までの話は冗談でも下品でもなかったと⁉︎」 「彼岸花の別名って『曼珠沙華(まんじゅしゃげ)』っていうのよね」 「そのフリでその単語は絶対ダメなやつー‼︎ 放送禁止用語を発する前にあなたを生存禁止にしましょうか⁉︎」 「花の女子高生なんて言うから花の方向に広げようと思ったのに、仕方ないわねえ。 じゃあいいわ、あなたと私で、花を咲かせましょう……?」 「えっあの、先輩、なんですか近い、あの、くちびるに指を沿わせて何を……?」 「ふふ、怖がることはないわ、刺激的なのは最初だけ…… さあそのかわいいくちびるを開いて……受け入れて、二人の花を咲かすのよ……」 「ちょ、そんな、先輩、あたし……まだ、心の準備がッ……!」 「はい、あーん」 「辛いッ⁉︎ 何食べさせたんですか先輩⁉︎」 「もみじおろし」 「大根おろしフィーチャリングトウガラシ⁉︎」 「ちなみに配合比率は大根1にトウガラシ99です」 「おろされてるのは大根のキャスティングなんだよなぁ⁉︎」 「全部で六リットル用意してみました」 「山盛りすぎてウェディングケーキみたいになってるんですけど⁉︎」 「ちなみに六リットルとはトイレを一回流した時の平均的水量です」 「どうあってもトイレから離れない気ですね⁉︎」 「さぁ後輩! このもみじおろしをドカドカ食べて、二人仲良く下血の彼岸花を咲き散らかしましょう!」 「花を咲かすってそういう意味ですか‼︎ ちょっやめて、先輩、そんな強引な、ムリヤリ入れないで、辛い超辛い、ぎゃああああ〜〜⁉︎」 もみじおろしはこの後、先輩が責任を持っておいしくいただきました。 とっぴんぱらりのぷう。