ブン
3 件の小説パズル
人生はパズルだ。 大きなフレームに、何百個ものパズルの破片を埋め込んでいく。 うまく埋め込めたら、成功。 間違えて埋め込んでしまったら、失敗。 そのパズルが完成するのは、まだまだ先なのだろう まだ自分は、人生というパズルに満足していないのだから。
キャンディ男
「キャンディ、いる?」 全身黒の怪しげな男が話しかけてきた。手には、三本のぐるぐるしたキャンディ。 そのキャンディを私にぐいぐい押し当ててきた。 「…なんですか、あなた」 「やだなぁ、知らない?僕のこと」 「………誰ですか?…全身黒だし。」 「犯罪者扱いはやめろよ?ちゃんと社会出てるから。……ちょっと話を聞いっ」 「無理です。お断りします。では。」 少し困った顔をしながら「えぇえ……」とぼやく男を置いて、私は仕事先へスタスタと向かった。こんなのに朝っぱらから足止めされて遅れるわけにはいかない。今日は会議があるのだ。 少し後ろを見ると、男は自分が持っていたキャンディを食べていた。 よく見ると、男は泣いていた。 (……変なやつ……) 私は後ろを向かずに会社へと向かった。 次の朝。 「あのぉ、キャンディいる?」 またあの男だ。キャンディは一本減り、2本になっていた。 「……………」 面倒になるので今度は無視した。男は「んもぉ!」と言いながら、私の鞄を奪い、中にキャンディを押し込んだ。 「ちょ、ちょっと!何するの!何勝手に…!」 「……ほいっ」 男は、キャンディが入った鞄を私に差し出してきた。 「な、何がほいよ…いらないって」 「じゃっ」 じゃ? 気づくと男は走って逃げていった。見た目は細いが、走るのは陸上選手並みに早かった。 「…早」 私はしばらく立ち尽くしたあと、キャンディを取り出した。 「いらないのにな…」 なぜか私が負けたようで悔しかったが、「あ、仕事急がないと」と我に帰り、走って会社に向かった。 その日、私は会社で大失敗をした。 入社してから一番怒られた。 夜、トボトボと家に帰っていた。とてもむしゃくしゃしていた。 「あーーーもう!イラつく!」 バンっと鞄を地面に投げ捨てる。鞄の中身がドバッと出てきた。 その中に朝、男からもらったキャンディがあった。 「……………キャンディ……」 キャンディを袋から取り出す。食べた。 「甘…」 私は甘いものが苦手なことを今思い出した。小さい頃、ひとりの男子に甘い甘いお菓子を無理やり食べさせられて、気を失いそうになってからだ。 このキャンディは、なぜか美味しかった。 「……んっ…ふぐ………あ……」 なぜか涙が出てきた。 ボロボロと次々に溢れ出てきた。 なんでかはわからなかった。 次の日の朝。 私は会社を休んだ。 仮病を使って初めて会社をバックれた。 ブラブラといつも歩く道を歩いていると、 「あっ!キャンディいる!?」 「あ、いつもの…」 またあのキャンディ男だ。キャンディは、あと一本。 「おはよ!んで、キャンディいる?」 少し返事に困ったが、 「……じゃあ、ください」 とキャンディを受け取った。 男は人生で一番驚いたような顔をした。 「え、あ、ありがとう…」 変なやつだな、ともう一度思った。自分からきたくせに、受け取ったら驚くのか。 「…なんで、キャンディ配ってるんですか」 思わず聞いてしまっていた。 男は、再度驚いたように、 「えっと、えー………」 と言葉を詰まらせた。 「?」 変な間が生まれる。 「……ぬため」 男がボソボソと何かを言った。 「……?なんて言いました」 男はパッと顔を開けて、いつもの笑顔に戻った。 「いや、ただ喜ばせたかっただけ!貰ってくれてありがと!じゃあ!さいなら」 と言って、走って逃げていった。 (………変な人だな) また私はそんなことを考え、キャンディをあま、と言いながら食べた。 次の日の朝だった 『ここで、次のニュースです。〇〇町で、男の遺体が見つかりました。遺体は全身黒、二十代ほどの男性で、自殺と見られています。靴と共に遺書があり、「僕はしんどい人生でした。最期にお礼を言いたいです。僕は死ぬ前、キャンディを3本持って街を歩きまっていました。キャンディがなくなったら死ぬつもりでした。ほとんどの人は気味悪がって逃げていましたが、一人だけ2本もらってくれたんです。こんな僕にも頼ってくれる(?)ひといるんだなぁって笑…ありがとう。頑張ってね。僕みたいにならないで。」と書かれていたそうです。遺書に名前があり、〇〇〇〇さんと言う方だそうです。…今不安などがある人は…』 その名前は、昔無理やりお菓子を食べさせた男子と同じ名前だった。
ホントノジブン
私は今まで運が悪いことしか経験していない。頑張っても周りから笑われる。失敗しても笑われる。普通にいるだけで、笑われる。 とにかく私はみんなのネタ、笑いの種に過ぎない。 「存在がそもそもおかしいのではないか」と思ってしまう。私は存在してはいけない、私は社会に存在する価値がない。 「私はもう死んでいるのではないか」と思ってしまう。表情に変化がない、ロボットのような人。 本音では、助けてほしい。底なし沼にハマっていくような感覚を、終わりにしたい。けど、けどあのニタニタ笑うしょーもない人達に負けて言えない。あのくだらない人達に私は負けている。それが悔しくて、 自分が嫌いだ。一生この思いを背負って私は多分、生きていくのだろう。 本音では、この思いを変えてくれる人がいたらいたらいいのに、と思ってしまう。