人殺し少女は何を思うか(1)
ピピッピピッピピッ… カチッ
頭に響くアラーム音を止めた。ベットからおもい体を起き上がらせる。カーテンを開けると快晴な青空が広がっていた。おまけに雀も5、6羽ほど電線に止まっている。普通であれば今日は明るい1日だとでも考えるのだろう。しかし、私はそうは思えない。いつも通りきょうもまた、憂鬱な1日が始まるのだろう。
制服に着替え、クシで髪をとかす。昨日のうちに用意した教科書を鞄に入れ、階段を下りる。一階に降りると見慣れた置き手紙が食卓の上にあった。
[ごめんなしゆ、今日も仕事で遅くなりそうだから夜は冷凍庫に入っているものをチンして食べてほしい。父より]
うん、いつもどおりの内容である。
時計を見るとまだ時間がある。キッチンの方へ向かい、冷蔵庫の中に入っている食パンを出しジャムを塗る。この塗ってる時間が、この香りが、私にとって癒しの時間だと思う。口に入れた時のこのいちごの甘味もさらに良い。そんなことを考えているうちにもう食べ終えていた。時計を見ると思ったより時間が過ぎている。まずいなと思い、いそいそと片付けを済ませ家を出る。ああ、その前に
「行ってきます。お母さん。」
優しい笑みを見せる写真の母に笑顔を見せ今度こそ家を出た。
教室に入ると、もうすでに何人かのクラスメイトがいた。なるべく顔を合わせないようにし一番角の机へ向かおうとした。が、
ドンッ!!!
背中を押され咄嗟に近くの机にもたれ掛かる。しまったと思ったが、遅かった。
「うわ最悪〜。人殺しにアタシの机触られたんだけどー。」
「え〜、〇〇ちゃんかわいそ〜。」
「ちょっと手が当たっただけなのに大袈裟過ぎだよ人殺し。」
「てか人殺しは刑務所に行けよ。」
次々とクラスメイトからそんなことを言われた。別に大袈裟じゃなかったし、もたれ掛からなければ机に思い切り頭をぶつけてしまいそうな状態だった。でも、言い出せなかった。あの言葉が。そう、また言われたのだ。今日も
「「人殺し」」
と。
私は、私は殺してなんかいない、いないのだ、誰も。誰もだ。いない。いないいないいないんだ。いない。いないいないいないいないいないいな…
「やべっ、もう時期先生来る‼︎」
クラスの1人がそう言う。いつの間にか私の周りを囲んでいた人はおらず、私はそこでやっと思考がクリアになった。最悪な朝だ。今日も。昨日もこんなんだった。一昨日も。その前も。毎日。毎日だ。高校に入ったらきっといじめは治るだろうと思っていた。しかし、そんなことは無かったのだ。
人殺し少女は何を思うか