夏海
2 件の小説りんご飴
祭りの夜店は心が躍る。 一歩足を踏み入れると そこだけ異世界のような 独特の空気 世界感がある。 いつもの夜は暗く人通りも少ない「その場所」が 「祭りの期間中」は 派手派手しく賑やかな空間に変わる。 鼻腔をくすぐるソースの焦げる匂い 焦げたザラメの少しカラメルがかった綿あめの匂い 香ばしく焼けた焼きもろこしの醤油の匂い ベビーカステラが焼き上がった時の合図音か? 「ビーッ」と定期的に聞こえる音 「よし!びっくりするくらいキレイな色のかき氷にする!」 とかけ放題のかき氷シロップに興奮した小学生が何でもかんでもシロップをかけまくり、 「びっくりするくらい汚い色」なったかき氷をそれでも嬉しそうに友達に見せびらかす光景 そんな独特の空気を楽しみ 気分の高揚感を覚えながら 私はお目当てのりんご飴の店に真っ直ぐ向かう。 りんご飴 りんごに色付きの飴を絡めただけのものだが飴の甘さとりんごの酸味が程よく合う。 酸味と言えば、昔のりんごは今と比べてかなり酸っぱかった。 その酸っぱさに私は 「嫌いな果物No.1」にいつも挙げていたりんご でも皮肉なものでそれがりんご飴やアップルパイにするとその酸みがとても引き立っていた。 カリッ サクッサクッ 今のりんごはやはり甘いな 甘い飴に甘いりんごだから味が少しぼやけてしまう… もうあのりんご飴は食べられないのか… 少し残念な思いに駆られつつも やはりそれでもりんご飴の魅力はまだまだ健在だ。 キラキラしたルビー色のガラス細工のような美しさ カリッサクッと異なる食感の後に 口中に広がる飴の甘い香りとりんごの爽やかな香り インスタなどで知ったのだが 昨今はりんご飴ブームなのか何なのか 専門店なるものもできているらしい。 とても可愛くオシャレで素敵なのだけど 私はやはり夜店のやや無骨なりんご飴に惹かれてるんだ。 無骨なりんご飴を無骨に大口開けて頬張る それが更にりんご飴を美味しくしているのだと私は勝手に思ってる。
ラムネ
ビー玉の様なキャンディを見つけた。 ラムネ風味で見た目と同じく爽やかな味がする。 子供の頃 梅雨の鬱陶しい蒸し暑い時期に 縁側に座り庭の紫陽花を眺めがら 冷たいラムネをよく飲んだ。 ラムネの瓶は独特な形をしている。 なぜそんな形なのかは知らないけど 子供の手にも握りやすい形状で 飲み終わった後に大人にせがんで 中のビー玉を取り出してもらうのが常だった。 今の時代とは違い 安心安全配慮など欠落気味だったあの頃の ビー玉を取り出す唯一の手段は 「瓶を叩き割ること!」 叩き割った瓶の欠片の中から ビー玉を拾い出してもらう。 なんだか悪いことに加担している様な 少し危険な匂いにワクワクしながら ビー玉を受け取り数日後には失くす。 毎回欲しくて欲しくて しつこく大人にせがむのに 手に入れるとあまり興味がなくなり失くす。 その繰り返し。 あのビー玉 とっとけばよかったな 今なんとなくそう思った。 ラムネ飲みたいな プラのやつじゃなくて 瓶のやつ しとしと降る雨に打たれた 実家の庭の紫陽花が見事だったあの頃に戻って 縁側の椅子に腰掛け 足をぶらぶらさせながら キンキンに冷えたラムネを飲みたい。