夜綴

3 件の小説

夜綴

初心者の夜綴(よつづり)です。書くジャンルは決めてないので思いついたものを書こうと思います。

夏の悩み事

夏のおしゃれとは難儀なもので 彼女はやれ 「ノースリーブ着たいけど二の腕が…!」 「キャミ重ね着したいのに暑すぎでしょ」 と色々と嘆いている かくいう私も汗などが気になるのだが 最も困るのは彼女のサンダルである ネイルを夏仕様にしてみたからと つま先の空いた厚底サンダルを履くのだ ネイルは綺麗だと思うし 彼女のおしゃれに口を出す資格は私にはない ないのだが 厚底によって身長差が縮まってしまうのは困る 彼女は 「ちょっと背高くなった」 などと無邪気に喜んでいるが いつもより近い距離と 見やすくなったその顔に 私は調子が狂わされている こっちの気にもなってほしいものであるが 馬鹿正直にそんなことは言えないので やっぱり夏のおしゃれは難儀なものである

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たぬき

文化祭準備期間とは たくさんの人が教室に入り乱れる時期である 「ペンキ隣のクラスから借りてきて!」 「生徒会が様子見に来るらしいよ」 「先輩…え、差し入れありがとうございます!!」 みたいな感じで しかも準備がダルいからと 友達クラスにサボりに来るやつもいる クラスの境界が曖昧になるのがこの時期だ そしてそれは文化祭後の後片付けも同様である 使い終わった装飾品などを捨てるため ゴミ捨て場に立ち寄った そこには準備期間中クラスでよく見かけていた人が偶然いた 何となく 「お疲れ様です」 と軽く頭を下げて言ったのだが返事はなく、気まずく思っていたら なんと、告白された 好きになってくれた理由を端的にまとめると 「しっかり者って感じでかっこいい」 「優しくしてくれた」 からなんだそうだ 制服のネームプレートの色的に同学年ではあったし 好きになってくれてありがたいとは思ったが 初対話の人とは流石に付き合えず、丁重にお断りした それからしばらくして 同じ学年にしてはあの人を見かけないことに気づいた ふとあの人の所属クラスが気になり 学年の名簿を見てみた 該当する名前はなかった 苗字が変わってるかもとか 学年が違うかもと考え 部活の顧問に頼んで 生徒全体の名簿を確認してもらった やはりいない この話をクラスメイトにしてみたところ そもそもよく来ていた人間とは誰かと聞かれた 少なくとも私の近しいクラスメイトたちは よく来ていたはずのあの人を目撃していなかったのである これで完全に謎は迷宮入りとなった しかし私は引っかかることがある 「優しくしてくれた」 この、好きになってくれた理由である 褒められたことではないが 私は人に「優しい」と称されるような人間ではない 当時、普段と違う行動をした記憶が 車道で寝ていた、たぬきっぽい生き物を脅かして 安全なところに追いやったくらいしかないのだ それですら優しい行動と言えるのかは謎だが そのたぬきがあの人に化けていたと思いたい でないとあの人は幽霊か、はたまた 文化祭の準備期間から侵入していた 不審者の可能性が出てきてしまうからだ

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知られたくない

母が恋愛リアリティショーを見ていて 突然不思議そうに首を傾げた 母は、「月が綺麗ですね」の意味を知らなかった 驚いた私は父に 「月が綺麗ですねって言われたらどうする?」 と聞いてみた。父は 「そうですね、としか言いようがなくない?」 と言った 父も、「月が綺麗ですね」の意味を知らなかった 加えて父は 「まどろっこしい。わかりづらくない?」 と言い放ったのだ なんとも風流のない人であった しかし、夏目漱石の有名なそれを知らないことは 日本人としてどうなのか いや、そもそも「月が綺麗ですね」は 世代間のギャップがあるのか それとも文学を嗜んでいないと知る機会がないのか ただ単に私の父母の学がないのか 悩んだ私は翌日友達に聞いてみた 「月が綺麗ですね」は一般常識かと 友達は即答した 「そりゃそうでしょ」 と食い気味に 私はひどく残念に思った 彼女と父母の学のなさが逆であればよかったのにと そうであれば私はいつか彼女に 「月が綺麗ですね」と言えるだろう

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