飛行機雲

飛行機雲
「ねぇ、知っている?飛行機雲が、よく見えるのは、これから雨が降ってくるからだよ」  そんなことを言われた日、雨宿りの公園で、初めて君とキスをした。 「ほうら、言った通りでしょ……」  唇を離すと、君は照れくさそうに、そう言ったけど、それは僕にとって、恵みの雨だった。  それから暫く、空の色すら気にしない、あたりまえの毎日を過ごしていたけど、今、真っ青な空に、君を乗せた飛行機を見つけたよ。  その雲が溶けるように消えてしまうと、それが切なくて、悲しくて、滲んだ空を、しばらく見上げていた。  君の言った通りだね……君のいないこれからは、心に雨が、ずっと、ずっと降りつづきそうだよ。
堀切政人
堀切政人