ナナミ編

 「私の結婚式の友人代表スピーチは、ナナミがやってね。」 久しぶりに会った親友に唐突に言われた言葉。私は、何も言うことができなかった。まずい、そう思った時にはもう遅い。2人の間には、なんとも言えない気まずさが漂う。私は下手な演技で、聞こえないふりをすることしかできなかった。  彼女に出会ったのは、中学生の時。そして、彼女に失恋したのも、中学生の時だった。部活終わりの更衣室。ロッカーを向いて2人並んで、練習着から制服へ着替えていた。 「私、女の子が好きなのかもしれない。」 彼女への恋情を自覚しながら、遠回しの言葉しか出なかった私に、彼女は思いやりにあふれた残酷な言葉を告げたのだ。
森🌳
森🌳
不思議な世界を描きたい