二人の約束
静香は、雨が降りしきる中、懐かしい学園祭の会場に脚を運んでいた。あの日、青春の思い出が詰まったこの場所で、彼と出会った瞬間を今でも鮮明に覚えている。静香は高校生だった。当時、彼女は小説家になるという夢を抱いていたが、自分の才能に自信が持てずにいた。
その日、友人に誘われて参加した学園祭。彼女は中庭の片隅で、自作の小説を販売しているブースに立っていた。人々の目に留まることが少なかったが、同級生の里中が立ち寄ってくれた。「この話、面白いよ。もっといろいろ書いてみたら?」と笑顔で言葉をかけてくれた。彼の一言に、静香は心が温かくなるのを感じた。
その後、静香はしばしば里中と会うようになった。彼は自分の夢を語る静香に真剣に耳を傾け、彼女の作品を読み、才能を認めてくれた。静香は彼の存在によって、自分の書くことへの情熱を取り戻していった。二人は同じ夢を持ちながらも、違う道を歩むことになった。
高校を卒業し、静香は大学に進学することになった。一方、里中は就職のために故郷に帰ることになった。離れ離れになっても、静香は里中への手紙のように小説を書き続けた。そして、毎月作品を送り、彼の反応を楽しみにしていた。
年月が経ち、静香の努力の結果、小説家としてデビューを果たした。彼女の作品は評価され、賞を受賞することもあった。その日、笑顔で祝福に訪れた友人たちの中に、里中の姿が見えなかったことが、ふと寂しさを感じさせた。しかし、彼女の心の中には、いつでも里中がいた。
0
閲覧数: 33
文字数: 1568
カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2024/11/27 0:07
ソメイヨシノ
新人小説家です。
よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”