嘘吐きの村

嘘吐きの村
一 受験戦争が終わったら、大学できっと誠実で素敵な彼氏が出来て、友達は増えて、講義も楽しくて……なんて甘く考えていた三年前の自分を、今となっては当時に戻ってぶん殴りたい気分である。 私は今就活戦争の真っ只中にいて、そんななか大好きだった彼氏には浮気をされ、不貞腐れて友達とは遊ばず、そんな惨めな自分を外見だけでもよく見せることに磨きをかけてばかりいたら講義が疎かになって、気付けば補習の連続で卒業すら危ういといった状況なのであった。 すべて因果応報、自分が悪いのは充分承知しているのだけど、やはりまだそれを受け入れられるだけの心の余裕というかゆとりはなく、出来ることなら人のせいにしたいと願って無様に重い頭を抱えることしかできなかった。 後悔にも似た思いを胸に、講義の合間で中庭を慌ただしくも楽しそうに行き交う後輩の学生たちをぼうっと見ながら、私は教室の窓に頭をもたせた。
翌桧 楓
翌桧 楓
あすなろかえでと申します。ミステリすき。昔別サイトで描いてたやつを書き直して投稿する予定です。感想、フォロー頂けると喜びます。