冬の寒さが骨身に染みるある日、田舎の小さな村では、年に一度の「餅つき祭り」が行われていた。村人たちは朝早くから集まり、蒸し上がったもち米の香りが空気を満たしている。杵と臼のリズムが響き渡り、子供たちの笑い声がそれに重なる。 その村に住む少年、悠斗(ゆうと)は、餅つきが大好きだった。しかし、今年は少し違っていた。彼の祖父、源蔵(げんぞう)が去年亡くなり、彼と一緒に餅をつくことができなくなったからだ。源蔵は村一番の餅つき名人で、その力強い動きと見事な手さばきは誰もが憧れるものだった。 「おじいちゃんみたいに上手に餅をつけるかな……」 悠斗は臼の前で杵を握りしめながら、不安そうな表情を浮かべていた。 「大丈夫だよ、悠斗。おじいちゃんも最初は下手だったって言ってたじゃないか。」 隣で声をかけたのは母親だった。彼女もまた、源蔵から餅つきの技術を受け継いでいる一人だ。 悠斗は深呼吸をして杵を振り下ろした。もち米が臼の中で跳ねる音が響く。最初はぎこちなかったが、次第にリズムを掴んでいった。「ペッタン、ペッタン」と規則正しい音が周囲の村人たちを引き寄せた。 「いいぞ、悠斗!」「その調子だ!」 声援が飛び交う中、悠斗は夢中になって餅をつき続けた。そして最後の一振りで臼から湯気が立ち上ると、白く輝く餅が姿を現した。 「やった……!」
ロキ
ロキ
はじめまして。ロキといいます。 物語作成を楽しんでます。