君の神様になりたい【第 14歩】
全ての者が平等に追いやられた。
コテも名無しもその口を塞がれ足を縛られた。
だが、例え口を塞がれようが足をへし折られようが
歩みを止める事はままならない。
何故なら、それが歩みをはじめた成り行きなら、その成り行きの果てにある結末を変える事などできはしない。
それで、歩みを止めてしまうのなら
それがその者の結果でしかないのだろう。
結果がどうあれ
歩みはじめた事実をねじ曲げる事ができないように。
ただ、それを背負い歩むだけである。
ラウンジクラシック
通称クラウンに追いやられた主要コテハン達。
彼等が居なくなったVIPやVIP+のコテ雑は
まるで火が消えた様に静まりかえっていた。
運が良くても3桁行くかどうか
通常で2桁、人が居ない時は2桁も行かずに
消え落ちてしまうコテ雑。
コテハン達の城、公園なと形容された以前の華々しい姿は
もうどこにも無かった。
日に2,3人、数レスして落ちるコテ雑が続いた。
コテ達と同様、この由緒あるスレッドも
消えてしまうものばかりだと……。
あんなに人で賑わっていた場所も消えて無くなる時は呆気ない。
そんな事を思っていた。
コテ雑が消えてしまうか否か
危ぶまれた時、そのスレッドを回していた
主要コテ達はどうしていたか。
何も出来なかった。
俺や彼等もこの規制でこの板から動けずに
自分達が育ち学んできたスレッドの終わりをただ、ただ指を咥えて見ているしか無かった。
天災にも似た破滅。
多分、地震や火事で自分の家や慣れ親しんだ建物が倒壊する時はこんな気持ちなんだろう。
誰に怒りをぶつけるわけでもない、憎むわけでもない。
焼け落ちる場面を静観するしかない感覚。
みんな、この光景を見て何を思い感じていたのだろう。
俺自身、何も感じなかった。感傷すら。
多分、リアリティが無かったんだと思う。
コテ雑から人が消えて
その存在すら消えかけている風前の灯のあのスレを。
…話しをスレッドから人に戻そう。
VIPのコテ雑が消えかけている時
クラウンのコテ雑では久しぶりに【うらないさん】と話していた。
話していたというより、何時もの説教かな。
【うらないさん】は俺が敬語を使う事が気に入らない様子だった。
特に【うらないさん】自身に向ける敬語
「何故、お前は俺に“さん”付けや敬語で話すのか
俺には理解できない。」
との事。
考えた事も無かった。
【うらないさん】自身、敬語を向けられる事に
その当時慣れて無かったわけはないはずなんだけど。
それでも、俺との会話は居心地が悪かったのだろう…。
馴れ合いを嫌う気質か環境か
この場所やコテとしての立場に
上下関係はないのは十分に理解できる。
憎まれ口を叩きあったり貶しあった仲だが、
それでも、俺にとっては
【うらないさん】は先輩であり、色んな事を教授してくれた
経緯を持っていたから、そういう敬意を本人に分かりやすい様にと
示す、所作としての行為だったんだけど
向けられる側は気に入らないらしい。
………難しいな。
相手を思ってやっての事だけど
どうやら、俺の気遣いは彼にとっては迷惑な事だったなら
直すか。
そもそも、これは俺が居心地がいいからというより
相手を思っての事だから向けられる相手が嫌なら改めるしかない。
俺は自分が使う
敬語やレスポンスについてちょっと真剣に考えてみた。
そしてこれ以降【うらないさん】の事は
【うらない君】と、他に敬語を使っていた
【夕凪さん】や【ゲソさん】の事も君付になって
そして以降敬語を止めた。
ここに上下関係はない…
……のではなく必要ないんだ。
俺が敬語や丁寧語で人を煽る
その時点で煽りや叩きとしては矛盾している。
相手と自分自身には対等な立ち位置ではなくなってしまうから。
今まで深く考えていなかったし
既に癖みたいになっているから直すのにちょっと苦労はした。
……【うらないさん】もっと早い時期に言ってよ。
さて、クラウンでこんな平和な事をやってる中
VIPコテ雑は平和とは程遠い
存亡の危機にまでなっていた。
もう誰もが諦めた時
消えかけたコテ雑の為に立ち上がったコテ達がいる。
【俺様】というコテを筆頭に
【レバニラビリー】やその当時、新参のコテ達だった。
俺はこの事についてあまり知らない。
何故なら彼等が奮闘している時
クラウンのコテ雑から動けなかったから。
ただ、彼等が消えかけているコテ雑の為に
頑張っていたのは耳に入っていた。
いづれ、この規制があけると信じ
人を集め場を整えていた。
彼等の頑張りからは 遠い昔。
自分がこの世界に夢中だった
あの輝かしい、新参時代が重なって何故か少し嬉しくなった。
今の俺は彼等を陰ながら支持する事しかできないけど
この高揚感や意味のわからない使命感は多分
受け継がれていっているのだと。
また、意味のわからない達観した気持ちに彼等にエールを送った。
それと同時に、今までモノクロでボヤけていたコテ雑の危機が
色をついてハッキリとした輪郭で認識出来始めた。
俺もあの場所に戻らなければいけない。